鍛冶屋露木隆氏調査報告 (その 2) ◆ 一 その技術 と生活 一 金野啓 史 1 2 3 は じめに 4.素 材 (以下本号) 露木隆氏 の経歴 5.鍬 の製作 とサキガケ 仕事 と製品 6.包 丁の製作 道具 と仕事場 (以上前号) 7.鍛 冶屋 の信仰 結び 4.素 材 まず露 木氏 は鉄材 を地鉄 とハ ガネに大別 してい る が、前者 を軟鉄 と呼 ぶ ことが 多い。 この軟鉄 は文字 (1)鉄 材 通 り材質が軟 らか く、主に鉄製品の地の形態 を作 り 鉄 は含 まれ る炭 素 の量 によってその性質や使用方 出す ことに用 い られ る。 これに対 してハ ガネは 「 刃 法 が大 きく異なる。鍛冶屋や鋳物師 は、 これ らを炭 金 」 とも書 く通 り、主 と して 刃を作 ることに用 い ら 素 の 含 有 量 が 多 い 順 に 、 ズ ク (銑 鉄 )、 ハ ガ ネ れ、強 さと粘 りがあるが、ヤキイレをす ると硬 くな (鋼=刃 金)、地鉄 (軟鉄)に 分類 して使 い分 ける こ る半面脆 くなって しまう特徴 がある。 このため刃物 とが一般的であった。 この うちのズクは主 として鋳 や鍬 などの鉄製品は、軟鉄で成型 した地 にハ ガネの 造に使われ る。 ズクを加工 して地鉄 に仕立て鍛治屋 刃 を合わせ ることでで きあがっている。仮 にハ ガネ が利用す ること もあったが D、 専 ら鍛冶屋 が利用す のみで刃物 を作 ると、ヤキ を甘 くせ ぎるを得 ないの るのは地鉄 とハ ガネであ り、 これは露木隆氏 も同様 で 、切れが悪 くなって しま う。「 ハ ガネ と軟鉄 は夫 である。 婦 の ような ものだ。ハ ガネ (夫)は 硬 くて脆 いか ら ところで、現在 の製鉄 ・製鋼技術やその加 工技術 軟鉄 (妻)が 支 えてや る。それでは じめて一 人前に は目覚 ま しい発展 を遂 げ、用途 に応 じた多種 多様 な なる。」 とは、露木氏 が しば しば口にす る言葉で あ 鉄材 が見 られ るようになってお り、それ らを体系的 る。 にとらえ、露木氏 の使用す る鉄材 と照合す ることは 露木氏 によれば、鉄材は一般 に黒 い色 を した もの 筆者 の 力量 に余 るところである。そ こで 、 ここでは が軟 らか くて使 いやす く、白 く光 って い る鉄 は硬 い 露木氏 が鉄材 をどの ように認識 し、どの ように使用 とい う。鉄 の硬軟 を調 べ るには、角 を金鎚 などで叩 しているか を中心に述 べ てゆ くことに したい。 いた り、ナイフで削 った りす る。軟鉄 は角 をナイフ さて、露木隆氏であるが、鉄 につ いての知識 は豊 で削 ることがで き、ヤキイレ後 もヤ ス リをかけるこ 富だが、必ず しも科学的 ・体系的に鉄材 を把握 して とがで きる。他方 ハ ガネはナイフでは削れず、ヤキ い る訳 ではな く、経験 と勘 によるところが大 きい。 を入れ るとヤス リをかけること もで きな くなるとい - 1 -
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