東京都発達障害教育推進計画

別添2
東京都発達障害教育推進計画
平成 28 年 2 月
東京都教育委員会
A
は じ め に
東京都教育委員会は、東京都における特別支援教育推進の基本的な方向を示す「東
京都特別支援教育推進計画」(平成 16 年 11 月)を策定し、これまで、第一次(平成
16 年度)、第二次(平成 19 年度)及び第三次(平成 22 年度)と三次にわたる実施計
画の中で、発達障害を含む特別な支援を必要とする児童・生徒への指導と支援の取組
を進め、全ての公立学校において体制の充実を図ってきました。
東京都特別支援教育推進計画の策定後、平成 17 年4月に発達障害者支援法が施行
され、平成 19 年4月には学校教育法の一部改正により、特別支援教育の対象が、発
達障害を含めた障害のある幼児・児童・生徒となり、平成 24 年7月に中央教育審議
会初等中等教育分科会において「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システ
ム構築のための特別支援教育の推進」について報告がなされ、さらには、平成 28 年
4月には障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行が予定されるなど、
発達障害教育を取り巻く環境は近年、大きく変化しています。
また、平成 26、27 年度に東京都教育委員会が実施した調査では、通常の学級に在
籍する発達障害と考えられる幼児・児童・生徒の在籍率は、幼稚園・保育所等 5.1%、
小学校 6.1%、中学校 5.0%、高等学校 2.2%であることが分かりました。
こうした状況に対応するため、このたび、発達障害教育の充実に向け「東京都発達
障害教育推進計画」を策定しました。
本計画は、「発達障害の全ての児童・生徒が、その持てる力を最大限に伸ばし、将
来の自立と社会参加を実現できるよう、適切な教育的支援を行うこと」及び「発達障
害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が、共に学び合うことができるよう、通
常の学級における教育的支援をはじめ、障害の状態に応じた多様な教育の場を拡充す
ること」を基本理念として、全ての公立学校における発達障害教育に関する施策を展
開するものです。
本計画の推進による理念の実現は、教育行政や学校関係者だけで成し得るものでは
ありません。児童・生徒及び保護者の皆様をはじめ広く都民の皆様の御理解と御協力
をいただきますよう、お願い申し上げます。
平成 28 年2月
東京都教育委員会
―――――― 目
次 ――――――
はじめに
第1部
東京都発達障害教育の推進
1 東京都発達障害教育推進計画策定の背景…………………………………………… 2
2 計画の基本理念………………………………………………………………………… 5
3 計画の性格…………………………………………………………………………・……8
4 東京都発達障害教育推進計画の施策体系図…………………………………………12
第2部
東京都発達障害教育推進計画の具体的な展開
第1章 小・中学校における取組
1 発達障害教育環境の整備………………………………………………………………16
2 指導内容の充実と組織的な対応………………………………………………………20
3 支援体制の充実…………………………………………………………………………26
第2章 高等学校における取組
1 発達障害教育環境の整備………………………………………………………………32
2 指導内容の充実と組織的な対応………………………………………………………35
3 支援体制の充実…………………………………………………………………………39
第3章 教員の専門性向上
1 研修の充実………………………………………………………………………………44
2 人材の有効活用…………………………………………………………………………46
3 採用前からの人材養成…………………………………………………………………48
第4章 総合支援体制の充実
1 継続した指導・支援の充実……………………………………………………………52
2 発達障害教育に係る理解の促進………………………………………………………55
資料………………………………………・……………………………………………………57
第1部
東京都発達障害教育の推進
1
東京都発達障害教育推進計画策定の背景
2
計画の基本理念
3
計画の性格
4
東京都発達障害教育推進計画の施策体系図
1
第1部 東京都発達障害教育の推進
東京都発達障害教育推進計画策定の背景
1
(1)我が国の近年の動向
発達障害の児童・生徒への支援については、発達障害者支援法(平成 16 年法律
第 167 号。平成 17 年4月施行)第8条において、国及び地方公共団体が「適切な
教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置」を講じる責務を有する旨、規定さ
れました。また、平成 19 年4月の学校教育法の一部改正では、従来の「特殊教育」
から「特別支援教育」への転換が図られるとともに、特別支援教育の対象が、発達
障害を含めた障害のある幼児・児童・生徒となり、特別な支援を必要とする幼児・
児童・生徒が在籍する全ての学校において特別支援教育を実施することとされまし
た。
さらに、国連総会における「障害者の権利に関する条約」の採択(平成 18 年 12
月)後、批准に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、相互に人格
と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解
消を推進することを目的とした、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法
律」(平成 25 年法律第 65 号)が平成 25 年6月に制定され、平成 28 年4月に施行
が予定されています。
また、平成 24 年7月には、中央教育審議会*1 初等中等教育分科会において「共
生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム*2 構築のための特別支援教育
の推進(報告)」が示され、特別支援教育は、共生社会の形成に向けて、インクル
ーシブ教育システム構築のために必要不可欠なものであり、合理的配慮*3 と基礎的
環境整備*4 を充実させていくことが重要であるとしています。
中央教育審議会
文部科学省に置かれ、文部科学大臣の諮問に応じて、教育に関する重要事項等を調査審議し、意見を述べる審議会。初等
中等教育分科会等五つの分科会を設置している。
*2
インクルーシブ教育システム
障害者の権利に関する条約では、条文の第 24 条に「障害者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと及び障害
のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと」とある。インクルーシブ教育
システムとは、この理念に基づく教育制度のこと。
*3
合理的配慮
障害者の権利に関する条約第2条において、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使す
ることを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した
又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。
*4
基礎的環境整備
「合理的配慮」の基礎となる環境整備のこと。これらの環境整備を基に、設置者及び学校が各校において、障害のある子どもに
対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。
*1
2
第1部 東京都発達障害教育の推進
(2)都におけるこれまでの取組
東京都教育委員会(以下「都教育委員会」という。)は、平成 16 年 11 月に、都
における特別支援教育推進の基本的な方向を示す「東京都特別支援教育推進計画」
を策定し、これまで、第一次(平成 16 年度)、第二次(平成 19 年度)及び第三次
(平成 22 年度)の各実施計画に基づいて、特別支援教育に関する校内委員会の設
置や、特別支援教育コーディネーター*5 の指名など、発達障害を含む特別な支援を
必要とする児童・生徒への指導と支援の取組を進めてきました。あわせて、特別支
援学校のセンター的機能*6 を生かし、小・中学校及び高等学校(以下「高校」とい
う。)からの要請に基づく巡回相談等を行う仕組みを構築しました。
特に、第三次実施計画では、通常の学級に在籍している特別な支援を必要とす
る児童・生徒の教育的ニーズに応えるため、教員が巡回して発達障害教育を実施す
る特別支援教室の全公立小・中学校への導入方針を明らかにし、小学校の特別支援
教室については、平成 24 年度から3か年のモデル事業を行うなど、平成 28 年度か
らの順次導入への準備を進めてきたところです。
(3)都における発達障害教育の現状と課題
都教育委員会では、平成 26、27 年度に都内の幼稚園・保育所等、公立小・中学
校及び高校に対し、通常の学級における発達障害の児童・生徒等の在籍状況や支援
の実態を把握するための調査(以下「実態調査」という。)を実施しました。その
結果、通常の学級に在籍する発達障害と考えられる幼児・児童・生徒の在籍率は、
幼稚園・保育所等で 5.1%、小学校で 6.1%、中学校で 5.0%、高校で 2.2%である
ことが分かりました。
これまでの取組等により、教員や保護者等の発達障害に関する理解が進み、発
達障害の児童・生徒に対する指導・支援が広がってきていますが、一部の学校では、
発達障害の児童・生徒への対応が、いまだ学級担任等各教員の経験に基づく指導に
よるところが大きいという実態があります。また、医療・心理等の専門家からは、
発達障害と不登校やいじめなどの教育課題との関係性や、発達障害の児童・生徒が
通常の学級での学習や集団参加において様々な困難を抱え、自尊感情を低下させや
すいことなどが指摘されています。
特別支援教育コーディネーター
学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整及び保護者に対する学校の窓口として、校内における特別支援教
育に関するコーディネーター的な役割を担う。
*6
特別支援学校のセンター的機能
特別支援学校が、地域の幼稚園や小・中学校、高校等における特別支援教育の推進・充実に向けて、各校や区市町村教育
委員会等の要請に応じて必要な助言や援助を行う機能のこと。学校教育法第 74 条では、「特別支援学校においては、(略)、
幼稚園、小・中学校、高等学校又は中等教育諸学校の要請に応じて、第 81 条第1項に規定する幼児、児童又は生徒の教育
に関し必要な助言を行うよう努めるものとする。」と規定されている。
*5
3
第1部 東京都発達障害教育の推進
(4)計画の策定
都教育委員会は、これらの課題や、近年の発達障害教育を取り巻く状況の変化、
医療・福祉・教育関係の有識者の意見等を踏まえ、これからの都が目指すべき発達
障害教育の基盤整備に必要な具体策について様々な視点から検討を行い、全ての公
立学校における発達障害教育の充実に向けて計画的に取り組む施策を明らかにす
る東京都発達障害教育推進計画(以下「本計画」という。)を策定することとしま
した。
4
第1部 東京都発達障害教育の推進
2
計画の基本理念
(1)基本理念と計画策定の視点
1(1)で記載したとおり、現在、国では、インクルーシブ教育システムの構築
に向けた取組を進めています。中央教育審議会初等中等教育分科会の「共生社会の
形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報
告)」では、
「インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追
求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児・児童・生徒に対して、自立と社
会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、
多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。小・中学校における通常の学級、
通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある『多様な学
びの場』を用意しておくことが必要である。」としています。さらに「特別支援教
育は、共生社会の形成に向けて、インクルーシブ教育システム構築のために必要不
可欠なものである。」とした上で、次の3点の考え方を示しています。
