CONTENTS (概要)

TELECOM
FRONTIER
NO.90 2016 WINTER
CONTENTS
音声ユビキタス情報環境実現のための次世代音声技術基盤の検討
徳田 恵一 名古屋工業大学大学院 教授
音声は、人間にとって最も基本的なコミュニケーション手段であるということから、
音声対話システムを含む音声インターフェースの実用化を目指し、これまでに長い間、
研究開発が続けられてきたが、実社会における音声インターフェースの広い普及には未
だ至っていない。音声特有の生き生きとしたインタラクティブ感のあるやりとりは、手
による操作を主とする従来型のインターフェースでは実現することができない音声イ
ンターフェースの固有の「魅力」の一つであるが、未だ広く普及していない原因の一つ
に、音声ならではの「魅力」を最大限に活かした音声対話コンテンツを十分に提供する
ことができていない点が考えられる。そのため、音声インターフェースの「魅力」の解
明と、それを実現するシステムがどのような要件を具備すべきかを解明することが必要
になるが、「魅力」というものは容易に評価できるものではなく、人間が持つ感性や知
見の積み重ねによって創られていくものである。
本稿では、ユーザが音声対話コンテンツを容易に作成する仕組みを確立し、ユーザが
大量の音声対話コンテンツを生成・評価する中から、帰納的にその本質を探究する試み
について紹介する。
言語で推論し音声で対話応答する個人秘書システムの開発
原田 実 青山学院大学 理工学部 情報テクノロジー学科 教授
言語処理と人工知能技術を用いて、音声で対話できる個人秘書システム Hermes を開
発した。Hermes は、秘書が行うような、備忘録とその内容検索、質問応答、単純な調
査、簡単なアプリの起動、雑談などを、音声により対話的に行うことができる。
Hermes は、話し手の意図を、発話中の主たる述語のモダリティと語意の組み合わせ
によって、要求・質問・禁止・表明・叙述の 5 種に分類する。Hermes は意図ごとに定
められた行為を実行することでユーザの求めに応じる。「質問」に対しては、質問応答
システム Metis を利用し、対話記録を知識源とした質問応答と、新聞・Web を知識源
とした質問応答によって、ユーザに回答を提示する。「要求」に対しては、その語意に
よって応じて、スケジュール管理や道案内などのアプリの起動を行う。発話意図が「表
明」の場合は、これを発話者の意見の表明と考え、ツイッターを知識源にして、これか
ら発話者の意見と部分的に類似しているが、さらに話題の展開がある意見を検索し、こ
れをもとに応答を返す雑談を行う。さらに、「質問」の中でも、知りたい対象の要件を
満たすものが複数あり、さらにこれらの対象について複数の属性を知りたい時には、調
査結果を表形式で回答する表応答を行う。
1
TELECOM
FRONTIER
NO.90 2016 WINTER
CONTENTS
トポロジカル絶縁体表面における微視的電子・スピン輸送計測
-デバイス応用に向けて平原 徹 東京工業大学大学院 理工学研究科 准教授
エレクトロニクスの発展として、電子の持つスピンを利用した高機能デバイス作成を
目指すスピントロニクスが基礎・応用両面から盛んに研究されている。本研究の目的は、
Rashba・トポロジカル表面において電流を流すことにより発現するスピン偏極を検出
することである。このために新しいナノスケール実験手法・装置開発を行い、それを用
いた表面状態の電子・スピン輸送計測を行った。その結果、スピン輸送に起因すると見
られる信号の検出に成功した。これは表面での電子・スピン伝導現象を検出した重要な
基礎研究であるとともに、実際のデバイス応用に向けた重要な一歩と言える。
光パケット・光パス統合ネットワーク
原井 洋明 情報通信研究機構 光ネットワーク研究所 ネットワークアーキテクチャ研究室 室長
和田 尚也 情報通信研究機構 光ネットワーク研究所 フォトニックネットワークシステム研究室 室長
サービス多様化、高速・エネルギー効率化が求められる新世代ネットワークの基幹部
分への展開を目指し、我々は光パケット・光パス統合ネットワークの研究開発を行って
いる。開発した 100Gbps 級光パケット・光パス統合ノード、ダークファイバを用いて
構築し、インターネットへも接続した光ネットワークテストベッド、ネットワークシス
テムの SDN への対応等、得られた成果を紹介する。
2