2016年2月24日 民主党への提言 政策部門の背景データ 大沢真理 東京大学社会科学研究所 目次 1.そもそも経済成長しているのか、なぜ成長しないのか 2.貧困率が高いのは、所得再分配機能が低いことにも原因がある 1 GDP(国内総生産)の推移 季節調整した名目と実質の額 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2015/qe153_2/gd emenuja.html 安倍政権で経済成長したといえるか? 実質 名目 560 540 520 500 480 460 440 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 420 鉱工業生産指数は2010年の水準を超えることが難しく、 復興特需があるはずの岩手県・宮城県でも、 1時期を除いて全国より低い。 出所:鉱工業指数統計より作成 鉱工業生産指数、季節調整済指数、2010年=100 岩手県 宮城県 全国 110.0 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 2011 2012 2013 2014 2015 2015.9 3 GDP成長:年率換算の実質季節調整系列(寄与度) http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2014/qe143/gdemen uja.html より作成 この数年、輸出が成長を牽引できなくなり、民間最終消費が頼りに 15 15 10 10 純輸出 5 5 0 -5 -5 -10 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1- 3. 1- 3. 4- 6. 4- 6. 7- 9. 7- 9. 10-12. 10-12. 1-3. 1-3. 4-6. 4-6. 7-9. 7-9. 0 2008 -10 -15 -15 -20 -20 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 公的在庫品増加 純輸出 公的固定資本形成 公的在庫品増加 政府最終消費支出 公的固定資本形成 民間在庫品増加 政府最終消費支出 民間企業設備 民間在庫品増加 民間住宅 民間企業設備 民間最終消費支出 民間住宅 GDP成長率 民間最終消費支出 GDP成長率 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 月別の実質消費支出、2人以上世帯 対前年同月の増減率 出所:家計調査より作成 家計消費が低下しては、成長しないのが道理 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 ( % -2.0 ) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 -4.0 -6.0 -8.0 -10.0 -12.0 年(月別) 5 月別実質賃金指数(2010年の平均=100)の推移 きまって支給する給与(非正規・パートを含む。超過勤務手当を含 み、ボーナスを含まない)(5人以上)(調査産業計) 出所:毎月勤労統計より作成 実質賃金の低下は顕著で、消費不調は道理 104.0 102.0 100.0 98.0 96.0 94.0 92.0 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 6 正規の雇用者数と非正規の比率 2013年以来、雇用の増加は非正規中心で正規は低下基調 出所:労働力調査より作成 正規の雇用者数 非正規雇用者の比率 3500 39.0 3450 38.0 37.0 3400 36.0 3350 ( 35.0 万 3300 人 ) 3250 ( % 34.0 ) 33.0 3200 32.0 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 7-9. 4-6. 1-3. 10-12. 30.0 7-9. 3100 4-6. 31.0 1-3. 3150 7 雇用者報酬(総額)、雇用者報酬のうち名目現金給与の推移、 四半期季節調整系列 出所:雇用者報酬は四半期別GDP速報(2015年7-9月期 2次速報値)2015年12月 8日公表、名目現金給与は2014年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)確報の 国民所得・国民可処分所得の分配の季節調整系列より作成 雇用者報酬総額も実質では増えたといえない 実質 名目 名目現金給与 280000 270000 260000 250000 ( 1 0 240000 億 円 ) 230000 220000 210000 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 7-9. 1-3. 