○ 障害のある子どもが、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加す
ることができるよう、医療、保健、福祉、労働等との連携を強化し、社会全体
の様々な機能を活用して、十分な教育が受けられるよう、障害のある子どもの
教育の充実を図ることが重要である。
○ 障害のある子どもが、地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに
生きることができるよう、地域の同世代の子どもや人々の交流等を通して、地
域での生活基盤を形成することが求められている。このため、可能な限り共に
学ぶことができるよう配慮することが重要である。
○ 特別支援教育に関連して、障害者理解を推進することにより、周囲の人々が、
障害のある人や子どもと共に学び合い生きる中で、公平性を確保しつつ社会の
構成員としての基礎を作っていくことが重要である。次代を担う子どもに対し、
学校において、これを率先して進めていくことは、インクルーシブな社会の構
築につながる。
5
第1部 東京都発達障害教育の推進
特別支援教育を推進していくためには、このような考え方に立ち、基礎的環境の
整備を進め、その上に一人一人の障害特性に応じた支援を行うなどの合理的配慮
の提供を進めていく必要があります。
これまで、都教育委員会は、東京都特別支援教育推進計画に基づく施策を進め、
共生社会の実現に向けて、小・中学校及び高校の特別支援教育体制の構築や個に
応じた指導・支援の充実に取り組んできました。このことは、インクルーシブ教
育システムにおける基礎的環境整備と合理的配慮につながるものです。
都教育委員会は、本計画を策定するに当たり、これら国の考え方を踏まえなが
ら、特に発達障害の児童・生徒に対応した特別支援教育の充実を目指し、都の実
態に応じた基本理念及び計画策定の視点を定めました。
6
第1部 東京都発達障害教育の推進
【基本理念】
○公立学校に在籍する発達障害の全ての児童・生徒が、その持てる力を最大限に伸
ばし、将来の自立と社会参加を実現できるよう、適切な教育的支援を行います。
○発達障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が、共に学び合うことができ
るよう、通常の学級における教育的支援をはじめ、障害の状態に応じた多様な教
育の場を拡充します。
【計画策定の視点】
本計画は、
「多様な教育体制の整備」、
「指導内容・方法の充実」、
「推進体制の充
実」の三つの視点を基本に、これからの発達障害教育の充実に必要な具体的施策を
体系化します。
視点1
多様な教育体制の整備
発達障害の児童・生徒一人一人が、障害の状態に応じた多様な教育を受けることがで
きる体制を整備します。
視点2
指導内容・方法の充実
児童・生徒の長所を伸ばす視点に立ち、障害特性や児童・生徒の状態に応じた指導内
容・方法を開発し、適切な指導・支援の内容の充実を図ります。
視点3
推進体制の充実
発達障害教育を担う教員の専門性の向上を図るとともに、広く都民の理解を促進する
ことなどにより、発達障害の児童・生徒に早期から一貫性のある継続した指導・支援を
行う体制を充実します。
7
第1部 東京都発達障害教育の推進
計画の性格
3
(1)計画の性格
本計画は、児童・生徒の発達段階や障害特性に応じた指導・支援や、小・中学校
及び高校での一貫性のある継続した教育、学校・学級不適応などへの対応、教育と
保健・医療・福祉・労働との連携等について検討し、発達障害教育の充実に必要な
具体的施策を盛り込んだ、都における今後の取組を明らかにする総合的な計画です。
なお、本計画においては、現状と課題を踏まえ、
「具体的な取組」のほか、今後
更なる検討を要する事項については、「更に検討を要する取組」として示していま
す。
(2)計画期間
発達障害教育における課題を解決するため、教育条件の充実を図ることは、現
在の小・中学校及び高校において喫緊の課題であることから、本計画の計画期間は、
平成 28 年度から平成 32 年度までの5年間としています。
8
第1部 東京都発達障害教育の推進
(3)主な発達障害の定義
発達障害者支援法において、
「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その
他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能
障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障害者支援法に
おける定義
第二条より)と定義されています。
これらのタイプのうちどれにあたるのか、障害の種類を明確に分けて診断する
ことは大変難しいとされています。障害ごとの特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っ
ている場合も多いからです。また、年齢や環境により目立つ症状が違ってくるので、
診断された時期により、診断名が異なることもあります。
(発達障害情報・支援センターホームページより)
9
第1部 東京都発達障害教育の推進
主な発達障害の定義は以下のとおりです。
■自閉症の定義
<Autistic Disorder>
自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の
発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障
害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
■高機能自閉症の定義
<High-Functioning Autism>
高機能自閉症とは、3 歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言
葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動
の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。
また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
■学習障害(LD)の定義
<Learning Disabilities>
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読
む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困
難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定さ
れるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因
が直接の原因となるものではない。
■注意欠陥多動性障害(ADHD)の定義
<Attention-Deficit
Hyperactivity Disorder>
注意欠陥多動性障害とは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又
は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障
をきたすものである。
また、7 歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機
能不全があると推定される。
※ アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち
言葉の発達の遅れを伴わないものである。なお、高機能自閉症やアスペルガー症
候群は、広汎性発達障害に分類されるものである。
(文部科学省ホームページより)
10
第1部 東京都発達障害教育の推進
(4)発達障害の特徴
発達障害は発達のしかたに生まれつき凸凹がある障害です。人間は、時代背景、
その国の文化、社会状況、家庭環境、教育など、多様な外的要因に影響を受けな
がら、一生かけて発達していく生物であり、発達障害をもつ人も同様です。つま
り、年齢とともに成長していく部分もあり、必ずしも不変的な障害とはいい切れ
ないのです。もちろん個人差はありますが、
「障害だから治らない」という先入観
は、成長の可能性を狭めてしまいます。周囲が彼らの凸凹のある発達のしかたを
理解しサポートすることにより、
「障害をもちつつ適応していく」という視点をも
つことは重要です。
(発達障害情報・支援センターホームページより)
このような特徴を踏まえ、児童・生徒がその持てる力を十分に発揮し、自立と社
会参加を実現していくために、発達障害の児童・生徒の障害による困難の軽減に向
けた教育の役割が極めて重要になります。
本計画においては、都内公立小・中学校及び高校に在籍する全ての発達障害の児
童・生徒を対象として施策を示していきます。
11
第1部 東京都発達障害教育の推進
4
東京都発達障害教育推進計画の施策体系図
大分類
中分類
取 組
(1)小学校における特別支援教室の設置促進
Ⅰ 小・中学校
における取組
1
発達障害教育環境
の整備
2
指導内容の充実と
組織的な対応
(2)中学校における特別支援教室の設置促進
(3)区市町村における自閉症・情緒障害特別支援学級(固定学級)の
設置に向けた支援
(1)学習の「つまずき」を把握するアセスメント方法の確立
(2)発達障害の児童・生徒の指導の充実
(1)支援員の活用と資質向上
3 支援体制の充実
(2)外部専門家の活用
(3)特別支援学校のセンター的機能の活用
1
発達障害教育環境
の整備
(1)教育課程外での特別な指導・支援の実施
(2)特別な指導・支援を行う方策の検討
(1)学校設定教科・科目の開発
Ⅱ 高等学校
における取組
2
指導内容の充実と
組織的な対応
(2)ユニバーサルデザインの考え方に基づく授業の実施と行動支援
(3)障害の状態に応じた進学・就労支援の充実
(4)学校・学級不適応の生徒への対応
3 支援体制の充実
(1)支援員の活用
(2)外部専門家の活用
(3)特別支援学校のセンター的機能の活用
(1)職層や経験に応じた研修の実施
1 研修の充実
(2)発達障害に関する専門性の向上を図る研修の実施
Ⅲ 教員の
専門性向上
(1)人事異動を活用した発達障害教育に係る人材育成及び人材確保
2 人材の有効活用
(2)指導教諭を活用した教員全体の専門性の向上
3
採用前からの
人材養成
(1)東京教師養成塾等の活用
(2)教員養成系大学等との連携強化
(1)早期教育支援に関する幼稚園・保育所等との連携
1
継続した指導・支援
の充実
Ⅳ 総合支援体制
の充実
(3)保健・医療・福祉・労働との連携体制の充実
(4)発達障害教育に関する相談機能等の充実
2
12
(2)乳幼児期から学校卒業までの一貫性のある継続した支援等の充実
発達障害教育に係る
理解の促進
(1)発達障害教育に係る理解の促進
第2部
東京都発達障害教育
推進計画の具体的な展開
第1章
小・中学校における取組
第2章
高等学校における取組
第3章
教員の専門性向上
第4章
総合支援体制の充実
13
14
第1章
小・中学校における取組
1
発達障害教育環境の整備
2
指導内容の充実と組織的な対応
3
支援体制の充実
15
第1章 小・中学校における取組
発達障害教育環境の整備
1
現状と課題
○現在、都内の公立小・中学校では、発達障害の児童・生徒が特別な指導を受け
る場として、情緒障害等通級指導学級*7(以下「通級指導学級」という。)と自
閉症・情緒障害特別支援学級*8(以下「固定学級」という。)が設置されていま
す。
■都内公立小・中学校における発達障害教育に関する学級の種別
種別
児童・生徒の
在籍学級
通常の学級
情緒障害等
通級指導学級
自閉症・情緒障害
特別支援学級
通常の
学級
同左
支援の内容
児童・生徒は、学級担任による配慮のほか、一部の区市町村
では支援員等による支援を受けている。
児童・生徒は、在籍学級の授業の一部の時間を抜けて、通級
指導学級において自立活動や教科の補充の指導を受けている。
児童・生徒は、8人で編制される学級に在籍し、各教科指導に
加え、自立活動の指導を受けている。
○都の発達障害教育は、これまで通級指導学級における指導を中心に行われてき
ましたが、通級指導学級の指導では、対象の児童・生徒の多くが在籍校を離れ
て他校に設置された通級指導学級に通うため、在籍校の授業に参加できないこ
とから生じる学習の遅れへの不安、通学の負担、保護者の付添いの負担など様々
な課題があります。このような課題に対応するとともに、指導内容・方法の充
実を図るため、都教育委員会では、東京都特別支援教育推進計画第三次実施計
画において、全ての公立小・中学校に特別支援教室*9 を設置することとし、小
学校において「特別支援教室モデル事業」を行い、発達障害の児童・生徒が在
籍校で適切な指導を受けられる体制を検討してきました。
情緒障害等通級指導学級
