耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物

耽美 華麗 悪 魔主 義
谷崎潤一郎文学の着物を見る
ち
蓼喰ふ虫(たでくうむし)
谷崎の離婚を元にした作品
妻譲渡事件の真相
2016 年・春
弥生美術館
企画展プレスリリース
アンティーク着物と挿絵の饗宴
2016 年 3 月 31 日(木)
~6 月 26 日(日)
千代は文学者・佐藤春夫と再
婚することになったが、はじ
めは理解を示していた谷崎が
突然それを拒否したため、佐
藤が激怒した。(小田原事件)
その後千代はやはり谷崎公認
のもと、後の探偵小説家・大坪
砂男と交際して結婚話が出た
が実現せず、結局は佐藤と再
婚して一生を添い遂げた。そ
の際、三人の連名で挨拶状を
出したため「妻譲渡事件」と世
間が騒いだ。
「蓼食う虫」には、なかなか離
婚に踏み切れない谷崎の姿が
描かれている。
小出楢重/挿絵『毎日新聞』昭
和 3 年【図 10】
谷崎の最初の妻・千代と娘の
鮎子。
谷崎はおとなしい千代
より、
その妹で奔放なせい子
に魅かれた。文学者の佐藤春
夫や大坪砂男が千代に同情
して思いを寄せるようにな
り、
谷崎も彼等との交際を公
認した。【図 11】
家庭がありながら、恋人に会いに行く美
佐子は、前時代の封建制から脱却し、新
時代を生き始めた女性の自我を感じさ
せる。妻に佐藤や大坪と交際することを
認めた谷崎も、古い倫理観にしばられ
ず、独自の考えを貫く人だった。
「華やかな当世風の奥様らしい装い」と
記述された美佐子の着物は、黒と煉瓦色
の変わり縞に大きな輪が染められた紋
綸子を想定、ビルとバラの帯で昭和初期
のモダンな雰囲気をあらわした。
上【図 12】・下【図 13】
展
覧 谷崎作品の中から
会 「細雪」
「鬼の面」
「月の囁き」
「神と人との間」
「肉塊」
「痴人の愛」
「黒白」
「蓼食う虫」
「乱菊物語」
の 「春琴抄」
「夏菊」
「聞書抄」
「鍵」
「台所太平記」
「刺青」
「秘密」
「お才と巳之介」
「猫と庄造と二人の
をんな」
「友田と松永の話」
「富美子の足」
「瘋癲老人日記」
について、挿絵とともにあらすじを紹介し、ヒロインの着物姿を再現。
※この中には挿絵のない作品や、着物を展示しない作品も含まれています
構
成
展
覧
会
の
細雪の登場人物のモデルになった女性たち。右か
ら松子(谷崎の三度目の妻)その娘の恵美子、妹
の信子と重子
【図 1】
ら
す
じ
を
紹
介
し
、
ヒ
ロ
イ
ン
の
着
物
姿
を
再
現
し
ま
す
。
他
に
も
20
あ
ま
り
の
作
品
を
選
ん
で
挿
絵
と
と
も
に
あ
て
考
察
し
、
ご
覧
い
た
だ
き
ま
す
。
は
ど
の
よ
う
な
着
物
を
想
定
し
て
い
た
の
か
を
、
あ
ら
た
め
わ
り
な
い
着
物
が
用
い
ら
れ
て
き
ま
し
た
。
本
来
谷
崎
自
身
る
人
が
多
い
よ
う
で
す
が
、
そ
こ
で
は
小
説
の
描
写
と
は
関
や
舞
台
に
出
演
す
る
女
優
の
、
華
や
か
な
着
物
姿
に
惹
か
れ
着
物
フ
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ン
が
バ
イ
ブ
ル
の
よ
う
に
読
む
作
品
で
す
。
映
画
数
多
い
谷
崎
作
品
の
中
で
も
「
細
雪
」
は
ア
ン
テ
ィ
ー
ク
手
が
か
り
に
再
現
し
て
お
見
せ
し
ま
す
。
を
、
文
章
や
挿
絵
、
モ
デ
ル
に
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っ
た
女
性
た
ち
の
写
真
を
こ
の
展
覧
会
で
は
、
谷
崎
作
品
の
ヒ
ロ
イ
ン
た
ち
の
着
物
作
品
で
