当日配布資料(3.12MB)

培養ヒト骨髄細胞を用いた
低侵襲肝臓再生療法
山口大学 大学院医学系研究科 消化器病態内科学
講師 高見 太郎
山口大学 大学院医学系研究科 再生医療研究教育センター
助教 藤澤 浩一
肝硬変と自己骨髄細胞投与療法
慢性肝炎
肝硬変
(日本400万人・
世界2億4000万人)
(日本30万人・
世界2000万人)
肝硬変
・内科的な根治療法がない
・根治療法は肝移植のみ
<肝移植の問題点>
・ドナー不足
・免疫拒絶
・高額医療費
【第101回総合科学技術会議資料より抜粋】
臓器移植を伴わない肝臓再生療法
「自己骨髄細胞投与療法」開発
Autologous bone marrow cell infusion therapy
(ABMi therapy)
Stem Cells. 2006;24:2292-8.
日本初として,「先進医療B」
に認可 (H25年6月)
マウス肝線維化改善評価モデル
マウスGFP/CCl4モデル
GFP陽性
骨髄細胞
尾静脈投与
C57BL/6/EGFP
C57BL/6
(同種同系)
正常群
肝線維化誘導群
正常群
肝線維化誘導群
:四塩化炭素 (CCl4)
1週
2週
3週
4週
GFP陽性骨髄細胞を尾静脈から投与
4週間投与
Terai S, Sakaida I, et al. JB 2003
マウスGFP/CCl4モデル
~肝線維化と投与骨髄細胞の局在~
骨髄単核球細胞を
末梢血管より投与
肝線維部に浸潤し
MMP-9を発現
線維を溶解
MMP-9 (赤)
Sakaida I., et al.,HEPATOLOGY40(6),2004
骨髄細胞投与によるマウス肝機能・生存率改善
10
*
3
p<0.0001
2.5
8
*
*; p<0.01
9
g/dl
% 7
2
6
5
1.5
4
BMC(-)
BMC(+)
1w
2w
3w
4w
1w
2.02
2.1
2w
2.14
2.28
3w
2.1
2.42
4w
2.12
2.52
アルブミン値の改善
GFP陽性細胞の肝臓への定着
%
100
2.5
80
2
%
p<0.01
1.5
60
BMC(-)
40
1
**
n=15
** ; p<0.05
20
0.5
0
BMC(+)
0
1week
4weeks
肝線維化の改善
0
20
40
60
80
100 120 140
生存率の改善
days
Sakaida I., et al.,HEPATOLOGY40(6),2004
ヒト肝硬変症に対するABMi 療法の有効性を再確認
骨髄細胞投与後に
血清アルブミン値
肝前駆細胞が活性化
Child-Pughスコア
治療前
1ヶ月後
3ヶ月後
6ヶ月後
IHC:CK7(肝前駆細胞マーカー)
自己骨髄細胞投与療法 想定作用メカニズム
骨髄細胞の投与
障害肝への骨髄細胞の生着
各種サイトカインや
増殖因子の放出
細胞外基質(ECM)溶解
(骨髄由来MMP9発現)
レドックス
制御
肝線維化の改善
(微小循環の改善=血流の増加)
ヒト臨床研究で確認
肝組織幹/前駆細胞活性化の活性化
残存肝細胞増殖
肝細胞の増殖・増加
Takami T, Terai S, and Sakaida I.
Curr Opin Gastroenterol. 2012
肝機能の改善・生存率の改善
肝発癌
抑制
自己骨髄細胞投与療法(ABMi 療法・非培養)
診断と治療方針の決定
(適応者の決定)
自己骨髄細胞の採取
入院・全身麻酔
約400mL
骨髄液採取
細胞の洗浄・収集・検査
自己骨髄細胞の点滴投与
山口大学医学部附属病院
再生・細胞治療センター
治療半日程度
H25年6月
先進医療B認可
Stem Cells. 2006;24:2292-8.
