NGOから見たCOP12の成果と 愛知ターゲットの達成状況 (公財)日本自然保護協会 国際担当主任 国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)事務局長 道家哲平 1 本日の発表 第12回締約国会合(COP12)の 決定から見える、 「次の6年とその先」 2 194カ国のコンセンサスできること • 4500億円(4年間)の使い道の決定 • 国際世論(世界は「コレ」が常識) • 他の国際枠組みへのカウンター(自由貿易 vs 外 来種の国際取引規制) • 新規の課題の交通整理(公海の生物多様性保 全、合成生物学、気候工学) 決定を履行する意思(or監視)が重要 3 合意形成の難しさ デファクトスタンダードは、 参加しないと見えてこない 先進国 vs 途上国 ↓ 先進国 vs 途上国 vs 新興国 ↓ 先進国 vs 途上国 vs 新興国 vs 反市場主義 テーマごとに 海洋保護区 漁業国 vs その他 里山イニシアティブ 農業輸出国 vs その他 フォーラムとしてのCOP • 閣僚級会合の開始 COP6 • CEPAフェアの開始(COP9から) • 企業参画(COP8から) • 自治体参画(COP9から) • サイドイベント開催数 250→350→300→260 COP9− 10 ー 11 ー 12 何をした? 1. COP12に参加する人向けのテクニカルサポート 2. 日本の連携事例紹介「UNDBの日」のイベント支 援 3. 情報収集と今後取り組むべき課題の把握 この活動には、経団連自然保護基金、地球環境基 金の助成を受けました。 6 BD20.jp 1.COP12参加する人向け のテクニカルサポート 公開で、手に入る情報 • COPの進行方法(会議の種類、会議文書のつくら れ方、会議成果文書の読み方、会議成果文書の “動詞”の見方) • COP12議題の解説 • COP12期間中の情報 • COP12主要議題の合意文書の紹介 日本語で読めるのは、 世界でここ(bd20.jp)だけ 8 ブログ目次一覧 • 生物多様性条約COPとは何か(解 説) • 会議主要議題の解説 • COP12の初心者向けガイダンスの内 容 • 10月4日 ユース現地到着 • COP12前日 NGO戦略会合 • 10月5日 開会前日 ユース会議 • COP12レポート① COP12開幕 リー ダー・地域・メジャーグループからの 声 • COP12レポート② 愛知ターゲット中 間評価ーGood but NOT enoughな4 年間 • COP12レポート③ 愛知ターゲットの 中間評価を受けて、次のステップの 議論が始まる • COP12レポート④ COP12ユース参 加3日目 • COP12レポート⑤ COP12折り返し • COP12レポート⑥ UNDBの日 日本の チームワークを発揮 • COP12レポート⑦ 10月15日夕方 進 捗報告 • COP12レポート⑧ 外来種決議の紹介 • COP12レポート⑨ COP12決議紹介- 特徴的な決議 • COP12レポート⑩ COP12決議紹介- 多様な主体の参画 • COP12レポート⑪ COP12主要決議の 紹介-愛知ターゲットの中間評価 • COP12レポート⑫ COP12主要決議の 紹介-持続可能な開発、多国間条約 連携 • COP12レポート⑬ COP12主要決議 の紹介-資源動員戦略 • COP12レポート⑭ COP12終了!その 評価は、、、 9 にじゅうまるメンバーに 参加・分析レポート(PDF)を 提供してます http://bd20.jp 10 2.日本の連携事例紹 介「UNDBの日」のイ ベント支援 UNDB日本委員会と委員 団体による「主流化」事業 の紹介 • UNDB国内委員会(日 本、ドイツ、中国)同士 の交流 • ユース、NGO、自治 体、企業による取組 • 国連機関、国のハイレ ベルによる、UNDB活 動宣言 11 COP12の決定から 次の6年を考える 重要事項(ピョンチャンロードマップ) 継続審議事項 新規審議事項 そもそも、 COP12の “宿題”は? COP14 2018 COP13 2016 COP12 2014 COP11 愛知目標 2012 中間評価 COP15 2020 愛知目標 達成と 次期目標 の設定 とっても重要 13 めざすべき世界の共通目標 愛知ターゲット • 地球規模、国家規模、地域規模で、 • 多様な主体(国連、国際機関、政府・自治体・ 科学者・NPO・ユース・市民・農家・林業家・漁 師・・・)がそれぞれの立場で • 生物多様性・自然の恵みを守り・向上させ、賢 明に利用し、公正に利益を分かち合うための 行動を • 分かりやすく20に単純化し、2020年までの 目標としてまとめあげた。 