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る
文
学
者
で
す
。
谷
崎
潤
一
郎
は
「
細
雪
」
「
痴
人
の
愛
」
「
春
琴
抄
」
等
の
細雪(ささめゆき)
戦前の豊かな情趣を、戦時
下、軍に睨まれながら執筆
① 着物の生地や色をあらわす言葉が、現代人にはわかりにくくなっています。アンティーク着物の
専門家である大野らふ氏がそれを解読し、谷崎が想定したであろうヒロインの姿に迫ります。
見 ② 今では目にする機会の少ない挿絵を集め、20 作品以上の谷崎文学を紹介します。
ど
こ ③ 生誕 130 年を記念して各地で谷崎潤一郎展が開催されますが、本展は特にビジュアル面を重視。
ろ 一冊も谷崎作品を読んだことのない人でも楽しむことができます。
本展はクラウドファンディング「Makuake」で資金の支援をお願いしております。 https://www.makuake.com/project/yayoi-yumeji-museum/
幸子のモデルで谷崎の妻・松子
左は松子の着物にそっくりな
斜め格子の紋錦紗
左より【図 2】・【図 3】・【図 4】
弥生美術館
痴人の愛(ちじんのあい)
ち
ヒロイン・ナオミの最先端ファッション
ナオミが音楽や英語を
習いに通ったスタイル。
銘仙の着物の上に
紺のカシミアの袴
をつけ、黒い靴下
に可愛い小さな半
靴を穿き、すっか
り女学生になりす
まして
※斜体の字は谷崎の
文章を抜粋した箇所
譲治はナオミが美しくなるにつれ、崇拝し、わがま
ま放題にさせる。ナオミは増長して暴君のようにな
る。ナオミに馬のりにされこづきまわされたりする
が、譲治は嬉々として彼女の言いなりになるのであ
った。マゾヒスト・谷崎ならではの展開。
岩田専太郎/挿絵『りべらる』昭和 25 年 【図 7】
【図 6】
谷崎潤一郎 生誕130年
2015 年は谷崎潤一郎没後 50 年、2016 年は谷崎
潤一郎生誕 130 年にあたり、この 2 年間は「谷
崎イヤー」として、各地で関連の催し物が計画
され、共通のロゴを用いて連携しながら谷崎文
学の継承が行われます。
これを機に谷崎作品に触れた方は、その作品世
界のユニークさ、華麗さに驚かれることでしょう。
発表当時は何かと物議をかもすことが多かった
谷崎作品ですが、現代人ならこだわりを持たず
に、興味深くおもしろく読めるはずです。着物という鍵を
あけることによって谷崎文学の扉が大きく開かれ、より多
くの方々に楽しんでいただけるようになりましたら幸いです。
左の絵にそっくりな水玉
模様の銘仙。
彼女はそれを素肌に
纏うのが癖でしたから
と、襦袢を着ない主義の
ナオミらしい着付け。兵
児帯を前で結ぶのもナオ
ミスタイル。 【図 8】
ジョーゼット地の着物。本来洋服の生
地であるジョーゼットを単衣に仕立
てることが流行ったことがあったが、
あれに初めて目をつけたのは
私たちではなかったでしょうか。
という記述が「痴人の愛」にある。自
分自身が着道楽だったというおしゃ
れな谷崎は女性ファッションの動向
にも敏感だった。
【図 9】
N
H
K
「
美
の
壺
」
で
は
〈
卒
業
式
の
着
物
〉
を
紹
介
し
注
目
さ
れ
た
。
着
物
ス
タ
イ
リ
ス
ト
と
し
て
も
雑
誌
、
展
覧
会
、
講
座
等
で
コ
ー
デ
ィ
ネ
ー
ト
を
披
露
。
2
0
0
3
年
、
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ン
テ
ィ
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着
物
店
「
ス
タ
イ
リ
ン
グ
✦
大
野
ら
ふ
Ponia-pon
ナオミのモデルは、谷崎の最初の妻・千代
の妹のせい子。妖婦型の性格と混血児のよ
うな容貌が谷崎を惹きつけた。
