メラミン化粧板トップシェア 「表情」を見つけ「空間」を創る

vol.
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メラミン化粧板トップシェア「表情」を見つけ「空間」を創る化学メーカー
アイカ工業株式会社 取締役/AICA Asia Pacific Holding Pte. Ltd. 取締役会長 大村 信幸氏
愛知県清須市
やデザイナーより高い評価を受けた。発売以
ルにAICA Asia
に本社を置き、
化粧
降、
業界では化粧板の色を表す際に
「カラー
Pacific Holding
板・各種建設樹脂な
システム105」
の色番が用いられるようになっ
Pte. Ltd.社(以
どの建築関連用品
た。
下:AAP)
を設立。
や接着剤の製造・
1990年代には不燃化粧板「セラール」
の
これにより10%
販売を行うアイカ工
開発に成功。当時のキッチン壁の素材には、
弱だった海外売上高比率は35%まで伸長し、
業株式会社
(以下:
目地に汚れが溜まりやすいタイルがよく使用さ
拠点数も9拠点から22拠点に増加するなど、
アイカ)
。
コアテクノロジーである樹脂加工技
れていたが、
「セラール」
は目地をほとんどなくせ
海外事業は急拡大した。M&A後も、
AAPの経
術を生かし、
化成品・建装材・住器建材など幅
たことから人気に火が付き、
日本のキッチン内
営執行は従来の経営陣に委ね、
本社からは
広い事業を手掛けており、
同社のメラミン化
装の幅を広げた革新的な商品となり、
記録的
チェック、
コントロールおよび技術交流の協働
国内市場トップとなる7割のシェアを
粧板 は、
な売上高を計上した。
こうした取り組みにより、
を行う体制を採っている。
その目的は互いに学
誇っている。2015年9月に昭和電工株式会
アイカ製の化粧板は業界のデファクトスタン
び合い、
相互補完を図ることによりシナジー効
10月に三菱
社からフェノール樹脂 事業を、
ダードとして認識されるようになり、
化粧板トップ
果を発揮することだという。
マテリアル建材株式会社より建材事業を譲
メーカーとしての地位を確立していった。
り受け、
業容をさらに拡大した。
アイカグループ
「素材連携モデル」
で空間全体をコーディネート
2016年10月には創業80周年を迎える。今
全体でみると、
海外は2015年10月現在で中
同社は素材である樹脂・接着剤からインテリ
後の成長戦略として、
国内は医療・介護施設
国、
台湾、
シンガポール、
マレーシア、
ベトナム、
ア建材などの最終品までを取り扱っており、
ド
向けの専用商材や、
自動車部品用の高機能
タイ、
インド、
インドネシア、
ニュージーランドに計
ア、
壁、
テーブルなど室内に設置される大半の
接着剤開発など機能材料分野の開拓に注力
22の製造・販売拠点を保有し、
アジア・太平
商材の自社製造を可能にしているため、
各事
していく予定だ。
洋地域の市場開拓に取り組んでいる。
業間で樹脂や化粧材などを供給し合う
「素材
海外事業に関し、
AAP会長である大村信
業界のデファクトスタンダードになった
連携モデル」
も強みとしている。商材によって
幸氏は、
「アジアで成長が見込まれるフェノー
アイカの化粧板
製造工程や強度設定などが異なるため、
それ
ル樹脂事業を強化しながら、
AAPを中核拠点
1936年に接着剤メーカーとして創業し、
ぞれの仕上がりの柄や色には微妙な違いが
に、
2020年までに海外売上比率を50%に高
1939年には日本初となる熱硬化性のユリア
生じやすいが、
素材連携モデルを駆使し、
商
めたい。
また旧ダイネア社は断熱材、
研磨材、
樹脂接着剤を開発。以降、
樹脂加工技術の
材同士の色や柄を近づけ、
室内全体に一体
鋳型の樹脂技術など独自の強みを有している
研鑽を重ね、
ゴム系やウレタン系、
酢酸ビニル
感をもたらす空間づくりを実現している。
ため、
技術融合を図り、
新たな技術も生み出し
系なども取り扱う総合樹脂メーカーとして成長
大型M&Aで海外事業拡大
ていきたい」
と展望を語る。
していった。
海外には、
1968年にマレーシア、
1974年
アイカの社是は
「挑戦と創造」
である。前向
1960年代には化粧板事業に参入し、
1984
にインドネシアに製造拠点を設立するなど、
早
きな失敗は問わず、
常に挑戦し、
新しい文化
年には業界初となる105種類の色を系統化し
い段階より進出している。2001年以降は、
ア
を取り入れながら成長することを理念としてい
た
「カラーシステム105」
を開発した。従来の化
ジア・太平洋地域の市場開拓を目的に、
中国
る。全社員がこの精神でこれからも挑戦を続
粧板は色数が少なく系統化されていなかった
や台湾、
タイ、
ベトナムに拠点を設置し、
2011
け、
国内・グローバルの両市場で持続的成長
ため、
バリエー
年にインドの大手企業より化粧板事業を買
を遂げていく。
ションに富み、
収するなど、
投資を加速させている。2012年
色を番号で識
にはフィンランドの接着剤メーカーであるダイ
別できる同商
ネア社よりアジア・太平洋部門子会社の株
品は、建築士
式を取得する大型M&Aを行い、
シンガポー
*1 熱硬化樹脂であるメラミン樹脂・フェノール樹脂をそれぞれ印刷
紙・クラフト紙に含浸させ乾燥させた含浸紙を何枚も重ね合わ
せて、高温下で積層形成したプラスチック板。テーブルの天板
や店舗什器の表面材として使用されている。
*2 耐熱性や難燃性を有し、
自動車・鉄鋼・電子機器用途に強み
を持つ樹脂
大村会長
*1
*2
メラミン化粧板
22 mizuho global news | 2016 JAN&FEB vol.83
AAP社オフィス外観
「挑戦と創造」
の精神で持続的成長
(取材・作成)
みずほ銀行 直投支援部 金久 実央