ラボバンクのフルーネフェルト博士と研究交流を行いました 農林中央金庫とオランダのラボバンクは、2015 年に食品・農業関連金融分野を中心とし た戦略的提携に関する覚書を締結しました。この提携に基づき、農林中金総合研究所もラ ボバンクと調査・研究分野での交流を進めており、2015 年秋には研究員 2 名を派遣し、ラ ボバンクにおける食品・農業関連の研究体制やガバナンス、農業融資についての調査を行 いました。 今回、ラボバンクで協同組合・ガバナンスを担当しているハンス・フルーネフェルト博 士(Dr. Hans Groeneveld)が来日し、2016 年 1 月 27 日、28 日の 2 日間にわたり当総研 と研究交流を行いました。同博士はラボバンクでの業務のほか、オランダの TIAS というビ ジネススクールにおいて、教授として金融サービス協同組合に関する講義も担当していま す。また、欧州協同組合銀行協会が実施するリサーチでも主導的な役割を果たすなど、ラ ボバンクのみならず欧州の協同組合銀行全般について幅広い知識を持つ方です。 27 日には農中総研とともにJA横浜を訪問し、波多野常務から、JAの農業生産の振興 対策、農産物流通対策、地域振興対策とともに、組合員組織活動について説明を受けまし た。特に、組合員によって構成される支店運営委員を中心に支店の運営が行われているこ とを聞き、ガバナンスを専門とするフルーネフェルト博士は「JA運営が草の根の活動に ねざしていることが理解できた」という感想を述べられました。 欧州の協同組合銀行のほとんどは信用事業単営で、ラボバンクも農業融資の国内シェア は 8 割以上を占めますが、経済事業は行っていません。また、ラボバンクでは、職業にか かわらず誰でも出資をすることなく組合員になることができます。さらには、組合員にな らなくても金融商品やサービスを利用することができ、非組合員の利用量に対する制限も ないなど、日本とは状況が異なっています。 JA横浜の直売所ハマッ子や農機修理センター、メルカート(生産資材店舗)、信用事 業店舗を見学した際、組合員と職員が親しく話している様子を見て、フルーネフェルト博 士は、「JAは非常に多くの業務を組合員のために行っており、JAと組合員との間の結 びつきはとても深いことを実感した」と話していました。 JA横浜 波多野常務からの説明 クッキングサロンにて 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ 加えて、クッキングサロンでは地域の方向けに横浜産の食材を使った料理教室を開催す るなど、農業を通じて地域社会に開かれたJAの様子も見ていただきました。また、直売 所ハマッ子では、都市部であるにもかかわらず販売している農産物の 95%以上が地場産で あること、農産物についているラベルに生産者名が書かれており、その名前を見て農産物 を購入するお客さんが多いため農業者は良質な農産物しか販売できないといった説明に、 大変感心された様子でした。 翌 28 日は、農林中金総合研究所において、研究会を開催しました。午前中は、農中総研 より、日本の協同組織金融機関の概況について説明しました。日本には、農協、漁協のほ か、信用金庫、信用組合、労働金庫といった協同組織金融機関があること、それぞれの組 合員の特徴やグループの構成について情報を提供しました。 午後には、フルーネフェルト博士から「ガバナンス・イシュー:欧州の協同組合銀行と ラボバンク」をテーマに講演をしていただきました。講演会には、当総研と農林中央金庫 の職員だけでなく、他の協同組織金融機関の職員や大学教授にも参加をあおぎ、質疑応答 や意見交換に加わっていただきました。 欧州各国の協同組合銀行は、組合員を基盤として運営している等の共通点を持ちながら も、グループ内での組織構成や資本構造など様々な点で相違点があること、そして銀行と しての規模にもかなり違いがあることを、データを用いて説明していただきました。欧州 の協同組合銀行のROE(自己資本利益率)は、2007 年までは商業銀行より水準が低かっ たものの、世界金融危機後は総じて商業銀行よりも高い水準であることも示されました。 フルーネフェルト博士は、1895 年に遡るラボバンクの歴史的展開を説明したのち、2016 年 1 月 1 日から、100 を超えるローカルバンク(単位組合)と全国機関ラボバンク・ネダ ーランドが合併し1つの協同組合になった、いわゆる「ワンバンク化」について報告され ました。ラボバンクでは、よりよい銀行であることと、よりよい協同組合であることを両 立させるために、この大きな組織改革に踏み切ったそうです。そして、ワンバンク化後は 前よりも一層組合員の意思決定を反映できるようなガバナンスの仕組みをとったというこ とです。新しいガバナンスの仕組みは運用が始まったばかりであるため、今後どのように 展開していくのかが注目されます。 最後に当総研の古谷社長が、協同組合 として、また銀行として直面する課題に よりよく対応していけるよう、農林中金 総合研究所とラボバンクは、今後も引き 続き互いの経験を共有し意見交換を行 っていくことを改めて強調し、研究会を 締めくくりました。 (文責 重頭ユカリ) 農中総研での講演 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/
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