えひめ森林・林業振興プラン ~第5次愛媛県総合林政計画~ 案 平成 28 年 3 月 愛媛県農林水産部森林局 目 次 1 はじめに ・・・・・1 2 策定の趣旨 ・・・・・2 3 計画期間 ・・・・・3 4 森林・林業の現状と課題 ・・・・・4 5 基本理念と目指すべき森林のすがた ・・・・・10 6 目標 ・・・・・15 7 えひめ森林・林業振興プラン施策体系 ・・・・・16 8 取組項目と施策 ・・・・・18 も り (1) 森林づくり 1 多面的機能の高度発揮 2 持続的な森林経営・管理体制の構築 3 森林の環境保全等に関する研究と普及 (2) 人づくり 1 担い手の確保・育成 2 地域資源を利用できる人材の育成 (3) 地域づくり 9 1 木材需要の創出と利用拡大 2 川上から川下にわたる一体的な活性化 3 木材加工・利用技術の開発と普及 用語解説 ・・・・・18 ・・・・・25 ・・・・・30 ・・・・・35 1 はじめに 1 2 策定の趣旨 (1) 策定の趣旨 本県では、平成 23 年3月に、 「育てる時代から活用する時代へ ~健全な り 森林づくりと環境に優しい木材の利用拡大~」を基本理念とした第4次愛媛 県総合林政計画「えひめ森林・林業振興プラン」を策定し、充実しつつある 人工林資源を積極的に活用していくため、森林の整備から木材の生産・加工・ 流通・販売に至るまで、戦略的・総合的な取組を推進するとともに、愛媛県 産材のブランド化を推進し、国内外へ積極的に営業活動を展開するなど、県 産材製品の競争力強化と販路開拓に努めてきました。 しかし、計画期間中、消費税増税等に伴う木材需要増への供給力不足や、 木材需給のミスマッチによる木材価格の乱高下などの問題が顕在化するとと もに、間伐を主体とする素材生産量が伸び悩む一方、県内の木材加工業界で は、施設の規模拡大により増産を進めるほか、近隣県でも大規模木材加工施 設や木質バイオマス発電施設が整備されるなど、全国的に国産材需要が高ま ったことから、本県では平成 26 年度に「林業躍進プロジェクト」 (計画期間: 平成 26 年度から平成 30 年度)を創設し、間伐に加えて、主伐を計画的・段 階的に導入することで県産材を増産し、安定的・効率的な供給体制の構築を 図るなど、林業・木材等の関連産業の振興に取り組んでいるところです。 こうした中、これまでに林業躍進プロジェクトを実施して見えてきた課題 や、人口減少問題、2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開 催、COP21 パリ協定の温室効果ガス排出削減目標の達成などの国際的な動 向を踏まえ、本県の森林・林業・木材産業を取り巻く社会経済情勢の変化に 適確に対応するため、平成 28 年度から 32 年度までの5カ年間を計画期間と して、第5次愛媛県総合林政計画に当たる第2期「えひめ森林・林業振興プ ラン」を策定するものです。 も (2) 位置づけ 今回策定するプランは、 「愛媛の未来づくりプラン」 (第六次愛媛県長期計 画 計画H23~32 年)を上位計画として、前期プランを発展的に継承すると ともに、本県が目指す森林・林業・木材産業の振興と健全な森林づくりに関 し、これから取り組んでいくべき施策の方向性を示すものであり、具体的な 成果指標として、平成 32 年度の目標数値を掲げました。 また、前期に引き続き、えひめ森林・林業振興プランの目標を達成するた めの実行計画として、林業躍進プロジェクトを位置づけています。 2 第六次愛媛県長期計画 ~愛媛の未来づくりプラン~ 基本理念「愛のくに愛顔あふれる愛媛県」 長期ビジョン編 概ね10年後の目指すべき将来像やその基本的な考え方などを示したもの アクションプログラム編 将来像の実現に向けた4年間の施策の方向性などを示したもの 愛媛の農林水産業 共 通 方 針 ○農林水産業の「負のイメージ」(きつい、儲からない、厳しい)や生産者の将来に対する不安の払しょく ○次世代に継承できる、真に強い農林水産業の構築 共 通 指 標 え がお のう りん すい さん びと ■「えひめ愛顔の農林水産人データベース」登録人数:150人 ■農林水産業を職業として選択する高校生の割合等の増加 【基本理念】「林業の成長産業化と健全な森林づくり」 ~県産材の本格的な活用時代に向けて~ 目 指 す 目 標 【基本方向】 森林・林業を支える活力ある担い手等の確保・育成 人づくり 活力ある産業を育み暮らしを守る森林の創造 森林資源を利用した地域の振興 地域づくり 森林づくり 目標の達成に向けた取り組み ≪ えひめ森林・林業振興プランの目標を達成するための手段・手法 ≫ 【間伐に加えて主伐の段階的な導入】 林業躍進プロジェクトの目標 120ha(H26・36千m3)→600ha (H30・18万m3) ・森林資源の循環利用 ・山村地域の雇用拡大 ・県産材の加工流通の拡大・競争力の向上 素材生産量の拡大18万m3 650,000m 3/年(H30年度) 森林資源の循環利用による林業の成長産業化 3 計画期間 平成 28 年度から平成 32 年度まで(5カ年間) 3 4 森林・林業の現状と課題 (1) 森林・林業の現状 ① 森林資源 愛媛県の土地面積は約 568 千 ha で、そのうちの約 71%にあたる 401 千 ha を森林が占めており、こ のうち民有林面積は約 360 千 ha で約 90%を占めています。 