長崎県が取組む効率的な橋梁維持管理

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長崎県が取組む効率的な橋梁維持管理
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長崎県が取組む効率的な橋梁維持管理
はじめに
長崎県の管理する橋梁には、長い海岸線など県土の厳しい自然環境にある橋梁や離島架橋(代
替道路がない海上部の長大橋梁)が多いなどの特徴がある。橋梁は自動車などの繰り返し走行に
よる疲労損傷等、また沿岸部においては塩害による鉄骨・鉄筋の腐食等により、時間の経過とと
もに確実に劣化が進行していく。
こうした橋梁の管理では、至急対応が必要な損傷に対して確実に対処し、利用者の「安全・安
心」を守ることが重要である。しかし、現在管理する橋梁は、高度成長期に建設されたものも多
く、今後急速に高齢化が進む橋梁に対して、従来の事後保全型(対症療法的)の維持管理ではコ
ストが膨大になる懸念がある。そこで、長崎県では予防的修繕による橋梁の長寿命化に取り組ん
でいる。
ここでは、長崎県の橋梁維持管理について紹介したい。
1.長崎県が管理する橋梁の現状等について
長崎県が管理する橋梁(橋長2m以上)は、橋長15m以上の731橋と15m未満の1,361橋があり、
これに横断歩道橋(23橋)を合計した2,115橋について第Ⅱ期長崎県橋梁長寿命化修繕計画(2014
年度)を策定して管理にあたっている。
なお、15m以上の橋梁のうち橋梁規模や構造特性が大きく異なる橋梁及び地域に与える影響が
大きい橋梁を「重点維持管理橋梁」として30橋を抽出し、一般的な橋梁よりも重点的に維持管理
を行っている。
橋梁数では15m未満の橋梁が全体の64%と圧倒的に多いが、橋梁延長でみると15m以上の一般
橋梁(58%)、重点維持管理橋梁(26%)で全体の84%を占め、これらに多額の維持管理費が必
要になる(図表1)。
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図表1 管理橋梁数の内訳(橋長別)
15m以上橋梁
731橋
全管理橋梁
2,115橋
一般橋梁
701橋
重点維持管理橋梁
30橋
15m未満橋梁
1,361橋
横断歩道橋
23橋
重点維持管理橋梁
30橋(2%)
横断歩道橋
23橋(1%)
15m以上の一般橋梁
701橋(33%)
橋梁数
15m未満の橋梁
1,361橋(64%)
15,570m
(26%)
橋梁延長
34,837m
(58%)
8,879m
(15%)
718m
(1%)
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)
架設年次が不明の360橋を除く1,755橋のうち、1950年代から70年代にかけての高度成長期に全
体の約50%となる883橋が建設されている(図表2)。今後これらの橋梁の高齢化が進み、多額の
修繕・架替え費用が必要になると見込まれている。
図表2 建設年別の橋梁分布
年次橋数
450
累計橋数
1,800
883橋
(全体の約50%)
年次別橋梁数
400
架設後30年
1,072橋
61%
1984
架設後50年
354橋
20%
1964
架設年次別橋梁数
(全橋)
累計橋梁数
1,732
357
1,400
1,240
300
1,200
950
250
290
285
200
800
600
138
100
400
205
50
2 2
17 19
27
46
21 67
23
1930
1940
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)
∼
1920
∼
2001
∼
1991
∼
1981
∼
1971
∼
1961
∼
1951
∼
1941
∼
1931
∼
1921
ながさき経済 2016.3
200
0
1911
※架設年次不明橋360橋除く
10
1,000
207
593
150
0
1,600
1,525
388
350
1,755
2011
以降
架設年次
(年)
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建設後50年以上を経過した橋梁数が全管理橋梁数(架設年次不明360橋を除く1,755橋)に占め
る割合は、現状の20%から20年後には61%、30年後には78%まで増加する(図表3)。
(参考)鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の橋の耐用年数は60年、金属造の橋