通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする自閉症児、情緒障害児、学習障害児、注意欠陥多
動性障害児を対象とする。指導時間数は、障害の状態に応じて、週1単位時間から週8単位時間まで(学習障害及び注意欠
陥多動性障害については月1単位時間から可能)としている。
*8
自閉症・情緒障害特別支援学級
学校教育法の規定に基づき、通常の学級における学習では、十分その効果を上げることが困難な児童・生徒のために特別に編
制された学級であり、自閉症児、情緒障害児を対象とする。
*9
特別支援教室
小・中学校に「特別支援教室」を設置し、教員が巡回指導することによって、これまで通常の学級に在籍する発達障害の児童・
生徒に対して通級指導学級で行ってきた特別な指導を、在籍校で受けられるようにする仕組み。指導上の必要により在籍校以外
で指導を受ける方が効果的な児童・生徒は他校に設置されている特別支援教室で指導を受けることも可能である。
*7
16
第1章 小・中学校における取組
○実態調査によると、通常の学級に在籍する発達障害と考えられる児童・生徒の
在籍率は小学校で 6.1%、中学校で 5.0%であり、そのうち、小学校で 48.9%、
中学校で 28.3%の児童・生徒は、通級指導学級相当の指導が必要であると推測
されます。
■発達障害の児童・生徒の在籍状況
通常の学級の
児童・生徒数
発達障害の
児童・生徒の
想定在籍数
a
b
在籍率
通級指導学級
相当の指導が
必要な児童・生
徒の想定数
c=b/a
d
割合
通級指導
学級で指導
を受けている
児童・生徒数
固定学級相当
の指導が必要
な児童・生徒
の想定数
割合
固定学級で
指導を受け
ている児童・
生徒数
e=d/b
f
g
h=g/b
i
小学校
552,897人
33,661人
6.1%
16,445人
48.9%
6,209人
― ― 275人
中学校
228,340人
11,326人
5.0%
3,210人
28.3%
1,841人
1,346人
11.9%
212人
※1 a、f、i欄は、公立学校統計(小学校:平成26年5月1日、中学校:平成27年5月1日)の数
※2 b、d、g欄は、都教育委員会が実施した調査結果(小学校:平成26年度、中学校:平成27年度)
○区市町村では、通級指導学級及び固定学級の設置数を増やしているものの、実
際に通級指導学級又は固定学級で指導を受けている児童・生徒は、特別な指導・
支援が必要と考えられる児童・生徒の一部にとどまっているため、より多くの
発達障害の児童・生徒が障害の状態に応じた特別な指導・支援を受けられるよ
う区市町村を支援する必要があります。
○公立中学校に在籍する発達障害の生徒の多くは、高校に進学すると考えられま
すが、この中には、入学者選抜における筆記試験等で、障害特性に応じた配慮
が必要な生徒がいます。都立高校の入学者選抜では、必要に応じて障害特性に
応じた配慮を行っていますが、それらを適切に活用するためには、生徒一人一
人の障害特性に応じた適切な進学指導等の支援が一層必要になります。
17
第1章 小・中学校における取組
具体的な取組
≪特別支援教室の導入≫
全ての公立小・中学校に特別支援教室を設置し、発達障害教育を担当する教
員が各校の特別支援教室を巡回して指導することにより、通級指導学級で行っ
てきた特別な指導(個別指導と小集団を活用した指導による教科の補充と自立
活動)を、児童・生徒が在籍校で受けられるようにします。このことにより、
これまでより多くの発達障害の児童・生徒が特別な指導を受けられるようにな
ります。また、巡回指導を担当する教員(以下「巡回指導教員」という。)と在
籍学級担任との連携が密になることにより、児童・生徒一人一人が抱える学習
面・行動面での困難をより効果的に改善・克服することができ、学力や集団適
応能力が伸長されます。
さらに、特別支援教室の導入により、発達障害の児童・生徒に対する周囲の
理解が進むとともに、巡回指導教員が在籍学級担任に対して助言等を行うこと
によって、在籍学級における学級運営の安定化が図られます。
(1)小学校における特別支援教室の設置促進
平成 28 年度以降、準備の整った区市町村から小学校に特別支援教室を順次導
入し、全ての小学校での設置を実現します。そのため、都教育委員会は、特別
支援教室専門員*10 の配置及び臨床発達心理士等*11 の巡回を実施し、各校の特別
支援教室の円滑な運営と指導・支援の充実を促進します。あわせて、特別支援
教室を設置する学校における物品購入及び簡易工事費相当の経費補助を行い、
区市町村を支援します。
また、平成 28 年度から配置していく特別支援教室専門員を効果的に活用する
ため、特別支援教室専門員に対して採用時に講習会を実施します。
特別支援教室専門員
巡回指導教員や臨床発達心理士等の巡回日の連絡・調整、児童の行動観察や指導の記録の作成など、巡回指導教員等
と連携して特別支援教室の円滑な運営に必要な業務を行う。
*11
臨床発達心理士等
児童・生徒が抱える学習面・行動面での困難について的確に把握し、巡回指導教員や在籍学級担任に専門的立場から助言
する。本事業における臨床発達心理士等は、臨床発達心理士、特別支援教育士及び学校心理士を指す。
*10
18
第1章 小・中学校における取組
項
目
年
28 年度
次
29 年度
導入開始
計
画
30 年度
31 年度
32 年度
全校導入完了
小学校における
導入経費補助
特別支援教室の設置促進
専門員配置
心理士等巡回
(2)中学校における特別支援教室の設置促進
中学校に特別支援教室を導入するに当たり、教科の学習や複雑化する人間関
係、将来の進路への不安など、中学校特有の課題について対応する必要があり
ます。このため、中学校における巡回指導体制や、生徒一人一人の障害特性に
応じた進学指導を含めた相談機能の在り方等について検討を行うモデル事業を、
平成 28 年度から実施します。
モデル事業での成果と課題を踏まえ、準備の整った区市町村から特別支援教
室を導入し、全ての中学校での設置を目指します。
項
目
中学校における
特別支援教室の設置促進
年
28 年度
29 年度
モデル事業
実施
次
30 年度
準備の整っ
た区市町村
から順次導
入
計
画
31 年度
32 年度
33 年度
全校導入
完了
更に検討を要する取組
(3)区市町村における自閉症・情緒障害特別支援学級(固定学級)の設置
に向けた支援
通常の学級で指導を受けることが困難な発達障害の児童・生徒に対し、障害
の状態に応じた適切な指導を行うため、区市町村が必要に応じて固定学級を設
置できるよう、方策を検討します。
19
第1章 小・中学校における取組
2
指導内容の充実と組織的な対応
現状と課題
○発達障害と考えられる児童・生徒は、実態調査の結果から、ほとんどの通常の
学級に在籍していることが推測されます。
○一方、平成 25 年度に都教育委員会が実施した教員の意識調査(以下「意識調査」
という。)によると、小学校で 54.9%、中学校で 60.2%の教員が「発達障害に
関する知識はあるが具体的にどう対処すれば良いか分からない」又は「発達障
害に関する知識がなく対処できていない」と回答しており、通常の学級におけ
る発達障害の児童・生徒に関する正しい理解に基づく指導・支援の充実が急務
となっています。
■発達障害の児童・生徒への対処 [学級担任回答]
0%
小学校
中学校
25%
50%
75%
45.1%
39.7%
100%
48.0%
48.8%
6.9%
11.4%
知識があり、具体的に対処できている
知識はあるが、具体的にどう対処すれば良いか分からない
知識がなく対処できていない
○発達障害の児童・生徒は、一人一人の学習面・生活面の困難が異なり、その特
性が周囲の児童・生徒から理解されにくいことから、いじめの対象や不登校等
につながる場合もあります。
○今後は、教員一人一人の発達障害教育に関する理解を促進するとともに、学校
において組織的に対応することにより、通常の学級における発達障害の児童・
生徒に対する指導・支援を充実していくことが必要です。
20
第1章 小・中学校における取組
具体的な取組
(1)学習の「つまずき」を把握するアセスメント*12 方法の確立
発達障害の児童・生徒に対して、適切な指導・支援を実施するためには、児
童・生徒一人一人の学習の「つまずき」を把握することが不可欠です。
このことから、読み書きや行動・社会性に関する以下のアセスメント方法を
開発します。あわせて、アセスメントの実施方法や分析の仕方、保護者との連
携の在り方を示したアセスメントマニュアル及びDVDを作成・活用すること
により、特別支援教室を含めた小・中学校における発達障害の児童・生徒の指
導・支援を充実します。
①特別支援教室の指導で活用する、読み書きに関するアセスメント
②通常の学級の指導で活用する、読み書きに関するスクリーニング*13 用のア
セスメント
③特別支援教室の指導で活用する、行動・社会性に関するアセスメント
④通常の学級の指導で活用する、行動・社会性に関するアセスメント
項
年
目
28 年度
小学校
学習の「つまずき」を
把握するアセスメント
中学校
方法の確立
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
アセスメント
方法の開発
マニュアル・ 成果普及
DVD作成・
配布
アセスメント
方法の開発
マニュアル・ 成果普及
DVD作成・
配布
アセスメント
標準化された発達検査等を用いて、幼児・児童・生徒の障害の成長・発達の段階や技能水準等を把握すること。
*13
スクリーニング
発達検査等を実施するのに先立ち、検査を要するものと要しないものとを判断したり、潜在的な発達遅滞や発達障害の可能性
を早期に発見したりする。自治体により、1歳6か月健康診査、3歳児健康診査などの場で活用される場合がある。
*12
21
第1章 小・中学校における取組
(2)発達障害の児童・生徒の指導の充実
ア
通常の学級における個別指導の充実
(ア)通常の学級における個別指導の内容・方法に関する指導資料の作成
都教育委員会はこれまで、通級指導学級や固定学級における発達障害の児
童・生徒に対し、読み書きに関する指導や適切な行動を促すための指導、固
定学級の教育課程*14 等の研究・開発を進めてきました。これらの研究の成果
を踏まえ、通常の学級と特別支援教室との連携を前提とした、児童・生徒の
アセスメントに基づく個別指導の内容・方法に関する指導資料を作成し、発
達障害の児童・生徒への指導を充実します。
項
年
目
28 年度
小学校
通常の学級における個
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究指定校で
の実践検証、
成果普及
指導資料作
成・配布
別指導の内容・方法に関
中学校
する指導資料の作成
研究指定校で
の実践検証、
成果普及
指導資料作
成・配布
(イ)発達障害の児童・生徒用の「東京ベーシック・ドリル*15」の作成
発達障害の児童・生徒一人一人の学習の「つまずき」に対応した指導を計
画的かつ効果的に実施するため、発達障害の児童・生徒が、障害の状態や自
らの「つまずき」に応じて教材を選び、繰り返し学習することができる「東
京ベーシック・ドリル」を作成するとともに、具体的な活用方法を掲載した
指導事例集を作成し、発達障害の児童・生徒の学力の向上を図ります。
教育課程
法令に基づき、各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動及び自立活動等について、それらの目標やねらいを実現するよ
う教育の内容を学年に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の基本計画
*15
東京ベーシック・ドリル
小学校の国語・社会・算数・理科における 4 年生までの基礎的・基本的な学習内容について、児童が確実に身に付けることを目
的として、平成 25 年度に都が独自に開発したドリル。都内全公立小学校に配布するとともに、都教育委員会HPに掲載し、その
活用の推進を図っている。
*14
22
第1章 小・中学校における取組
項
年
目
28 年度
小学校
発達障害の児童・生徒用
の「東京ベーシック・ド
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究指定校で
の実践検証、
ドリル・指導 成果普及
事例集作成・
配布
研究指定校で
の実践検証、
ドリル・指導 成果普及
事例集作成・
配布
中学校
リル」の作成
29 年度
次
(ウ)ICT機器*16 の活用事例集の作成
発達障害の児童・生徒は、学習においてICT機器を活用することにより、
認知処理の偏り等を補ったり、注意や集中を高めたりすることが可能となり
ます。このため、大学や研究機関が開発した発達障害の児童・生徒のための
ICT機器を活用した学習支援システムについて、研究指定校において実践
検証した上で活用事例集を作成し、発達障害の児童・生徒の学習における困
