null

初心者脱出
不確かさ評価セミナー
産業技術総合研究所 計量標準総合センター
田中秀幸
1
不確かさの求め方(初心者)
測定結果にばらつ
きを与える要因を
挙げる。
標準偏差で表され
た,各不確かさ要
因によって引き起
こされるばらつき。
「感度係数」を掛ける
ことによって,最終結
果と同じ単位で表さ
れた標準不確かさ。
最終的な測定結果
のばらつきの平均値
を表す。
合成標準
不確かさ
不確かさ要因
標準不確かさ
標準不確かさ
不確かさ要因
標準不確かさ
標準不確かさ
不確かさ要因
標準不確かさ
不確かさ要因
標準不確かさ
標準不確かさ
不確かさ要因
標準不確かさ 標準不確かさ
標準不確かさ
ばらつきの
大きさを求める。
ばらつきは「標準偏差」によっ
て表される。「標準偏差」とはい
わばばらつきの平均値のこと。
各標準不確かさは
,評価されたものに
よっては単位が異
なるので,最終的な
測定結果の単位に
すべてそろえる。
例えば長さ測定において,温度の不確かさ要因があっ
た場合,標準不確かさの単位は温度であるので,「このく
らい温度がばらつけば,長さはどのくらいばらつくのか
?」ということを考える必要がある。
各標準不確かさを
合成する。合成す
るときには「二乗和
の平方根」を用い
る。
最終的な測
定結果が含
まれるであ
ろう区間を
表す。
拡張不確かさ
合成標準不確かさに包含係
数(通常2)を掛けて求める。
2
例
• ある居酒屋で出されるビールジョッキにはここまで
入れるというラインが付いている。そのラインまでの
量をメスシリンダーで10回測定しその平均値をその
居酒屋で出される大ジョッキの体積とする。
• また,測定時の温度は5 ℃で行う。
この例を用いて,不確かさの算出について考える。
3
例:不確かさの要因の特定
• 測定の繰返し性:uR(v)
• 標準器の校正の不確かさ(メスシリンダーの
校正の不確かさ):uS(v)
• 温度による効果:u(t)
• 体膨張係数の不確かさ等その他の不確かさ
要因は影響が小さいので無視する。
4
例:不確かさの要因の特定
記号
不確かさ要因
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(V)
U
標準不確かさ
感度係数
標準不確かさ
(出力量の単位)
備考
温度による
効果
合成標準不確か
さ
拡張不確かさ
5
例:タイプA評価
• メスシリンダーでビールジョッキに入れられた液体の
体積を繰返し測定を行い次のデータを得た。
1
632
6
636
2
629
7
633
3
639
8
637
4
635
9
634
5
627
10回目
633
(単位:mL)
平均値:633.5 mL
実験標準偏差:3.598 mL
平均値の実験標準偏差:uR(x)=1.138 mL
6
例:タイプA評価
記号
不確かさ要因
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(V)
U
標準不確かさ
感度係数
標準不確かさ
(出力量の単位)
備考
1.138 mL
温度による
効果
合成標準不確か
さ
拡張不確かさ
7
例:タイプBの不確かさ
• 標準器の校正の不確かさに相当する,メスシリンダー
の校正の不確かさは,校正証明書より3.0 mL。
校正証明書を用いる場合,確率分布
は正規分布である。
校正証明書にある拡張不確かさを2(包含係数)で
割ることにより標準偏差(標準不確かさ)が求めら
れる。
3.0
uS  x  
2
 1.5 mL
8
例:タイプBの不確かさ
• 温度による効果は,温度を測定している温度計が
最小目盛り1 ℃のデジタル温度計を用いているため
,±0.5 ℃で温度が分からない。
±0.5 ℃の範囲内では,どこでも同じ確率で現れるので,
矩形分布を仮定
温度による効果は,矩形分布を仮定しているので、
分布の半幅を√3で割ることにより標準偏差が求めら
れる。
0.5
u t  
 0.288 7 o C
3
9
例:タイプBの不確かさ
記号
不確かさ要因
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(V)
U
温度による
効果
標準不確かさ
感度係数
標準不確かさ
(出力量の単位)
備考
1.138 mL
1.5 mL
0.288 7 ℃
合成標準不確か
さ
拡張不確かさ
10
例:感度係数
• この液体の体膨張率・・・5.23×10-3 ℃-1
• この液体の体積・・・633.5 mL
このとき,液体の温度を体積に変換するための感度係数は,
体膨張率×体積  5.23  10
3 o
C  633.5 mL
-1
 3.313 mL/ C

