PDF1.8MB - 日本看護協会

地域包括ケア推進における看護の
役割と使命
~熊本県看護協会の取り組みを
とおして~
熊本県看護協会 高島和歌子
2025年問題とは
• 2025年に「団塊の世代」の人々が75歳以上(後期高齢者)とな
ることにより起こる諸問題のことです。
• 15歳~64歳の現役(生産)人口も減少するため、日本人の5
人に1人近く(2179万人、18.1%)が75歳以上となる超高齢社
会が到来します。2013年現在、生涯医療費は75歳~79歳
にピークを迎え、要介護(要支援)になる可能性は75歳から上
昇していることからして、2025年頃には医療・介護・福祉
サービスの需要が高まり、医療・介護などの負担と給付が大
きく変わり、健全な社会保障財政の運営に影響が出ると見ら
れてます。
• 医療支出の増加
年金支出の肥大化
労働力減少で保険料収入が低下
少子化も進行
社会保障
社会保障
財政の危機
財政の危機
地域包括ケアシステムとは
団塊の世代が75歳以上となる2025年(H37年)以降は、国民の医
療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。
このため、厚生労働省は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的
のもと
可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けるこ
とができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシ
ステム)の構築を推進しています。
・重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の
最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体
的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
・今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域
での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
・地域包括ケアシステムは、
保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、
地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。(具体的には、中学
校区-概ね30分の移動圏域を基本とする)
熊本県の将来推計人口
(単位:人)
2,000,000
1,800,000
1,600,000
1,400,000
1,817,426
255,979
210,764
1,775,543
276,362
237,058
1,724,546
288,584
256,845
1,200,000
1,666,017
1,603,413
321,053
342,395
233,351
207,832
1,000,000
800,000
1,100,869
1,027,200
600,000
961,947
913,392
1,537,678
345,444
193,823
1,467,142
336,316
197,367
870,514
825,353
768,413
400,000
200,000
249,814
234,923
217,170
198,221
182,672
173,058
165,046
平成22年
(2010)
平成27年
(2015)
平成32年
(2020)
平成37年
(2025)
平成42年
(2030)
平成47年
(2035)
平成52年
(2040)
0
0~14歳
15~64歳
65~74歳
75歳以上
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(平成25年3月推計)
各地域の高齢者人口(75歳以上)の推移
○
○
○
○
熊本県全体では全国と同じようなカーブ。
しかし、市町村ごとに大きな差。
熊本市及び周辺地域は東京都を超えるほどの高齢者急増。
一方、高齢者さえ減少する市町村も。
75歳以上人口の将来推計(平成27年の人口を100としたときの指数)
菊陽町
熊本市
東京都
全国
熊本県
(2025年の指数は全国で41位)
熊本市以外の
熊本県
五木村
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」より作成
熊本県の二次医療圏別推計人口
都道府県名
二 次
医療圏数
熊本県
11医療圏
熊本
宇城
有明
鹿本
菊池
阿蘇
上益城
八代
芦北
球磨
天草
人口
総数(単位:人)
2010年
2025年
2040年
1,817,426 1,666,017 1,467,142
(100.0)
(91.7)
(80.7)
734,474
714,761
659,133
(100.0)
(97.3)
(89.7)
110,993
99,030
84,764
(100.0)
(89.2)
(76.4)
168,821
148,269
125,230
(100.0)
(87.8)
(74.2)
55,391
47,216
38,898
(100.0)
(85.2)
(70.2)
174,164
178,831
174,997
(100.0)
(102.7)
(100.5)
67,836
58,808
49,126
(100.0)
(86.7)
(72.4)
87,402
78,026
67,077
(100.0)
(89.3)
(76.7)
144,981
124,094
101,585
(100.0)
(85.6)
(70.1)
51,356
40,378
30,541
(100.0)
(78.6)
(59.5)
94,727
77,632
61,617
(100.0)
(82.0)
(65.0)
127,281
98,972
74,174
(100.0)
(77.8)
(58.3)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(平成25年3月推計)
人口
75歳以上(単位:人)
2010年
2025年
2040年
255,978
(100.0)
80,209
(100.0)
17,252
(100.0)
26,857
(100.0)
10,016
(100.0)
19,806
(100.0)
12,523
(100.0)
14,346
(100.0)
22,763
(100.0)
10,017
(100.0)
17,093
(100.0)
25,096
(100.0)
321,053
(125.4)
117,061
(145.9)
20,816
(120.7)
31,901
(118.8)
11,224
(112.1)
27,676
(139.7)
14,186
(113.3)
17,188
(119.8)
26,921
(118.3)
10,584
(105.7)
18,242
(106.7)
25,254
(100.6)
336,316
(131.4)
133,583
(166.5)
21,506
(124.7)
30,547
(113.7)
10,628
(106.1)
32,240
(162.8)
14,128
(112.8)
17,425
(121.5)
25,768
(113.2)
9,477
(94.6)
17,373
(101.6)
23,641
(94.2)
5
地域包括ケアの「医療」提供については
地域医療構想(県・地域)検討会議で検討中
検討内容
1.2025年の医療需要と病床の必要量
病院機能の見直し→高度急性期病院
急性期
〃
回復期
〃
慢性期
〃
在宅(特養・老人保健施設等)
2.目指すべき医療提供体制を実現するための
施策(医療従事者の確保・養成を含む)
団塊の世代が75才以上の後期高齢者となる
2025年をめどに、国は高齢化で増え続ける医
療費を抑えるため、
病床の削減
平均在院日数の短縮化
を図っています
在宅医療の拡充
“療養の場が病院から在宅に変わる”
*「在宅」とは 『医療機関以外の個人の住宅、介護老人保健施設及び介護
老人福祉施設 等』をいう
本当に具
合の悪い
時に入院
治療が終わった
ら病院から
速やかに退院
自宅や介護施設・
福祉施設で生活し
ながら療養していく
“時々入院
ほぼ在宅”
必要とされる医療・看護・介護は?