難の改善を図ります。
項
年
目
28 年度
小学校
ICT機器の活用事例
中学校
集の作成
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究指定校で
の実践検証、
成果普及
活用事例集作
成・配布
研究指定校で
の実践検証、
成果普及
活用事例集作
成・配布
ICT機器
Information and Communications Technology の略。発達障害においては、タブレット PC や電子黒板等を活用し、
発達障害の児童・生徒の様々な困難を取り除いたり減らしたりすることにより、子供たちの可能性を広げることが期待できる。
*16
23
第1章 小・中学校における取組
イ
障害のない児童・生徒を含めた学級全体での指導の充実
(ア)ユニバーサルデザインの考え方に基づく指導と学級づくりのための
ガイドラインの作成
通常の学級に在籍する発達障害の児童・生徒にとって分かりやすい授業を
実施するとともに、落ち着いて生活できる教室環境の整備や、周囲の児童・
生徒の理解を深めるなどの学級づくりを行うことで、全ての児童・生徒が安
心して学ぶことができます。
このため、次の内容を含むユニバーサルデザインの考え方に基づく指導と
学級づくりのためのガイドラインを作成し、通常の学級における発達障害教
育を充実するとともに、特別支援教育に関する校内委員会を活性化するなど、
学校全体で取り組む発達障害教育を推進します。
①発達障害の児童・生徒が在籍する学級の経営の改善・充実方法
②通常の学級におけるユニバーサルデザインの考え方に基づく環境設
定・授業・行動支援
③発達障害のない児童・生徒への理解促進の在り方
項
目
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
ユニバーサルデザインの考
え方に基づく指導と学級づ
くりのためのガイドライン
の作成
研究指定校で
の実践検証、
ガイドライン
作成・配布
成果普及
~ユニバーサルデザインの考えに基づく授業~
Topics
ユニバーサルデザインの考え方とは、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわら
ず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方のことです。
こうした考え方の下、通常の学級での授業において、あらかじめ当日の授業の流れ
や段取りを伝えることや、板書やプリントで大事な部分を色分けすることなどは、発達
障害の児童・生徒にとって分かりやすく、集中して授業に参加できるようになるだけで
なく、全ての児童・生徒にとって有効です。
24
第1章 小・中学校における取組
(イ)ソーシャルスキルトレーニングの事例集の作成
発達障害の児童・生徒は、その障害特性から対人関係やコミュニケーショ
ンに課題があることが多いと考えられます。このため、通級指導学級におけ
る実践例を参考に、大学等の研究機関と連携して、通常の学級における道徳
の時間や学級活動で活用するソーシャルスキルトレーニングの事例集を作成
します。あわせて、教員向けの指導資料及びDVDを作成し、学校における
活用を通して発達障害の児童・生徒の社会性の向上を図ります。
項
目
ソーシャルスキルトレーニ
ングの事例集の作成
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究指定校で
の実践検証、
事例集、指導 成果普及
資料、DVD
作成・配布
~ソーシャルスキルトレーニング~
Topics
「相手を理解する」、「自分の思いや考えを適切に伝える」、「人間関係を円滑に
する」、「問題を解決する」、「集団行動に参加する」などの社会生活上の基本的な
技能を習得するため、ロールプレイングなどの実際の場面を想定した練習を通して身
に付ける指導や、ストレスマネジメントと呼ばれるストレスへのよりよい対応の仕方を学
ぶ指導を行います。
25
第1章 小・中学校における取組
3
支援体制の充実
現状と課題
○通級指導学級で指導を受けている児童・生徒は、多くの時間を、在籍する通常
の学級で指導を受けています。
○また、通常の学級には、通級指導学級での指導を受けないまでも、教員による
指導の工夫や配慮、支援員による支援等が必要な発達障害の児童・生徒が在籍
しています。
■通常の学級における発達障害の児童・生徒の状況
発達障害の児童・
生徒の想定在籍数
固定学級相当の指導
が必要な児童・生徒の
想定数
通級指導学級相当の
指導が必要な児童・
生徒の想定数
外部専門家や支援員
等による対応が必要な
児童・生徒の想定数
学級担任等の工夫
による対応が必要な
児童・生徒の総定数
b
c
d
e
a
小学校
33,661人
― 16,445人
― ― 中学校
11,326人
1,346人
3,210人
2,989人
3,743人
※1 都教育委員会が実施した調査結果(小学校:平成26年度、中学校:平成27年度)
※2 b、c、d、e欄は単一回答。未回答があるため、合計はa欄とは一致しない。
※3 b、d、e欄は中学校の調査にのみ設けた設問
○国は、発達障害を含めた障害のある児童・生徒に対し、日常生活動作の介助や、
学習活動上のサポートを行う「特別支援教育支援員」を配置するために必要な
経費を地方財政措置しています。支援員は必要に応じて区市町村が配置してい
ますが、その役割や専門性はそれぞれ異なっています。
26
第1章 小・中学校における取組
○都教育委員会は、発達障害の児童・生徒を指導・支援する小・中学校の教員の
専門性を向上させるため、特別支援学校のセンター的機能を活用した小・中学
校への支援や教員に対する研修等を行ってきました。また、都教育委員会は、
平成 26、27 年度に文部科学省の「特別支援学校機能強化モデル事業(センター
的機能充実事業)」を受託し、特別支援学校と専門家とが連携した小・中学校へ
の相談の実施を通して特別支援教育コーディネーター等の専門性を向上させる
ことで、特別支援学校の相談機能を充実させる取組を行ってきました。
○今後、通常の学級における指導・支援を更に充実させるためには、指導の工夫
や配慮等をより適切に行う必要があります。また、児童・生徒の学校生活上の
課題を的確に分析した上で、児童・生徒一人一人の障害の状態に応じた指導・
支援を行えるよう、外部専門家等を一層活用することが必要です。
具体的な取組
(1)支援員の活用と資質向上
発達障害の児童・生徒に対する、支援員による適切かつ効果的な支援の在り
方や、円滑な学級経営への関わり方など、支援員の効果的な活用についての研
究と併せて、区市町村が配置する支援員の資質向上のための研修用DVDを、
全ての公立小・中学校で活用していきます。
項
目
支援員の活用と資質向上
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究事業(27
成果普及
~28 年度)
27
第1章 小・中学校における取組
(2)外部専門家の活用
児童・生徒一人一人の障害の状態に応じた指導・支援を行うため、次の外部
専門家の活用について研究し、各校等にその成果を普及していきます。
ア
医師
発達障害と考えられる児童・生徒等と面談を行い、学級担任等に対して、
専門的な立場から効果的な支援の在り方について助言を行うとともに、障
害についての理解促進や、必要に応じて医療との接続を図ります。
イ
心理の専門家
特別支援教室を利用する児童・生徒が抱える学習面・行動面での困難に
ついての的確な把握とそれに基づく指導・支援について、臨床発達心理士
等が専門的立場から教員や本人・保護者に対して助言を行います。
また、特別支援教育に関する校内委員会で、特別支援教室での指導の対
象となる児童・生徒について検討する際に、専門的な立場から助言を行い
ます。
ウ
スクールソーシャルワーカー
発達障害の児童・生徒へのいじめや不登校等の生活指導上の課題に対応
するため、当該児童・生徒の障害の状態を踏まえ、学校と保健・福祉・医
療等の関係機関との連携を図ります。
項
目
外部専門家の活用
28
年
28 年度
29 年度
研究事業(27
成果普及
~28 年度)
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
第1章 小・中学校における取組
(3)特別支援学校のセンター的機能の活用
エリア・ネットワーク*17 のセンター校*18 の役割を担う特別支援学校が、エリ
ア内の区市町村教育委員会と一層連携し、各教育委員会が行う研修会に、その
要請に応じて講師の派遣等を行うとともに、企画段階から参画します。
また、特別支援学校間の連携強化等により、特別支援教育コーディネーター
の専門性の向上を図るとともに、小・中学校からの要請に応じて、特別支援学
校の特別支援教育コーディネーター等が指導に立ち会い、助言を行うことで、
小・中学校の発達障害教育を担う教員等に対する支援を充実します。
項
年
目
28 年度
特別支援学校のセンター的
機能の活用
次
29 年度
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
センター的機
能の活用
特別支援学校のセンター的機能
パートナーシップ
区市町村
幼稚園、保育所、小学校、中学校
連
携
センター校
(知的障害特別支援学校小・中学部設置校)
連
携
他の都立特別支援学校
※平成 27 年度現在、25 のエリアを形成
エリア・ネットワーク
各区市町村を基礎的な単位として教育、福祉、医療、保健、労働等の関係機関等が相互に密接な連携を図り、互いの機能
を有効に活用できるネットワーク
*18
センター校
エリア・ネットワークの拠点となる特別支援学校
*17
29
A
30
第2章
高等学校における取組
1
発達障害教育環境の整備
2
指導内容の充実と組織的な対応
3
支援体制の充実
31
第2章 高等学校における取組
1
発達障害教育環境の整備
現状と課題
○実態調査によると、都立高校に通う生徒のうち、発達障害と考えられる生徒の
在籍率は 2.2%であり、その内訳は、全日制課程で 1.2%、定時制課程で 11.4%
と課程によって大きな差があることが分かりました。
■高校における発達障害の生徒の在籍状況
発達障害の
生徒の在籍数
b
生徒数
a
高校
在籍率
c=b/a
計
138,908人
3,050人
2.2%
全日制
125,425人
1,511人
1.2%
定時制
13,483人
1,539人
11.4%
※1 a欄は、公立学校統計(平成26年5月1日)の数
※2 b欄は、平成26年度に都教育委員会が実施した調査結果
○都教育委員会はこれまで、都立高校の特別支援教育を推進するため、特別支援
教育コーディネーターの指名とその育成、特別支援教育に関する校内委員会の
設置、特別支援学校と連携した進路指導等に取り組んできました。
■高校における特別支援教育推進体制
平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度
公立高校数
197校
196校
195校
194校
194校
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
0回
39.0%
21.1%
29.5%
13.4%
17.0%
1回
23.1%
30.9%
23.8%
27.3%
24.2%
開催回数 2回
11.8%
17.0%
15.5%
17.5%
16.0%
3回
6.2%
10.8%
5.7%
13.4%
11.9%
4回以上
20.0%
20.1%
25.4%
28.4%
30.9%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
1人
-
86.1%
69.4%
61.9%
59.3%
2人
-
9.8%
19.7%
27.8%
25.8%
3人以上
-
4.1%
10.9%
10.3%
14.9%
設置あり
校内委員会の設置・開催
指名あり
特別支援教育コーディネーター
の指名
人数
※文部科学省調査「特別支援教育体制整備状況調査結果」による。
32
第2章 高等学校における取組
○一方、高校では、障害に応じた「特別の教育課程*19」の編成に関する法的根拠
がないため、中学校において通級指導学級や固定学級で指導を受けていた生徒
に対して、障害の状態に応じた特別な指導を実施しにくい状況があります。
○高校は、学科や課程が多様である上に、学校ごとに発達障害の生徒の在籍状況
が大きく異なることから、支援体制を一律に整備することは適切であるとは言
えません。また、進学や就職を控えて授業を欠席することに不安を感じたり、
友人との関係から在籍校で特別な指導・支援を受けることに抵抗感を示したり
する場合があるなど生徒の状況も様々です。このため、それぞれの実態や必要
性に応じた指導・支援を行っていく必要があります。
具体的な取組
(1)教育課程外での特別な指導・支援の実施
中学校において通級指導学級での指導・支援を受けていた生徒等が、高校で
