(2)言葉の定義 コアメンバー会議 虐待対応ケース会議 養護者

(2)言葉の定義
コアメンバー会議
高齢者虐待防止を担当する、区市町村職員及び担当管理職職員と地域包括支援センタ
ー職員とで行う、虐待の有無と緊急性の判断を行う会議。
具体的には、高齢者の安全確認、担当者の決定、関連機関等への確認事項の整理を行
う。
虐待対応ケース会議
コアメンバー会議構成員と関係機関等で、援助方針、支援内容、各機関の役割等の情
報を共有し決定する会議。
養護者
高齢者虐待防止法では「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外の
ものをいう」
(第2条第2項)と定められている。
当該高齢者の日常生活において、金銭管理や食事の世話など、高齢者の生活に必要な
行為を管理したり、提供している者をいい、必ずしも当該高齢者と同居していなければ
いけないわけではなく、例えば近所に住みながら世話をしている親族なども該当する。
立入調査
区市町村がその権限において、虐待を受けて生命や身体に重大な危険が生じているお
それがあると認められるとき、必要に応じて高齢者の住所又は居所に立ち入り、調査又
は質問をすること(根拠法:高齢者虐待防止法第11条)
・物理的な有形力の行使は認められない(鍵やドアを壊して立ち入る等)
・立入調査の実施にあたり、市区町村長は高齢者の生命又は身体の安全の確保に万全
を期する観点から、必要に応じ適切に、当該高齢者の住所又は居所の所在地を管轄す
る警察署長に対し援助を求めなければならない(同法第12条2項)。
やむを得ない事由による措置
虐待等の理由により契約によって必要な介護サービスの提供を受けることが著しく
困難な65歳以上の高齢者について、区市町村長が職権をもって介護サービスの利用に
結び付けること。
・老人福祉法第10条の4第1項(訪問介護などの在宅支援サービス)
・同法第11条第1項第2号(特別養護老人ホームへの入所措置)
<やむを得ない事由とは>
・本人が家族等の虐待又は無視を受けている場合、・認知症その他の理由により意思
能力が乏しく、かつ、本人を代理する家族等がいない場合等が想定されている(「老人
ホームへの入所措置等の指針について」昭和62年1月31日 社老第8号))
その他、第11条第1項第1号に「環境上の理由及び経済的事由による養護老人ホー
ムへの措置」が規定されている。
入院の形態
任意入院
精神保健福祉法第 22 条 3 及び 4 に定められた入院の形態で、患者と病院の管理者
との契約による入院。ご本人の同意による。この方法によって入院された場合、ご本
人が退院の請求をされれば、基本的にいつでも退院が可能である。但し、指定医が医
療、保護の必要があると判断した場合には、72 時間に限って退院制限がなされる場
合もある。
医療保護入院
精神保健指定医が診察した結果、精神障害があって、医療および保護のための入院
が必要だと判断された場合、ご本人の扶養義務者にあたる方の同意により 4 週間、ま
た保護者の方の同意が得られた場合には医療保護が必要な症状が消失するまでの間、
ご本人の同意がなくとも行動制限を伴う形の環境で治療がなされる入院の方法。
○医療保護入院は、入院を必要とする精神障害者で、自傷他害のおそれはないが、任
意入院を行う状態にない者を対象として、本人の同意がなくても、精神保健指定医の
診察及び保護者の同意があれば入院させることができる制度である。
○保護者が選任されていない場合には、4週間に限り、扶養義務者の同意により医療
保護入院が行われる。(※)保護者になりうる人が、その間に家庭裁判所から保護者
の選任を受ける。
○保護者になる人がいない場合、又は保護者が義務を果たせない場合は、市町村長が
保護者となる。
(市長同意)
○基準に適合する精神科病院では、緊急やむを得ない場合、精神保健指定医の代わり
に、特定医師の診察により、12時間に限り、本人の同意がなくても入院させること
ができる。
○精神科病院の管理者は、入院後10日以内に都道府県知事に届け出ることとなって
おり、精神医療審査会において、入院の必要性があるかどうか審査を行う。その後は、