また、民有林面積の約 61%の 林種別面積 本県の土地面積 本県の森林面積 うち民有林面積 うち人工林面積 ス ギ ヒノキ クヌギその他 う ち 天 然 林 う ち そ の 他 (平成27年12月末現在) 568千ha 401千ha 360千ha 221千ha 106千ha 109千ha 7千ha 126千ha 13千ha (土地面積の71%) (森林面積の90%) (民有林面積の61%) (人工林面積の48%) (人工林面積の49%) (人工林面積の3%) (民有林面積の35%) (民有林面積の4%) 原数を四捨五入したものを集計。したがって集計値は一致しないものもある。 資料:地域森林計画書 221 千 ha が人工林であり、その 民有林 人工林の齢級別面積 うち主伐期を迎える 51 年生(11 齢級)以上の森林が約 56%、124 千 ha となっています。 人工林の蓄積は、年々増加し ており、平成 27 年末で 83,284 千m3(377m3/ha) 、連年成長量 3 は 937 千m で、年間成長率は約 資料:地域森林計画書 1%となっています。戦後、植林されたスギ・ヒノキを中心に資源が充実 し、本格的な活用が可能な段階となり、10 年後には、51 年生(11 齢級) 以上の森林が人工林面積の8割を超えるという偏った齢級構成となってい ます。 ② 森林整備 森林整備面積 間伐については、保育(切捨) 間伐から、より労働力が必要とな る搬出間伐への転換を図ったこと から、 平成 26 年度で 5,027ha と減 少しています。 また、平成 26 年度からは、森林 資源の循環利用を推進するため、 林業躍進プロジェクトを立ち上げ、 資料:森林整備課 計画的・段階的な主伐導入と適切 な再造林等を推進し、県産材の増産と森林資源の更新を行っています。 4 ③ 林業経営体 在村・不在村別 森林所有面積 林業経営の主体である林業経営体のうち、約 56%が保有山林 10ha 未満の小規模経営体であ り、資本装備が困難な上に、生産性が低く、林 業離れの原因となっています。 また、 森林所有者の不在村化が進行しており、 近年では県外所有者も増えていることから、管 理委託等の新たな森林管理体制の構築が進めら れています。 資料:林業政策課 ④ 林業就業者・林業事業体 平成 16 年頃から、 機械化によ る就業環境の改善、各種担い手 対策の実施により、林業就業者 の減少には歯止めがかかってお り、横ばいで推移しています。 また、認定林業事業体は、平 成 26 年度末で 56 事業体と、森 林組合による森林集約化推進の 取組等により増加傾向にあります。 林業就業者数の推移と 60 歳以上の比率 資料:林業政策課 ⑤ 基盤整備 林道等は、効率的な林業経営や森 林道及び林内道路密度 (平成27年3月末現在) 林内道路密度 (平成 27 年3月末現在) 林の適正管理、木材の搬出、さらに 林内道路密度 (A+B) / C 16.9 m/ha は都市住民と森林とのふれあいを 林内道路延長 (A+B) 6,081 km 公道等 (A) 3,595 km 促進させるなど重要な役割を果た 林道 (B) 2,486 km しています。 民有林面積 (C) 359,890 ha これまで、林道整備事業等の着実 資料:林業政策課 な推進により、平成 27 年 3 月末現 在、林内道路延長は 6,081km、林内道路密度は 16.9 m/ha となっており、 全国平均の 15.8 m/ha をやや上回っています。 また、高性能林業機械の導入は、林業生産性の向上、林業の低コスト化 を図る上で非常に重要な要素となっています。 5 高性能林業機械の導入台数の推移 県内の導入状況は、年々増加傾 向にあり、平成 25 年度末には 238 台となっており、今後は、さらに 導入を進めるとともに、路網と高 性能林業機械を組み合わせた、効 率的な作業システムを構築する必 要があります。 資料:林業政策課 ⑥ 素材生産 平成 26 年度における本県の素材 生産量は約 530 千m3(全国 11 位) であり、平成 23 年以降、増加傾向 にあります。樹種別内訳は、スギ・ ヒノキが大半を占めており、その生 産量は、ヒノキ 198 千m3(全国:3 位) 、スギ 318 千m3(全国:12 位) となっています。 