建物等移転、補償について

和光市駅北口土地区画整理事業
建物等移転、補償について
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1.建物等移転と補償
土地区画整理事業では仮換地の指定や公共施設の整備
に伴い、既存の建築物等を移転する必要がある場合、
「建物等移転」が発生します。
「建物等移転」の対象となった建物は、土地区画整理
法第77条に従い移転を行う必要がありますが、この際、
建物等の移転に要する費用を施行者から「建物等移転」
の対象者に支払うことを「金銭補償」と呼びます。
建物等の所有者は、この「金銭補償」による補償金に
基づき、自ら移転工事を行うこととなります。
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2.建物移転について
1)建物移転の方法
建物移転の方法として、ふたつの方法が挙げられます。
①
直接移転
現在の土地から仮換地へ直接移転する方法です。
②
中断移転
現在の土地も仮換地も同時に使えなくなるため、中断
期間が生じる方法です。
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①-1
直接移転(建物を建て替える場合)
この図のように従前の土地と仮換地の両方の土地が使用できる場合、
仮換地の整備が終了した後、従前の土地から仮換地へ移転を行うことが
可能です。従前の土地から仮換地へ直接移転を行うことから直接移転と
呼びます。
※原則として新しい建物が完成するまで、従前の家に住むことができます。
仮換地の整備
再建築
移転完了
移転が完了した後、従前建物を解体します。
従前建物の解体
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①-2
直接移転(建物を移転する場合)
建物を建て替えず移転(曳家ひきや)する場合、従前地と仮換地に重なりがなく
ても、一時的に従前の建物が使用できなくなります。この際、短期間(2.0∼
4.0ヶ月程度)仮住居を使用する必要がありますが、長期では無いため、一般的
にはこれも直接移転の一つとみなしています。
仮住居への入居
移転先(基礎新設)
曳家
曳家工事
移転完了
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②-1
中断移転(建物を建て替える場合)
従前地と仮換地に重なりがあり両方の土地が使用できない場合、一時的に仮住
居や仮店舗へ引っ越し、従前の建物を撤去し仮換地の整備が完了した後、建物を
移転することとなります。土地の使用に関して一時的な中断期間が生じることか
ら中断移転と呼びます。
仮換地の整備が完了し、新しい建
物が完成するまで、仮住居等で生
活を継続していただくことになります。
従前建物の解体
仮住居
仮換地の整備
再建築
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等
新しい建物が完成したら、仮住居
から引っ越すことで移転完了となり
ます。
移転完了
②-2
中断移転(重なりが無い場合)
従前地と仮換地に重なりが無い場合でも、高低差、建物の密集、道路、ライフ
ライン等の築造の都合から、中断移転となる場合があります。
・従前建物が存在したままでは、
計画道路やライフライン・宅
地が整備できない。
・高低差があり造成が必要。
・建物が密集しており従前地
の建物をそのままでは移転
できない。
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2)移転工法について
(1)移転工法のフロー
建物の移転工法は、通常下記のフローに従い決定します。
移転の判断要素
・有形性 : 仮換地に建物が納まるか?
・機能性 : 従前機能が維持できるか?
・経済性 : 経済的な妥当性はあるか?