14 条約の公式解説をもと に作られた国内唯一の ガイド販売中 広告 1冊500円 COP12詳細レポート と共にお渡ししています (にじゅうまるプロジェクト国際レポートブログを編集) Only one document 日本語で愛知ターゲットの 全てが分かりやすく 愛知ターゲット中間評価 Good but not Enough (良いこともあるけど、達成には不十分) • 地球規模生物多様性概況第4版 (GBO4:4th edition of Global Biodiversity Outlook) • 愛知ターゲットの達成は、SDGs (持続可能な開発目標)、貧困撲 滅にも重要 • 愛知ターゲット達成のための重 要な取組みの提案 • 愛知ターゲット10の達成状況が 悪いことへの懸念 16 地球規模生物多様性 概況第4版より作成。 https://s3-ap-northeast1.amazonaws.com/ap1-wwwdocs/gbo4/gbo4-en.pdf 決定内容紹介 目次 • 主要決議 1.愛知ターゲット関連 • 主要決議 2.資源動員 • 主要決議 3.持続可能な開発、多国間連携(略 • 企業参画 • 外来種(略) • 海洋沿岸(略) • 伝統的知識(略) 生態系保全と回復 • 名古屋議定書会合(略) • 条約の運用改善 次回ホスト国 • 多年度計画 18 主要決議 1愛知ターゲットの評価と次 の行動 (ピョンチャンロードマップ) 愛知ターゲット 1と17 19 中間評価 目標1:普及啓発 みんなが、生物多様性は大切なんだと知ろう。 その気持ちをもって、行動しよう。 <本文> 遅くとも2020年までに、生物多 様性の価値及びそれを保全し 持続可能に利用するために取り 得る行動を、人々が認識する。 <GBO4> いくつかの国では生物 多様性とその重要性に 関する認知度が低いも のの、先進国・途上国の 両国において認識が拡 大している。 20 中間評価 生物多様性の認知度 意味を知っているという回答 聞いたことがあるという回答 36.4%→55.7%→46.4% 12.8%→19.4%→16.7% 内閣府 環境問題に関する世論調査(平成21、24、26年) 21 COP12決定 愛知ターゲット実施の支援メカニズムの強化 • 国連生物多様性の10年の国内委員会を作るな ど、多くの関係者を巻き込み、行動を促す • 科学技術協力の推進。ニーズと、提供国のマッチ ング。バイオ・ブリッジ事業(韓国提案) • 市民参加の加速、態度変容(Behavior Change)が 重要 22 次の6年へ 愛知ターゲット達成に向けて • UNDB展開のための国内組織を持つ日本 • 生物多様性への基本的認知度の低さへの対処 • “知ってもらう”普及啓発から“行動(社会)を変え る”ための戦略的コミュニケーションに取り組む • 自分たちの「外」の社会に、いろんな参加の選択 肢を広げる、見せる(魅せる) 23 (課題を、取り組むことの重要性を) 知ることは、人々の行動を 変えることにつながらない。 普及啓発とか、生物多様性の 「新しい」価値を伝えるよりも 人々の今もっている価値に あなたのメッセージを合わせることが大事 SBSTTA18サイドイベントであった提案 主要決議 2.資源動員 (ピョンチャンロードマップ) 愛知ターゲット 3、20 25 COP12決定 資源動員戦略COP12決議内容 <目標値> • COP11の決定を維持2015年までに、生物多様性に関係する途上国 への資金の流れ(International Flow)を2倍にする(先進国のみならず、途上国から途上国の 流れも含む)。2020年までは、その金額を維持する。ただし、COP13において、上記目標の 進展と、その適正さを検証、適切な行動の必要性を考慮 • 国内資源動員を行う。2020年までに国家戦略の効果的な実施にむけ て、国内レベルで、特定された需要と利用可能な資源の間のギャップを減らすためあらゆるソース からの国内財政資源の動員を行なう • 生物多様性に関する誘導措置(補助金)に ついて、その具体化に向けた手順やマイル ストーンを採択 COP12決定 具体化の中身(マイルストーン) • 2015年までに、生物多様性国家戦略行動計画)に愛知ターゲット3 に対応する国内目標とそれに付随する行動の開発や設定 を行なう。 • 2016年(COP13)までに、廃止、段階的廃止、改革の候補が既に 知られている場合は、その廃止等に向けた、速やかな政策措置 または法的行動が展開される。また、分析研究を完了させる • 2018年(COP14)までに、国家戦略の改定に沿って、政策 計画と行動計画をまとめ上げる。その中には、(i)廃止等の候補とな る悪影響を持つ誘導措置の特定、(ii)その廃止、段階的廃止、改革につなげる 手法の優先リストを提供する、(iii)生物多様性の保全と持続可能な利用に関す る好影響の誘導措置の導入や強化につながる手法の優先リストを提供する、 (iv)関連するスケジュールやマイルストーン、を含める。 