も引き続き特別な指導・支援を希望する場合、発達障害の状態に応じた指導・
支援を行うことが必要になります。このため、各校における発達障害の生徒の
在籍者数等にかかわらず、生徒の状態に応じて指導・支援が受けられるよう、
放課後や土曜日などに教育課程外で、学校外において、民間のノウハウを活用
するなどして、ソーシャルスキルトレーニング等の特別な指導・支援を行える
仕組みを構築します。
項
目
教育課程外での特別な指
導・支援の実施
*19
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
実施に向けた
検討、試行実 本格実施
施
特別の教育課程
学校教育法施行規則第 138 条において、「小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程における特別支援学級に
係る教育課程については、特に必要がある場合は、第 50 条第1項、第 51 条及び第 52 条の規定並びに第 72 条から第 74 条
までの規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。」としている。
33
第2章 高等学校における取組
更に検討を要する取組
(2)特別な指導・支援を行う方策の検討
中学校において固定学級での指導・支援を受けていた生徒等が、将来社会人
として自立するために、高校においても引き続き発達障害の状態に応じた特別
な指導・支援を必要とする場合があります。
国における高校での特別の教育課程の実施に関する検討状況を注視しつつ、
都教育委員会においても発達障害の状態に応じた社会性に関する指導や進学・
就労支援等、高校における特別な指導・支援を行う方策について更に検討を進
めます。
34
第2章 高等学校における取組
2
指導内容の充実と組織的な対応
現状と課題
○高校では、個別の教育支援計画(学校生活支援シート。以下「個別の教育支援
計画)という。)*20 及び個別指導計画*21 の作成・活用に関する指導資料の活用や、
特別支援学校と連携した進路指導などの取組を行ってきました。個別の教育支
援計画等の作成が必要な生徒が在籍する高校のうち、4~5割程度の高校では、
作成して指導・支援を行っているものの、本人・保護者の同意が得られない等
の様々な理由で、作成ができていない高校があります。
○支援の内容や方法についても、各教員の経験によるところが大きいことから、
個別の教育支援計画等作成の推進とともに、生徒一人一人の障害の状態に応じ
た組織的な対応の充実を図っていくことが重要です。
■高校における個別指導計画等作成状況
平成24年度 平成25年度 平成26年度
公立高校数
195校
194校
194校
個別指導計画の作成が必要な生徒がいる学校のうち、
作成済みの学校
48.2%
51.8%
47.1%
個別の教育支援計画の作成が必要な生徒がいる学校
のうち、作成済みの学校
37.7%
46.2%
39.1%
※文部科学省調査「特別支援教育体制整備状況調査結果」による。
○このため、発達障害の生徒一人一人の障害の状態に応じた指導・支援の充実や
進路指導の実施等により、学校・学級への不適応による不登校や中途退学を予
防するとともに、将来の自立と社会参加を実現するため、全ての高校で必要な
指導・支援を行うことができるようにする必要があります。
個別の教育支援計画
本人や保護者の希望を踏まえて、教育・保健・医療・福祉等が連携して児童・生徒を支援していく長期計画。本人や保護者に対す
る支援に関する必要な情報が記載され、乳幼児期から学校卒業後までの一貫性のある支援を行っていくためのツール。都では、学校生
活支援シートと呼ぶ。
*21
個別指導計画
個別の教育支援計画に示された学校での支援を具体化した指導計画。児童・生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな
指導を行うことができるよう、より具体的に指導目標や指導内容・方法を設定し作成する。
*20
35
第2章 高等学校における取組
具体的な取組
(1)学校設定教科・科目*22 の開発
対人関係やコミュニケーション、情動のコントロール等が苦手な生徒に対し、
自己の障害に関する理解や社会性を向上させるための指導、現場実習を含むキ
ャリア教育*23 を実施することを目的とした学校設定教科「社会人としての意識
と行動(仮称)」等について、実践的な研究開発を行い、各校において在籍する
生徒の状況に応じて活用できるようにします。
項
目
学校設定教科・科目の開発
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
学校設定教
科・科目開発、 モデル校での 必要な学校で
ガイドライン 先行実施
導入
作成・配布
(2)ユニバーサルデザインの考え方に基づく授業の実施と行動支援
発達障害の生徒が持てる力を十分に発揮するためには、個別の教育支援計画
や個別指導計画を適切に作成していくとともに、授業においては、発問や指示
が理解しやすい、活動の見通しが持ちやすいなど、障害特性に応じた分かりや
すい授業の実施や行動支援を行っていくことが必要です。
このため、次の内容を含むユニバーサルデザインの考え方に基づく、授業と
行動支援の手引を作成し、各校における指導・支援を充実していきます。
①分かりやすい授業展開の方法について
②適切な行動を促す行動支援の方法について
③生活指導の方法について
学校設定教科・科目
地域、学校及び生徒の実態、学科の特色等に応じ、特色ある教育課程を編成できるようにするため、高等学校学習指導要領
に掲げられている教科・科目以外に、学校が設けることができる教科・科目
*23
キャリア教育
一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育
*22
36
第2章 高等学校における取組
項
年
目
ユニバーサルデザインの考
え方に基づく授業の実施と
行動支援
28 年度
授業・行動支
援方法の開
発、手引作
成・配布
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
成果普及
(3)障害の状態に応じた進学・就労支援の充実
発達障害の生徒の将来の自立と社会参加を実現するため、大学との連携によ
る進学支援や企業との連携による就労支援に関する実践研究を行い、発達障害
の生徒の進学支援、就労支援の在り方をまとめた進路指導の手引を作成して、
発達障害の状態に応じた進学・就労支援を充実します。
あわせて、個別の教育支援計画や個別指導計画に基づく支援を行っている生
徒の進学・就労に当たっては、個別移行支援計画*24 を作成し、進学・就労先へ
適切につないでいきます。
項
目
障害の状態に応じた進学・就
労支援の充実
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
事例研究、
手引作成・配 成果普及
布
(4)学校・学級不適応の生徒への対応
発達障害の生徒は、その障害特性から授業中の離席など衝動的な行動を起こ
したり、また、周囲からの理解が得られず疎外感を感じやすいことから不登校
や中途退学につながったりするなど、様々な学校・学級不適応を起こすことが
あります。
このため、以下に示す組織的な対応の在り方をまとめた教員用の手引及びD
VDを作成し、学校・学級不適応の予防・改善を図るとともに、障害のない生
徒に対して、発達障害の理解を促進します。
*24
個別移行支援計画
卒業後の職業生活や地域生活への円滑な移行を見通し、在学中から関係機関等と連携して、一人一人のニーズに応じた支
援を実施するための計画
37
第2章 高等学校における取組
①外部有識者や医療・福祉・心理の専門家、教育相談センター等との連携に
より発達障害に起因する学校・学級不適応(不登校、中途退学を含む。)の
改善に向けた組織的対応の在り方をまとめた手引の作成
②障害のない生徒に対して発達障害の理解を促進させるための指導、学校・
学級不適応への対応に関する指導の在り方をまとめたDVDの作成
項
目
学校・学級不適応の生徒への
対応
38
年
28 年度
29 年度
対応方法の開
発、手引・DVD 成果普及
作成・配布
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
第2章 高等学校における取組
3
支援体制の充実
現状と課題
○生徒の学校生活上の課題が、障害によるものなのか否かの見極めや、生徒一人
一人の障害の状態に応じた適切な対応は、担当する教員だけでは難しい場合が
あります。
○高校では、思春期特有の精神状態から、教員に対して率直に自らの不安や学習
面・生活面の困難等を打ち明けることに抵抗を感じる生徒もいます。
○このため、教員が生徒の学校生活上の課題を的確に分析し、生徒一人一人の障
害の状態に応じた指導・支援を行えるよう、教員に対する専門的な助言等が必
要です。
39
第2章 高等学校における取組
具体的な取組
(1)支援員の活用
高校に在籍する発達障害の生徒に対する適切かつ効果的な支援の在り方や、
円滑な学級経営への関わり方など、支援員の効果的な活用方法について研究し、
各校にその成果を普及していきます。
項
目
支援員の活用
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究事業(27 成果普及
~28 年度)
(2)外部専門家の活用
生徒一人一人の障害の状態に応じた指導・支援を行うため、以下の外部専門
家の活用について研究し、各校にその成果を普及していきます。
また、外部専門家との相談を円滑に実施できるよう、高校の教員が活用する
「学習・行動の支援に関する気付きチェックリスト」を作成・配布します。
ア
医師
発達障害と考えられる生徒等と面談を行い、学級担任等に対して専門的な
立場から効果的な支援の在り方について助言を行うとともに、障害について
の理解促進や、必要に応じて医療との接続を図ります。
イ
心理の専門家
高校に在籍する発達障害の生徒等との相談、周囲との人間関係の構築や学
習しやすい環境の調整などについて、教員や本人・保護者に対して支援や助
言を行います。
また、特別支援教育に関する校内委員会で、専門的な立場から助言を行い
ます。
ウ
スクールソーシャルワーカー
発達障害の生徒へのいじめや不登校等の生活指導上の課題に対応するため、
当該生徒の発達障害の状態を踏まえ、学校と保健・福祉・医療等の関係機関
との連携を図ります。
40
第2章 高等学校における取組
項
目
外部専門家の活用
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研究事業(27
~28 年度)
、 成果普及
チェックリス
ト作成・配布
(3)特別支援学校のセンター的機能の活用
高校への支援の仕組みを明確にするとともに、特別支援学校間の連携強化等
により、特別支援教育コーディネーターの専門性の向上を図り、高校に対して、
次の支援等を行っていきます。
ア
学校・学級不適応の生徒への具体的な対応方法に関する助言
イ
生徒の進路指導に関する具体的な助言
項
目
特別支援学校のセンター的
機能の活用
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
センター的機
能の活用
41
A
42
第3章
教員の専門性向上
1
研修の充実
2
人材の有効活用
3
採用前からの人材養成
43
第3章 教員の専門性向上
1
研修の充実
現状と課題
○ほとんどの学校に発達障害の児童・生徒が在籍していることが推測される中、
都教育委員会では、これまで研修や講習会において、教員の発達障害に関する
理解促進や特別支援教育コーディネーターの育成等を行ってきました。
○一方、意識調査によると、小学校で 54.9%、中学校で 60.2%、高校で 59.7%
の教員が「発達障害に関する知識はあるが具体的にどう対処すれば良いか分か
らない」又は「発達障害に関する知識がなく対処できていない」と回答してい
ます。
■発達障害の児童・生徒への対処 [学級担任回答]
0%
小学校
25%
50%
75%
45.1%
48.0%
中学校
39.7%
48.8%
高校
40.3%
47.9%
100%
6.9%
11.4%
11.8%
知識があり、具体的に対処できている
知識はあるが、具体的にどう対処すれば良いか分からない
知識がなく対処できていない
○発達障害の児童・生徒の保護者からは、教員の発達障害に関する理解や対応力
の向上を求める意見が上がっています。
44
第3章 教員の専門性向上
○平成 28 年度以降、区市町村において特別支援教室が順次導入されることから、
発達障害教育を担う教員の更なる専門性の向上はもとより、全ての教員が発達
障害の基礎的な知識及び対応力を身に付けることが急務となっています。
具体的な取組
(1)職層や経験に応じた研修の実施
発達障害に関する知識や、通常の学級における発達障害の児童・生徒との関