主要特許 特許第4752058号 (H23年6月3日登録)
自己骨髄細胞投与療法(非培養・全骨髄細胞)
多施設・ランダム化比較試験(先進医療B)
【参加機関】山口大学、国立国際医療研究センター、山形大学
【データセンター(データ登録、解析)】 先端医療振興財団
24週
細胞投与群(17例)
:細胞治療・通常治療
同
意
登
録
主
▲
ABMi療法
要
・
取
得
割
評
付
通常治療群(17例)
価
:通常治療のみ
適応を満たせば
細胞投与
<リクルートホームページ>
http://www.hosp.yamaguchi-u.ac.jp/about/senshin-b.html
自己骨髄細胞投与療法
多施設・ランダム化比較試験(先進医療B)
適格基準
• C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変症例
• 90日以上離れた2点において,Child-Pughスコアが7点(Child-PughスコアB)
以上の状態にあり,現行の内科的な治療法では改善が見込めない症例
• 20歳以上75歳以下の症例
• インフォームドコンセントを取得可能で,研究参加の同意が得られた症例
代表的な除外基準
 C型肝炎ウイルス以外の原因で肝硬変へ至った症例,もしくは肝硬変へ
至った原因が不明の症例
 T.Bil(総ビリルビン値)が3.0mg/dL以上の症例
 全身麻酔を行うことが適切でないと担当医が総合的に判断した症例
自己骨髄細胞投与療法と「低侵襲肝臓再生療法」
【先進医療B】
主要特許 特許第4752058号 (H23年6月3日登録)
診断と治療方針の決定
(適応者の決定)
自己骨髄細胞の採取
現状:入院・全身麻酔
約400ミリリットル
骨髄液採取
適応患者
限定
Stem Cells. 2006;24:2292-8.
細胞の洗浄・収集・検査
自己骨髄細胞の点滴投与
山口大学医学部附属病院
再生・細胞治療センター
治療半日程度
全身麻酔可能例に適応が制限される
【臨床研究】
培養骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いた低侵襲肝臓再生療法
少量の自己骨髄液
を採取(局所麻酔)
山口大学医学部附属病院
再生・細胞治療センターCPF
約3週間 通常培養
品質・規格・
安全性評価
点滴投与
適応拡大
有効性確認試験
培養ヒト骨髄MSCの肝線維化改善作用
市販ヒト骨髄単核球細胞
(通常培養・約20日間培養)
四塩化炭素
障害
尾静脈投与
免疫不全マウス
肝線維化評価モデル
細胞投与なし
四塩化炭素障害
肝硬変を誘導
細胞投与あり
培養ヒト骨髄MSC投与
評価
6 週間
6週
7週
8週
9週
10 週
培養ヒト骨髄MSCの肝線維化改善作用
CD11b
CD105
CD44
iso
iso
Osteocyte
iso
CD117
4.0
CD34
Ctrl
CD11b
CD13
CD11b
CD45
HLA-DR
CD73
×40 Adipocyte
CD11b
CD11b
CD11b
×200 Chondrocyte
BMi
HLA-ABC
Sirius red stained area(%)
iso
CD90
CD73+/CD90+/CD45-
×200
p<0.05
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
Ctrl
0.5
0.0
BMi
control
P2
Tanimoto H, Terai S, Takami T, Sakaida I, et al.,
Cell Tissue Res.2013;354(3):717-28.
培養骨髄MSCの抗酸化作用による肝線維化抑制
シリウスレッド肝線維化面積
TAA投与肝硬変モデルマウス
p<0.05
非投与
血清ヒアルロン酸
肝MMP9発現
p<0.05
MSC
投与
非投与
血清抗酸化活性
肝脂質過酸化
Liver tissue
(MDA)定量
p<0.05
p<0.01
p<0.05
非投与
Serum
MSC
投与
MSC
投与
非投与
MSC
投与
非投与
MSC
投与
マウスSCID肝硬変モデルに対する培養骨髄MSC投与の肝線維化抑制効果を確認
Quintanilha LF, Takami T,,Terai S, Sakaida I., Hepatology Research 2013
培養骨髄MSCの抗酸化作用
混合培養
<緑色>
GFP陽性肝細胞
<赤色>
DiI-I標識骨髄MSC
ROS intensity
FITC(GFP)陽性細胞
(肝細胞)
由来ROS定量
Nrf2 qPCR
(肝細胞由来)
p<0.05
p<0.01
MSCなし MSCあり