・病院医療では
治す医療
病院から在宅へ
一連のケアが切れ目な
く提供されるように
つなぐ
・在宅医療では
疾患と共に暮らす人・家族を支える
看護師は多職
種とケアを結ぶ
キーパーソン
在宅でも医療職多職種チームでサービス提供
訪問 診療、訪問看護、医療処置、健康管理、介護、
リハビリテーション、栄養管理、薬剤管理、ケアマネージ
メントなど
2025年の医療・介護問題
• 「団塊の世代」がすべて75才以上(後期高齢者)となる
―何らかの医療・介護の支援を必要とする高齢者が増える
-老老所帯、独居高齢者世帯の増加
・地域では
疾病・障がいと共に暮らす人、精神疾患を持つ人への支援
*(認知症、がん、慢性疾患患者の増加)
自然災害発生による被災者への支援
・多死社会→“多様な住まい”で看取る必要性
・上記の人々を支える医療人材の確保が課題
(看護職・介護職、特に在宅診療医、訪問看護師)
地域包括ケア推進のための
熊本県看護協会の取り組み
訪問看護の人材確保・育成は喫緊の課題
220
200
1.33倍
労働移動は自然には進まない
→訪問看護人材の確保・育成策が必要
約200万人
(看護職員全体)
約154万人
●仮に病床数や病床機能の見直しにより、医
療機関の看護職員数に「余剰」が生まれた
としても、訪問看護・在宅領域への労働移
動は自然には進まない
約127万人
(全体の87%)が
医療機関に就業
●多様な看護人材の参入を促進するための
「訪問看護人材の確保・育成策」が急務
・教育研修体系の整備
・労働条件の改善(給与、オンコール対応等)
・訪問看護のイメージアップ
180
160
140
120
?
100
80
60
40
訪問看護職員は
全就業看護職員
のわずか2%
(訪問看護)
1.67倍
20
0
2025年には最低でも5万人+αの
訪問看護職員が必要
約3万人
2012年
●単純に介護保険利用者数の伸びに比例さ
せただけでも、2025年には約5万人(2012
年の1.67倍)の訪問看護職員が必要
+α
約5万人
2025年
+
●医療保険による訪問看護(小児、精神等)
のニーズ増も加味すれば、さらに多くの訪
問看護職員が必要である
15
県内看護職の就業状況
H26年 12月31日従事者届
熊本県
計
病院
看護師
准看護師
助産師
保健師
20,015
15,599
4,075
257
84
診療所
6,361
2,421
3,767
111
62
助産所
33
訪問看護ステーション
介護保険施設
33
800
698
99
3,450
1,459
1,981
10
774
432
337
5
1,073
323
91
事業所
106
37
22
教育機関
326
285
1
28
12
その他
159
79
40
1
39
33,097
21,333
10,413
441
910
社会福祉施設
保健所・市町村
計
1
10
2
649
47
病院・診療所に80%
訪問看護ステーションに
2,4%
介護施設や社会福祉施
設に13%
助産所・保健所・事業所・
教育機関等に
4,6%
病院
診療所
助産所
訪問看護ステーション
介護保険施設
社会福祉施設
保健所・市町村
事業所
教育機関
その他
0%
20%
40%
60%
80%
100%
今後は訪問看護の人
材を増やす必要性大
1.自宅での安心療養を支える
訪問看護の推進 訪問看護の可
訪問看護についての広報
―シンポジウムの開催
―DVD・リーフレットの作成、配布、HPへの掲載
能性を知って
もらいたい!