(はね上げ橋を除く)の耐用年数は45年(減価償却資産の耐用年数に関する省令)
図表3 建設後50年以上の橋梁数の増加(架設年次不明360橋を除く割合)
50年未満
988橋
56%
50年未満
683橋
39%
50年以上
767橋
44%
10年後
50年未満
390橋
22%
50年以上
1,072橋
61%
50年以上
1,365橋
78%
20年後
30年後
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)
(参考)長崎県の各管理事務所管理の道路橋および横断歩道橋
上段:橋梁数
下段:橋梁延長(m)
種別
橋の長さ
管理事務所
長
崎
振
興
15m以上
局
大瀬戸土木維持管理
道
路
橋
県
央
振
興
局
県
北
振
興
局
田平土木維持管理
島
原
振
興
局
五
島
振
興
局
上
五
島
支
所
壱
岐
振
興
局
対
馬
振
興
局
上県土木出張所
合 計
横断歩道橋
長
崎
振
興
局
県
央
振
興
局
県
北
振
興
局
合 計
128
9,263
46
3,989
81
6,174
154
8,445
51
5,654
101
9,282
49
2,047
16
1,393
10
528
60
2,569
35
1,072
731
50,416
14
436
2
102
4
144
20
682
合 計
15m未満
194
1,333
41
284
169
1,090
205
1,472
160
923
148
1,168
126
724
67
365
38
241
133
766
80
509
1,361
8,875
2
23
1
11
3
34
322
10,596
87
4,273
250
7,264
359
9,917
211
6,577
249
10,450
175
2,771
83
1,758
48
769
193
3,335
115
1,581
2,092
59,291
16
459
2
102
5
155
23
716
*長崎県道路維持課の資料を参考に当研究所で作成、単位未満切り捨て
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11
2.橋梁長寿命化修繕計画策定の背景と目的
今後急速に高齢化が進む管理橋梁に対して、従来の事後保全型の維持管理を継続していくとそ
のコストが膨大となり、厳しくなっていく予算制約のなかで安全性・信頼性確保のための維持管
理の継続が困難となることは想像に難くない。
そこで、県では今後高齢化する橋梁の増大に対応するため、従来の事後保全的な修繕および架
替えから、予防的な維持管理の手法を導入している。そのため、橋梁の長寿命化と修繕・架替え
の費用の縮減を図りながら、地域の道路網の安全性を確保することを目的として橋梁長寿命化修
繕計画を策定している。
3.橋梁長寿命化修繕計画の実施状況
長崎県では、第Ⅰ期の橋梁長寿命化修繕計画(2008年度∼17年度)を実施してきたが、15年3
月に第Ⅱ期の計画(15年度∼24年度)を策定し、橋梁の修繕や耐震補強を集中的に実施し、2018
年度より全ての橋について予防的な修繕へと移行することとしている。
なお、計画については学識経験者等による「長崎県橋梁維持管理計画検討委員会」の意見を踏
まえて策定している。
(1)第Ⅰ期修繕計画(2008年度∼17年度)
第Ⅰ期修繕計画では、15m以上の橋梁の修繕進捗率は14年度末で93%、15m未満については
100%完了している(図表4)
。
図表4 第Ⅰ期修繕計画の実施状況
第Ⅰ期修繕計画(橋梁長寿命化修繕計画2008年度∼2017年度)の実施状況
年 度
橋長
15m以上
橋長
15m未満
計画橋梁数
実施橋梁数
進 捗 率
計画橋梁数
実施橋梁数
進 捗 率
単位
橋
橋
%
橋
橋
%
2008年
計画
27
12
7%
31
29
14%
2009年
計画
20
37
30%
30
12
20%
2010年
計画
21
32
50%
42
23
30%
2011年
計画
21
12
57%
42
48
53%
2012年
計画
17
14
66%
40
37
71%
2013年
計画
18
22
79%
25
48
94%
2014年
計画
5
24
93%
―
13
100%
2015年
計画
6
2016年
計画
5
2017年
計画
23
―
―
―
―
―
―
合計
163
153
93%
210
100%
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)より当研究所で作成
(2)第Ⅱ期修繕計画(15年度∼24年度の橋梁長寿命化修繕計画)
