全国財務局長会議(平成28年1月27日開催)席上配付資料 最近の沖縄の経済動向等について Ⅰ.最近の沖縄管内の経済情勢 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について 平成28年1月 沖縄総合事務局財務部 Ⅰ.最近の沖縄管内の経済情勢 前回(27年10月判断) 総括判断 回復している 今回(28年1月判断) 前回比較 総括判断の要点 個人消費は百貨店・スーパーや、コンビニエンス ストアの販売額が引き続き好調なことから緩やか な回復が続き、外国人観光客の大幅な増加など から観光は好調に推移しているほか、有効求人倍 率が復帰後の最高値を更新するなど、雇用情勢 は改善しつつある。 回復している 〔先行き〕 先行きについては、沖縄振興策などを背景として景気が回復し、雇用・所得環境の改善が続くなかで、海外景気の下振れなど、景気を下押しするリスクに引き 続き注視していく必要がある。 前回(27年10月判断) 今回(28年1月判断) 緩やかに回復している 緩やかに回復している 回復している 回復している 設備投資 前年度を上回る見通し 前年度を上回る見込み 雇用情勢 改善しつつある 改善しつつある 住宅建設 前年を上回っている 前年を上回っている 個人消費 観 光 ※28年1月判断は、前回10月判断以降、1月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している。 前回 比較 1 1.個人消費 (%) ~緩やかに回復している~ 〔百貨店・スーパー販売額(前年比)〕 ○ 個人消費は、緩やかな回復が続いている。 ○ 百貨店・スーパーでは、暖冬により衣料品が低調であるものの、店舗改装効 果などにより飲食料品が好調なことなどから前年を上回っている。 ○ コンビニエンスストアでは、新規出店効果のほか、ファストフードが堅調なこと などから前年を上回っている。 ○ 新車販売では、軽自動車が低調なことなどから前年を下回っている。 ○ 家電販売では、テレビや白物家電などが好調であり、前年を上回っている。 【出所】経済産業省、沖縄総合事務局 (%) 〔コンビニエンスストア販売額(前年比)〕 暖冬の影響で冬物衣料が振るわない状況にあるが、店舗改装効果や観光客の増加などで飲 食料品が好調なことなどからプラスを維持しており、県内景気は良い状況にあると認識してい る。 【小売業・中堅企業】 暖冬の影響で冬物商品(特に衣料品、毛布、鍋など)の売上が伸びていない。一方、飲食料品 は堅調に推移しており、高品質商品(ブランド牛、大トロ、プレミアムビール等)の売れ行きが良 い。売上全体でみても10~12月はプラスとなっていることから県内の消費マインドは依然とし て高い状況にあると認識している。 【小売業・中堅企業】 (注)24年12月までは九州・沖縄の数値 (%) 【出所】経済産業省 〔乗用車新車登録・届出台数(前年比) 〕 県内需要、観光ともに好調を維持しているため、ファストフードや米飯類などを中心に売上は 堅調に推移している。10~11月は暖冬の影響でおでんや中華まんなどが伸びていないが、そ の反面、飲料品の売上が伸びている。来店客も堅調に推移しており、県内の消費動向は上向 きにあると認識している。 【コンビニエンスストア・中小企業】 新型車販売で12月から事前受注を開始したところ好調な滑り出しとなっている。景況は良い状 況である。 【自動車販売店・中小企業】 (注)普通乗用車+小型乗用車+軽四輪乗用車の合計。 暖冬の影響で暖房器具が前年割れの状況にあるが、店舗改装やイベント等の効果で全体の 売上では好調を維持している。近隣のタワーマンションや近郊市町村での住宅需要の影響等 でテレビや冷蔵庫、洗濯機等の白物家電も堅調に推移している。地元客の来店も増えている ことから需要の落ち込みはみられない。 【家電販売店・大企業】 【出所】日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会、沖縄県自動車販売協会 2 2.観光 ~回復している~ 〔入域観光客数〕 (%) 11.7 入域観光客数は、国内客は個人旅行を中心とした好調な旅行需要により 増加しており、外国客は航空路線の拡充などにより大幅に増加しているこ とから、26ヶ月連続で単月の過去最高を記録している。 