訪問看護ST・病院の事例検討会
訪問看護師養成研修、管理者研修
訪問看護STの新任管理者研修
訪問看護サポートセンター運営
訪問看護師からの相談対応
*相談数94件/月
ホームページにQ&Aの掲載
*アクセス数平均19、250件/月
県内の訪問看護の現状把握・情報提供
新たなステーション立ち上げ支援
「訪問看護」の周知活動
訪問看護サポートセンター
熊本県の訪問看護サービスの提供状況
熊本県
169箇所
2.多様な住まいにおける看取り支援
事業プロジェクトの設置(H26~28年度)
県内の在宅施設での看取り状況調査
看取りに関する研修会
看取り体制強化研修(予定)
今後の日本は「超高齢・多死社会」
人
実績
2006年 死亡者数
1,084千人
65歳以上
896千人
○将来推計(2030年時点)の仮定
推計
医療機関:病床数の増加なし
介護施設:現在の2倍を整備
自宅死亡:1.5倍に増加
医療機関
約89万人
その他
約47万人
介護施設
約9万人
自
宅
約20万人
【資料】
2006年(平成18年)までの実績は厚生労働省「人口動態統計」
2007年(平成19年)以降の推計は国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2006年度版)」から推定
公益社団法人 日本看護協会
20
年
※介護施設は老健、老人ホーム
高齢者の住まい
自宅
(持家・賃貸)
介護保険3施設
・認知症対応型共同生活介護
(認知症高齢者グループホーム)
・ホームホスピス
・宅老所
・簡易宿泊所等
住まいと医療
機関の中間施設
中重度者向けの
住まい
老人ホーム
・有料老人ホーム
・ケアハウス
・軽費老人ホーム
・養護老人ホーム
高齢者住宅
・サービス付き高
齢者住宅(サ高住)
・高齢者向け優良
賃貸住宅
介護老人保健施設(老健)
介護老人福祉施設(特養)
介護療養型医療施設
外付け医療サービスとしての
訪問看護ステーション
21
多様な住まいにおける看取り支援
事業プロジェクト(H26~28年度)
〇看取りの状況調査(施設へのアンケート)
郵送1155施設 「回答414施設(35.44%)」
(介護老人保健施設、介護老人福祉施設、小規模多機能、グループホー
ム、有料老人ホーム,サ高住等)
・「看取り指針がある」―197施設
・実際に「看取り」をしているか―201施設
“どのように看取られたいか
どのように看取りたいか“
〇講演会の開催
「穏やかな最期にむけて」
講師:石飛 幸三 氏
日時:H28年2月20日(土)午後1時30分~3時30分
場所:熊本県庁 地下大会議室
〇介護施設等の看取り体制強化事業(予定)
3.地域住民の医療・介護相談に
対応する「まちの保健室」の開催
ボランティア育成と研修
デパート・各支部での開催
鶴屋デパート
まちの保健室
4.看護職のキャリア育成・再就業支援
〇看護スペシャリストの活動支援
県看護協会の研修の講師として活用
専門看護師・認定看護師・認定看護管理者の交流会
〇看護職の就業支援(熊本県ナースセンター)
“看護職のハローワーク”
〇潜在看護師の再就業支援
子育て、介護、その他の理由で「看護」キャリアを中断してい
る看護職へ、研修・演習・病院見学で、再就業の機会を作る
経管栄養・胃瘻のケア
潜在看護師の再就業支援
術演習会
急変時の対応
5.地域包括ケアを支える看護職の確保
•
•
•
•
WLB推進と労働環境の改善
労働と看護の質のデータベース事業参加推進
潜在看護師の再就業支援事業
次世代の看護職の確保に向けて
高校生1日看護体験・高校生1日看護学生体験
中・高校生・進路指導担当者へ「看護」のアピール
・ 看護師等の「届け出制度」の普及・推進
看護の資格の活用推進
平成27年度WLB推進ワークショップ
ワークライフバランス推進
ワークショップ
県下の病院が取り
組み、成果の発表
をしている
高校生の
一日看護体験
高校生の
一日看護学生体験
31
看護職は「病院から地域へ」を
もっと推進!
•
病院では、外来機能の充実、退院支援室の
設置、各病棟に退院支援の看護職配置、訪問
看護部門を設置、院内デイケア(患者さんをベッ
ドにねたきりにしない、排泄の自立)介護や家庭
看護法の講習開催等が可能です。
•
訪問看護師は、訪問看護師を増員・育成、
在宅ハイリスク患者への対応力強化、病院・施
設の医師・看護師への訪問看護理解の促進(病
院・施設の医師・看護師とのカンファレンス実施)
•
地域での活動として、まちの保健室等の健
康相談対応に加えて、疾病予防等の機能拡
大・他職種連携(認知症チェック等)
• 普段の生活の中では、地域の中で疾病が
あっても経済的困窮で受診できない人、一人
暮らしで周囲に相談することもなく医療・保
健・福祉の課題を抱えている人、障害や精神
疾患を持った方、認知症の方と困っているご
家族、がんの治療をしながら地域に暮らす
人、虐待の対象になっている人、災害時は災
害弱者となり得る人…等の発見と必要なケア
につなげるという個々の看護職の実践
地域包括ケアを目指して
―熊本県の看護職は役割を発揮しようー
どのような健康状態でも
その人らしく暮らしていける社会
医療の視点
生活の視点
いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護