感度係数
11
例:感度係数
記号
不確かさ要因
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(x)
U
温度による
効果
標準不確かさ
感度係数
標準不確かさ
(出力量の単位)
1.138 mL
1
1.138 mL
1.5 mL
1
1.5 mL
0.288 7 ℃
3.313
mL/℃
0.956 5 mL
備考
合成標準不確か
さ
拡張不確かさ
12
例:不確かさの合成・拡張
バジェットシート
記号
不確かさ要因
標準不確かさ
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(V)
U
温度による
効果
合成標準不確か
さ
拡張不確かさ
感度係数
標準不確かさ
(出力量の単位)
備考
1.138 mL
1
1.138 mL
1.5 mL
1
1.5 mL
メスシリンダーの校正
証明書より
0.288 7 ℃
-3.313
mL/℃
0.956 5 mL
温度計のデジタル表
示の不確かさ。
分解能1℃
繰返し回数は10回
2.112 mL
4.2 mL
包含係数はk=2
ビールジョッキの体積
633.5 mL±4.2 mL, k=2
13
なぜこの評価法はダメなのか
• 簡単な事例では,感度係数は先ほど説明し
たような方法で求まるが,複雑な測定では,
感度係数が求まらないことがある。
I:電流
V:電圧
抵抗Rと電圧Vから電流Iを求める測定
において,抵抗が不確かさを持つ場合,
抵抗を電流に変換する感度係数は?
V
R:抵抗 I 
R
モデル式を用いた評価は,この場合でも対応できる。
14
不確かさの求め方(初心者脱出)
1:測定のモデル式を構築
5:測定のモデル式か
ら感度係数を算出
測定のモデル式
y  f  x1 , , xn 
2:測定結果にばら
つきを与える要因を
列挙
不確かさ要因
不確かさ要因
不確かさ要因
不確かさ要因
不確かさ要因
6:「不確かさの伝播
則」による不確かさ
の合成と拡張不確
かさの算出
x1に作用
x2に作用
xnに作用
3:各不確かさ要因がモデル式の
どの変数のばらつきなのかを特定
4:各不確かさ要因によって引き起こ
されるばらつきの評価
x1の標準
不確かさ:
u(x1)
x2の標準
不確かさ:
u(x2)
xnの標準
不確かさ:
u(xn)
掛
算
掛
算
x1の
感度係数
合成
x2の 合
感度係数 成
xnの
掛
算 感度係数
合成標準
不確かさ
uc(y)
合成
拡張不確
かさ:U
15
1:測定のモデル式を構築
16
測定のモデル式とは?
• 測定のモデル式とは,測定結果を算出すると
きに用いる,測定された値と,測定結果の間
の関係を数式で表わしたもの。
例えば,
棒の長さをものさしで測定する。
この場合は,ものさしの指示値がそのまま
棒の長さであると考えられるので,
L:棒の長さ
Lr
となる。
r:ものさしの指示値
17
測定のモデル式とは?
抵抗に流れている電流を求める。
電流をIとすると,
V:電圧
R:抵抗
モデル式
V
I
R
18
例:測定のモデル式
• ある居酒屋で出されるビールジョッキにはここまで
入れるというラインが付いている。そのラインまでの
量をメスシリンダーで10回測定しその平均値をその
居酒屋で出される大ジョッキの体積とする。
• また,測定時の温度は5 ℃で行う。
V  x   x(t  5)
V:ビールジョッキの体積(mL)
x:メスシリンダーの読み値 (mL)
t:測定時の温度(℃)
:用いる液体の体膨張係数(℃-1)
19
数式・数字の表記方法
変数については,アルファベット(ギリシャ文字)のイタリックを用い
る。フォントはTimes New Romanがよい。
例:電流・・・I,温度・・・t 密度・・・ρ 等(I, t,ρとは書かないように)
添え字に関しては,添え字も変数の場合はイタリック,添え字は変
数ではなく識別のために付けてあるなら立体にする。
例:
i番目の測定結果・・・xi(iは変数)
被試験物の温度・・・tDUT(DUTはDevice Under Testの略)
ベクトルを表す文字は,小文字のボールド体,行列を表す文字は,
大文字のボールド体を用いる。
17  1 2  5 
例:    
 6 
39
3
4
  