12か月ごとに、都道府県知事に定期報告を行い、精神医療審査会において、入院の
必要性があるかどうか審査を行う。
○退院については、精神科病院の管理者の判断と、保護者の同意により決められる。
応急入院
応急入院指定の病院において、精神保健指定医が診察した結果、精神障害者であって、
入院治療を行わなければ、医療保護を図る上で著しい支障が認められると判断された場
合、本人の同意が得られない状態でも可能な 72 時間以内に限った入院の方法。
緊急措置入院(自傷他害の恐れがあるとき)
応急入院指定の病院において、精神保健指定医が診察した結果、精神障害者であって、
入院治療を行わなければ、医療保護を図る上で著しい支障が認められると判断された場
合、本人の同意が得られない状態でも可能な 72 時間以内に限った入院の方法。精神障
碍、またはその疑いがおありの方の病状が急迫してしまったために、自傷他害の行為が
急を要する状態で、通常の措置入院手続きをとることが不可能な場合の入院方法。
この入院の場合は、ご本人のご家族等への通知と立ち会い、職員の立ち会い、2 名以
上の精神保健指定医の診察を省略できることになっている。
措置入院(自傷他害の恐れがあるとき)
精神障碍をお持ちの方で自傷他害の恐れがあるとみなされる場合、都道府県知事が精
神保健指定医の意見に基づき、ご本人や保護者の同意が得られなくとも強制的に入院が
なされる制度。
精神保健福祉法第 23 条から第 26 条の 2 までの申請、通報、届け出に基づき、2 名の
精神保健指定医の診察の結果、2 名ともが入院の措置が必要だと判断すること、職員が
立ち会うこと、現に保護にあたっている者が立ち会えることなど、人権擁護のための規
定が、法によって定められている。
また、この形態をとって入院をされた場合の入院費の自己負担分は、原則として公費
負担。但し、ご本人、及びその扶養義務者の方の所得税が 150 万円を超える場合には、
2 万円を限度に自己負担がある。
仮入院
指定医の診察の結果、精神障害の疑いがあり、その診断に日時を要することが予想さ
れる場合に、ご本人の同意が得られなくとも扶養義務者の同意がある場合、精神疾患で
あるか否か診断を行うことが目的の入院(1 週間を越えない期間)
。
従って、診断の結果、精神障害を有すると診断された場合には、他の入院形態に切り
替えられることになる。
精神障害ではないと診断された場合には、その時点で退院となる。
<手続きの比較>
同意
入院形態
本人
保護者
指定医
備考
知事
任意入院
○
医療保護入院
×
○
1人
東京都への届出
応急入院
×
×
1人
東京都への届出(72時間まで)
措置入院
×
×
2人
○
緊急措置入院
×
×
1人
○
1年を過ぎる場合2年毎に東京都への届出
高齢者緊急一時保護事業
高齢者が生命に危険な状況にある場合等に、高齢者の安全を図るため、一時的に市が
指定する特別養護老人ホーム又は有料老人ホームを利用し、その擁護及び福祉の向上を
図る事業。多摩市の高齢者一般福祉サービス事業。
対象者は、市内に住所を有する、要介護認定又は要支援認定を受けていない者で、次
に掲げるもの
① 65 歳以上の高齢者で高齢者虐待又はセルフネグレクトにより一時的に保護す
る必要があると判断されたもの
② 認知症による徘徊等により市内で保護されたもの
民間宿泊施設
ホテル・旅館・民宿等一般的に宿泊できる施設。
宿泊所
社会福祉法第 2 条第 3 項に定める第 2 種社会福祉事業のうち、その第 8 号にある「生計
困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利
用させる事業」に基づき、設置される施設。無料低額宿泊所。
生活保護法に基づく施設ではない。社会福祉法に基づく低所得者用の施設(第2種社
会福祉事業)で、宿泊料金を払えば誰でも泊まることができる。都内には70ヶ所以上
ある。
DV 保護施設
売春防止法第36条により都道府県や社会福祉法人などが設置している。もともとは
売春を行うおそれのある女子を収容保護する施設だったが、現在では、家庭環境の破綻
や生活の困窮など、様々な事情により社会生活を営むうえで困難な問題を抱えている女