27 次の6年へ 金と人の拡大 • 事実上、最大の成果 • 生物多様性に悪影響を 及ぼしている奨励措置 (補助金含む)の情報 • 企業から積極的に補助 金のグリーン化に向けた 環境保全型技術(プラス を生み出す)・配慮型技 術(マイナスを減らす)の 提供を 28 その他の決議 企業参画 愛知ターゲット 2、4、6、 20 29 中間評価 目標4:生産と消費 環境に無理をさせず続けられる生産と消費を 行おう。 <本文> 遅くとも2020年までに、政府、ビ ジネス及びあらゆるレベルの関 係者が、持続可能な生産及び 消費のための計画を達成する ための行動を行い、又はそのた めの計画を実施しており、また 自然資源の利用の影響を生態 学的限界の十分安全な範囲内 に抑える。 <GBO4> 財やサービスの生産に自 然資源がより効率的に使 われるようになった一方、 消費の拡大が進んでいる ことから、現在の消費パ ターンを考慮すると、安全 な生態学的許容量の範囲 内に抑えることは難しい。 30 中間評価 持続可能な消費に向けて 資源の利用効率は改善する(右)も、総使用量は増加傾向(左) COP12企業と生物多様性フォーラムでは、Global Commodity Impact Indicators for Biodiversity という 動きが起きている 31 中間評価 目標6:過剰漁獲 魚や貝など水産資源は、これからも無理なく 続けられるように漁獲しよう。 <本文> 2020年までに、すべての魚類と無 脊椎動物の資源及び水生植物が 持続的かつ法律に沿ってかつ生態 系を基盤とするアプローチを適用し て管理、収穫され、それによって過 剰漁獲を避け、枯渇したすべての 種に対して回復計画や対策が実施 され、絶滅危惧種や脆弱な生態系 に対する漁業の深刻な影響をなく し、資源、種、生態系への漁業の影 響を生態学的に安全な範囲内に抑 えられる。 <GBO4> 魚の過剰漁獲は引き続き 大きな問題であり、過剰漁 獲や枯渇に陥った漁業資 源は増加し、不適切な漁 法による生息地と非漁獲 対象種への影響が継続し ている。 32 中間評価 評価された漁獲対象魚種の資源評価状況 過剰漁獲 資源限界量 資源限界以下 MSC認証魚種・漁法・流通の認証数 (下の棒グラフ) MSC認証(魚種・漁法・流通)された漁獲 物の流通量(線グラフ) 33 中間評価 目標2:各種計画への組み込み 国や地方は、生物多様性を大切にする計画 を立てよう。 <本文> 遅くとも2020年までに、生物多 様性の価値が、国と地方の開 発・貧困削減のための戦略や計 画プロセスに統合され、適切な 場合には、国家勘定や報告制 度に組み込まれている。 <GBO4> 生物多様性の価値の 計画プロセスや貧困削 減戦略、自然資本会 計への統合で重要な 進捗が見られた。 国ごとに状況が異なる が、国際的なイニシア ティブが底上げを図っ ている。 34 中間評価 自然資本会計 Natural Capital Account • 世界銀行、GRI(Global Reporting Initiative)などの国際機関や NGO、プーマ、ホルシム、ユニリーバーなど一部企業が推進 • 生態系サービス=フロー。生物多様性=フローを生み出す資本・ 元手(キャピタル) • 製品の原料調達から廃棄までの自然資源への負荷を企業の持続 可能性レポートに組み込む • 自然資本基準(Protocol 2016年3月完成予定)と、食品・飲 料およびアパレル分野への適用ガイドが作成中 35 36 出典:PUMA’s Environmental Profit and Loss Account for the year ended 31 December 2010 <締約国に奨励> COP12決定 − 企業と生物多様性のグローバルプラットフォームの支援 − 企業の生物多様性戦略(資源動員やキャパシティビルディン グも含む)の策定 <企業に奨励> − 企業活動が生物多様性や生態系サービスに及ぼす影響を分 析すること − 企業による報告の枠組みに生物多様性を組み込むこと − シニアスタッフや、ラインスタッフやサプライチェーンに関わる スタッフの能力向上 − 調達政策の中に、生物多様性の配慮を組み込むこと − 資源動員戦略に積極的に貢献すること 38 COP12決定 <事務局に要請> — 締約国、特に途上国において、生物多様性の配慮を企業セ クター組み込む取り組みを支援する — 企業がとりうる活動分類の開発 — 愛知ターゲットの実施支援につながる企業向けガイダンスの 開発や、2020年までのキーマイルストーンを特定 − コモディティ・インディケーターなど、持続可能な生産と消費に ついて検討している取組みとの協働 − 企業による条約および愛知ターゲットへの貢献の評価を推進 するため、生物多様性と生態系サービスについて情報をまと