 
y = Ax
17 
y 
39 
5 
x 
6 
1 2 
A

3
4


20
数式・数字の表記方法
単位は立体で書く。数値に単位を付ける場合は,数値と単位の間
にスペースを入れる。
例:
123 mm, 15.3 %
3桁ごとの区切りはスペースを用いる。
例:
1 234.567 89 s,(1,234.56と書いてはいけない。小数点をピリ
オドとする国とコンマとする国が両者あるため。)
21
参考:統計で用いる文字について
標本を表すもの:アルファベット
母集団の性質を表すもの(母数):ギリシャ文字
ギリシャ文字の上に「^」(ハット)が付くもの:推定値
i番目の測定結果: xi
標本平均: x
標本分散: s2(x)
標本標準偏差: s(x)
母平均: 
母分散: σ2
母標準偏差: σ
標本平均を母平均の
推定値とする:
ˆ  x
22
2:測定結果にばらつきを
与える要因を列挙
23
不確かさ要因
• 不確かさ要因はどのようにして決定すればよ
いのでしょうか?
最も基本的な方法→特性要因図
特性要因図とは・・・QC7つ道具の一つ。ばらつきを
与える要因を図示することによって分かりやすくする。
フィッシュボーンダイアグラム,フィッシュボーンチャー
ト,魚の骨図,イシカワダイアグラムなど,様々な呼び
方がある。
24
特性要因図
棒の長さをものさしで測定する。
Lr
L:棒の長さ
r:ものさしの指示値
ものさしの指示値:r
長さ測定の繰返し
ものさしの校正の不確かさ
棒の長さ:L
25
特性要因図
抵抗に流れている電流を求める。
モデル式
V
I
R
電圧:V
電圧測定の繰り返し性
電圧計の校正の不確かさ
電流:I
抵抗の校正の
不確かさ
抵抗:R
26
例:特性要因図
• モデル式
V  x   x(t  5)
液体の体積:x
体積測定の繰返し
メスシリンダーの
校正の不確かさ
温度による
不確かさ
ビールジョッキ
の体積:V
体膨張係数の
不確かさ
温度:t
体膨張率:
27
3:各不確かさ要因がモデル式の
どの変数のばらつきなのかを特定
28
不確かさの要因を考える
不確かさの要因を考え,その考えた不確かさの
要因が作成したモデル式のどこに作用するの
かを考える。
棒の長さをものさしで測定する。
モデル式
Lr
不確かさ要因
・測定の繰返し:uR(r)
・ものさしの校正の不確かさ:uS(r)
両方とも
rに作用する。
29
不確かさの要因を考える
棒の長さをものさしで測定する。
Lr
L:棒の長さ
r:ものさしの指示値
ものさしの指示値:r
長さ測定の繰返し
uR(r)
ものさしの校正の不確かさ
uS(r)
棒の長さ:L
30
変数の文字の付け方
棒の長さをものさしで測定する。
モデル式
Lr
不確かさ要因
・測定の繰返し:uR(r)
・ものさしの校正の不確かさ:uS(r)
両方とも
rに作用する。
標準不確かさはu()で表す。括弧の中には,その
不確かさ要因が影響している変数を入れる。複数