10~12月期における国内から沖縄への送客部門の取扱人員数は、前年同期を上回り 好調であった。日並びが悪い年末年始の落ち込みを考慮して営業強化を図った11月 は、前年を大きく上回った。 【旅行業・中小企業】 10~12月期の動向をみると、稼働率はどの月も前年から上昇しており、好調が続いて いる。インバウンドは引き続き好調に増加しており、10~12月期でみると、前年比 200%となっている。 【宿泊業・大企業】 10~12月は、修学旅行とインバウンドが好調であったため、売上がすべての月で前年 を上回り、稼働率も好調に推移した。特に11月は修学旅行のピーク期で売上げは前年 比で2ケタの伸びとなっている。 【陸運業・中小企業】 【出所】沖縄県 3.設備投資 ~27年度は前年度を上回る見込み~ 〔設備投資計画(前年(同期)比)〕 (沖縄) (全国) 法人企業景気予測調査によれば、管内企業の平成27年度設備投資計 法人企業景気予測調査によれば、管内企業の平成27年度設備投資計 画は、機材購入、貯油施設の移転、立体駐車場建設等を主な要因として、 画は、機材購入、立体駐車場建設等を主な要因として、全産業で前年度 全産業で前年度を41.3%上回る見通しとなっている。 を36.7%上回る見込みとなっている。 機材購入とソフトウェアの更新により増加する見込みである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 【輸送用機械・大企業】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。【生産用機械・中小企業】 機材購入などにより設備投資は増加する見込みである。 ・・・・・。 【運輸業・大企業】 【運輸業・中堅企業】 立体駐車場建設などにより設備投資は増加する見込みである。 【不動産業・大企業】 【出所】財務省、沖縄総合事務局 3 4.雇用情勢 ~改善しつつある~ 〔有効求人倍率(季節調整値)〕 〔完全失業率(原数値、前年同期差)〕 (%ポイント) (倍) (%) 全国 1.25 沖縄 5.2 沖縄 0.91 全国 3.4 【出所】厚生労働省、沖縄労働局 (%) 〔 現金給与総額 ・定期給与(前年同月比) 〕 定期給与 3.0 現金給与 総額2.6 (注)23年1-3月期から7-9月期の全国は、補完推計値を用いた参考値。 【出所】総務省、沖縄県 ○ 新規求人数は、卸売・小売、医療・福祉など多くの業種で前年を 上回っており、新規求職者数は前年を下回っていることなどから、 有効求人倍率(季節調整値)は上昇している。 ○ 完全失業率は、前年を下回っている。 ○ 好調な業績と人手不足を背景に、現金給与総額と定期給与は前 年を上回って推移している。 11月の有効求人倍率は、好調な観光業界を中心に求人数の増加傾向が続い ていることから、0.91倍と本土復帰以降の最高値を4か月連続で更新しており、 今後も着実に改善していくものとみている。なお、離職率の高い事業所には、採 用時や採用後の育成のためのコスト負担などを認識して、社員を大切にする意 識や魅力ある職場づくりに取り組んでいただきたいと考えている。 【行政機関】 (注)各都道府県「毎月勤労統計(地方調査)」 財務局所在都道府県の名目賃金指数から算出。 賃金面を含めた厳しい労働環境も人手不足の要因と考えており、労働環境改 善を放置することは県経済の停滞にもつながる問題。企業トップが積極的に職 場環境改善に対応することが、今後の人手不足解消のカギになっていくものと 考えている。 【小売業・中堅企業】 4 5.住宅建設 ~前年を上回っている~ 〔新設住宅着工戸数 (前年比)〕 住宅建設では、持家、貸家、分譲ともに前年を上回っていることから、 全体でも前年を上回っている。 10~12月の民間工事は、個人住宅等の受注を多数抱えており、景況感は良好で ある。 【建設業・中堅企業】 10~12月期の受注件数は前期・前年同期をともに上回っていることから、景況感 は良い。 【建設業・中堅企業】 民間の個人住宅が好調であり、店舗兼住宅や貸店舗等の受注も増加しており、全 体として受注金額は前年を上回っている。 【建設業・中小企業】 【出所】国土交通省 5 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○沖縄の産業構造は、全国に比べて、第2次産業のウェイトが低く、サービス業を中心に第3次産業のウェイトが高いことが特徴。 ○県内における企業の設備投資への動機は、製造業では「更新投資」が多く、非製造業では「能力拡充投資」が多い。 ○好調な沖縄観光などを背景に、県内・県外の企業による宿泊施設を中心とした投資や開発計画が相次いでいる。 沖縄県内企業の設備投資の動向等 設備投資の動機 「設備投資動機」別構成比の推移 (沖縄公庫『設備投資計画調査』 結果より) 県内企業の設備投資への動機 理由を業種別にみると、製造 業では「更新投資」が多く、 非製造業では「能力拡充投 資」が多い。「研究開発」へ の投資は製造業・非製造業と も少ない。 更新 投資 設備投資額の業種別比率( %) 年度 製造業 非製造業 2 0 1 4 年度 13.1 7.4 9.6 6.1 6.2 6.7 5.8 9.6 17.4 86.9 92.6 90.4 93.9 93.8 93.3 94.2 90.4 82.6 2 0 1 5 年度 ( 計画) 8.2 91.8 2 0 0 6 年度 2 0 0 7 年度 2 0 0 8 年度 2 0 0 9 年度 2 0 1 0 年度 2 0 1 1 年度 2 0 1 2 年度 2 0 1 3 年度 ( 能力 拡充 投資 H25年以降開業の主な宿泊施設 (当局調べ) 参 考 ) ホテ ル名 瀬長島ホテ ル 「設備投資の目的」別構成比の推移 (日本公庫『中小製造業設 備投資動向調査』結果より) 場所 開業年月 豊見城市(瀬長島) H25年2月 ザ シ ギ ラ 宮古島市上野 H25年4月 ホテ ルモ ントレ沖縄 KA R IYU SH I LCH . Izum i zak i 県庁前 恩納村 那覇市泉崎 H25年6月 H25年11月 A J リゾ ー トア イラ ンド伊計島 うるま市伊計島 H26年4月 ホテ ルオリオン モ トブ リゾ ー ト &スパ 本部町備瀬 H26年7月 ヒルト ン沖縄北谷リゾ ー ト ホテ ルア ベスト 那覇国際通り 北谷町美浜 那覇市久茂地 H26年7月 H26年8月 コ ンドミニア ム ホテ ル モ ンパ 北谷町美浜 H27年4月 E XE S 石垣島 石垣市宮良 H27年7月 ハイア ットリー ジ ェンシー 沖縄那覇 ホテ ルエ メ ラ ルドア イル石垣島 那覇市牧志 石垣市美崎町 H27年7月 H27年9月 紺碧ザ・ヴ ィラ オー ルスイー ト 宮古島市伊良部 H27年10月 KA R IYU SH I LCH .2nd Izumizaki 那覇市泉崎 H27年12月 ア ルモ ントホテ ル那覇・県庁前 ジ ・ウザテ ラ ス 那覇市久茂地 読谷村宇座 H28年1月 H28年3月(予定) カフ ー リゾ ー ト フ チャ ク コ ンド・ホテ ル 恩納村冨着 那覇市松尾 H28年4月(予定) シ ェラ ト ン沖縄サンマリー ナリゾ ー ト コ ンドイビー チホテ ル(仮称) 恩納村冨着 竹富町(竹富島) H28年6月(予定) H28年夏(予定) ベッセルホテ ル カンパー ナ沖縄 新館 北谷町美浜 H28年秋(予定) ヒルト ン沖縄金武 H28年(予定) グラ ンヴ ィリオリゾ ー ト 石垣島ヴ ィ ラ 石垣市新川 JR九州ホテ ル ブ ラ ッサム 那覇(仮称) 那覇市牧志 H29年1月(予定) H29年春(予定) E XE S N A H A H29年7月(予定) 那覇市泉﨑 全国に比べて第2次産業のウエイトが低く(製造業が 少ない)、第3次産業のウエイトが高い(サービス業 が多い)ことが特徴。 産業別県(国)内総生産(名目)の構成比 第1次 産 業 区分 H28年4月(予定) ホテ ルグレイスリー 那覇 金武町 沖縄県の産業構造 うち 農業 第2次 産 業 うち 製造業 うち 建設業 第3次 産 業 うち サービス業 うち 政府サービス 生産者 平成 24年度 沖 縄 県 1.6 1.4 12.3 4.5 7.6 85.9 26.4 17.0 平成 24暦年 全 国 1.2 1.0 24.2 18.5 5.6 74.1 19.6 9.2 (内閣府「国民経済計算年報」、「県民経済計算」より) 6 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○好調な沖縄経済を背景に、有効求人倍率が復帰後最高を記録するなど雇用の「量」は拡大するも、人手不足が深刻化。