地域住民を対象とした 「ものづくりサポーター養成講座」 の実践

SURE: Shizuoka University REpository
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地域住民を対象とした「ものづくりサポーター養成講座
」の実践
松永, 泰弘; 河村, 翔太
技を媒介とした学びに熱中する子どもの育成プログラム ;
2012. p. 71-76
2012-03-31
http://hdl.handle.net/10297/7208
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地域住民 を対象 と した 「 もの づ くリサポー ター養成講座 」 の実践
技 術講座
1.は
松 永泰 弘 、河村 翔太
じめ に
現在 、子 どもの ものづ く り経験 が減少傾 向にあ り、 ものづ く り離れ ・ 理科 離れ が社会問
題 とな って い る。 この よ うな背景 か ら、授 業以外 での ものづ く り経験 の場 を少 しで も増す
べ く、研 究室 の 取 り組み として子 どもた ちを対象 とした ものづ く り教 室 を実施 して きた。
しか し、 この活動 をよ り地域 に根差 した もの にす るた めには 、大学 の教員 ・ 学 生だけでな
く地域住民 の参加 が不可欠 である。本実践 では 、地 域住 民 を対象 とした 「ものづ く リサポ
ー ター養成講座 」 を実施 し、地域住 民 が ものづ く りの指導者 として のス キル を身 につ け、
教 室 開催 の ため の ノ ウハ ウを学 ぶ とともに 、 よ り地 域 に根差 した ものづ く り教 室が 開催 さ
れ る こ とを 目指す。 また 、学 生 に とつて は地域住民 との交流 を通 して ものづ く りに取 り組
む こ とで 、大学 で学 んだ知 識や技術 を よ り深 く理解 し、普段 関 わ る ことの な い世代 の方 た
ち と交流す る ことで コ ミュニ ケー シ ョン能力 を身 につ ける こ とを 目標 として講座 を実施 し
た。
2.も の づ く リサ ポ ー タ ー 養 成 講 座
2-1
講座 内容
「ものづ くリサ ポー ター養成講座 (以 下 もの サ ポ講座 )」 では地域住民 を対 象 とし、静岡大
学 の教員 ・ 学 生 ・ 院 生が講師 とな り、 ものづ く り教 室 の指導者
(も
のづ く リサポー ター
;
通称 ものサポ)を 養成す る ことを 目的 として講座 を実施 した。
本実践 にお けるものサ ポ講座 では以下 の 3点 の能力 を身 につ ける ことを 目標 とした。
①指導者 として の知識
②指導者 として の指導法
③指導者 として の技術
これ らの能力 を身 につ けるた め の講座 内容 として 、全 8回 、 1回
前半 30分 を大学教 員 による講義、後半
2時 間 の講座 の構成 を、
90分 を製作実習 として実施 した。 なお今回 の講座
は静岡市駿河 区にある駿河 生涯学習 セ ン ター 「来 て こ」 で実施 した。
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図
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講座 の様子
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表
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ものサポ講座 内容
内容
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6回
第 8回
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9月 10日 (土 )∼ 12月 10日 〈
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※ 概ね第 2・ 4土 曜 日 lo月 のみ第 2・ 4・ 島土曜 午後 1:30∼
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18織 以上 15人