の不確かさ要因が同じ変数に影響を与えるときに
は,uに添え字を付け,区別する。
31
不確かさの要因を考える
抵抗に流れている電流を求める。
モデル式
V
I
R
不確かさ要因
・電圧測定の繰返し:uR(V)・・・V
・電圧計の校正の不確かさ:uS(V)・・・V
・抵抗の校正の不確かさ:u(R)・・・R
32
不確かさの要因を考える
抵抗に流れている電流を求める。
モデル式
V
I
R
電圧:V
電圧測定の繰返し:uR(V)
電圧計の校正の不確かさ: uS(V)
電流:I
抵抗の校正の
不確かさ: u(R)
抵抗:R
33
例:不確かさの要因を考える
• モデル式
V  x   x(t  5)
不確かさ要因
・体積測定の繰り返し:uR(x)・・・x
・メスシリンダーの校正の不確かさ:uS(x)・・・x
・体膨張係数の不確かさ:u()・・・
・温度による不確かさ:u(t)・・・t
34
例:特性要因図
• モデル式
V  x   x(t  5)
液体の体積:x
体積測定の繰り返し: uR(x)
メスシリンダーの校
正の不確かさ: uS(x)
温度による不
確かさ: u(t)
温度:t
ビールジョッキ
の体積:V
体膨張係数の
不確かさ: u()
体膨張率:
35
4:各不確かさ要因によって
引き起こされるばらつきの評価
36
それぞれの変数の不確かさを求める
どの不確かさ要因が,どの変数に作用するの
かを切り分けたので,それぞれの変数の不確
かさを求める。
棒の長さをものさしで測定する。
モデル式 L  r
不確かさ要因
両方とも
・測定の繰返し:uR(r)
rに作用する。
・ものさしの校正の不確かさ:uS(r)
2
2
2
u  r   uR  r   uS  r 
37
それぞれの変数の不確かさを求める
抵抗に流れている電流を求める。
モデル式
V
I
R
不確かさ要因
・電圧測定の繰返し:uR(V)・・・V
・電圧計の校正の不確かさ:uS(V)・・・V
・抵抗の校正の不確かさ:u(R)・・・R
u 2 V   uR2 V   uS2 V 
u2  R
38
例:それぞれの変数の不確かさを求める
モデル式
V  x   x(t  5)
メスシリンダーの読み値の不確かさ
u
2
 x  u  x  u  x
2
R
2
S
温度による不確かさ
u t   u t 
2
2
体膨張係数の不確かさ
u    0
2
39
5:測定のモデル式から
感度係数を算出
40
感度係数
今まで行ってきたことで,各変数の不確かさ
の大きさを求めることができた。
次にこの各変数の単位が測定対象量の単
位と同じでないものがあるため,それぞれを
測定対象量の単位に変換する。
感度係数を用いる。
41
感度係数
1辺の長さがxである正方形の面積S
モデル式
Sx
2
S
これをどうやって
求めるのか?
Sの単位に
変換された
u(x)
u(x)
x0
x
42
感度係数
x
y  x2
 u  x 
2
0
x
2