職種間、正規・ 非正規、労働条件などの「雇用のミスマッチ」も顕在化しており、雇用の「質」の向上が課題。 県内の雇用情勢等 雇用のミスマッチも顕在化 「従業員数判断BSI」(法人企業景気予測 調査)でも、「不足気味」超幅が続いている。 人手不足が深刻化 有効求人倍率は、好調な沖縄経済を背景に改善が みられ、H27年11月には復帰後最高を4か月更新 し、0.91倍。 【職種間のミスマッチ】 職種によって大きな差。 特に専門的・技術的職業 で高く、事務的職業で低 い。 有効求人倍率の推移 (倍) 【正社員・非正規間のミ スマッチ】 求職者は8割近くに達す るも、求人は3割に満た ない。 全国 1.25 沖縄 0.91 (沖縄労働局『職業安定業務統計』) 【出所】厚生労働省、沖縄労働局 H27年10月の新規求人数は過去最高で、県内初の 1万人台。 (沖縄労働局『職業安定業務統計』) (特に宿泊飲食、卸売小売、その他サービスで 非正規割合が高い) 雇用の「質」の向上が課題 非正規割合 (男性) 「新規求人数」が 増加傾向 (沖縄労働局『労働市場の動き』より) (女性) (沖縄労働局『職業紹介統計資料』) (若年者) 全国 38.2% (22.1%) (57.5%) (35.3%) 沖縄 44.5% (30.5%) (60.1%) (50.4%) 非正規労働者の割合が 全国一高い水準。若年 者の2人に1人が非正 規労働者。 ※若年者は、15~34歳の者 給与総額など厳しい 環境にある県内の労 働環境。 給与総額 (平均月額) 総労働時間 (月間) 全国 316.5千円 145.1時間 沖縄 236.2千円 148.0時間 (総務省・沖縄県『H26年毎月勤労統計調査』) (総務省『H24年就業構造基本調査』) 7 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○管内の企業からは、深刻な人手不足への対応のため、「人材確保」や「人材育成」について、「契約社員の正社員化により、雇用を安 定化し離職に歯止め。」といった声や、「資格取得のための社内支援(貸付)制度を設け、資格取得時の奨励金の支給など、実質的に費 用を負担。」などの人材への投資の声が聞かれているほか、「更新投資」、「海外展開」などについての投資の声も聞かれている。 「投資」に関する企業の声 【人材確保】 契約社員を正社員化。一定のスキルを得た者が条件の良い他社に移るなどの 例があった。正社員化により、新たな手当の支給等負担が増えるが、雇用の 安定によって、離職への歯止めを期待。 (航空運輸業:大企業) 採用活動を人事担当任せにせず、社長や幹部社員が大学や合同説明会などに 足を運び、ホテルでの働きがいなどを直接説明。希望者には貸切バスを仕立 てバックヤード部分を含めたホテルの見学会も実施。学生からも好評で人手 不足が深刻化するなか多くの応募がある。 (宿泊業:中小企業) 採用時のアドバンテージとして、職業高校の学生が経理事務士(3~4級)や 車両建設機械の資格(3トン未満)を取得する際に、当協会が教育訓練助成金 を助成。 (建設業:業界団体) 新規採用者に対し自己啓発等の期間を設け、当社の乗員付旅行に客として参 加する資金や自ら取組む能力開発のための資金を支給。女性社員が産休や育 休後に復職しやすい環境づくりとして企業内保育園を設置。外国人の人材確 保のため、中国の大学から学生を招待して通訳士の資格試験を受講してもら い合格者から社員を採用。 (旅行業:中小企業) 当社で働くことに対し社員がメリットを感じることができるよう、希望者が 無料で受講できる、語学(英、中、韓)、空手、三線などの講座を開設。ま た、本島北部や離島から採用した社員のためにアパートを借上げて社宅とし て提供。 (自動車賃貸業:中小企業) 全体的に人手不足感。募集しても集まらないため、繁忙期には事務系の職員 も総動員して対応。出産休暇や育児休暇の期間を長くしたり、子供の送迎の ためのフレックスタイム制の採用など、女性が働きやすい環境を整え離職率 の低減に努力。高齢者を再雇用してフロント業務や客の送迎に配置。清掃、 フロント、マリンスポーツ等幅広い業務で外国人を採用。 (宿泊業:中堅企業) 客室清掃員が不足。派遣会社より外国人留学生を受入れ。