200000 2014 2015 国際比較すると 労働時間当たり雇用者報酬の伸び、1995年=100 出所:OECD.Stat, Productivity and ULCにおける労働時間当たり雇用 者報酬の毎年の伸び率より指数化 主要国のなかで賃金率が低下したのは日本だけ。 安倍政権でさらに低下したことに注意 210 200 190 180 170 イギリス 160 スウェーデン アメリカ 150 デンマーク 140 フランス 130 ドイツ 120 日本 110 100 90 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 9 G5とスウェーデンの年齢階級別の貧困率、2009年 出所:OECD.Statより作成 日本の貧困率はOECDワーストクラス。 分配も劣化したが、再分配の逆機能が痛い 30 25 スウェーデ ン フランス 20 ( ドイツ % 15 ) イギリス 日本 10 アメリカ 5 0 0-17歳 18-25歳 26-40歳 41-50歳 51-65歳 66-75歳 76歳以上 10 日本の年齢階級別の貧困率の推移 出所:OECD.Statより作成 1980年代の貧困とは高齢者の問題だった。最近にかけて 高齢者の貧困率は低下し、子どもから中年層で上昇した 30 25 20 1985年 % 2000年 ) ( 1995年 2005年 15 2009年 10 5 0-17歳 18-25歳 26-40歳 41-50歳 51-65歳 66-75歳 76歳以上 11 現役人口にとっての貧困削減率、2005年 日本では現役世帯で成人が全員就業すると(共稼ぎ、ひとり人親、単 身)、政府による所得再分配が貧困を深める。OECD諸国で 唯一の逆機能 注:所得再分配(社会保障現金給付-直接税・社会保障負担)が貧困を削減する 程度 出所:OECD Employment Outlook 2009: Figure 3-9のデータから作成 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 % 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 日 本 キ ポ シ ル コ トガ ル 韓 ポ ー 国 オ ラン ー ス ド トリ ア ドイ ア ツ メ リ ス カ ペ イ ニ ベ ン ュ ル ー ギ ジ ー ー ラ ン カ ド ス ナ ロ ダ バ キ ル ア ク O セ EC ン ブ D ノル ルグ ア ウェ イ ス ー ラ ン フ ド ラ ン オ ス ラ ン ギ ダ リ シ ャ チ ェ イ コ ギ リ イ ス デ タリ ン ア マ フ ィン ーク ス ウ ラン ェー ド ハ デ ン ン ア ガリ イ オ ルラ ー ー ス ンド トラ リ ア -10.0 メ -20.0 成人全員が就業(共稼ぎ、1人親、単身) カップルの1人が就業 世帯主が労働年齢の全世帯 12 純負担率の推移、子ども2人の世帯と単身者 注:世帯の税込み収入は平均賃金に対する比率。純負担率は、(所得課税+社会保障拠出― 現金給付)が、税込み収入に占める比率/出所:OECD.Statより作成。日本では税・社会保障 制度が低所得のひとり親を冷遇(ドイツも)。子ども手当は「バラマキ」ではなかった 25 ひとり親 67 共稼ぎA (100+33) 単身者 100 片稼ぎ 100 共稼ぎB (100+67) 35 30 25 20 20 15 15 10 10 5 5 0 0 日本 スウェーデン 30 45 25 40 20 35 15 30 10 25 5 20 0 15 -5 10 -10 5 -15 0 -20 オーストラリア ドイツ 13 2014年の純負担率、子ども2人の世帯(ひとり親、夫婦片稼ぎ)と単身者 注:縦軸:純負担(所得課税+社会保障拠出―現金給付)が粗賃金収入に占める比率(%) 横軸:粗賃金収入(平均賃金対比) 出所:OECD.Statより作成 30 ひとり親 片稼ぎ 単身者 20 30 10 20 0 10 -10 0 -20 -30 日本 イギリス 30 50 20 40 10 30 0 20 -10 10 -20 0 -30 ドイツ -40 オーストラリア 国民の生活と信頼のために • 正社員と非正規労働者の待遇の格差を解消する→結婚し たい人が結婚できるようになり、子どもを生み育てたい人の 希望も実現しやすくなる。「輝くパッケージ」は、非正規の処 遇改善というが、格差解消まで踏み込む必要。 • 税制と社会保障制度の所得再分配機能を強化する。その 手段として、児童手当・児童扶養手当の拡充、給付つき税 額控除の導入。高所得者には応分の負担を求める。配偶 者控除の廃止は、その手段となる。 • 学校教育への財政支出を増やす(教育にたいする公的な 財政支出は、日本ではOECDで最低)→大人になって税・社 会保障を負担できる人が増える。 • 貧困を解消すれば、社会全体の質がよくなり、災害や経済 危機にたいしても強靭になる 15
© Copyright 2024 ExpyDoc