健康 文化交流館 r来・て・こ」
駿河 生涯学習センター 302活 動室
一 人 3000円 (全 8講 座分 )
静田大学 教 育学部 今山延洋 (静 田 大学 名誉教授 )
松永泰弘 (静 岡大学 教授 )
│1基 浩 (静 岡 大学 准教授 )
河村翔大 (静 田大学 大学院 生 )
意
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図 2 ものサポ講座宣伝チラシ
-72-
2-2 実践
平成 23年 度 9月 から全 8回 、毎月第 2、 4土 曜 日でものサポ講座を実施 した。
場所】駿河生涯学習センター 「来てこJ 202号 室
【
【日時】平成 23年 度 9月
【
講師】松永泰弘
25日 、10月
10、
(技 術講座教授)、
22、
8、
今山延洋
(名
29日 、11月
12、
誉教授)、 鄭基浩
26日 、12月 10日
(技 術講座准教授)、
河村翔太 〈
技術講座大学院生)、 技術講座学生ボランテ ィア
受講者】11名
【
実践の様子1
【
受講者は計 11名 と多 くの参加希望者 が集 まった。受講者 は主に主婦が多く、他 には仕事
を退職 した方や県の職員の方、一般企業に勤める方など様 々な職種 の方がみ られた。主な
参加理由は 「木工やものづ くりに興味があった」「子 どものおもちゃに興味があった ,自 分
で作 りたい」などといった意見が大半を占めた
(図 3)。
講座は全 8回 の うち、6回 が講義 と製作実習、8回 目には実際に子 どもたちにものづ くり
を指導する実践の場も設けてあり、 7回 目を実践 に向けての話 し合いの場 とした
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図 3 ア ンケー ト (参 加理 由)
≪第 1∼ 7回
講義・ 製作実習 ≫
講義では 3人 の教員 が講師 とな り、それぞれ の専門分野 について ものづ くりの基礎や子
どもたちへ の指導方法等 の講義を行 った。受講者 たちにとつては初 めて聞く内容 の講義 で
あったた め、毎回新 しい発見があ り、楽 しそ うに講義に参加 していた。 アンケー 卜か らも
「勉強になつた」「知 らなかった ことが知れた」等 の記述があ り、指導者 としての知識 を身
につ けることがで きる有意義な時間 となった
(図 4)。
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講義 の感想 )
図 4 ア ンケー ト 〈
-73-
製作実習 では 、学 生・院 生が主 とな り指導 を行 つた。製作 のためのマニ ュアル を作成 し、
主 にそ のマニュアル を見なが らの製作 とな った (図
5)。
初回 か ら数 回は受講者 が慣れ ない
作業 に時 間 がかか り、大幅 に講座 時間 が延 び る こ とがほ とん どであ つた。 しか し回 を重ね
る ご とに短時 間 で製作す る ことが 可能 とな り、作品 の精度 も上が るな どといった ことか ら、
受講者 たちの技術力 の 向上が うかがえた。
つ くる"と い うこ とだ
教材 ・マニュアル に 関 しては一 貫 して肯定的 な意見 が得 られた。 “
けに留 ま らず 、教材 には理 科 的・ 美術 的な学 び の 要素 が含 まれ てお り、また マニ ュアル に
ももの サ ポ コ ラム と称 して ものづ く りに関す るマ メ知識 的な要素 を毎回取 り付 けた こ とで
よ り深 く、多岐 に渡 つた学 び を保証で きた。
受講者 た ち 自身 も自己 の成長 を実感す る こ とがで きた ことがア ンケ ー トか ら読み取れ る。
実際 に子 どもた ちに指 導す る場 が用意 され て い たため、製作 中 に難 しか った点 、子 どもが
指導す る"こ とを意識 した製作実習 を行 うこと
困惑 しそ うな点 な どをチ ェ ック し、常 に “
がで きて い た
(図 6)。
またボラ ンテ ィア として参力日した学 生たちは 、大学 で学 んだ こ とを
思 い 出 しなが ら指 導す る ことで 、学 生 自身 の技術力 の 向上 、理 解 の深化 につ なが っ た。普
段 関 わ る ことの少 な い大人 と話 し、共 に取 り組む ことで世代間交流 も行 えた
(図
7)。
2フ レームを加工する.