わり方など、1年次(初任者)研修、10 年経験者研修等、職層や経験に応じた
研修の内容を充実し、資質・能力の向上を図ります。
また、教育管理職が発達障害教育を校内において適切に推進できるよう、全
ての校長・副校長を対象とした研修を実施します。
項
目
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
職層や経験に応じた研修の
研修の充実
実施
(2)発達障害に関する専門性の向上を図る研修の実施
平成 28 年度から導入される特別支援教室の巡回指導教員等、発達障害教育を
中心となって担う教員を対象に、発達障害の児童・生徒の行動特性や指導の在
り方等について研修を行い、専門性の向上を図ります。
また、新たに特別支援教室の担当となる教員等に対し、異動前の講習会を実
施します。
項
目
発達障害に関する専門性の
向上を図る研修の実施
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
研修の充実、
異動前講習会
実施
45
第3章 教員の専門性向上
2
人材の有効活用
現状と課題
○通級指導学級の利用者及び固定学級の在籍者は年々増加しており、発達障害教
育を担当する教員の専門性の向上が求められています。
○発達障害と考えられる児童・生徒がほとんどの通常の学級に在籍していると推
測されるものの、意識調査によると、過半の教員が発達障害の児童・生徒への
対処ができていないと回答しています。
○こうした状況の中、発達障害の児童・生徒に対して適切な指導・支援を行うた
めには、教員への研修に加え、更なる人材育成・人材確保の方策が求められま
す。
46
第3章 教員の専門性向上
具体的な取組
(1)人事異動を活用した発達障害教育に係る人材育成及び人材確保
小・中学校と特別支援学校の教員の異校種期限付異動*25 を促進し、小・中学
校の教員が特別支援学校での経験を通して、発達障害教育に関する理解を深め
ていきます。
また、発達障害教育に対する意識が高く、特別支援教育に必要な資質・能力
を持った教員を確保するため、特別支援学級(特別支援教室を含む。)の教員に
ついて公募人事を実施します。
項
目
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
人事異動を活用した発達障
害教育に係る人材育成及び
検討、順次実
施
人材確保
(2)指導教諭*26 を活用した教員全体の専門性の向上
特別支援教育において高い専門性と優れた指導力を持つ教員である指導教諭
を、小・中学校の特別支援学級担当として活用していきます。
また、教員全体の専門性を向上させるため、指導教諭が実施する模範授業・
公開授業に、特別支援学級を担当する教員に加え、通常の学級を担当する教員
も参加できるようにします。
項
目
指導教諭を活用した教員全
体の専門性の向上
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
指導教諭の活
用
異校種期限付異動
特別支援教育を担う専門性の高い教員の育成や確保、児童・生徒の発達段階に応じた指導の向上等を図ることを目的とし
て、小・中学校、高校と特別支援学校の間で期限を定めて行う異動の仕組み
*26
指導教諭
児童・生徒の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を
行う職(学校教育法第 37 条第 10 項)
*25
47
第3章 教員の専門性向上
3
採用前からの人材養成
現状と課題
○意識調査では、1割程度の教員が「発達障害に関する知識がなく対処できてい
ない」と感じていることが明らかとなりました。
■発達障害の児童・生徒への対処 [学級担任回答]
0%
小学校
25%
50%
75%
45.1%
48.0%
中学校
39.7%
48.8%
高等学校
40.3%
47.9%
100%
6.9%
11.4%
11.8%
知識があり、具体的に対処できている
知識はあるが、具体的にどう対処すれば良いか分からない
知識がなく対処できていない
○都教育委員会は、平成 16 年度から、教員養成系大学や区市町村教育委員会と連
携した「東京教師養成塾*27」において、特別支援教育に関する実習や体験活動
等を通して学生段階からの人材養成を行っています。
○今後、発達障害の児童・生徒に適切な指導・支援をしていくため、現職の教員
の育成のみならず、発達障害教育に必要な知識・能力を備えた人材の養成の更
なる充実が求められます。
*27
48
東京教師養成塾
社会の変化や子供・保護者の願いを的確に捉えられるよう、豊かな人間性と実践的指導力を兼ね備えた人材を学生の段階か
ら養成する都独自の制度(平成 16 年度開設)
第3章 教員の専門性向上
具体的な取組
(1)東京教師養成塾等の活用
東京教師養成塾に設置される小学校コースの特別教育実習における特別支援
学校の参観や、教科等指導力養成講座における発達障害教育を含む特別支援教
育に関する講義・演習を通じて、教員を目指す学生(以下「塾生」という。)の
理解を啓発し知識を高めます。
特別支援学校コースの特別教育実習における特別支援教育コーディネーター
の講話や、教科等指導力養成講座における心理検査の結果の活用等についての
演習を通じて、塾生の理解を啓発し知識を高めます。
また、東京都公立学校教員採用候補者名簿の登載者を対象として実施してい
る採用前実践的指導力養成講座*28 において、発達障害教育に関する講義等を通
じて、採用予定者の理解を啓発します。
項
目
東京教師養成塾等の活用
年
28 年度
次
29 年度
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
教師養成塾の
充実、採用前
実践的指導力
養成講座の活
用
東京教師養成塾
特別教育実習
*28
教科等指導力養成講座
体験活動
年間を通した教育実習等によ
り、実践的な指導力や柔軟な
対応力を身に付ける。
教科等の専門性や指導技術
の向上及び学級経営における
実践的な指導力を身に付ける。
企業等での就業体験を行い、
社会人としての責任ある態度を
養う。
●教師養成指定校での実習
●異校種の授業の参観
・ 小学校コース
特別支援学校の参観
・ 特別支援学校コース
異なる障害種別の学校
の参観
●模範となる授業の参観
●教科等に関する講座
●学級経営に関する講座
●教育課題に関する講座
・ 特別支援教育
・アレルギー対応
・キャリア教育
・ICTへの対応
●英語に関する能力の向上を
図る講座
●企業等での就業体験
採用前実践的指導力養成講座
東京都公立学校教員採用候補者を対象として、学習指導や学級経営、特別支援教育、保護者との信頼関係づくり等について
講義や体験活動を通して学び、採用前に実践的な指導力を身に付けることを目的に講座を実施している。
49
(2)教員養成系大学等との連携強化
教員養成系大学等に都教育委員会の指導主事*29 等を派遣して行っている講義
において、発達障害教育に関する内容を盛り込むことで、教職を目指す学生に
対する理解啓発を図ります。
あわせて、教職課程を持つ大学等の実情を把握するとともに、
「小学校の教職
課程学生ハンドブック」*30 における発達障害教育に関する記述を充実して情報
提供していきます。
また、教員養成系大学等から、発達障害に関する教育カリキュラムの開発等
に当たり、要請があった場合には、都教育委員会として積極的に支援していき
ます。
項
目
教員養成系大学等との連携
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
連携強化
強化
指導主事
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第 18 条の規定に基づき教育委員会事務局におかれる職員。学校における教育課
程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事する。
*30
小学校の教職課程学生ハンドブック
教師を目指す大学生を対象に、都教育委員会が大学での学びを支援するために作成した冊子。
教師として必要な最小限の資質・能力を身に付けるために、大学の養成課程で学ぶべきことを具体的に示してある。
*29
50
第4章
総合支援体制の充実
1
継続した指導・支援の充実
2
発達障害教育に係る理解の促進
51
第4章 総合支援体制の充実
1
継続した指導・支援の充実
現状と課題
○実態調査により、幼稚園・保育所等の就学前機関には約 5.1%の発達障害と思
われる幼児が在籍していることが分かりました。
■幼稚園・保育所等における発達障害の幼児の在籍状況
幼児数
発達障害の幼児
の想定在籍数
在籍率
a
b
c=b/a
407,258人
20,770人
5.1%
※1 a欄は、公立学校統計(平成27年5月1日現在)及び保育サービス利用児童数
の状況 (平成27年4月現在、東京都福祉保健局実施の調査)の数
※2 b欄は、都教育委員会が平成27年度に実施した抽出調査結果による在籍率(c欄)
に基づき推計
○発達障害は、早期に発見し継続的に適切な指導・支援を行うことで、円滑な就
学や社会適応につながりやすくなることから、保護者の理解を得やすい早期発
見の仕組みや、就学前から学校卒業後までの各段階において指導・支援の情報
が円滑に引き継がれ、継続した指導・支援を受けられる仕組みづくりが求めら
れます。
○都教育委員会は、これまで、就学前機関から小学校への引継ぎのため、幼稚園
や保育所における指導・保育の様子などを小学校に引き継ぐ「就学支援シート
*31
」や、学校間や学年間における指導・支援の情報を引き継ぐ「個別の教育支
援計画」、学齢期と社会(進学・就労先)をつなぐための「個別移行支援計画」
の活用を通して、児童・生徒一人一人に対する一貫性のある継続した指導・支
援の充実に取り組んできました。
*31
52
就学支援シート
障害のある児童が豊かな学校生活を送ることができるよう、障害の様子や指導の手立て・手掛かり、就学後も引き継いでほしい
支援の内容、保護者の要望等についてまとめ、就学前機関から小学校等に引き継いでいくもの
第4章 総合支援体制の充実
○こうした指導・支援の情報の引継ぎを、今後更に充実していくとともに、教育
のみならず、保健・医療・福祉・労働などの様々な関係機関と相互に連携を図
りながら、乳幼児期から学校卒業まで一貫性のある継続した指導・支援を推進
する必要があります。
○現在、都には発達障害の児童・生徒や保護者からの相談を受ける窓口として、
教育分野での発達障害に関する相談を受ける「東京都教育相談センター」や、
就学に関する相談を受ける「東京都特別支援教育推進室」があるほか、発達障
害者支援法により指定された専門機関である「東京都発達障害者支援センター
(TOSCA)」や区市町村が設置している「こども発達支援センター」などがあり、
これら関係機関の連携についても充実させていく必要があります。
具体的な取組
(1)早期教育支援に関する幼稚園・保育所等との連携
都教育委員会は、乳幼児期から学齢期までをつなぐ早期支援の実現のため実
施したモデル事業*32 の成果や、東京都福祉保健局が実施する障害者施策推進区
市町村包括補助事業*33 などを活用した先駆的な取組を行う区市町村の事例を各
区市町村に周知し、幼稚園・保育所等と小学校との連携体制を更に推進します。
また、幼稚園・保育所等で行われてきた指導・支援内容等を小学校へ確実に
引き継ぐため、幼稚園・保育所等が作成する「就学支援シート」等の活用を一
層推進します。
項
目
早期教育支援に関する幼稚
園・保育所等との連携
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
モデル事業の
成果報告・連
携の促進
早期支援の実現のため実施したモデル事業
モデル地区において、教育的支援を行うコーディネーターの配置や、福祉等との連携体制の整備、就学前機関と小学校の教員
等の連携により、幼児期から教育的支援を行い、就学後の適切な指導・支援につなげていく事業
*33
障害者施策推進区市町村包括補助事業
区市町村が地域の実情に応じ、創意工夫を凝らして主体的に実施する障害者に対する福祉サービスの充実に資する事業。医
療保健政策、地域福祉推進、高齢社会対策、子供家庭支援、障害者施策推進の五つの事業分野から構成される「福祉保健
区市町村包括補助事業」の一つ
*32
53
第4章 総合支援体制の充実
(2)乳幼児期から学校卒業までの一貫性のある継続した支援等の充実
「就学支援シート」や「個別の教育支援計画」、「個別移行支援計画」に基づ
く学校間や関係機関との連携を一層強化するため、これまでの研究成果に基づ
き「個別の教育支援計画に基づく連携ガイドライン」を作成し、乳幼児期から
学校卒業まで一貫性のある継続した指導・支援を充実します。
項
目
乳幼児期から学校卒業まで
の一貫性のある継続した支
援等の充実