「痴人の愛」の主人公・譲治はカフェーの
女給だったナオミを引取り、どこに出して
も恥ずかしくない女性に育てあげ、将来は
自分の妻にするつもりで学校に通わせる。
しかしナオミは、自由奔放になり過ぎ、主
人公を悩ませる。彼女の気ままな生き方は
ナオミズムと呼ばれ、モダンガールの先駆
け的な存在となった。
【図 5】
著
書
に
『
大
正
ロ
マ
ン
着
物
女
子
服
装
帖
』
、
『
ア
ン
テ
ィ
ー
ク
着
物
ス
タ
イ
ル
ブ
ッ
ク
』
が
あ
る
。
(
ポ
ニ
ア
ポ
ン
)
を
オ
ー
プ
ン
。
展覧会の概要
展覧会名
耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る
~アンティーク着物と挿絵の饗宴~
会
場
弥生美術館
会
期
2016年3月31日(木)~6月26日(日)
開館時間
午前10時~午後5時(最終入館:午後4時30分)
展示総数
キモノ約 30 点。挿絵 100 点(挿絵は複写による展示を含む)
。
住所・tel 〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3 03-3812-0012
休
館
月曜日(ただし4/19~5/8の間は無休)
料
金
一般900円 大高生800円 中小生400円
(隣接する竹久夢二美術館と二館併せての料金。高畠華宵の常設ルーム見学料金も含む)
交
通
東京メトロ千代田線根津駅 or 南北線東大前駅共に徒歩7分
JR上野駅公園口・しのばず口より徒歩20分(東京大学 弥生門斜め前)
ギャラリートーク 4月16日(土)11時~、5月8日(日)14時~、6月18日(日)14時~
オープニング・イベント開催
4月2日(土)18時~
着物をスタイリングした大野らふ氏と担当学芸員に
よる解説のほか、着物女子たちが谷崎をテーマに、
自分たちなりのコーディネートを披露してくれます。
ぜひ取材をお願いします。
展覧会のお問い合わせは
弥生美術館 学芸員 中村圭子
までお願いします。
スタイリング:大野らふ(Ponia-pon)
写真撮影:大橋愛
特別協力:Ponia-pon/中央公論社/アンティーク着物同好会/セツ・モードセミナー/LUMCO
桐生雅子銘仙コレクション/うさぎや/灯屋 2/田中翼(Wing)/株式会社 QP/ICHIROYA
TEL
FAX
03-3812-0012
03-3812-0699
FAX 03-3812-0699
弥生美術館 中村
行
「谷崎潤一郎文学の着物を見る」展
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図 1
「細雪 モデルの女性たち」写真 昭和 15 年
谷崎潤一郎/撮影
図 2
「斜格子の紋錦紗」着物後ろ姿
図 3
「斜格子の紋錦紗」着物前上半身
図 4
「谷崎の妻・松子」写真
図 5
「ナオミのモデル・せい子」写真 大正 13 年頃 浜本浩/撮影
図 6
「ナオミの袴姿」
図 7
「痴人の愛」岩田専太郎/挿絵 『りべらる』昭和 25 年 5 月号
図 8
「水玉模様の銘仙」
図 9
「ジョーゼットの着物」
図 10
「痴人の愛」小出楢重/挿絵
『大阪毎日新聞』『東京日日新聞』
昭和 3 年
図 11
「谷崎の最初の妻・千代と、娘・鮎子」写真
図 12
「蓼喰う虫 美佐子の着物」
図 13
「蓼喰う虫 美佐子の帯」
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通信欄
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お願い申し上げます。
〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3
鹿野出版美術財団 弥生美術館
中村圭子宛
℡03-3812-0012