法と社会科学をつなぐ飯田高 2016 年 2 月発売／316 頁／本体 2100 円＋税四六判／並製寿司 –200，600 ※各セルの左側の数字はあなたの利益，右側の数字は友人の利益寿司 600，–200 0，0 ずつとなる。一四〇〇円＝六〇〇円分の得になる。－まず、友人がそばを選ぶと仮定しよう。すると、あなたがそばを選んだ場合、前述のとおりあなたは一二〇〇円八〇〇円＝四〇〇円分の得をすこの例では、それぞれの人が自分にとって最良の選択を行うと、全体としては最良でない非効率な状態に陥る。お互いに利益になる状態があるのり、両方が寿司を注文するのは非効率なのである。ばを選んだときには「パレート改善」し、「効率的」な状態になる。つまところが、仮に両方がそばを選んでいれば、あなたも友人も四〇〇円分の得をしていたはずである。⑤で登場した用語で表現すると、どちらもそを注文することになり、満足度はどちらもゼロとなる。友人も自らの満足度をできるだけ大きくしたいと思っていれば、おそらくあなたと同じように考えるだろう。というわけで、あなたも友人も寿司選ぶとしてもあなたは寿司を選ぶのがよい」という結論になる。。このときもやはり寿司を選んだほうがよく、結局「友人がどちらを円）－一四〇〇円）、寿司を選ぶとプラスマイナスゼロになる（二〇〇〇円二〇〇〇仮定してみる。あなたはそばを選ぶと二〇〇円分の損をし（一二〇〇円－よって、寿司を選んだほうが満足度は大きい。次に、友人が寿司を選ぶとる。寿司を選んだ場合は二〇〇〇円－似たような問題が至るところで発生しうるというのは昔から何となく気づかれていたが、明確にゲームの形で問題状況が示されたのは第二次大戦直後のことだった。アメリカ・ランド研究所のメ囚人のジレンマの構造）である。ンマ（ prisonerʼs dilemma にもかかわらずそれが実現しないかもしれない ―― こういう状況を端的に示すモデルが囚人のジレ友人；；）とメルヴィン・ドレッシャー（ Melvin Dresher 1911リル・フラッド（ Merrill Flood 1908-1991 ）という二人の数学者がその生みの親、そして同研究所顧問の数学者アルバート・タッカー 1992 （ Albert Tucker 1905-1995 ）が名付け親である。「囚人のジレンマ」の名称は、タッカーがこの；ゲームを説明するために用いた逸話にちなんでいる。逸話の細部は時代が下るにつれ変化してきた）。が、よく知られるのは次のバージョンであろう（ Luce and Raiffa 1957 そこで、この検察官は各被疑者に「黙秘」「自白」の二つの選択肢を示す。双方とも黙秘すれば軽（囚人ではない）ＰとＱが別々の取調室に入れられている。検察官は二人が重罪を二人の被疑者犯したのだろうと思っている。だが、裁判にかけて重罪で有罪にできるほどの十分な証拠はない。い罪で起訴するしかないため、それぞれ一年ずつの懲役となる。もし一方が黙秘して他方が自白すれば、自白した被疑者は証拠を提供してくれたという理由で三か月の懲役に減軽され、反対に、黙 ⑦囚人のジレンマ ―協力と裏切りのしくみ― そば 400，400 あなた）を追加し，全 6 章構成としま制度」をまとめた書籍です。単行本化にあたって，3 節分（⑱・⑳・第２章　複数の個人の意思決定　066 067 って人々の幸福を増進する”という大きな共通法学もその他社会科学も“より良い社会をそば秘した被疑者は懲役一〇年の判決を受けることになる。そして両方とも自白した場合は八年ずつの Mar. 2016 No.426 法学教室 80 みなさんは，他学部所属（出身）の人と話をしたときに，物の考え方や表現の仕方が違うことに戸惑った経験はありませんか？編集担当者から一般法務法曹 LS 学部教養学習初級の目的を目指しています。向かう目的地が同じならば，いろいろなルート（物の見方や考え方）を知っておくことに損はありません。本書は，社会科学（経済学，社会学，心理学など）における概念を題材に，社会科学と法の世界との接点を探っていくことで，みなさんに法学・法解釈学とは違ったルートを紹介します。本書は，本誌 391 号∼ 414 号に連載された「法の世界へのバイパスルート――社会科学からみる法した。各章にイントロダクションや結語を付けることで書籍としての流れも意識しました。経済学や社会学などの知識がなくとも，丁寧な解説と具体例でどんどん読み進めることができます。通学・通勤中のお供に是非。（鈴木）具体例がふんだんに。難しい数式は出てきませんのでご安心下さい。