【賃上げだけではないES向上の方法】 従業員満足度を高める人事制度とは

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編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2016.2.8 第 1547 号
SMBC経営懇話会
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【賃上げだけではないES向上の方法】
従 業 員 満 足 度 を 高 め る 人 事 制 度 と は
NMPマネジメントコンサルティング株式会社
取締役 佐藤 雅信
1.ESが高まる要因として、「周囲からの承認」「金銭的報酬と非金銭的報酬」「効力期待と結果期待」が挙
げられます。
2.長期的にモチベーションを維持するためには、金銭的報酬だけでなく、表彰制度やキャリア開発などの
非金銭的報酬も重要です。
1.ESを高める要素
社内で ES(従業員満足度)調査を実施している企業は多く、中には毎年実施している例も見受けられます。調
査項目は一般的に、報酬水準や人事制度、昇進昇格、異動/配置、職場の人間関係、労働環境などに関する
ことですが、経営側の意図は、従業員のモチベーションに大きな影響を与える要素を特定して、その満足度を上
げるというところにあります。従業員のモチベーションと会社に対する満足度には、相関関係があるからです。
いうまでもなく、ヒト(=人材)は、モノ・カネと並ぶ経営資源ですが、他の資源と決定的に異なるのは、「価値の
可変性が高い」という点です。モノやカネは、基本的にその価値に大きな変動はありませんが、ヒトだけは、モチ
ベーションの高低によってその価値が大きく変わります。モチベーションの高い従業員は、1.5~2.0 人分の成果
を上げるかもしれない半面、低い従業員は 0.5 人分の成果しか上げられず、周囲に与える悪影響も考慮すれば、
その価値はマイナスになるかもしれません。そういう意味で、従業員のモチベーションを高めることが人材マネジ
メントの最重要課題といっても過言ではないでしょう。
(1)周囲からの承認
モチベーションに関する理論で最も有名なのは、アメリカの心理学者エイブラハム・マズローの「欲求 5 段階
説」でしょう。ここで提唱されている人間の欲求段階はモチベーション管理において非常に重要です。
第1段階
生理的欲求
第2段階
安全・安定欲求
第3段階
社会的欲求
第4段階
承認・尊厳欲求
第5段階
自己実現欲求
従業員のモチベーション管理上、最も重要なのは、第 4 段階の「承認・尊厳欲求」です。人は誰でも周囲から
認められたい、高く評価されたいと願っており、単により高い金銭的報酬を与えれば良いということではなく、や
はり周囲からの“承認”がなければモチベーションは高まりません。
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(2)金銭的報酬と非金銭的報酬
アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグの「2 要因説」では、モチベーションを左右する要因には
「動機づけ要因」と「衛生要因」があるとされています。前者は満たされれば満たされるほどモチベーションが高ま
る要因、後者は一定量を満たされないとモチベーションが低下するが、一定量を超えて満たされても必ずしもモ
チベーションが高まるとは限らない要因であり、“承認”は前者、“金銭的報酬”は後者になります。
金銭的報酬のみを一定以上に高めても、それに比例してモチベーションが上がるとは限らないため、一定の
金銭的報酬に加えて“承認”や“キャリア”などの非金銭的報酬をより強化し、全体のバランスを取ることが従業員
のモチベーションを高める上では有効だということです。
(3)効力期待と結果期待
また、カナダの心理学者アルバート・バンデューラの「社会的学習理論」においては、モチベーションの向上・
長期維持のためには、行動(努力)が成果に結び付く期待(効力期待、自分にもできるという思い等)と、その成
果が満足できる報酬(金銭・非金銭)につながる期待(結果期待)を満たす必要があるとされています。つまり、長
期的に努力が成果に結び付き、その結果が報酬に正しく反映される人材マネジメントシステムが重要なのです。
2.ES と人事諸制度との関連性
ES を向上させるためには、人事諸制度を通じてモチベーション向上の諸要因を高める必要があります。
(1)金銭的報酬
評価制度・報酬制度を通じ、従業員の効力期待と結果期待の両方を満たす必要がありますが、企業の多く
は結果期待にばかり注力し、効力期待を十分には満たせていないようです。前述のように、効力期待を強化し
ないと、従業員は長期的にモチベーションを維持することができません。
効力期待を満たすためには、適切なアドバイス・評価基準の明確化と同時に、評価結果のフィードバックを
強化する必要があります。このとき、評価結果そのもののフィードバックだけでなく、それを基にした改善計画を
立案し、従業員に「このような方向で努力を続ければ成果が上がり、金銭的報酬が上がる」という継続的な期待
を持たせることが重要です。
(2)非金銭的報酬
ここでは“承認”に対象を絞り、さらに“短期的承認”と“長期的承認”とに分けて説明します。
①短期的承認――表彰制度、サンクスカード制度等
“短期的承認”を実現する代表的な制度は、表彰制度です。さらに近年は従業員同士、あるいは顧客が従
業員を褒める制度(例:サンクスカード制度)を導入する企業が増えており、JAL・ヤマト運輸等で活用されて
います。
②長期的承認――キャリア開発
“長期的承認”の打ち手となるのがキャリアに関する制度です。キャリアを考える、というと個人最適を追求
し企業側には得をもたらさないイメージがあるかもしれません。しかし、企業側が経営戦略上必要となる人材
像を「キャリアモデル(キャリアマップ)」という形で定義し、従業員の個人最適と企業の組織最適を可能な限り
マッチングさせることで、従業員の長期的なモチベーション維持につながります。
こうした取り組みについてはIT業界が進んでおり、キャリアモデルの参考情報として「CCSF」(共通キャリ
ア・スキルフレームワーク)という業界標準が体系化されていますが、どの業界においても当該企業の経営
戦略・事業計画としっかりリンクしているキャリアモデルを作成することが重要です。また、キャリ
アモデルを基に企業内でマッチングを促進する「企業内キャリアカウンセラー」の育成・確保が急務
となっています。
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