存
置
YES
原位置での切取
改造で従前を維
持できるか
NO
移転の必要がない
① 改 造 工 法
曳家することで
従前を維持で
きるか
NO
YES
② 曳 家 工 法
③ 再 築 工 法
※ 建物の移転の必要が無い場合(存置)でも、換地等の関係から塀や立木等の移転が
必要となることもあります。
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(2)移転工法の適用イメージ
移転工法の適用のイメージは次のとおりです。
① 改造工法
建築物の一部を切り取る等の改造を行う工法。一部を切取ることで、
従前の機能回復が可能な場合に適用します。
従前の建物
従前の建物
建物の一部が支
障になる
建物の一部を付け替える改
造工事で機能回復できる
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② 曳家(ひきや)工法
建築物を解体しないで仮換地に曳行する工法。従前の土地と仮
換地の間に障害物がない場合に適用する。
従前の建物
移転後
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③ 再築工法
仮換地に従前と同種同等の建築物を再築する工法。従前から仮換
地の移転経路上に障害物がある等で曳家できない場合に適用します。
存置
建物
従前の建物
存置
建物
移転後
存置
建物
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存置
建物
3.補償について
1)補償のながれ
通常、補償は下記のフローのとおりに進められます。
①移転説明
移転や工事の時期等について、説明を行います。
②建築物等の調査
所有者等の了承のもと、専門の調査員が建築物等の詳細
な調査を現地で行います。
③補償金の算定
調査結果に基づき、それぞれの補償金の算定を行います。
④移転の協議
移転及び補償の内容について施行者と所有者の方で協
議・確認を行います。
⑤補償契約締結
補償に関する契約書に、署名及び捺印し契約を締結します。
⑥建築物等移転着手
建築物等の移転を所有者側で行っていただきます。なお、
補償契約後に、移転補償金の一部をお支払いすることがで
きます。
⑦補償契約の完了
(移転の完了)
建築物等の移転が完了した後、補償金をお支払いします。
(一部お支払い済みの場合は、残金をお支払いします。)
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① 移転説明
移転や工事の時期等について、皆様へ説明を行います。
工事及び移転に関する全体計画
(移転後の状態)
赤線(破線) : 現在の道路
青線(実線) : 計画道路・換地
移転工程1
施行者は、事業の施行にあたり移転の順位を決める必要があります。この例の場合、
移転に支障のない「移転工程1」の建物から順番に進めていくことが合理的です。
実際には、この例のような移転状況や工事の必要性を勘案した上で、年度毎に移転や
工事の順位(全体計画)を決め、その内容について説明します。
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② 建物等の調査 、③補償金の算定
所有者等の了承のもと、専門の調査員が建築物等の詳細な調査を現地で行います。
調査結果に基づき、それぞれの補償金の算定を行います。
補償金は、現在の土地から仮換地へ移転することを前提として算定されます
ので、算定に先立ち現地の詳細な調査を行います。
算定は、公平を期すため公共事業に伴い通常使用されている基準に基づき行
います。この基準は、用対連基準(関東地区用地対策連絡協議会の標準書)と
呼ばれています。
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④ 移転の協議、⑤補償契約締結
移転及び補償の内容について施行者と所有者の方で協議・確認を行います。
補償に関する契約書に、署名及び捺印し契約を締結します。
調査・算定が終了すると、移転に関する協議を行います。両者で協議が整う
と、権利者は移転に関する事項が記載された契約書に署名、押捺することで、
移転に関する義務が生じることとなります。
契約書
・
・
・
・
の記載事項
移転に関わる損失補償の金額
移転期限
前払い金の割合
その他の履行すべき義務
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⑥ 建物移転着手
建築物等の移転は所有者側で行っていただきます。ここでいう移転とは、建物の
上物だけでなく、基礎や地下の埋設物の撤去も含みます。
なお、補償契約後に、移転補償金の一部をお支払いすることができます。
損失補償金の特徴
・損失補償金は、各人別に支払います。 ®
個別払いの原則
・損失補償金は、承諾の時の価格により算定するものとし、その後の価格の変動に
ついては追加払いしません。 ® 追加払いの禁止
・損失補償金は、公共の基準(関東地区用地対策連絡協議会の標準書)を基に
公平に算定 されます。→ 公平性の確保
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⑦ 補償契約の完了(更地になる)
建築物等の移転が完了し、更地になった後、補償金をお支払いします。(一部お支
払い済みの場合は、残金をお支払いします。)
所有者が 従前地の支障物件を取り除くことで移転の義務が完了 します。