足りない場合は、 総務・経理の社員を動員して対応。ハローワークでの募集により清掃員と して高齢者数名を採用。今後も積極的に高齢者を採用したいが、配置でき る職種が限定されることがネック。 (宿泊業:大企業) 勤務時間を区切り複数を採用するなど、主婦がパートで働きやすい条件を 整えることで短期間で採用に至るケースがある。また、経験者の採用をあ きらめて、新卒を採用して自社で教育する企業もみられる。 (求人情報誌:中小企業) 工場の従業員(パート)の不足が続いており、ハローワークや求人誌での 募集時に時給を見直したものの、効果は出ていない。 (製造業:中堅企業) 保有車両をすべて稼働するための要員が大幅に不足。募集するがなかなか 集まらないうえに、定着率が悪い。要員養成には4~5年かかるため、先 行きが見通せない状況。 (運輸業:中小企業) 行政からの助成金を活用して職場内保育所の設置を計画したが、保育士の 配置基準などによる人件費の負担等で運営コスト全体の負担が大きくなり、 残念ながら設置を見送り。 (小売業:中堅企業) 8 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について 「投資」に関する企業の声 【人材育成】 資格取得のための社内支援制度(貸付制度)を設け、資格取得時には資格取 得奨励金、取得後は資格取得手当を支給し実質的に当社で一部の費用を負担。 必要に応じて階層別の各種セミナー等にも参加させている。 (建設業:中小企業) インバウンドが増加する中、外国人の誘致強化のため、昨年11月に台湾営業 所、12月に韓国営業所を開設した。営業所では、個人客や団体客の誘致活動 だけではなく、人手不足を解消するためリクルート活動も行う予定。 (宿泊業:中堅企業) 社員に資格取得を奨励。1級施行管理技士、1級建築士や1級建築業計理士 など資格取得のためのセミナー参加費用の一部を当社で負担。就業時間中に 業務に支障のない範囲で参加が可能。 (建設業:中堅企業) 【その他の投資】 技術者の資格取得をサポート。当組合負担で資格取得試験の受験者向けに外 部講師を招聘して試験対策のための講習会を実施するなど、有資格者の育成 に注力。 (製造業:業界団体) 社員研修を年6回程度開催。加えて、窓口担当を対象に接客コンテストを実 施し、優勝者への賞品を授与するなど、スキルアップとやる気向上に注力。 また、非正規社員のモチベーション向上、離職率の低下などのため、正規社 員化を検討。 (自動車賃貸業:中堅企業) Webサイトでホテル等を予約する個人旅行者の需要を取り込むため、4か国 語対応(日、英、中、韓)のホテル予約専用サイトを開設。 (旅行業:中小企業) グループ企業内で顧客データなどを閲覧できる共通のシステム導入を進めて いる。これまではセクションごとに各種データを管理していたため、他セク ションのデータの入手や加工に手間がかかっていた。共通のシステムを取り 入れることでグループ企業内での情報の共有や分析等が容易に行えターゲッ トを絞ったマーケティングなど販売戦略の大きな武器になることを期待。 (小売業:中堅企業) 社員がいつでも学べる環境を整えるため、社屋の一部に放送大学校の再視聴 施設を併設。当社が推薦する科目を受講する場合の費用すべてを会社で負担。 (旅行業:中小企業) 【更新投資】 これまで、長期間更新ができなかったが、インバウンド需要などによる収益 改善を受け、保有車両の一部を更新。 (運輸業:中小企業) 【海外展開】 NZで100%出資の会社を設立し、レンタカー事業に乗り出す。日本と同じ 右ハンドルを使用している国で事業を行うことにより、いままで売却してい た車両の一部を再利用でき、効率化を図ることができる。 (自動車賃貸業:中小企業) 9 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○「島」のブランド資源を活かした事業展開 【久米島の海洋深層水】 ・海洋深層水とは、水深200メートル以上の深海に分布する水で、①低温性、 ②清浄性、③富栄養性、④水質安定性という特徴。 ・久米島では、陸地から直ちに水深200m以上となる海底地形を生か して、H12年の「沖縄県海洋深層水研究所」開所以降、海洋深層水資 源の利活用に取り組んできた。関連産業18社の年間生産額は約20億円。 