島根県で初めて「カプセル内視鏡 指導施設」に認定されました カプセル内視鏡について 内科医長 結城美佳 ★小腸と内視鏡 栄養吸収を担い、消化管の中でも重 要な臓器とされる小腸ですが、おなか の中で固定されておらず自由に動く 上、長く曲がりくねっているため、内 視鏡などの精密検査が困難で、以前は 暗黒の臓器とも言われていました。小 腸の検査には腹部 CT、腹部超音波検 駒澤慶憲先生が手にされているのが 今回、公布された認定証です。 先生方が手に持たれているのが カプセル内視鏡です。 下の写真の大きさのものです。 (11 ㍉×26 ㍉) 査やバリウムなどによる小腸透視で「病 気の影」をみる検査は以前からありました が、最近になってようやく内視鏡検査が登 場しました。その内視鏡検査とは大きく分けて①バルン内 視鏡、②カプセル内視鏡の2種類があります。 当院では H18 年からダブルバルン内視鏡を、H21 年か らカプセル内視鏡を導入し、山陰で最も早く小腸内視鏡検 査を行っています。そもそも小腸の病気と言えば、胃や大 腸に比べて癌は尐なく、これまで検査ができなかったこと もあり、進行してから発見され緊急手術になるようなこと もありました。それが消化管の中で最後の暗黒の臓器であ った小腸に対して、内視鏡検査で病気の有無のチェックと 精密検査、さらには早期発見であれば内視鏡的な治療もで きるようになったのです。 ★小腸カプセル内視鏡の適応 基本的には「小腸に病気が疑われるすべての疾患」が対象で、一番多いのは他の胃カメラや大腸 カメラで出血源のわからない消化管出血(吐血や下血、慢性貧血など)です。そのほかにももちろ ん腫瘍が疑われる場合、慢性的な腹痛、腸閉塞の原因検査などが対象となります。 ★小腸カプセル内視鏡検査の実際 カプセル内視鏡のサイズは 11mm×26mm、重さ 2.9gのまさにカプセル型の内視鏡を水と ともに飲み込み、そのカプセルが体の中を移動しながら1秒間に 2 枚ずつの写真を撮影、その結 果をおなかにつけたセンサーとレコーダーによって記録し、約半日後にその画像を回収しコンピュ -1- ータで解析、医師がカプセル内視鏡が撮影した 55,000 枚以上の内視鏡写真をチェックします。 カプセルを飲みこむときには病院にきてもらう必要がありますが、そのあとは食事、仕事、家事、 散歩・・・など病院外で自由に過ごすことができます。センサーが水にぬれるようなこと(入浴や 水泳など)と MRI 検査はできませんが、その他のたいていのことであれば、普段通りの生活を送 っている間にカプセル内視鏡が小腸の中を食べ物の通り道どおりに移動しながら撮影するので、受 ける患者さんにとっての負担が大変小さい検査であるのが特徴です。また1症例ごとの使い捨てで すから感染のリスクもなく、安静や入院の必要のない検査です。ただしカプセル内視鏡は撮影する だけで、組織をとったり、腫瘍を切除したり、出血を止めたりなどの治療を行うことはできません から、まずカプセル内視鏡で小腸を検査して、何らかの異常をみつけ、治療が必要である場合は改 めてダブルバルン内視鏡などを行う必要があります。カプセル内視鏡のほぼ唯一の問題点ともいえ るのは、実際に小腸に腫瘍や潰瘍で狭くなっている部位(狭窄や閉塞)がある場合、そこに内視鏡が 詰まってしまい(停留といいます) 、カプセル内視鏡が排出されず腸内にとどまってしまうことで す。もし狭窄や閉塞が疑わしい場合には、あらかじめ溶解性のものでできたダミーのカプセル(パ テンシーカプセルといいます)を事前に飲んで、それがうまく排出されるかどうかの通過性確認を 行いますので、最近では停留のリスクが低くなり、カプセル内視鏡の適応が広がりました。 ★カプセル内視鏡の今後 現在国内では、小腸用のカプセル内視鏡のみが正式に認可されていますが、食道用、大腸用のカ プセル内視鏡もあり、海外では実際に臨床現場で使用されています。また体外からカプセル内視鏡 の位置や向きを操作することのできる自走式カプセル内視鏡などの開発も行われており、現在使用 している小腸カプセル内視鏡も撮影枚数や明るさの調節、撮影時間の延長など日進月歩の改良が検 討されています。将来は口から肛門までたべものの通り道である全消化管がカプセル内視鏡で安 全・簡単・確実に診断できる時代が来るかもしれませんね。 -2-
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