め、優良事例や基準や研究を分析 39 Global Commodity Impact Indicators for Biodiversity 次の6年へ • 新たな取組みとして、COP12生物多様性と企業フォーラム で提起 • 500以上あるエコマークから、“生物多様性配慮”エコマーク を特定する基準作り 40 企業による 愛知ターゲット達成宣言を 次の6年へ • 経団連、電気電子4団体、名古屋商工会議所、 JBIBなど、企業が生物多様性にどのように関わる かというガイドは、日本はどの国よりも豊富(参考: http://www.bd-partner.org/reference/guidelines/) • CSR調達・報告に「資本としての自然」を組み込 む。評判リスクの低下、持続可能な資源調達の確 保、社会の持続可能性向上への貢献 • 国際的なルールメイキングへの参加推進 41 学ぶ 宣言する 愛知ターゲット達成を めざす仲間に 全国各地 行動する 226団体が 302のアクション宣言 20 20 自治体 31 企業 27 61 NPO/NGO(法人格を問 わない) 教育・研究機関 第1次産業従事者 145 その他 にじゅうまるプロジェクトのメリット(無料) • 愛知ターゲット達成に向けて取り組 むことの認知 • 国際・国内の情報の入手と広報機会 の拡大 • UNDB-Jの連携事業(推奨事業)とし て認定される可能性も(認定連携事 業の実施企業例:損保ジャパン日本 興亜保険、中越パルプ工業、熊谷 組、JTB、アレフ、良品計画、 MS&AD、富士通、三菱地所など) 44 その他の決議 生態系保全と復元 愛知ターゲット 15,18 45 中間評価 目標15:復元と気候変動対策 傷ついた生態系を、15%以上回復させよう。 それによって気候変動や、砂漠化の問題に 貢献しよう。 <本文> 2020年までに、劣化した生態系の少 なくとも15%以上の回復を含む生態 系の保全と回復を通じ、生態系の回 復力及び二酸化炭素の貯蔵に対す る生物多様性の貢献が強化され、そ れが気候変動の緩和と適応及び砂 漠化対処に貢献する。 <GBO4> 自然再生は、特に湿地や森 林において実施されつつあ り、中国のように大きいものも ある。また、多くの国や機関 が大規模な再生事業の開始 を宣言している。欧州・北米・ 東アジアにおける耕作放棄地 の増加は、結果として自然再 生につながっている。 46 中間評価 復元活動面積 復元活動がされている 「劣化した地域」の種類 47 COP12決定 <生態系保全と復元> • 自然災害リスク緩和と生態系復元 • 民間保護地域(Privately Protected Area)の認識と 奨励 48 次の6年へ 民間保護地域という動き • トラスト(民間団体による土地購入)以外にも、保 全協定、地役権協定などの新しい手法が生まれて いる • 保護地域世界データベースにも、国が指定する地 域以外を組み込む体制整備が進行中 • 市民や企業が自然を守る土地を評価する仕組み が生まれている 49 多年度計画 (ピョンチャンロードマップではな い) 愛知ターゲット 6、7、13など 50 COP12決定 COP13(2016) -愛知ターゲットの評価 -資源動員戦略の進捗報告 -農業、漁業、林業セクターの生物多様性の主流化の実施強化に対する 戦略的行動 -条約と議定書の統合 COP14(2018) -愛知ターゲットの評価 -2050年ビジョンに向けた長期的戦略方向性 -生物多様性関連条約間連携 COP15(2020) -愛知ターゲットの最終評価(IPBESのグローバルアセスメントからのイン プットも含む) -戦略計画2021ー2030 資源動員戦略含む実施手法、2030年までの関 連目標 51 次のステップ部分をまとめると • “知ってもらう”普及啓発から“行動(社会)を変える”ための戦 略的コミュニケーションに取り組む • 「外」の社会に、いろんな参加の選択肢を広げる、見せる(魅 せる) • 企業から積極的に補助金のグリーン化に向けた環境保全型 技術(プラスを生み出す)・配慮型技術(マイナスを減らす)の 提供を • 民間参画決議+国際的なルールメイキングへの参加 • 市民や企業が自然を守る土地を評価する仕組みの活用 生物多様性条約 Conference of Parties(=締約国) の役割と限界 • 194の“国”の“総意”での決定 • 仮に、愛知ターゲットが失敗したとき、COP15の決 定はどんな意味を持つか(Failure as Usual?) • 積極的に行動する人たちが、主役となる場ではな い。⇔愛知ターゲット達成の担い手はどこで声を 出すか? 53 2020年開催予定 世界環境会議 IUCN World ConservationCongress を日本に誘致して Aichiの財産を世界に
© Copyright 2024 ExpyDoc