このうち、車えびと海ぶどうは、全国一のシェア。また、取水開始後の新規 雇用者数は140名となっており、久米島における一大産業。現在の一日当 たりの取水量は約13,000t/日で、日本最大の取水量。 「海洋深層水」による化粧品開発によって、全国各地からの引合いが生ま れるなど、事業拡大により離島での雇用確保にも繋がった事例 【久米島の概要】 ・沖縄本島那覇市の西方約100㎞の東シナ海に位置し、久米島本島及び 奥武島やオーハ島の有人離島、硫黄鳥島などの無人離島から構成。 ・人口はH7年に1万人を割り込み、H25年度末には8,353人と減少傾向。 ・H22年度の産業別就業者数人口割合は、第1次産業が27.8%、第2次産 業が15.5%、第3次産業が56.7%。第1次産業の比率は県内平均を大きく 上回っている。 (株)ポイントピュール(大道敦社長):久米島町 (以下同社よりヒ アリング) 【海外展開】 【会社の概要】(従業員40名、27年の売上は370百万円。) ・久米島において、久米島近海の海洋深層水を100%使用し、沖縄の素材とミネラ ルをバランスよく配合した化粧品の製造販売。 ・自社製品の製造が2割、残り8割はOEM(相手先ブランド)の製造を行っており、これ まで130社のOEM生産で実績あり。中東諸国からも照会がある。 ・化粧品の他、ホテルで使用するアメニティ商品にも注力。販路の拡大のため、 県物産公社の支援やANAの物流システムを活用して3年がかりで韓国や中国 への海外展開を果たした。 【ハラル対応】 オリジナル商品 【起業の経緯】 就職先の大阪から久米島に戻り、理・美容院の開業を経て、地域の自然 素材を使った化粧品の製造会社を立上げ。海洋深層水の分水を機に、脱 塩した海洋深層水を主原料にシャンプーや化粧品の開発に着手。 那覇市内の直営店 那覇市内の直営店 【商品開発】 【商品製造】 正社員20人のうち、商品開発部門に3人を配置。化 粧品開発の経験者等を中途で採用。今後、製造ラ インから4名を開発部門へ加える予定。研究開発費 は年間10百万円程度。 海洋深層水以外の原料の多くは県外から仕入れており、 離島である沖縄の更に離島である久米島での生産は、 輸送費が高くつくが、付加価値の高い化粧品製造である ことから、価格転嫁ができている。 原料(一部) 【第2工場の建設】 県産業振興公社等の支援を受けて、第2工場を 建設中。第2工場の建設により5年後の売上は 倍増を見込んでいる。 建設中の第2工場 現工場 ・中国をはじめ海外から多くの外国人観光客が日本を訪れており、イスラム圏 からの入域も期待されていることから、ハラル対応の化粧品の製造・販売を計画。 原料や製造過程で厳しいハラル認証を受ける必要があり、製造ラインのひとつ をハラル専用にする準備を進めている。 ・ホテルのアメニティについても、ハラル対応の商品の需要が期待できることから、 商品開発を進めており、経済産業省の「H27年度ふるさと名物応援事業」に採択。 【雇用・賃金】 【社員のキャリアアップ】 ・従業員は40人で正社員20名、契約 社員・パートが20名。正社員の年収、 契約社員やパートの賃金も離島の中 小企業としては高い水準にあること から、退職者の補充などで従業員の 募集をしても、直ぐに人が集まる。 ・朝のミーティングと日常の 「報告・連絡・相談」を徹底。 ・社長の出張にはなるべく新人 社員を帯同させて刺激を与える など、学習意欲を高める工夫を 実践。 製造工程 ①製 造 ②洗 浄 ③充 填 ④検査・梱包 10 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○地域と共同した事業展開による「島」おこし 一括交付金を活用した整備計画等(豊見城市) 行政(市)と企業の開発計画による「島」への「投資」が地域の活性化に 繋がり、観光拠点としての整備が推進された事例 ・豊見城市では、瀬長島の自然環境や歴史文化を活かした観光拠点の整 備を実現するため、沖縄振興特別推進交付金(ソフト)を活用して、H 25年2月に「瀬長島観光拠点整備計画」を策定。また、同交付金により、 展望広場の整備や島内の電線の地中化、戦後米軍により壊された「子宝 岩」の復元が行われており、復元後は、多くの人が願掛けに訪れている。 ・瀬長島の一周道路(市道)は来島者が快適・安全に利用できる歩道幅 を確保するため、一部を一方通行とする計画で工事が進められており、 この整備に沖縄振興公共投資交付金(ハード)が活用されている。 【瀬長島の概要】 ・沖縄県豊見城市に所在する「瀬長 島」は、那覇空港の南側に位置し、 米軍により海中道路で陸続きとなり、 S52年の返還まで、那覇空港補助施 設として使用。国有地9,282㎡は米軍 埋め立てによるもの。 ・米軍からの返還以降、海中道路の 再整備、野球場や駐車場等の整備が 進められたものの、市街化調整区域 で開発制限があり航空法上の高さ制 限などから、本格的な整備は手付か ずのままであった。 瀬長島 那覇空港 ・H19年に豊見城市によるコンペを経て、 WBFリゾート沖縄㈱ が市有地を借地、 H25年2月に「琉球温泉 瀬長島ホテ ル」、H27年8月には、関連の商業施設 である「瀬長島ウミカジ(海風)テラ ス」の両施設を開業。温泉権は市が所有。 WBFリゾート沖縄(株)(兼城賢成社長):豊見城市 (以下同社より ヒアリング) 【施設開業までの経緯】 【人材確保及び人材育成】 ・H19年に豊見城市へ、「温泉」を核に「チャン プルーリゾート」をコンセプトとした瀬長島の開 発計画を提案。H20年からの温泉試掘を経て、H 22年に温泉施設の建設に着工し、H25年2月、琉 球温泉 瀬長島ホテルをオープン。 ・H27年8月には、ホテル南側の海に面した斜面 を利用して、地中海沿いの集落をイメージした屋 台村として、瀬長島ウミカジ(海風)テラスを オープン。 地元の人、県外の日本人、外国人が集まって楽 ・正社員は90人で、県内出身 者を中心に年に7~8人を新 規に採用。新規採用者にはマ ネージャークラスへの登用含 め期待。人材育成(投資)と して、39項目の企業理念の実 践を徹底させるとともに、英 語講習や自社WEBに関する ミーティング等を実施。 ビーチゾーン 瀬長島ウミカジテラス しむことにより文化が交流する場になる。それ が「チャンプルーリゾート」。 ・ホテルのオープン以来、宿泊 客数は好調に推移。年間の客室 稼働率も80%台をキープしてお り、6月のオフ期でも70%台を 確保。 ・ウミカジテラスは、地元の店 のほか、他県や外国人も出店し ているため、観光客だけでなく 地元の人にも好評で、来島者も 増加している。 野球・スポーツゾーン 琉球温泉 瀬長島ホテル 【今後の「投資」計画等】 ・本島と瀬長島を結ぶ道路や島内の市道の整備などインフ ラ整備が進む中、瀬長島ホテルについては、現在の104室か ら200室まで増室する計画を進めている。また、ウミカジテ ラスについては、オープン時のテナント募集に200店舗の応 募があったことから、現在の34店舗から50店舗への拡大を 計画している。 ・社員のスキルアップのため、宿泊に関するマーケティン グ戦略や価格戦略について6か月程度の講習を計画。 温泉宿泊ゾーン 自然海浜ゾーン 西海岸テラスゾーン 瀬長島所在の当局所管の 国有財産を、H22年3月 に豊見城市に対し、公園 敷地として処分(一部無 償貸付)。その後、「瀬 長島観光拠点整備計画」 に基づき、市より、一括 交付金を財源として、無 償貸付中の国有地の取得 要望が出され、H25年6 月に時価売払。 「子宝岩」 地元では、「イシイリー」と 呼ばれ、岩の上部には上 下に二つの穴が開いてお り、「男の子」が欲しけれ ば上の穴へ、「女の子」が 欲しければ下の穴へ石を 投げ入れ、願掛けを行う。 【豊見城市より】 国有地を活用して整備された西海岸テラス ゾーン及び自然海浜ゾーンは、各種フェスタ やウェディング写真撮影など多岐にわたる利 用がなされている。今後、更なる有効活用の ため、遊歩道などの施設を含めて指定管理制 度へ移行すべく検討を進めている。また、 「子宝岩」についても、少子化対策を兼ねた 観光資源としての活用ができればと考えてい るところ。 11 Ⅱ.沖縄管内における特徴的な企業の投資行動について ○行政による企業の人材育成への支援 行政(県)が「沖縄振興特別推進交付金」(一括交付金)を活用し、 人材育成に優れた企業を認証する全国初の制度及び認証企業における 人材育成などの取組み事例。 沖縄県人材育成企業認証制度 【制度の概要】 ・平成25年11月に創設。行政が人材育成に優 れた企業を認証する全国初の制度。 ・企業の採用・育成・評価など人材育成に関して 目標となる形を、働きがい15項目の認証基準と して示し、各企業が認証取得を目指して取り組 みを行うことにより、働きがいのある職場づくり を目指す。 ・県は、企業の人材育成の取組みを支援するた め、各企業の人材育成施策立案と実施の中核 となる人材育成推進者を養成する講座の実施 などを行う。 ・認証の審査は、書面審査に加え、従業員アン ケート、従業員・経営者・人事責任者等ヒアリン グを実施し、審査委員会での審議を経て県が認 証を決定。 認証企業の取組みなど ㈱エアー沖縄:那覇市 (空港で旅客ハンドリング等を実施) 《人材育成に関する主な取り組み》 《認証による効果など》 【ビジョンと人材像の実質化】 グループ50周年を迎えるにあたって社員参加に よる経営理念を策定しカードにして全員に配布。 今後、自分たちはどのような会社になりたいの かをミーティングによって「言える化」を進めてい く。 【コミュニケーションを通した人材育成】 新入社員にはエルダーが1対1で付き、エルダー は仕事を覚えてもらうだけでなく、エアー沖縄グ ループの社員として何を期待されているのか、 どうあるべきかを教え、育てていく。月1回のエ ルダーとトレイニーのミーティングおよびレポート によってその状況はモニタリングされている。 【職場育成機能を補完する人材育成投資】 他空港との交差研修や海外の空港への業務立 ち上げ支援等、様々な機会を通じて職業人とし ての見聞を広げる機会がある。 ・認証によって、大学などからの要請で当社 の業務内容を紹介する機会が増え、就職活 動中の学生にアピールすることができるよう になった。その結果、これまで少数であった 大卒者の応募も増えている。 《その他の取組み》 ・契約社員(約200名)を正社員化。若年者 の応募が増えているなど一定の効果があっ たものと認識。 ・企業の知名度向上のため、TVコマーシャ ルを作成・放映。また、地元新聞社などが 主催する合同説明会に参加するなど、人材 確保に向けた取組みを進めている。 ・女性の多い職場であるため、空港内での 託児所設置を検討しているが当社単独では 難しい問題。 オリックス・ビジネスセンター沖縄(株):那覇市 (オリックスグループ各社の主要業務の一部(事務処理業務や顧客管理業務)を受託) 《人材育成に関する主な取り組み》 【認証申請企業のメリット】 ・認証取得の過程で企業組織診断や人材育成 コンサルを受けることができる。 【認証取得企業のメリット】 ・人材育成に優れた企業として、求職者に強くア ピールすることができ、優秀な人材の確保がで きる(ハローワーク求人票における認証企業で あることの明示など)。 ・県の各広報や認証制度パンフレットで認証取 得企業として紹介されることによる企業イメージ' の向上。 ・認証企業に限定した合同企業説明会・面接会 の実施など。 ・H27年11月までに17社が認証。 【相互に学び支援し啓発し合う組織】 マルチスキルの修得を目標に掲げており、 チーム間や事業所間で繁忙期のチームの業務 を支援する仕組みを整備。一般社員は複数領 域の業務知識、リーダー層も複数領域の管理 スキルを習得できる。 【充分な初任者導入教育】 1年目、2年目、3年目にそれぞれ研修を実 施しているほか、環境が変わった際にはリー ダー研修やトレーナー研修を実施。また、昇 進・昇格社員を対象にストレスチェックも実 施。 【仕事および必要能力の体系化・可視化と自 身の能力水準の把握】 業務進捗状況を可視化し、必要なフォローを 行い、人事考課への反映など、評価基準を含 め社員と共有している。 《認証による効果など》 ・認証までのコンサルティングにより、中堅 管理者向けの研修の新設や社内向けの情 報発信ツールを構築。 ・認証後、メディアで採り上げられる機会が 増え、企業イメージの向上に繋がった。 ・社員募集時に人材育成に注力している企 業であることをよりアピールすることができ るようになった。 《その他の取組み》 ・契約社員(468名)を正社員化。その後、応 募者が増加するなど、外部からの当社の評 価が高まっていることを認識。 ・「在宅勤務制度」、「フレックスタイム制」、 「時間単位の休暇取得」を導入するなど、引 き続き、社員の働きやすい環境づくりを推進。 12
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