移転完了することで補償金の支払いを受けることができます。
(前金の場合、残金受け取り)
補償金の
受け取り
更地化
取り壊し
従って、所有者が建物を再築するだけの補償金を受け取ったとしても、
仮換地に再度、建て直すかどうかは本人の意思に任されています。
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2)
補償の項目
下表のような項目で補償を行います。建物所有者と占有者が異なる場合、
それぞれに補償することとなります。
補償の項目
内
容
①
建築物の移転料
建物本体や設備 等
②
工作物の移転料
建物廻りの塀や物置 等
③
立木の移転料
庭木、生垣、芝、利用樹 等
④
動産の移転料
屋内動産(建物内の家具、電気製品、
什器 等)
立木
屋外動産(建物廻りの雑品)
⑤
仮住居等の使用に
移転中の仮住まいの費用
要する費用
⑥
家賃減収補償
貸家の移転での家賃の減収分の補償
⑦
祭し料
稲荷様や墓などの宗教施設の移転に伴
う祈とう料、供物料
⑧
移転雑費
移転に伴う法令手数料等の諸雑費
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営業休止の補償
営業を休止する場合の休止期間中の収
益減
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仮換地の指定等に 仮換地と従前の土地の両方が使用でき
ない場合の損失の補償
伴う補償
建築物
工作物
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① 建築物の移転料
建築物本体や各種設備、付随する施設等の移転料。
(再築・曳家・改造工法)
● 再築工法の場合、次のように算定します。
新築相当価格
× 再築率
+
解体撤去費
再築に要する移転料
※ 再築率は、現在の建物の用途、構造と建築後の経過年数に基づき決定されます。
● 曳家工法の場合、次のように算定します。
曳家工事価格 + 基礎等の新築費 +基礎等の撤去費
曳家に要する移転料
● 改造工法の場合、次のように算定します。
改造に要する費用
+ 必要とする部分の解体撤去費
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改造に伴う移転料
② 工作物の移転料
建物廻りの塀や物置等の外構施設の移転料。
●
移設が可能なものは移設扱いで補償します。
庭石、カーポート
●
移設すると壊れてしまうコンクリートブロック塀やアスファルト舗装等
は、現在の価値相当額と解体撤去に要する費用を補償します。
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等
③ 立木の移転料
庭木、生垣、芝、利用樹の移転料。
状況に応じて移植や伐採に要する費用を補償します。
※ 利用樹とは、果樹園や植木畑、植林等を指します。
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④ 動産の移転料
従前から仮換地までの引越しに伴う費用。屋内動産とは、建物内にある家具や
什器類。屋外動産とは、建物の周りにある雑品(自転車、植木鉢 等)。
⑤ 仮住居の使用に要する費用(または借家人補償)
移転に伴い仮住まいを必要とする場合、仮住まいに要する費用を補償する。
○自家自用の方:一時金相当額
+
家賃相当額(標準家賃(月額))
○借家の方
+
家賃差補償額(月額)×12×
:一時金相当額
(家賃差補償額:標準家賃(月額)−
×
移転期間
家賃差補償年数
現在の家賃(月額))
※ 標準家賃は、当該地域における同種の賃貸事例の家賃から算定した額を基準として定
められます。
⑥ 家賃減収補償
アパート等の貸家の移転に伴う家賃の減収分の補償。
(減収する家賃相当額
×
管理費率90%)×
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移転期間
⑦ 祭し料
墓など宗教上の施設の移転に伴う祈とう料、供物(くもつ)料等に関する補償費。
墓自体は
祈とう、
工作物の扱い。
供物は
祭し料。
⑧ 移転雑費
移転に伴う設計監理料、法令手数料、
その他の諸雑費。
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⑨ 営業休止の補償
食堂、小売店舗、工場等で移転に伴い営業を休止する場合の収益減
に関わる補償費。テナントでも一時的に休止が発生する場合、対象と
なります。
・休業中の収益の減少
・休業中の従業員の給与
・休業中もかかる公租公課等
等
休止期間が長期に渡る場合等では、
仮営業所の設置を検討することもあります。
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⑩ 仮換地の指定に伴う補償
仮換地と従前の土地の両方が
使用できない場合に生じる損失
に関する補償。
建物がない場合、農地や資材
置き場等の場合に適用。
従前地
右の図の場合、従前地と仮換地
に重なりがあり、仮換地の使用収
益開始まで、両方使用できない。
従って、その期間中の損失につい
て補償が必要となる。
仮換地
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お
わ
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り