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
連携強化のた
めの検討、ガ
成果普及
イドライン作
成・配布
(3)保健・医療・福祉・労働との連携体制の充実
発達障害の児童・生徒への支援の充実を図るため、教育と保健・医療・福祉・
労働の関係機関が協議する場を設け、発達障害に係る相互連携の充実について
検討します。
項
目
保健・医療・福祉・労働との
連携体制の充実
年
28 年度
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
連携協議会の
設置、相互連
携
更に検討を要する取組
(4)発達障害教育に関する相談機能等の充実
発達障害教育に関し、小・中学校及び高校の児童・生徒やその保護者、指導・
支援を行う教員を支援するため、相談機能や教育情報バンク、専門家の派遣等、
発達障害教育の充実に向けた総合的な教育相談機能等の在り方について更に検
討します。
54
第4章 総合支援体制の充実
2
発達障害教育に係る理解の促進
現状と課題
○発達障害の児童・生徒は、一人一人の学習面・生活面の困難が異なり、その特
性が周囲の児童・生徒から理解されにくいため、からかいやいじめの対象にな
る場合などがあり、保護者からは友人関係への配慮等の充実が必要との要望が
あります。
○発達障害は、本人や保護者にとっても学習面等における困難が障害に起因する
ことに気付きにくいため、必要な指導や支援につながらない場合があります。
○都教育委員会は、これまで教員の発達障害に係る理解の促進に向けた研修など
を進めてきましたが、発達障害の児童・生徒を適切な指導・支援につなげるた
めには、教員の理解にとどまらず、発達障害の児童・生徒やその保護者をはじ
め、広く都民の理解を進めていくことが求められます。
○発達障害の児童・生徒にとっては、必要な支援が、学校のみならず、保健・医
療・福祉・労働など様々な関係機関、また、放課後の居場所である放課後子供
教室*34 等においても同様に受けられることが重要です。
*34
放課後子供教室
区市町村を実施主体として、放課後や週末等に小学校等を活用して、全ての子供を対象に子供たちの安全・安心な活動拠
点(居場所)を設け、地域の人々の参画を得て、子供たちに学習やスポーツ・文化活動、地域住民との交流活動等の機会を
提供する事業
55
第4章 総合支援体制の充実
具体的な取組
(1)発達障害教育に係る理解の促進
発達障害に対する理解の促進と、都教育委員会における発達障害教育に係る
施策の推進のため、小・中学校及び高校に在籍する児童・生徒やその保護者を
はじめ、広く都民に対し、発達障害教育に関する説明会を実施します。
また、就学を控えた5歳児の保護者を対象としたパンフレットを作成・配布
し、適切な就学と必要な指導・支援につなげるための理解を促進します。
さらに、区市町村職員や放課後子供教室等の活動に携わる関係者を対象とし
た理解促進のための研修を充実させるなど、放課後子供教室等における発達障
害の児童・生徒の円滑な受入れを支援します。
項
目
発達障害教育に係る理解の
促進
56
年
28 年度
説明会実施
パンフレット
作成・配布
放課後子供教
室等関係者へ
の研修
29 年度
次
計
30 年度
画
31 年度
32 年度
資料
資料1
特別支援学級在籍者・利用者数の年度別推移
資料2
都内公立学校及び就学前機関における
発達障害に関する実態調査
資料3
都内公立学校における発達障害に関する
意識調査
資料4
東京都発達障害教育推進会議
57
資
料
資料1
特別支援学級在籍者・利用者数の年度別推移
各年度5月1日現在
単位(人)
情緒障害等
通級指導学級
自閉症・情緒障害
特別支援学級
昭和
50年度
昭和
55年度
昭和
60年度
昭和
61年度
小学校
224
489
452
424
424
396
373
380
382
388
401
中学校
6
28
58
89
113
117
151
166
178
178
190
計
230
517
510
513
537
513
524
546
560
566
591
小学校
43
61
90
83
85
86
77
67
64
70
64
中学校
-
13
33
29
43
63
57
52
47
45
39
計
43
74
123
112
128
149
134
119
111
115
103
平成
12年度
平成
13年度
平成
14年度
平成
15年度
平成
6年度
情緒障害等
通級指導学級
自閉症・情緒障害
特別支援学級
情緒障害等
通級指導学級
平成
8年度
平成
9年度
平成
3年度
平成
4年度
平成
5年度
平成
16年度
540
582
627
667
743
844
988
1,189
1,458
中学校
183
184
214
235
246
252
274
293
288
319
373
計
632
662
754
817
873
919
1,017
1,137
1,276
1,508
1,831
小学校
66
68
72
81
79
76
76
74
88
96
106
中学校
30
29
28
28
22
22
22
18
19
25
39
計
96
97
100
109
101
98
98
92
107
121
145
平成
17年度
平成
18年度
平成
19年度
平成
20年度
小学校
1,777
2,115
2,735
3,238
3,669
4,147
4,512
4,980
5,488
6,209
7,190
中学校
499
629
761
862
978
1,047
1,154
1,303
1,450
1,706
1,841
2,276
2,744
3,496
4,100
4,647
5,194
5,666
6,283
6,938
7,915
9,031
小学校
111
126
132
128
158
165
175
207
251
275
294
中学校
51
49
54
57
87
105
124
134
165
214
212
計
162
175
186
185
245
270
299
341
416
489
506
平成
21年度
平成
22年度
平成
23年度
平成
24年度
平成
25年度
平成
26年度
平成
27年度
■自閉症・ 情緒障害特別支援学級在籍者数の推移( 平成1 8 ~2 7 年度)
(人)
小学校
7,000
7,190
350
小学校
300
中学校
6,000
294
中学校
250
5,000
212
200
4,000
150
2,115
2,000
1,841
629
100
126
49
50
-
H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
58
平成
11年度
平成
2年度
478
(人)
8,000
1,000
平成
10年度
平成
元年度
449
■情緒障害等通級指導学級利用者数の推移( 平成1 8 ~2 7 年度)
3,000
昭和
63年度
小学校
計
自閉症・情緒障害
特別支援学級
平成
7年度
昭和
62年度
H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
資
資料2
料
都内公立学校及び就学前機関における発達障害に関する実態調査
1 調査の目的
都内の公立小・中学校及び高校における発達障害の児童・生徒一人一人の障害の状態に応じた適切な教育
的支援を行うため、都内の公立学校及び就学前機関における発達障害の児童・生徒の在籍状況や支援の実態
等を把握し、具体的施策の検討に生かすことを目的とする。
2 調査対象及び実施時期
(1)幼稚園等(幼稚園、認証保育所、認可保育所、認定こども園)
(2)小学校
平成26年度
(3)中学校
平成27年度
(4)高校
平成26年度
平成27年度
3 回答数
対象校数
回答校数
回答率
幼稚園等
3,840校
1,098校
28.6%
小学校
1,295校
1,295校
100.0%
中学校
617校
617校
100.0%
高校
193校
193校
100.0%
4 幼児・児童・生徒の在籍状況
■発達障害と考えられる児童・生徒数 [校長・園長回答]
通常の学級の
児童・生徒数
発達障害と考えられる
児童・生徒数
在籍率
a ※
b
c=b/a
幼稚園等
407,258人
20,770人
5.1%
小学校
552,897人
33,661人
6.1%
中学校
228,340人
11,326人
5.0%
138,908人
3,050人
2.2%
高校 全日制
125,425人
1,511人
1.2%
定時制
13,483人
1,539人
11.4%
計
※ a欄・・・公立学校統計(各調査年5月1日現在)及び保育サービス利用児童数の
状況 (平成27年4月現在、東京都福祉保健局実施の調査)の数
59
資
料
■通級指導学級相当の指導が必要と考えられる児童・生徒数 [校長回答]
発達障害と考えられる
児童・生徒数
通級指導学級相当の
指導が必要と考えられる
児童・生徒数
割合
通級指導学級利用
児童・生徒数
a
b
c=b/a
d※
小学校
33,661人
16,445人
48.9%
6,209人
中学校
11,326人
3,210人
28.3%
1,841人
※ d欄・・・公立学校統計(各調査年5月1日現在)の数
■固定学級相当の指導が必要と考えられる児童・生徒数 [校長回答]
発達障害と考えられる
児童・生徒数
固定学級相当の
指導が必要と考えられる
児童・生徒数
割合
固定学級利用
児童・生徒数
a
b
c=b/a
d※
小学校
33,661人
ー ー 275人
中学校
11,326人
1,346人
11.9%
212人
※ d欄・・・公立学校統計(各調査年5月1日現在)の数
■通常の学級に在籍する発達障害と思われる生徒の状況 [校長回答]
中学校
発達障害の
児童・生徒の
想定在籍数
固定学級相当の指
導が必要な児童・生
徒の想定数
通級指導学級相当
の指導が必要な児
童・生徒の想定数
a
b
c
d
e
1,346人
3,210人
2,989人
3,743人
11,326人
※ b、c、d、e欄は単一回答。未回答があるため、合計はa欄とは一致しない。
60
外部専門家や支援
学級担任等の工夫に
員等による対応が必
よる対応が必要な児
要な児童・生徒の
童・生徒の総定数
想定数
資
料
5 幼稚園等における状況
■発達障害と思われる幼児の年齢別の在籍率 [園長回答]
7%
5.9%
5.8%
6%
園・所全体
5%
4.6%
5.1%
4%
3%
2%
1%
0%
3歳児学級
4歳児学級
5歳児学級
■教員及び保育従事者の発達障害に対する理解 [園長回答]
全員が十分理解している
0.7%
幼稚園等
19.0%
61.0%
ほとんどの教員及び保育
19.2%
従事者が理解している
一部の教員及び保育
従事者は理解している
0%
20%
40%
60%
80%
100%
ほとんど理解されていない
■発達障害児の保護者との支援についての共通理解 [園長回答]
保護者全員と共通理解が
できている
幼稚園等
31.4%
56.9%
11.7%
保護者の一部と共通理解が
できていない
保護者のほとんどと共通理解
0%
20%
40%
60%
80%
100% ができていない
61
資
62
料
資
料
63
資
料
8 高校における支援状況
■発達障害と考えられる生徒への支援について中学校から引き継げているか。 [校長回答]
そう思う
どちらかといえば
そう思う
高校
8.5%
20.3%
30.1%
36.0%
5.1%
どちらかといえば
そう思わない
そう思わない
0%
20%
40%
60%
80%
100%
分からない
■発達障害と考えられる生徒への支援のために最も巡回が必要な専門家は。 [校長回答]
1.5%
高校
47.4%
32.6%
医師
心理士
18.5%
ソーシャルワーカー
その他
0%
64
20%
40%
60%
80%
100%
資
料
65
資
66
料
資
資料3
料
都内公立学校における発達障害に関する意識調査
1 調査の目的
発達障害の児童・生徒に必要な教育基盤を明らかにするため、公立学校の現状や、教職員及び保護者が日
頃困難を感じている点等を把握し、今後の教育行政における具体的施策の検討に生かすことを目的とする。
2 実施時期
平成25年度
3 調査対象
(1)対象校
小学校:407校、中学校:408校、高校:193校(234課程)
(2)対象者
①校長
各課程 1人
②特別支援教育コーディネーター
各 校 1人
③学級担任
各学年 1人
④保護者
各
校 1人
4 回答数
小学校
中学校
高校
校長
324人
310人
210人
特別支援教育
コーディネーター
355人
352人
225人
2,024人
1,023人
2,991人
324人
310人
164人
学級担任
保護者
67
資
68
料
資
料
69
資
70
料
資
資料4
料
東京都発達障害教育推進会議
「東京都発達障害教育推進会議」設置要綱
(目的)
第1 都内の公立小・中学校及び高等学校に在籍する自閉症、アスペルガー症候群等の広汎性発
