退陣する

新ヒラリ ズム
5の 24
退陣する
陽羅
義光
【老兵は 死な ず、老 兵はた だ消え 去る の み】
これは ご存 じ、連 合国軍 最高司 令官 マ ッカーサ ーの 台詞で ある。
くだら ない 台詞だ が、当 時の (負け 犬 根性の) 日本 人は、 えらく 感心
したらし い。
死なな い老 兵は断 固とし て消 え去ら ず 、新兵は 老兵 が死ぬ か消え 去っ
てほしい と望 む。
これは 会社 や団体 の現状 である が、 社 会の現状 でも ある。
例えば 或る 会社で は、
(な かなか お陀仏 しない )老社 長に どうし て辞め
てもらう か、 幹部は 始終秘 密の会 議を し ている。
なぜな ら、 斬新な 会社に 衣替 えした い 幹部にと って 、創業 以来の 伝統
を重んじ る老 社長は 、「 老害」 いがい の なにもの でも ないか らであ る。
それで 、誰 が老猫 の首に 鈴を つける か 、誰が老 猫の 餌を分 捕るか 、鼠
どもは密 談を 続ける 。
すると 青天 の霹靂 が起こ って、 老社 長 が、
「愛猫と 一緒 に過ご す時間 がほし い」
とかな んと か、い いかげ んな理 由 で 、 退陣をす ると いいだ す。
老猫の 首に 鈴をつ ける必 要が なくな っ た鼠ども は、 ひとと き歓喜 する
が、歓喜 はひ ととき に終わ って 、こん ど は老猫の 餌を 食い合 って、 遠か
らず共食 いす る羽目 になる 。
なんと か生 存競争 を勝ち 抜き 、鼠一 匹 トップに 立っ て、猫 のぬい ぐる
みを着な がら 頑張っ ても、 すぐ にぬい ぐ るみに過 ぎな いと見 破られ る。
鼠は鼠に すぎ ない、 猫には なれな い。
そのこ とを 鼠ども は解っ ていな い。
それが 解っ ている 鼠がい たと したな ら 、自分で 鼠の 会社を 立ち上 げた
にちがい ない 。
退陣、 退社 、退会 、退校 、退役 、退 団 、退男、 退 女 。
「退」 はい かにも 、潔い 立派 な行為 と 考えられ 勝ち だけれ ども、 その
実体は、 自分 勝手な 我が儘 行為な ので あ る。
「老兵 は消 え去り たくな いが、 残念 な がら老兵 は死 す」
この台 詞の ほうが 、マッ カーサ ーの 台 詞よりも 百倍 見事で ある。