14年度に第Ⅰ期修繕計画について長崎県橋梁維持管理計画検討委員会に諮問し、これまでの点
検結果等を基に「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」を15年3月に改定している。
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*改定のポイント
・計画対象を全管理橋梁2,115橋(2m以上の橋・横断歩道橋を含む)とした。
・重点維持管理橋梁を定め、一般橋梁よりも重点的な補修・耐震補強への取組みを計画。
・道路法で定められた点検基準への整合性を図るとともに、定期点検の結果を踏まえ2015
年度以降の補修・点検計画を立案。
*横断歩道橋は交通量の多い国・県道を跨いでおり、歩道橋利用者や歩道橋下の交通利用者
に対する第三者被害防止の観点からも重要な道路施設と考えられ、13年度に道路法の点検
対象構造物に定められた。これまでも点検や補修を対症療法的に実施していたが、予防的
に維持管理をしていく必要があるとして15年3月の橋梁長寿命化修繕計画から対象として
いる。
点検結果により、横断歩道橋を含む全管理橋梁の2,115橋について次のように分類している。
① 当面の修繕は必要なし(1,918橋、約91%):部材の健全度が80超
② 予防的な修繕が必要(176橋、約8%):部材の健全度40超80以下
③ 早期の修繕が必要(21橋、約1%):部材の健全度40以下
④ 架替え検討が必要(対象なし):主構の健全度30以下または橋梁全体の健全度0
第Ⅱ期修繕計画においては、②の176橋と③の21橋の計197橋を修繕対象として計上している。
特に③の橋梁については部材の機能や、安全率の低下が著しいため、早期に修繕を実施する必要
がある(図表5)。定期点検の健全性については、毎年、長崎県橋梁維持管理計画検討委員会に諮っ
ている。
図表5 対策区分別のフロー図
点検結果の収集
全2,115橋
点検結果の分析に
よる対象橋梁の分類
重点維持管理橋梁
橋長15m以上の橋梁
橋長15m未満の橋梁
横断歩道橋
合 計
30橋
701橋
1,361橋
23橋
2,115橋
部材の健全度
80超
部材の健全度
40超80以下
部材の健全度
40以下
主構の健全度30以下
または
橋梁全体の健全度0
①当面修繕は
必要ない
②予防的な修繕
が必要
③早期の修繕
が必要
④架替え検討
が必要
1,918橋
176橋
21橋
0橋
0橋
658橋
1,245橋
15橋
1,918橋
30橋
41橋
97橋
8橋
176橋
0橋
2橋
19橋
0橋
21橋
0橋
0橋
0橋
0橋
0橋
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)
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なお、第Ⅱ期修繕計画には197橋の修繕とともに耐震補強を行う21橋の合計218橋について計上
している。また、点検については、2014年6月の道路法改正に準じた点検を2014年度から18年度
にかけて行い、19年度以降も5年に1回の点検を行い、その結果から再度検討することとなって
いる。(件数予定は計画表参照)
これらの事業費(点検、補修、耐震補強等)は年間19億円として、10年間で190億円を見込ん
でいる(図表6)
。
図表6 第Ⅱ期修繕計画
第Ⅱ期修繕計画(2015年度∼2024年度の点検・修繕計画)
年 度
点検
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
単位 2015年
計画
計画
計画
計画
計画
計画
計画
計画
計画
計画
橋
448
474
484
466
― **
―
―
―
―
―
点検計画橋梁
15m以上の橋梁
(重点維持管理橋梁) 橋
15m以上の橋梁
橋
補修 (一般橋梁)
15m未満の橋梁
橋
横断歩道橋
橋
重点維持管理橋梁
橋
耐震
補強 15m以上の橋梁
橋
(一般橋梁)
合 計
橋
(補修・耐震補強合計)
事 業 費
億円
4
3
9
2
2
7
1
1
2
12
13
12
16
3
5
1
―
30
43
24
2
合計
2
24
2
24
6
4
25
2
2
116
8
13
2
4
2
8
7
28
13
16
21
15
29
26
34
29
218
19
19
19
19
19
19
19
19
19
19
190
**2019年度以降の点検計画は、2018年度までの定期点検結果に基づいて検討予定。
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)等より当研究所で作成