TAA(+)
MSCなし
MSCあり
TAA(+)
Quintanilha LF, Takami T,,Terai S, Sakaida I., Hepatology Research 2013
本臨床研究により新たな患者を救命する
非培養・全骨髄細胞によるABMi 療法
【先進医療B】
【選択基準】
1, C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変症例
2, 90日以上離れた2点において,Child-Pugh Scoreが7点(ChildPugh B)以上の状態にあり,現行の内科的な治療法では改善が見
込めない症例
3, 20歳以上75歳以下の症例
4, インフォームドコンセントを取得可能で,研究参加の同意が得られ
た症例
【除外基準】
1, C型肝炎ウイルス以外の原因で肝硬変へ至った症例,もしくは
肝硬変へ至った原因が不明の症例
2, 悪性新生物を合併する,または既往を有する症例
3, 破裂の危険性を有する食道・胃静脈瘤を有する症例
4, 血清クレアチニン値2 mg/dL以上の腎機能障害を合併する症例
ヘモグロビン値が8 g/dL未満,あるいは血小板数が50,000 /µL未満,
あるいはPTが40%未満の症例
5, T.Bilが3.0mg/dL以上の症例
6, Performance Status 3あるいは4の症例
7, 同種血輸血に関する同意を得られない症例
8, B型肝炎ウイルス感染症,ヒト免疫不全ウイルス感染症,成人T細
胞白血病ウイルス感染症,パルボウイルスB19感染症が否定できな
い症例
9, 妊娠中の女性
10, 全身麻酔を行うことが適切でないと担当医が総合的に判断した
症例
11, 造影剤に対する重篤なアレルギーのある症例もしくは造影剤に
対する重篤なアレルギーの既往を有する症例
12, その他担当医が不適当と判断した症例
培養・骨髄間葉系幹細胞
を用いた低侵襲肝臓再生療法
【選択基準】
C型、B型肝炎ウイルスおよび生活習慣病に
起因する肝硬変にも適応を拡大
(肝硬変の成因は問わない)
【除外基準】
HCV以外にも適応拡大するため削除
「T.Bil(総ビリルビン)が3.0mg/dL
以上5.0未満」へ緩和
(全身麻酔をかけないため
適応を拡大)
削除(局所麻酔で骨髄液採取のため)
JST・山口大学共同プレスリリース(2014年8月)
培養自己骨髄間葉系幹細胞を用いた肝臓再生療法の流れ
H26年8月 JST・山口大学 共同プレスリリース
H26年8月 厚生労働省「ヒト幹細胞臨床研究実施計画」承認
【対象】
非代償性肝硬変
患者さん(10例)
同
意
取
得
細胞の
品質・規格・
安全性評価
登
録
約3週間培養して
局所麻酔下に
約30ミリリットル 骨髄間葉系幹細胞
を増やす
の骨髄液を採取
【評価項目】
投与後1週間は入院、
6ヶ月間の観察期間中も
定期的に観察・検査を行う
本人の末梢静脈より
細胞懸濁液を
点滴で投与
<主要評価項目>
安全性:有害事象の発生頻度
<副次評価項目>
有効性:肝機能と全身症状の改善
【データセンター・解析(第三者機関)】
公益財団法人 先端医療振興財団
作業従事者への感染リスクをなくすために
山口大学医学部附属病院
新設CPF+アイソレータ
(H26年4月から運用開始)
培養器
Cell processing facility (CPF)
共同研究:(株)澁谷工業
知財の状況
1, 寺井 崇二、沖田 極
「骨髄細胞の遊走・分化・増殖評価モデル動物およびその利用法」
特願2001-271240号(平成13年9月7日)
特開2003-70377(平成15年3月11日)
特許4997377(平成24年5月25日)
再生療法開発の基盤になったモデル(GFP/CCl4モデル)の基盤特許。
2, 坂井田 功、寺井 崇二
「肝再生骨髄細胞画分」
特願2005-286546(平成17年9月30日)
特開2007-089532(平成19年4月 12日)
特許4752058(平成23年6月3日)
ヒト骨髄中に存在する肝硬変症に対する線維化改善に作用する有用分画を見いだした。
想定される用途
1, 肝臓再生療法
2, 臓器線維症に対する治療法
3, ウイルス検体でも培養可能な培養法
企業への期待
1, ウイルス検体を含む細胞の培養装置
2, 効率的培養液
3, 企業主導治験
お問い合わせ先
山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学 ホームページ
http://www.ichinai-yamaguchi.jp/
山口大学 大学院医学系研究科消化器病態内科学
高見 太郎 [email protected]