u
x

x



0
0
2
0
x
x
0
2
 u  x  2 x0  u  x 
u  x  2 x0  u  x 
 u  x 
2
u(x)
u(x)
x0- u(x)
x0+ u(x)
x0
これでは,モデル式が複雑になると対応できない
43
感度係数
y  x2
簡単にするためには,曲線のま
ま計算するのではなく,直線に
近似する。
接線
y0
u(x)
x0-u(x)
u(x)
x0
x0+u(x)
44
微分について
微分とは・・・関数の接線の傾きを算出する手法
つまり,
ある関数
x0
接線
この接線の傾き
を求める
x
45
微分の原理
y=f(x)
f(x0x)
f(x0)
x
x0
x0+x
この直線の傾きは f  x0  x   f  x0   f  x0  x   f  x0 
x
 x0  x   x0
ここで,xが0に近づけば,上の式は接線の傾きに
f  x0  x   f  x0 
近づく.つまり,接線の傾きは
lim
x  0
x
46
微分の表し方
関数f(x)を微分したものは,f’(x)と表わされる.
df  x 
また,
とも表わされる.
dx
両者は同じものである.
y  f  x  と関数が表わされているものであれば,
dy
と表わされる.
dx
47
主な関数の微分
a (定数)
x
2
x
3
x
n
x
sin x
cos x
e
x
log e x
log a x
0
1
2x
2
3x
n 1
nx
cos x
 sin x
e
x
1x
1  x log e a 
48
微分の公式
dy
y  a  f  x   a  f '  x 
dx
dy
y  f  x   g  x   f '  x   g '  x 
dx
dy
y  f  x  g  x   f '  x  g  x   f  x  g '  x 
dx
f  x  dy f '  x  g  x   f  x  g '  x 
 
y
2
g  x  dx
 g  x 
dy
y  f  g  x   g '  x   f ' g  x 
dx
49
例
y  3 x  5 x  7 x  10
3
2
3
y   3 x 1
x
y   3 x  2  2 x  5 
3x  1
y 2
2x 1
sin x
y  tan x 
cos x
y  20 log10 x
dy
 9 x 2  10 x  7
dx
dy
3
2
 3 x   2
dx
x
dy
 3  2 x  5   2  3 x  2   12 x  11
dx
2
dy 3  2 x  1  4 x  3 x  1 6 x 2  4 x  3


2
2
2
2
dx
 2 x  1
 2 x  1
dy cos x  cos x    sin x  sin x
1


2
dx
cos x
cos 2 x
dy
20

dx x log e 10
50
例
y   2 x  1
2
y x
y  x5
y  2x  5
3
y  sin  cos x 
y  3e

x
2
dy
 4  2 x  1
dx
dy 1  12
1
 x 
dx 2
2 x
dy
1

dx 2 x  5
dy
1
3x 2
2
 6x 

3
dx
2 2x  5
2 x3  5
dy
  sin x  cos  cos x 
dx
dy
3  2x
 e
dx
2
51
接線の傾きの求め方
yx
2
dy
 2x
dx
接線の傾き:2×2=4
x=2
x=2での接線の傾きは,2xのxに2を代入して4となる.
52
感度係数
接線の傾き:
y  x2
接線
傾き:2x0
y '  2x
x02  2 x0u  x 
x02
2x0u  x 
2x0u  x 
x02  2 x0u  x 
y  x2
u(x)
x0-u(x)
x0
測定対象量の
単位に変換す
るにはu(x)に
接線の傾き
2x0を掛けれ
u(x)
ばよい
x0+u(x)
非常に簡単に出力量の単位に変換できた。
53
偏微分
偏微分とは,先ほどのように変数がx一つではなく
複数の変数が含まれた関数に対する微分である.
偏微分を行うときには,単にその偏微分を行う
変数以外の文字を定数だと考えて行えばよい.
54
偏微分の例
関数 f  x, y, z   xyz において,x,y,zそれぞれ
について偏微分を行う.
f
 yz
x
f
 xz
y
f
 xy
z
x
関数 f  x, y, z   2  3z において,x,y,zそれぞれ
y
について偏微分を行う.
f
1
 2
x y
f
2x
 3
y
y
f
3
z
55
感度係数
一般的に言うと
直線近似
y  ci xi  a
実際の測定値のばらつき
近似された測定値のばらつき
xiとyとの真の関係
y  f  x1 , x2 , , xi , , xn 
ui(y)
ui(y)
近似された測定値のばらつきの
大きさは、ui (y)=|ci|×u(xi)
近似直線の傾きciは,
u(xi)
u(xi)
不確かさ要因の代表値 xi0
 y 
ci   
 xi  xi  xi 0
感度係数
56
感度係数
棒の長さをものさしで測定する。
モデル式
Lr
rの感度係数は,
L
1
r
57
感度係数
抵抗に流れている電流を求める。
モデル式
V
I
R
Eの感度係数は
I 1