達障害、学習障害及び注意欠陥多動性障害等(以下「発達障害等」という。
)のある児童・生
徒に必要な教育基盤を明らかにするため、
「東京都発達障害教育推進会議」
(以下「推進会議」
という。)を設置する。
(所掌事項)
第2 推進会議は、次の各号に掲げる事項について検討する。
(1) 都内の公立小・中学校及び高等学校に在籍する発達障害等のある児童・生徒の教育に関す
ること。
(2) 前号による検討結果に基づく、都教育委員会への「提言」に関すること。
(3) その他検討を要すること。
(構成)
第3 推進会議は、別紙に掲げる外部有識者及び学校関係者をもって構成する。
(座長等)
第4 推進会議には、座長及び副座長を置く。
2 座長は、委員の互選により専任する。
3 座長は、推進会議を主宰し、会務を統括する。
4 推進会議には副座長を置き、座長は、委員のうちから副座長を指名する。
5 副座長は、座長を補佐し、座長が不在のときには、その職務を代理する。
(設置期間)
第5 推進会議の設置期間は、推進会議が設置された日から平成26年3月31日までとする。
(幹事会の設置)
第6 推進会議に、検討事項を調整するための幹事会を置くことができる。
(専門部会の設置)
第7 推進会議に、専門的事項を調査検討するための専門部会を置くことができる。
(事務局)
第8 推進会議の事務局は、教育庁都立学校教育部特別支援教育課に置く。
(会議及び会議記録)
第9 推進会議は、原則、非公開とする。
2 推進会議の会議要旨については、会議開催の都度取りまとめ、公開するものとする。
(その他)
第10 この要綱に定めるもののほか、推進会議の運営に関する事項は、座長が定める。
附則
この要綱は、平成25年7月31日から施行する。
71
資
料
「東京都発達障害教育推進会議」委員名簿
東
敦子
(社福)のゆり会 のぞみ発達クリニック 所長
市川
宏伸
都立小児総合医療センター 顧問
梅田
真理
国立特別支援教育総合研究所
発達障害教育情報センター 総括研究員
加藤
○
◎
星花
首都大学東京 健康福祉学部 准教授
加藤 正仁
(社福)からしだね
小林
都立桜修館中等教育学校 校長
洋司
うめだ・あけぼの学園 園長
佐々木 正美
川崎医療福祉大学 医療福祉学部
品川
裕香
教育ジャーナリスト
杉山
登志郎
浜松医科大学 児童青年期精神医学講座
樋口
郁代
渋谷区立渋谷本町学園
宮崎 英憲
東洋大学 参与
森下
由規子
明星大学
山岡
修
全国LD親の会 顧問
特任教授
特任教授
校長
教育学部 准教授
(敬称略
五十音順、◎:座長、○:副座長)
「東京都発達障害教育推進会議」協議経過
開催日
第1回
平成25年7月31日
議
題
学校教育における発達障害のある児童・生徒に必要な教育基盤
として重要と考えることは何か
第2回
9月4日
教育行政のこれまでの取組に対する意見及び改善・充実につい
て
第3回
10月16日
発達障害教育の基盤整備に際しての『児童・生徒の成長段階に
対する配慮』、『障害特性や不適応状況の程度の対する配慮』
第4回
12月17日
都内公立学校(就学準備段階、小学校段階)における発達障害
のある児童・生徒に必要な教育基盤の整備に向けた施策検討の
方向性について
第5回
平成26年1月15日
都内公立学校(中学校段階、高等学校段階)における発達障害
のある児童・生徒に必要な教育基盤の整備に向けた施策検討の
方向性について
第6回
2月17日
・いじめ・不登校問題と発達障害教育について
・小・中学校及び高等学校における継続性のある教育について
第7回
72
3月27日
発達障害教育に係る提言について
資
料
≪ 提 言 ≫
特別支援教室の設置
全ての公立小・中学校への特別支援教室設置を実現し、特別な支援が必要な児童・生徒の指
導体制を早期に確立することが重要である。
自閉症・情緒障害特別支援学級の設置
特別支援教室での指導時間を超えた指導を必要とする発達障害の児童・生徒もいるため、一
定数固定の自閉症・情緒障害特別支援学級を設置する必要がある。
アセスメントの実施
学習障害は気付きにくいため、小学校1年生の読み書きにおいて課題を把握し、早期から特
別な支援を行う必要がある。
将来を見据えてどれだけの基礎学力を身に付けられるかについても把握し、指導をする必要
がある。
学級経営の工夫
発達障害の児童・生徒に対する教育は、通常の学級において個々のニーズに応じた、適切な
配慮や指導が受けられることが重要である。発達障害の児童・生徒への指導においては、通常
の学級における学級活動を工夫する必要がある。
学校全体での取組の強化
保護者等への対応など、教員が個人で対応するのではなく、発達障害の児童・生徒を担任す
る教員への支援を含め、学校全体で情報を共有し組織で対応する体制を整備することが重要で
ある。
中学校では教科担任制になるが、思春期段階で噴出する様々な課題に対して、これまでの教
科教員による中等教育の意識では対応ができなくなる。
全ての教科の担当教員が発達障害の児童・生徒に対する情報を共有し、共通理解をもって、
適切な指導・支援を行っていく必要がある。
学校の組織的対応を進めるため、校長は、発達障害教育の取組を学校経営計画に位置付け、
校務分掌やコーディネーターの役割と活動目標、個別の教育支援計画・個別指導計画の達成目
標、専門家チームの活動目標等について、各学校の学校経営計画において指標を定め、学校経
営評価シートにおいて達成状況を評価させる必要がある。
個に応じた指導の充実
一人一人の障害の特性や困っている状況に応じた指導が展開できるよう、学習環境や指導体
制の整備・充実を進め、個に応じた指導の充実を図る必要がある。
体の使い方の訓練やコミュニケーションの指導を十分行い学習に向かう態度や意識を育て
ることで教育効果の向上を目指すことが重要である。
社会性の習得に向けた指導
発達障害の児童・生徒が、社会に適応していくためには、義務教育段階のうちにしっかりと
ルールや社会性を身に付けるとともに、「自分は他の生徒と考え方や気持ちに違いがある」な
ど自分自身を理解し、自らをコントロールするためのスキルを身に付けさせる指導が必要であ
る。
73
資
料
障害のない児童・生徒への理解啓発
周りの児童・生徒から見ると「ルールを守れない」「話が分からない」などから、変わった
子供としてからかいやいじめの対象となりやすい。教員は、周りの児童・生徒に対して理解啓
発を行う必要がある。
長所や得意分野を伸ばす指導
発達障害の児童・生徒は、短所や苦手なことを直す指導は苦痛となることがあることから、
長所や得意分野を伸ばし、学習意欲や自己肯定感を低下させない教育が重要である。特に思春
期以降は、できることを増やす視点での支援を行うなど、劣等感を抱かせず自尊感情を醸成す
るための配慮が必要である。
苦手なことの克服
教員や保護者は、発達障害の児童・生徒にとって、苦手な部分が将来、社会不適応に結びつ
かないよう支援を行うとともに、上手くいかないことが長期間続くなど、社会に対してネガテ
ィブな感情を抱くことのないように適切な指導・支援を行う必要がある。
不適応行動への対応
通常の学級において、発達障害の児童・生徒を支援するためには、パニックなどの不適応行
動が生じた際に、学級を離れて落ち着ける場所を用意するなどの対応の工夫が必要である。
不登校の予防やいじめを受けないための対策
発達障害の児童・生徒は、二次障害として不登校に陥りやすかったり、いじめの対象となっ
てしまったりすることがあるので、発達障害の児童・生徒が自尊感情を失わないように周囲の
児童・生徒の理解を推進するとともに、保護者の理解を促進し、児童・生徒の日頃の生活状況
等の変化など、不登校やいじめの兆候を敏感に把握できる体制を整備する必要がある。
発達障害の児童・生徒の不登校等の問題への対応は、小学校段階では教員集団で対応できた
ものが、中学校段階以降は困難になってくる場合がある。
問題を抱える児童・生徒への対応は、学校だけでなく、医療・福祉・心理等の専門家ととも
に地域で一緒に解決していけるような支援体制を構築する必要がある。
外部専門家の活用
発達障害の児童・生徒は、集団の中で社会への適応力を育成することが重要であるが、こう
したことを通常の学級の担任が適切に指導するためには、専門家や特別支援学校・学級の教員
からの指導方法等についての助言等を受けられる体制を構築することが必要である。
高等学校における社会性の習得に向けた指導
発達障害の生徒の進学や就労を実現するために、キャリア教育の実施や大人と関わるという
体験を通した、社会適応に必要な状況に応じたコミュニケーションスキルの習得などの指導を
実施することが必要である。また、高等学校の学習指導要領に「自立活動」を位置付けること
を国に働きかけることも必要である。
都立高等学校においても、義務教育に準じた形での支援体制が必要であり、特別支援教室や
通級による指導などの具体的な方策を実施する必要がある。
高等学校卒業後の支援
都立高等学校において、就労後も継続的・計画的に支援を行うことが必要である。
74
資
料
高等学校の入学者選抜における対応
中学校段階で特別な支援を受けてきた生徒に、高等学校での学習の機会と場を提供するため
に、入学者選抜における支援内容等を具体的に検討し、実施する必要がある。
教員の専門性の向上
発達障害教育の推進には、管理職の理解と強力なリーダーシップが不可欠であり、専門家等
からの支援を学校が効果的に活用するためには、特別支援教育コーディネーターを中心に、
様々な人的・物的資源を一人一人の発達障害の児童・生徒へ適切に提供する体制が必須である
ことを、全ての学校の管理職に理解させる必要がある。
全ての教員に発達障害の理解啓発を求める保護者は多い。
教員が児童・生徒の発達障害の状況を十分に把握し、必要とする特別な支援を見極められる
力を研修の充実により実現する必要がある。
発達障害の理解がある教員の確保と養成
「生徒に特別な支援が必要なことは理解しているが、具体的な支援の方法が分からない」と
答える教員が多い。
教員養成課程のカリキュラム見直しなどを行い、教員養成段階から発達障害教育の専門性を
高めていく必要がある。
継続した指導・支援
小・中学校及び高等学校間の連携や情報共有には個別の教育支援計画の活用が重要だが、現
在は十分には機能していない。そのため、発達障害の児童・生徒の特性に応じた教育内容や方
法について、個別の教育支援計画の策定をスタートとするPDCAサイクルを確立し、保護者
に一貫した指導・支援のプロセスを明示して、個別の教育支援計画等の情報を引き継ぐことの
重要性を理解してもらう必要がある。
早期支援・連携
発達障害を早期に発見し、支援につなげることで、社会適応力を向上させることができる。
そのため、保護者に受け入れやすい早期発見、早期療育につながるシステムの確立が必要であ
る。
小学校への円滑な就学のためには、幼稚園、保育所に対しての支援が必須である。教育委員
会等が、子供の情報の引き継ぎやケース会議の開催など円滑な就学に向けた支援体制を確立す
るとともに、就学前から発達障害について相談ができる体制を整える必要がある。
他機関との連携
発達障害が重い場合は、医療や心理の専門家との関係が非常に重要になる。また、家庭環境
に課題がある場合は、福祉の専門家との連携が必須である。発達障害の児童・生徒への対応に
悩む教員への支援を考えるには、学校教育という限られた領域内だけで対応するという前提を
取り去る必要がある。
一元化した情報提供
教育管理職や教員の育成、専門性を高める研修、教員の指導上の相談、保護者の就学上の相
談、教員へのオンラインによる指導技術情報の提供・研修(eラーニング)、図書資料の保存・
閲覧、専門家による学校巡回など、学校の発達障害教育を支援する様々な取組を効果的に行う
発達障害教育センターを設置し、医療・福祉と連携した包括的な支援システムを確立し実践す
る必要がある。
75
資
料
都民への理解啓発
保護者が子供の発達障害を認め受け入れないと支援は始まらず、個別指導計画を作成するこ
ともできない。これは、ニーズに応じた適切な教育を徹底すれば子供の状態が変わるというこ
とを保護者が十分理解していない場合もあるためである。保護者と緊密な相談を行い、理解の
隔たりを埋める努力や、周りの保護者、地域住民への理解啓発を徹底する必要がある。
厚生労働省、文部科学省といった行政の垣根を越えて、放課後の居場所づくりを促進する。
その上で、発達障害の児童・生徒の個別対応等にも配慮した放課後の居場所づくりを具体化す
る必要がある。
発達障害の児童・生徒本人を指導・支援すると同時に、地域社会が発達障害の児童・生徒を
受け入れ易い社会に変わっていかないと、本質的な対応は困難である。
社会全体の発達障害に対する理解啓発を、教育委員会や学校から積極的に発信しなければな
らない。
76
あああああああああああああああああああ
77
東京都発達障害教育推進計画
●平成 28 年2月
編集
78
東京都教育庁都立学校教育部特別支援教育課
〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号