性も保護の対象としている。
平成13年4月に成立した配偶者暴力防止法により、婦人保護施設が配偶者からの暴
力の被害者の保護を行うことができることが明確化された。
女性相談センターを通じて保護が行われる。
虐待終結
虐待対応を終結させるためには、虐待が解消している事が条件となる。虐待が解消して
いる場合とは、虐待に至った原因や課題・問題が解決し虐待再発の恐れがなく、被虐待者
が将来にわたり安定した生活が継続できる状態。
〈終結の確認とは〉
虐待の現状及び将来の予測のもと、終結できるか組織決定し、包括的・継続的ケアマネ
ジメントへの移行についても併せて確認する。
4.個人情報の取り扱いについて
高齢者虐待では、家族関係等に関わる繊細な問題を扱わざるを得ないため、支援にあ
たる関係者は支援の過程で知った高齢者本人及び家族の個人情報やプライバシーの保
護について、特に配慮していく必要があります。
個人情報保護法では、本人の同意を得ずに特定の利用目的以外に個人情報を取り扱っ
てはならないこと(第 16 条
利用目的による制限)、本人の同意を得ずに個人情報を第
三者に提供してはならないこと(第 23 条 第三者提供の制限)を義務付けています。
高齢者虐待防止法でも、市町村職員や同法上の事務委託を受けた機関の役員、職員に
対して守秘義務を課しています(第 8 条、第 17 条)。
また、虐待の通報や相談により市が個人情報を入手し、これを利用する場合、市は多
摩市個人情報保護条例に従う必要があります。
一方、虐待の事例対応にあたっては、個人情報を含む高齢者本人や家族の情報を、関
係者間で共有し、虐待の状況についてのアセスメントや支援方針についての検討を行う
ことが不可欠です。
個人情報保護法では、個人情報の取得については事前に利用目的を通知し、本人の同
意を得ることが基本とされていますが、第16条及び第23条において本人同意を得る
ことについての例外規定が設けられています。
○個人情報保護法における利用目的による制限・第三者提供の制限の例外規程と、高齢
者虐待における解釈例
個人情報保護法
第 16 条及び第 23 条
第 1 号 法令に基づく場合
・虐待を発見した者が区市町村に通報を行う場合(虐待防
止法第7条、第21条)
・虐待に関する事実確認。立入調査において必要な調査又
は質問を行う場合等(第11条)
第 2 号 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合で
あって、本人の同意を得ることが困難であるとき
・虐待により本人の生命等を保護するため対応が必要であ
るが、意識不明又は認知症等により、同意の確認が困難な
場合等
第3号 略
第 4 号 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が
法令の定める業務を遂行することに協力する必要がある場
合であって本人の同意を得ることにより、当該事務の遂行
に支障を及ぼすおそれがあるとき
・市や地域支援包括支援センター、介護保険事業者や民生
委員、警察等の各関係機関がネットワークを組んで対応す
る場合
また医療機関や介護保険事業者などの関係機関は、市町村に対して虐待対応について
協力義務を負っており(第16条)、これらの関係機関は高齢者虐待に関して早期発見
義務や協力義務があります(第5条)。こうしたことからも、情報提供を求められた医
療機関や介護保険事業者などの関係機関は、市町村に対して進んで情報提供をすべき立
場にあります。
個人情報保護法の趣旨を尊重しながら、高齢者虐待への対応を適切に進めていくため
には、こうしたルールについて十分に周知し、関係者・関係機関の理解を得ることが大
切です。
※虐待対応ケース会議における守秘義務について
当該会議は、虐待防止法に基づいて開催される会議であり、会議中には、対象者やそ
の関係者の個人情報が明らかにされますが、多摩市個人情報条例第3条第3項及び第1
3条第13条第3項により、実施機関の職員及び受託者等には、守秘義務が規定されて
います。また、同守秘義務に違反した場合、同条例第1項、第2項、第3項及び第5項
には罰則が設けられています。