V R
Rの感度係数は
I
V
 2
R
R
58
例:感度係数
モデル式
V  x   x(t  5)
V
 1   (t  5)
xの感度係数は
x
V
  x(t  5)
の感度係数は

V
tの感度係数は
  x
t
59
6:「不確かさの伝播則」による
不確かさの合成と
拡張不確かさの算出
60
不確かさの伝播則
今まで学んだことを一般的な式で表わすと,
モデル式を y  f  x1 , x2 , x3 , , xn  とすると,
2
 y  2
u  y      u  xi 
i 1  xi 
2
c
n
となる。この式のことを不確かさの伝播則と呼ぶ。
不確かさを合成するときはこの式を用いる。
61
不確かさの伝播則
棒の長さをものさしで測定する。
Lr
モデル式
不確かさの伝播則を適用すると,
2
 L  2
2
u  L    u r   u r 
 r 
2
c
62
不確かさの伝播則
抵抗に流れている電流を求める。
V
I
R
モデル式
不確かさの伝播則を適用すると,
2
2
 I  2
 I  2
u I   
 u V     u  R 
 V 
 R 
2
c
2
2
1 2
 V  2
   u V     2  u  R 
R
 R 
63
例:不確かさの伝播則
モデル式 V  x   x (t  5)
2
2
2
 V  2
 V  2
 V  2
2
uc V     u  x     u  t     u  
 x 
 t 
  
