JI S Z 3450及びJI S Z 3882 の制定について 公益社団法人日本鉄筋継手協会 専務理事 矢部喜堂 1.はじめに 本協会は、これまで、鉄筋継手に関するJ IS原案作 成団体として、ガス圧接継手に関する3つのJ IS、す 3 8 8 1 、J I SZ3 1 2 0 、J I SZ3 0 6 2については、準拠すべき 品質要求事項が存在していなかったため、全般的に鉄 筋継手に関する品質要求事項のJ ISが必要となった。 なわちJ I SZ3 8 8 1 (鉄筋のガス圧接技術検定における 2013年12月に、国土交通省住宅局建築指導課にてこ 試験方法及び判定基準)、J I SZ3 1 2 0 (鉄筋コンクリー れらのJ ISの必要性について説明を行った後、2 014年 ト用棒鋼ガス圧接継手の試験方法及び判定基準)、J I S 1月、国土交通省住宅局住宅生産課より当該2件の Z3 0 6 2 (鉄筋コンクリート用異形棒鋼ガス圧接部の超 J IS制定のための原案作成の許可を得た。また、同年 音波探傷試験方法及び判定基準)について制定・改正 2月、経済産業省産業技術環境局産業基盤標準化推進 原案の作成を行ってきた。 室より、経済産業省及び国土交通省の共管によるJ IS 一昨年来、新たにJ I SZ3 4 5 0 (鉄筋の継手に関する 品質要求事項)、J I SZ3 8 8 2 (鉄筋の突合せ溶接技術検 原案作成の許可を得るとともに、J IS原案作成公募制 度にて申請・提出するよう指導を受けた。 定における試験方法及び判定基準)の制定原案を作成 これに基づいて、2014年7月に「鉄筋の継手に関す してきたが、これらの新J ISが昨年12月25日に制定・ る品質要求事項J IS原案作成委員会」 (委員長:出雲淳 公示された。 一)及び「鉄筋の突合せ溶接技術検定における試験方 本稿では、これらの新J ISの制定までの経緯とその 概要について紹介する。 法及び判定基準J IS原案作成委員会」 (委員長:出雲淳 一)が設置され、それぞれの分科会(WG)において検 討・作成された原案について3回の本委員会の審議を 2.制定までの経緯 本協会は、2005年に鉄筋溶接技量資格者制度を設け、 経て、同年12月にJ IS原案の作成が完了した。 これらのJ IS原案は、 (一財) 日本規格協会での審議 2006年より公平・公正な第三者機関として溶接技量検 及び経済産業省での審議を経て、経済産業大臣及び国 定を行ってきた。一方、 (一財)日本建築センターで評 土交通大臣の共管により2015年12月に制定されるに 定されている溶接施工会社では溶接作業者に対して社 至った。 内資格として技量資格を付与しているが、溶接作業者 手の品質のばらつきが懸念されるところであった。そ 3.JI S Z 3450(鉄筋の継手に関する品質要 求事項)の概要 こで、溶接継手の品質確保のために、技量検定方法の ⑴ 制定の趣旨 の技量を確認するための統一的な基準が無く、溶接継 統一化を図るべく、2013年7月に、本協会技術委員会 この規格は、鉄筋の継手の品質を確保することを目 の下に「鉄筋溶接技量検定J IS検討小委員会」 (委員長: 的として、発注者が鉄筋継手工事を発注する際に仕様 林静雄)を設置して、鉄筋の溶接技量検定に関する新 書に記載すべき必要な品質要求事項の水準の選択及び たなJ IS制定原案の提案について検討を開始した。 具体的品質要求事項を規定するものである。鉄筋工事 一方、ISO規格との整合性の観点から、各分野にお の仕様書に、対象とする構造物に関わらず、この規格 ける要員の認証に関するJ ISは、J I SQ 9 0 0 0 (I SO 9 0 0 0 に規定される各継手に共通する品質要求事項が盛り込 に対応)に基づき各分野で規定される品質要求事項に まれることによって、継手の種類・工法に関わらず所 準拠していることが要求される。このため、前述の鉄 定の品質・性能が確保され、継手の品質保証の平準化 筋の溶接技量検定に関するJ ISを新たに制定するに当 が可能になる。 