(3)重点維持管理橋梁について
長崎県は管理橋梁2,115橋のうち、15m以上の橋梁のなかで規模や構造特性が大きく異なる橋
梁および離島架橋のような地域に与える影響が大きい橋梁を「重点維持管理橋梁」として、一般
的な橋梁と区別して重点的に維持管理を行っている。
また、重点維持管理橋梁は橋の特性等を考慮して「特殊橋梁」と「特定橋梁」に区分している。
◎特殊橋梁:最大支間長(支承と支承の間の長さ)が200m以上の特殊構造形式で迂回路の
確保が困難な橋梁
◎特定橋梁(3つに区分)
・特定橋梁①:海上部に位置する橋長50m以上で離島を架橋する橋梁や、海岸線で迂回路
の確保が困難な橋梁
・特定橋梁②:橋長100m以上、支間長50m以上で構造形式が特殊な橋梁
・特定橋梁③:その他(著しく橋長の長い橋梁や外ケーブルの採用など特殊な橋梁)
現在、重点維持管理橋梁として、全30橋(特殊橋梁6橋、特定橋梁24橋)を選定しており、第
Ⅱ期修繕計画の予防的な修繕が必要な176橋のなかに含めて管理している(図表7)。
重点維持管理橋梁については、橋梁毎に独自の「維持管理要領書」を作成し、①日常点検、②
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1年点検(定点観測)、③5年点検(詳細点検)、④異常時の点検手法を定めて、定期的に点検を
実施することで橋梁の状態を把握し、維持管理を行っている。
このなかで、②1年点検は重要な部位や損傷が発生しやすい箇所を定点観察ポイントとし、県
職員及び県職OBや道守認定者が点検経路に沿って巡回しながら橋梁の変状について外観目視調
査を行い、継続的に点検を行っている。
また、毎年同じ個所について同一アングルで定点ポイントを写真撮影し、記録を蓄積すること
で損傷の経年劣化を把握している。
図表7 重点維持管理橋梁の30橋
重点維持管理橋梁 (特殊橋梁6橋、特定橋梁24橋)
橋梁名
路線名
橋長
(m)
最大支間長
(m)
区分
管理事務所
大島大橋
大島太田和線
1,095
350
特殊橋梁
大瀬戸土木維持管理
鷹島肥前大橋
鷹島肥前線
1,251
400
特殊橋梁
田平土木維持管理
生月大橋
平戸生月線
960
400
特殊橋梁
田平土木維持管理
平戸大橋
383号線
884
465
特殊橋梁
田平土木維持管理
若松大橋
若松白魚線
522
235
特殊橋梁
上五島支所
西海橋
202号線
316
244
特殊橋梁
県北振興局
伊王島大橋
伊王島香焼線
876
240
特定橋梁①
長崎振興局
浦上川高架橋
長崎式見港線
803
65
特定橋梁③
長崎振興局
樺島大橋
樺島港脇岬線
227
152
特定橋梁①
長崎振興局
四谷河内橋
202号
160
118
特定橋梁②
長崎振興局
新神浦橋
202号
126
82
特定橋梁②
長崎振興局
荒川橋
202号
115
113
特定橋梁②
長崎振興局
箕島大橋
長崎空港線
970
60
特定橋梁①
県央振興局
斑大橋
斑浜津線
290
110
特定橋梁①
県北振興局
相浦港大橋
佐世保鹿町線
127
87
特定橋梁②
県北振興局
楠泊橋
佐々鹿町江迎線
99
97
特定橋梁①
県北振興局
寺島大橋
寺島馬込港線
268
160
特定橋梁①
大瀬戸土木維持管理
中戸大橋
崎戸大島線
200
40
特定橋梁①
大瀬戸土木維持管理
崎戸橋
崎戸大島線
160
112
特定橋梁①
大瀬戸土木維持管理
本郷橋
崎戸大島線
99
32
特定橋梁①
大瀬戸土木維持管理
福島大橋
喜内瀬鍋串山線
島原深江道路
251号
三杉大橋
中尾川大橋
225
68
特定橋梁①
田平土木維持管理
4,232
100
特定橋梁③
島原振興局
愛野島原線
360
120
特定橋梁③
島原振興局
愛野島原線
148
146
特定橋梁②
島原振興局
戸岐大橋
河務福江線
213
138
特定橋梁①
五島振興局
頭ケ島大橋
上五島空港線
300
148
特定橋梁①
上五島支所
漁生浦橋
日ノ島猿浦線
99
70
特定橋梁①
上五島支所
郷ノ浦大橋
郷ノ浦港線
179
155
特定橋梁①
壱岐振興局
万関橋
382号
210
113
特定橋梁①
対馬振興局
大船越橋
382号
52
51
特定橋梁①
対馬振興局
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)より当研究所で作成
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15
(4)橋梁点検について
