まえがき - 福島市教育実践センター

ま
え
が
き
世界文学史に残る中国の魯迅の作品の中で,
『故郷』は今も中学3年生国語の教科書に掲載さ
れています。厳しい寒さの中を二千里の果てから20年ぶりに帰郷した私は,幼なじみのルント
ウと再会することになります。子どもの頃の思い出が電光のように甦る。わなで小鳥を捕るこ
とや貝殻拾い,すいかの番,刺叉,美しい鳥の羽などなど
子ども時代の記憶が鮮やかに残っているのは,情動が働いていた証拠で,本人がやってみた
いと思う楽しいこと,遊びを数多く体験したかどうかにこの記憶が左右されると言われていま
す。幼稚園の先生には,子ども時代の遊びの体験が特に必要かもしれません。
保育改善専門講座は,これまで小・中学校教員を対象としてきた「授業改善専門講座」に,
平成21年度から幼稚園教諭も加え,24年度からは保育単独の研修講座として実施してきたもの
です。そのねらいは,16年度から市立幼稚園教諭の採用を25年ぶりに再開した本市の若手教員
の指導力向上を図ることです。
今年度受講した2名の先生は,自己の研修課題を解決するために,年4回の保育研究を行い,
日常の保育実践に懸命に努力してこられました。次の二つはそれぞれの保育テーマです。
「思いを言葉で伝えながら,イメージを共有して遊ぶ幼児の姿をめざして」
「幼児が自分たちで遊びを広げていく楽しさを感じられるような環境の構成と援助の在り方」
保育研究指導案の中には,教師の援助を必要としている子どもの姿として,次のような記載
があります。
「興味がすぐに他のことに移り,継続して一つの遊びに取り組むことができない」
「自分のチームが負けると泣いて悔しがる」
「思いが通らないと強い言い方をしたり泣いたりして,自分の思いを押し通そうとする」
「やりたい遊びを見つけられず,床に座り込んだり寝転がったりしてしまう」
どの幼稚園でも見られる子どもの姿です。その姿に子どものどんな気持ちが隠されているのか。
先生方は,一人一人とかかわりながらその意味を考えているのではないでしょうか。
福島大学人間発達文化学類教授大宮勇雄先生は,著書『学びの物語の保育実践』の中で,
「保
育の質の向上には,その場での子ども理解が重要」と述べておられます。世間受けするような
目に見える結果(できるかできないかという形)を成果として追い求め,それによって保育を
評価することの危険性に触れています。子どもの生き生きとした,個性的で多様な成長を見つ
けられるかどうか,そのポイントを5つ,今後の参考のために引用させていただきます。
「何か
に関心を持ったとき」
「熱中しているとき」
「困難に立ち向かっているとき」
「自分の考えや気持
ちを表現する行動」
「責任をとる→人の立場から見ようとする行動」そこに子どもの学びがあり,
それを見つけることが,「子ども理解」の深さ,豊かさにつながっていくとのことです。
受講された先生方には,本講座を教師人生の一つの節目とされ,子どもを深く豊かに理解で
きる保育の実践者として大きく成長されますよう期待しています。
結びに,懇切丁寧にご指導いただきました指導助言の先生方,並びに温かく研修の場に送り
出してくれた各幼稚園の園長先生はじめ同僚の方々に心より御礼を申し上げます。
平成28年2月
福島市教育実践センター所長
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山寺
精吉