たっては、準拠すべき品質要求事項の規定が必要に ⑵ 規定項目とその内容 な っ た。ま た、従 来 の ガ ス 圧 接 継 手 に 関 す るJ I SZ 6 Vol . 50 No. 4(2016年 1月) この規格では、鉄筋継手工事の仕様書に記載すべき Comment 品質要求事項を規定している。工事の発注者は、詳細 ②試験材の本数 かつトレーサビリティの可能な事項を取りまとめた包 試験材は5本とし、曲げ試験を重視して、引張試験 括的品質要求事項(付属書B)と、いずれの工事におい 1本、表曲げ試験2本、裏曲げ試験2本としている。 ても要求されるべき事項を取りまとめた標準的品質要 ③曲げ試験における曲げ角度 求事項(附属書C)のいずれかを選択することを原則 曲げ角度は、SD390の場合は9 0°、SD490の場合は としている。この選択に当っての参考として、選択基 45°としている。 準(附属書A)が用意されている。 ④判定基準 包括的品質要求事項については、①契約内容の確認 外観試験においてすべての試験材の外観に著しい不 及びテクニカルレビュー、②継手施工及び検査の体制 良が無く、引張試験において試験材の引張強さが母材 整備、③継手施工要員、④検査要員、⑤継手施工及び の規格値以上でありかつ母材破断し、曲げ試験におい 試験・検査に使用する装置及び機器、⑥継手施工、⑦ てすべての曲げ試験材が所定の曲げ角度まで折損しな 継手材料、⑧継手施工後の管理、⑨継手施工関連の検 い場合を合格としている。 査及び試験、⑩不適合及び是正措置、⑪識別及びト レーサビリティ、⑫品質記録 の各項目ごとに詳細が 規定されている。 5.おわりに 本協会では、今年、 「鉄筋継手工事標準仕様書(2009 標準的品質要求事項については、上記項目から⑪を 年)」 (ガス圧接継手工事、溶接継手工事、機械式継手工 除いて規定されているが、各項目によってはその詳細 事)の改訂を実施する予定である。今回の改訂は、新 は包括的品質要求事項に比べて緩やかなものになって しく制定されたJ I SZ3 4 5 0に基づいて行われることと いる。 なる。 各発注者の仕様書についても、順次このJ ISに基づ 4.JI S Z 3882(鉄筋の突合せ溶接技術検定 における試験方法及び判定基準)の概要 いて整備・改訂されることが期待される。 ⑴ 制定の趣旨 基づいて、現行の「鉄筋溶接技量検定規定」を改正し、 一方、本協会では、新しく制定されたJ I SZ3 8 8 2に この規格は、中立の立場の第三者機関が公正で客観 従来どおり第三者機関として溶接技量資格者の認証を 的な鉄筋溶接技能者の技量確認に利用することを目的 行っていく。溶接継手工法に関わらずこのJ ISに基づ に規定されたものである。この規格は、鉄筋の溶接に いて本協会が認証する鉄筋溶接技量資格が実工事で活 おけるわが国共通の技術検定規格で、民間規格に替わ 用されることが期待される。 るものとして利用されることを想定している。 ⑵ 規定項目とその内容 この規格は、ガス圧接のJ I SZ3 8 8 1を溶接用に修正 なお、今後、J I SZ3 4 5 0に基づいて溶接継手及び機 械式継手の超音波試験方法等のJ IS化についても順次 進めて行きたいと考えている。 したものであり、規定項目はガス圧接とほぼ同じであ るが、主な項目の概要については以下のとおりである。 ①技術検定の種別及び各種別の作業範囲 技術検定の種別は、鉄筋の種類、径及び呼び名、溶 接姿勢によって6種類が設けられており、各種別の技 量資格者の作業範囲が規定されている。 検定試験は、1F種、1H種ではSD3 9 0D3 2 、2F種、 2H種ではSD3 9 0D4 1 、3F種、3H種ではSD4 9 0D4 1 を用いて行うため、実際の工事で径が4 1mm又は呼び 名がD41を超える鉄筋を溶接する場合には、作業範囲 に該当する有資格者も施工前試験を実施してその合格 者が溶接作業を行う。 Vol . 50 No. 4(2016. 1) 7
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