効率的かつ安価な方法で橋梁の状況を把握するため、長崎県では独自の「長崎県橋梁点検マニュ
アル」を作成し、橋梁点検を実施している。
・5年点検(法定点検)
:県職員、県職OB、道守認定者および専門業者よる点検、
「長崎県橋
梁点検マニュアル」による5年毎の近接目視点検
・1年点検(重点維持管理橋梁を対象):県職員、県職OBおよび道守認定者による点検で、橋
梁毎に作成した「維持管理要領書」による1年毎の定点観測
・通常点検:橋梁の保全のために日常的な点検として実施。道路監視員による道路パトロール
において、車内からの目視とともに徒歩による目視点検を実施
・異常時点検:地震、台風、豪雨、豪雪、などにより災害が発生した場合若しくはその恐れが
ある場合と、異状が発見されたときに、主に橋梁の安全性を確認するために行
う点検
なお、橋梁の点検等のデータベースについては、長崎県が独自に構築した「橋梁点検支援シス
テム」により橋梁の諸元、点検や補修・補強工事に関する情報の入力・修正等を行い、「橋梁情
報提供システム」を通じて県庁サーバーへ蓄積している。
(5)橋梁耐震補強計画について
県内の緊急輸送道路上にある橋長15m以上の橋梁については、
「緊急輸送道路の橋梁耐震補強
3箇年プログラム」(2005年6月、国土交通省施策)に基づいて耐震補強工事を進め、2012年度
までに一般橋梁242橋の対策を完了している。
その後は、2012年度の長崎県地域防災計画の見直しに伴い、改めて耐震補強が必要となる橋梁
21橋を選定し、第Ⅱ期修繕計画において耐震補強等を計画している。
4.橋梁長寿命化修繕計画のコスト縮減効果について
予防保全を基本とした橋梁長寿命化修繕計画の実施により、従来の事後保全型(対処療法的)
の管理と比較して50年間で約2,000億円(40億円/年)のコスト縮減効果があると見込まれてい
る(図表8)。
16
ながさき経済 2016.3
レ ポ ー ト
Report
長崎県が取組む効率的な橋梁維持管理
図表8 コスト縮減効果の比較
①事後保全型の事業費(50年後架替え)
50年間総費用:3,150億円
②予防保全型の事業費(年間15∼17億円)
50年間総費用:1,150億円
③コスト縮減効果 3,150−1,150=2,000億円(約40億円/年)
架替えと修繕との将来事業予測
3,500
3,150
長寿命修繕計画に従い事業実施した場合
修繕・架替え事業費(億円)
3,000
修繕せずに架替えた場合
2,380
2,500
2,000
1,500
1,500
1,150
950
1,000
500
440
390
800 880
770
590 550
510
190
200
200
210
H27∼H36
H37∼H46
H47∼H56
H57∼H66
350
0
H67∼H76
※修繕せずに架替えた場合:修繕を実施せずに架設50年後に架替えを実施する費用
資料:「長崎県橋梁長寿命化修繕計画」(2015年3月)
5.長崎県の橋梁のアセットマネジメントの考え方
長崎県では5年に一度の定期点検により損傷の状況を診断し、将来の健全性について予測を
行っている。橋梁の各部材について管理基準を設け、水準を下回らないよう補修等の措置を実施
することとし、予防保全的な維持管理を行うことでライフサイクルコストが最小となるような橋
梁長寿命化修繕計画としている。
6.点検に関する人材育成について
長崎県土木部では、道路関連の職員を同部道路維持課や国土交通省九州地方整備局が開催する
橋梁点検研修会へ参加させ技術向上をはかり、また、産学官での取組みである“道守”養成ユニッ
トへ参加させ“道守”の資格取得者の増員を図っている。
“道守”は長崎大学が主体となって養成しているもので、国土交通省が規定する橋梁の点検・
診断の品質確保に資する技術資格者として登録されている。
また、県職員が、県職OBおよび道守認定者とともに点検を実施し指導・助言を受けることで、
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技術の伝承を図っている。
さいごに
橋梁はその多くが高度成長期に建設され、今後はその老朽化対策が必要になり多額の修繕・架
替え費用が発生することになる。厳しい財政状況のなかにおいては、長崎県が先駆的に取り組ん
でいるように、定期的な点検により損傷等を早期発見し、大規模修繕や架替え等に至る前の橋梁
等の劣化が小さな時点で、補修等の対策を実施する予防保全型の維持管理=アセットマネジメン
トの取組みが重要と考える。
(上村 秀明)
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