体膨張率の不確かさは無視できるので,
2
2
 V  2
 V  2
2
uc V     u  x     u  t 
 x 
 t 
 1    t  5   u 2  x     x  u 2  t 
2
ここで,
2
u 2  x   uR2  x   uS2  x 
64
例:合成標準不確かさの算出
u 2  x   uR2  x   uS2  x 
 1.1382  1.52
 3.545
2
u  x   1.883 mL
2
 V  2
 V  2
u V     u  x     u  t 
 x 
 t 
2
c
 1  3.545   3.313  0.2887 2
2
2
 4.460
uc V   2.112
65
例:拡張不確かさの算出
uc V   2.112
包含係数k=2を用いる。
U  k  uc V 
 2  2.112
 4.2 mL
66
例:最終結果
記号
u(x)
不確かさ要因
標準不確かさ
体積測定の
不確かさ
1.883 mL
uR(x)
測定の
繰返し性
uS(x)
標準器の校正
の不確かさ
u(t)
uc(V)
U
温度による
効果
拡張不確かさ
1
標準不確かさ
(出力量の単位)
1
1.138 mL
1.5 mL
1
1.5 mL
-3.313
mL/℃
備考
uR(x)とuS(x)を合成し
たもの
1.883 mL
1.138 mL
0.2887 ℃
合成標準不確か
さ
感度係数
0.9565 mL
繰返し回数は10回
メスシリンダーの校正
証明書より
温度計のデジタル表
示の不確かさ。
分解能1℃
2.112 mL
u(x)とu(t)を合成
4.2 mL
包含係数はk=2
ビールジョッキの体積
633.5 mL±4.2 mL, k=2
67
初心者脱出から上級者への足掛かり
のための不確かさの理解
68
不確かさとは
不確かさ・・・測定の結果に付随した,合理的に
測定対象量に結び付けられ得る値のばらつき
を特徴づけるパラメータ.(GUM,VIM2)
不確かさ・・・用いる情報に基づいて,測定対象
量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける
負でないパラメータ。(VIM3)
これの意味を考える。
69
不確かさとは(GUM,VIM2)
不確かさ・・・測定の結果に付随した,合理的に
測定対象量に結び付けられ得る値のばらつき
を特徴づけるパラメータ.
不確かさとは測定結果(値)に付くものであっ
て,測定装置につくものではない!!
よって,「測定の不確かさ」と呼ばれる.
70
不確かさとは(VIM3)
不確かさ・・・(前略)
注記4 一般に,任意の一組の集合の情報に
関して,測定不確かさは,測定対象量に帰属
する表記された量の値に付随すると理解さ
れる。(後略)
不確かさとは測定結果(値)に付くもので
あって,測定装置につくものではない!!
よって,「測定の不確かさ」と呼ばれる.
71
測定装置の不確かさ?
「不確かさ」は測定結果,つまり値につくものであり,
測定器に付くものではない。
しかし,一般的に「はかりの不確かさ」,「マイクロメー
タの不確かさ」という言い方が良くされる。これは間違
いなのであろうか?
「測定器の校正の不確かさ」が便宜的に
「測定器の不確かさ」という使われ方をしている!
72
校正の不確かさ
先ほどのように,「不確かさ」とは測定結果に付随する
「測定の不確かさ」である.
では,「校正の不確かさ」とはなんだろうか?
例えば,はかりを校正するときには,上位標準である分銅を用
いてはかりの目盛に値付けを行う.
つまり,分銅によってはかりに値付けしたときの「測定結果
の不確かさ」が「校正の不確かさ」となる.
73
測定の不確かさと校正の不確かさ
標準分銅
標準分銅の校正証明書
標準分銅の校正の
不確かさ
天秤
天秤の校正証明書
その他要因の不確かさ
合成
天秤の校正の不確かさ
その他要因の不確かさ
合成
試薬
試薬の測定結果
天秤を用いて算出した
試薬の測定の不確かさ
校正の不確かさと測
定の不確かさをきち
んと区別し考えること
74
実は・・・
• トレーサビリティでも同様のことが言える。
不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖に
よって,決められた基準に結び付けられ得る測定結果又は
標準の値の性質. 基準は通常,国家標準又は国際標準で
ある.(VIM2)
個々の校正が測定不確かさに寄与する,文書化された切
れ目のない連鎖を通して,測定結果を計量参照に関連づ
けることができる測定結果の性質。(VIM3)
「このはかりはトレーサビリティが確保されている」,と
いう言い方は厳密には間違い。
75
不確かさの定義
GUM 3.1.2
一般に,測定の結果は測定対象量の値の近似
値あるいは推定値に過ぎず,このためその推定
値の不確かさの記述を伴って初めて完全なもの
になる.
「合理的に測定対象量に結び付けられ得る
値」の「値」は”Values”である.よって,値の候
補は一つの値ではなく,複数である.つまり,
不確かさの記述によって,値の候補を指し示
す必要がある.
76
不確かさの定義
・合理的に測定対象量に結びつけられ得る値
・測定対象量に帰属する量の値
・・・・・・・測定対象量の値の候補

