ISO の世界 新規業務提案~規格開発のスタート

JS技術開発情報メール №172 号掲載
◇ 国際戦略室からのお知らせ ◇
禁無断転載
ISO の世界
新規業務提案~規格開発のスタート~
国際戦略室
技術開発情報メール No.169(平成 27 年 12 月)では、ISO/TC275(汚泥の回収、再生利
用、処理及び廃棄)の全体会議への参加報告をしましたが、今回は、ISO 規格の開発プロ
セスの入口についてお話ししたいと思います。
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ISO の検討スキーム
ISO(国際標準化機構, International Organization for Standardization)は、電気・
電子分野以外の国際規格を開発する組織です。ISO のうち、ある特定の産業やテーマを
対象とする単位を専門委員会(Technical Committee, TC)と呼びます。設立順に番号を
付けますので、TC275 は 275 番目に出来た TC です。
(ちなみに、”TC1”は「ねじ」の専
門委員会です)
。そして、より具体的な特定の分野を規格開発の対象とするため、TC の
下に分科委員会(SC)
、さらに SC の中に作業グループ(WG)が設置されます(SC の
無い TC も有ります)
。
ISO における規格開発の実務は、誰でも出来ます。例えば日本では各業界団体、有識
者が担うことが多いのですが、実際に ISO に日本代表(窓口)として登録しているのは
日本工業標準調査会(Japanese Industrial Standards Committee, JISC)です。JS は
TC275 の国内審議団体として国内意見のとりまとめ、TC や WG 事務局との窓口を務め
ていますが、これは JISC に承認された上で引受けているものです。
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まずは TC へ参加する
ISO に登録がある国(正会員)であれば、興味のある TC に参加することができます。
参加の形は主として 2 つあり、1 つは P メンバー(Participating member)、もう一つは
O メンバー(Observing member)です。各単語 ”participating”, ”observing” の意味の
とおり、P メンバーは「積極的に規格開発に関わろう」
、O メンバーは「意見は言わない
けど参加して動向をチェックしよう」というスタンスで参加しています。なお、TC275
に関しては、P メンバーは 19 ヶ国、O メンバーは 11 ヶ国の登録があります(2016 年 2
月現在)
。日本はもちろん P メンバーです。
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JS技術開発情報メール №172 号掲載
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新たな規格開発のスタート
ある TC や SC が対象とする特定の産業やテーマ、分野のことを活動範囲(Scope:ス
コープ)と呼びます。新たに規格を開発したい場合には、想定するスコープに合致した
TC/SC に提案をすることになります。これを新規業務提案(New Work Item Proposal,
NP)と呼びます。NP にはその規格開発の意義、規格のレベル、開発期間の予定、規格
の概要などを記載し、当該 TC の P メンバーを対象とした投票(投票期間 3 ヶ月)にか
けます。投票の結果、①投票 P メンバーの過半数賛成、かつ②賛成の P メンバーのうち
専門家を会議等に派遣する国が 4 ヶ国以上(P メンバー総数 16 ヶ国以下)または 5 ヶ国
以上(同 17 ヶ国以上)
、を満たせば NP は承認されます。例えば TC275 の場合は、P メ
ンバーは 19 ヶ国ですので 5 ヶ国以上の専門家派遣が求められます。
これで、NP が承認されれば、やっと規格開発のスタートラインに立てます。
・・・と、ここまでで既に ISO の独特の世界にお腹いっぱい・・・ですね。それでは、
規格開発の作業や他の話題についてはまたの機会に。
今回の略語集
ISO(アイ・エス・オー):国際標準化機構
JISC(ジスク):日本工業標準調査会
NP(エヌ・ピー):新規業務提案
O(オー)メンバー
P(ピー)メンバー
SC(エス・シー):分科委員会
TC(ティー・シー):専門委員会
WG:作業グループ(ワーキンググループ)
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