樹種別素材生産量の推移 資料:林業政策課 ⑦ 木材需要 県内の木材需要量は、平成 24 年から増加に転じ、平成 26 年は 871 千m3 となっており、 そのうち製材用が 729 千m3 と全体の 84%を占めています。 その他の用途としては、製紙用等に使われるパルプ・チップがあり、県 外に原木として移出されるものもあります。 また、県内からの原木供給が約 60%を占めており、近年、外材の入荷量 が減少しています。 資料:林業政策課 6 ⑧ 特用林産物の生産 特用林産物の中でも、乾し いたけ生産量は全国第4位 (平成 26 年)であり、山村地 域の重要な基幹作物となって います。 しかし、生産者の高齢化や 原木伏せ込み量の減少により、 今後の生産量の減少が予測さ 資料:林業政策課 れており、さらなる新規生産 者の確保と生産技術の向上による増産を図る必要があります。 も り ⑨ 森林づくり等への県民参加 近年の世界的な異常気象や地球温暖化など、環境問題に対する県民の関 心は高まっており、自発的な森林ボランティア活動による県民の森林づく りへの参加が定着してきています。 また、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として森林整備を行う「企 も り 業の森林づくり」 活動も広がっており、 社員教育だけでなく、地域住民との交 流を通じて、森林の重要性について広 く普及啓発が行われています。 さらに、小中学校においては、森林 の役割や重要性について、理解と関心 を深めるとともに、植栽、下刈り、枝 打ち等の体験等に取り組む「森林環境 森林ボランティアによる森林づくり活動 教育」が行われています。 も り ⑩ 県民の林業に対するイメージ 県民の方が林業に対してどのようなイメージを持っているか、平成 27 年 10 月に、県政モニター(131 名)と県内の農林水産関係学科に在籍する 高校3年生(752 名)にアンケート調査を行いました。 7 1 本県林産物で他県の人に自慢できるものはありますか? 県政モニターの6割以上、高校生にあって は約8割の方が「特にない」 、 「わからない」 と回答しており、全国有数のヒノキの産地 であること、県産ブランド材である「媛す ぎ・媛ひのき」、あるいは乾しいたけの主要 生産県である、といった認識は低い状況に あります。 2 転職や将来就きたい職業に林業は含まれますか? 県政モニターでは約 14%が林業に就業 することも視野に入れてもよいとして いますが、高校生では第一次産業への就 業が期待できる実業科の生徒であって も、約 5%しか林業を就業先の選択肢と して考えていない状況にあります。 3 林産物は国産が良いと思いますか? 県政モニター、高校生ともに、6割以上 の方が木材、乾しいたけ等の特用林産物 は国産が良いと回答していますが、今 後、県内で消費を伸ばしていくために は、地域の良質な林産物の普及に努めて いく必要があります。 4 本県の林業のために自分が貢献できる範囲のことはしたい(している)と思いますか? 県政モニターでは、「すでにやっている」 「やってみたいと思う」が半数に留まり、 高校生にあっては、3割に満たない状況で あり、県民共有の財産である森林をみんな で支える意識の醸成が課題と言えます。 8 (2) 森林・林業の課題 現状 課題 ◆ 人工林資源の充実 ◆ 伸び悩む素材生産量 ◆ 成長が見込めない放置 森林の増加 ◆ 偏った森林資源構成 ◆ 森林所有者の不在村化 ◆ 公益的機能への関心の 高まり ○ 木材の増産・生産性向上のため の基盤づくり ○ 森林資源の循環利用に向けた 適正な伐採と更新 ○ 持続的な森林経営・管理体制の 構築 ○ 発揮を期待する機能に応じた 森林への誘導・保続 ◆ 林業の担い手数は横ば い、 事業体数は増加傾向 ◆ 林業は就業先としての 選択肢にない ◆ 林業という職業を知ら ない ◆ 森林づくり活動への関 心の高まり ○ 新たな担い手・事業体の確保・ 育成 ○ 林業事業体の経営基盤の強化 ○ 林業の負のイメージ払しょく ○ 県民に森林・林業を正しく理解 してもらう取組 ○ 林業・木材産業等を支える技術 者の確保・育成 ○ 森林ボランティアリーダーの 確保・育成 ○ 森林づくり活動に参画しやす い体制の整備 ◆ 県産材需要が高まる一 方、人口減少社会到来 による住宅需要の減少 予測 ◆ 不安定な木材供給体制 ◆ 農山村地域における過 疎化・高齢化の進展 ◆ 乾しいたけ生産量の減少 ○ 新たな木材需要の創出と利用 拡大 ○ 森林認証を付加するなど県ブ ランド材の販売力強化 ○ 県産材の安定的・効率的な供 給体制の構築 ○ 特用林産物と他の農林水産物 との複合経営による所得向上 9
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