もの サ ポ養成 講 座 vot.5,6
∼木製機械式振子時計を作ろう !∼
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図 5 教材 ロマ ニ ュアル の 一例
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図 6 ア ンケー ト (製 作実習 について)
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図 7 製作実習 の様子
≪第 8回
もの づ くり教室実践 ≫
ものサ ポ講座 での ものづ く り教 室実践 は 、実施場所 で もある駿河 生涯学習 セ ン ター で 毎
年行 われ る「来 て こ祭 り」の 開催 に合 わせ 、祭 りの一つの 出 しもの として実施 した (図 8)。
時間は 10:00∼
ち、第
16:00、
題材 には第 一 回 目に製作 した受動歩行模 型 を採用 した。 開催 に先 立
7回 目には ものサ ポ会議 を開き、開催 当 日の流れや製作物 の選択、製作過程 の確認
を行 つた。 開催 当 日は 、何度 も実践 を経験 して い る技術講座 の学 生た ち もボ ラ ンテ ィア と
して参加 し、受講者 と学 生 一 人ず つ でペ アを組み、子 どもたちの指導 に当た った。
講座 全 体 を受講 して製作す る ことには慣 れ た受講者 であ ったが 、実際 に子 どもたちを相
手 に指導す る とな る と、戸惑 い を隠せ な い様子 で あ つた。 しか し、時間 が経 ち経験 を重ね
る ご とに徐 々 に1貫 れ て い き、祭 りが終わ る ころには 立派 な指導者 として 一 人 で も子 どもた
ちに ものづ くりを教 え られ るほ どにな った
(図 9)。
製作 した受動歩行模型 は比較的難易度
の高 い教材 であ ったに もかかわ らず 、学 生 と受講者 が協力 して指導す る こ とで 、 スムーズ
回
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図 9 来 て こ祭 りの様子
図 8 来 て こま つ り
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に子 どもた ちが も のづ く りに取 り組 む こ とがで き た 。 受講者 と学 生 と子 ども とい う、普段
関 わ る機 会 の 少 な い三 者 が 共 に も のづ く り活 動 を行 うこ とで 、お 互い に学 び 合 うこ とので
き る世 代 間交流 が 実現 で きた (図
10)。
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引
受講者 ・学 生 口子 どもが 協 力 して もの づ くりに取 り組む様子
3.お わ りに
今 回講座 に参加 した 11名 は無事講座 の全過 程 を修 了す る ことがで きた。 また 、今回 の講
座 だ けで終 わ らせ る こ とな く、受講生 た ちが 自主的 に集 ま り、 生 涯学習 セ ン ター で活動で
きるよ う団体登録 を済 ませ 、「ものサ ポ・ イ レブ ン」 として現在 も活動 して い る。す でに研
究室 の実施す るものづ く り教 室 実践 にボ ラ ンテ ィア として数 回参加 してお り、今後 も共 に
活動 して い く予定である。
これ か らは 2期 、3期 の 「ものサポ養成講座」を実施 して い き、静 岡 で活躍す る 「ものサ
ポ」 の人数 を増 や して い く必要 がある。 また、現在 団体登録 を した こ とで生涯 学習 セ ン タ
ー が 自由に使用 で きるよ うにな っては い るが、 ものづ く りの道具や機械 が 常設 して ある施
設 はほ とん どない。 そ の ため、「ものサ ポ」 が活動す るためには ど うして も学生 の協力 が必
要 とな って しまってい るのが現状 である。非常 に難 しい課題 ではあ るが 、 なん とか 「常 に
ものづ く りがで きる環境」 を整備 し、 地 域住 民や子 どもた ちが 自由に ものづ く りで きる場
所 を確保 しな けれ ばな らない。
本 実践 で ものづ く りを学 んだ ものサポ ・ イ レブ ン を筆頭 に、多 くの地 域住民 が ものづ く
り教 室 に参加 し、子 どもた ち とともに ものづ く りに取 り組 む こ とがで きるよ う、 これ か ら
も精力的に活動 して い く必要 が ある。
本研 究 の一 部 は平成 23年 度科学研究費補助 金 (課 題番号 :21500869)の 援助 による。
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