合理的に測定対象量に
結びつけられ得る値
測定データ
実験標準偏差
推定
s
英語では「値」は”Values”と複数形である.
uncertainty (of measurement)
parameter, associated with the result of a measurement, that characterizes the
dispersion of the values that could reasonably be attributed to the measurand.
77
実は・・・
VIM3においては,「値」と「不確かさ」両者がそろって初
めて「測定結果」という。
測定結果・・・利用し得るすべての関連情報を伴った,測
定対象量に結びつけられる量の値の集合。
注記1:(略)
注記2:一般に,測定結果は,単一の測定された量の値
及びその測定不確かさとして表現する。(後略)
注記3:従来の文献では,測定結果は測定対象量に結び
つけられる値(注:ここは”value”と単数形)として定義さ
れ,文脈に応じて,表示値,補正されない結果または補
正された結果を意味すると説明されていた。
78
誤差と不確かさの違い(1)
誤差・・・測定値から真の値を引いた値(VIM2)
つまり,真の値は分かるんだ,という前提
不確かさ・・・私たちが知ることができる知識には
限界がある,という前提
母平均
試料平均
真の値
誤差と不確かさの違い(2)
GUM D.2 実現される量
D.2.1・・・測定の実現される量は,理想的には測定対象量の定
義と完全に一致するであろう。しかし,多くの場合,このような量
を実現することはできず,測定は測定対象量に近い量に対して
行われる。
GUM D.3 “真の”値及び補正後の値
D.3.1・・・あらゆるかたよりを補正した測定結果は,測定対象量
の“真の”値の最良推定値と見なされることがあるが,実はこの
結果は測定しようとしている量の値に対する最良推定値にすぎ
ない。
不確かさとは
不確かさ・・・測定の結果に付随した,合理的に
測定対象量に結び付けられ得る値のばらつき
を特徴づけるパラメータ.(GUM,VIM2)
不確かさ・・・用いる情報に基づいて,測定対象
量に帰属する量の値のばらつきを特徴付け
る負でないパラメータ。(VIM3)
簡単に言うと
不確かさ・・・ばらつきを特徴づけるパラメータ
不確かさは,測定のばらつきを表す!
81
ばらつきとは
同じ測定を繰り返した場合であっても、必
ずしも同じ測定結果が得られ続けるとは
限らない
砂時計の時間
9分58秒
9分55秒
9分53秒
10分3秒
10分1秒
10分5秒
9分51秒
82
ばらつきとは
体温計で体温を測ったら,
℃
と表示された.
これは,体温が37.15 ℃から37.25 ℃
の間にあることを示している.
よって,37.15 ℃から37.25 ℃の間で体
温がばらついている,と考える.
83
ばらつきと未知のかたより
• 不確かさでいう「ばらつき」は普段用いている
「ばらつき」とは異なるものも含まれる.
知識の曖昧さから来るもの
・金属棒の長さ測定における室温測定
ディジタル温度計が20℃と表示していた.
これは温度が19.5℃から20.5℃の間に存在す
るということを表す.つまり,19.5℃から20.5℃
の間のどこかに温度が存在するのであるから,
これは20℃からのかたよりである.
84
未知のかたより
タイプB評価はほとんど未知のかたよりの評価である。
例:金属棒の長さ測定における温度の影響
0.5℃
0.5℃
20℃
繰返し測定を行っている間,矩
形分布の範囲内で温度がばら
ついている。
0.5℃
0.5℃
20℃
繰返し測定を行っている間,矩形
分布の範囲内のどこかに真の温度
が存在しているが,それがどこだ
かは分からない。
85
未知のかたより
なぜなら,
0.5℃
0.5℃
0.5℃
0.5℃
20℃
20℃
左図の状況の場合,長さを繰り返し測定している間に温度が変動して
いるのであれば,金属棒の長さも変動し,温度のばらつきは長さのば
らつきに含まれる。右図の場合,温度は一定であるので,繰り返しの
ばらつきには温度の影響は含まれない。よって,20℃からのずれ分は
別に評価する必要がある。
86
未知のかたより
不確かさの理解への道筋
初心者:不確かさはばらつきを表すパラメータである。
中級者:不確かさはばらつきと未知のかたよりを表す
パラメータで,未知のかたよりはばらつきと同様に標
準偏差として表し,両者を区別することなく合成する。
上級者:不確かさを評価するときには,その要因がば
らつきとして働くか,かたよりとして働くかを区別して,
測定結果にはどのような要因が含まれる・含まれない
かを判断し,評価漏れ,ダブルカウントを避ける。
87
最後に
• 不確かさ評価を行う際に,不確かさ評価法に
ついて詳しく知らなければならない,というこ
とはもちろんだが,それよりも不確かさ評価し
ようとしている測定に対する知識が最も重要
である。
• 不確かさとは,評価した人がどの程度よくそ
の測定を知っているのか,ということを反映す
る鏡のようなものである。測定に対する知識
が増えれば,問題解決力の上昇に繋がる!
88