ニッセイ基礎研究所 2015-04-13 企業物価指数(2015 年 3 月) ~輸入物価は下落基調が鈍化 経済研究部 研究員 TEL:03-3512-1835 岡 圭佑 E-mail: [email protected] 1. 消費増税の影響を除くと、下落幅は 2 ヵ月連続で縮小 4 月 13 日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2015 年 3 月の国内企業物価指数は前年 比 0.7%(2 月:同 0.4%)と事前の市場予想(QUICK 集計:前年比 0.4%)を上回る結果となった。 前月比では 0.3%と 2 月の▲0.1%からプラスに転じた。消費税分を除いた企業物価は、前年比▲2.1% (2 月:同▲2.4%)と下落幅は 2 ヵ月連続で縮小した。 消費税分を除いた企業物価を寄与度別にみ 国内企業物価変化率の寄与度分解 ると、機械類が前年比 0.0%(2 月:同 0.0%)、 5.0% 鉄鋼・建材関連が前年比▲0.2%(2 月:同▲ 4.0% 0.2%)、素材(その他)が前年比▲0.7%(2 3.0% 月:同▲0.7%)、為替・海外市況連動型が前 年比▲1.6%(2 月:同▲1.8%) 、電力・都市 ガス・水道が前年比 0.3%(2 月:同 0.4%) 、 その他が前年比 0.0%(2 月:同 0.0%)とな (前年比) 2.0% 1.0% 0.0% -1.0% 消費増税分 電力・都市ガス・水道 素材(その他) 機械類 -2.0% -3.0% っている。 その他 為替・海外市況連動型 鉄鋼・建材関連 総平均 -4.0% 3 月の消費税分を除いた企業物価(前年比) 1203 1207 1211 1303 (資料)日本銀行「企業物価指数」 (注)企業物価は、消費税除く 1307 1311 1403 1407 1411 1503 (月次) の下落幅が縮小したのは、物価下落に寄与し ていた鋼材・建材関連、素材(その他)の寄与度が前月から変わらないなか、為替・海外市況連動型の マイナス寄与が小さくなったためである。鋼材・建材関連の伸びは前年比▲1.6%と、2 月の前年比▲ 1.9%から下落幅が縮小している。これは、中国などアジアにおける需給の悪化の影響により鉄鋼(2、 3 月:前年比▲2.4%)が下落基調を続けるなか、スクラップ類(2 月:前年比▲19.3%→3 月:同▲12.9%) のマイナス幅が大幅に縮小したことが影響している。一方、為替・海外市況連動型(2 月:前年比▲17.6% →3 月:同▲15.3%)は、これまでの国際商品市況の下落を受けて石油・石炭製品(前年比▲23.1%) が値下がりを続ける一方で、非鉄金属(2 月:前年比 2.2%→3 月:5.2%)が伸びを拡大したため、下 落幅が縮小した。素材(その他) (2、3 月:前年比▲4.1%)の内訳をみてみると、プラスチック製品(同 0.6%) 、繊維製品(同 0.8%)がプラスの伸びとなる一方で、中国を中心とした需給の悪化を背景に、 化学製品(同▲7.7%)が大幅なマイナスとなった。 1| |経済・金融フラッシュ 2015-04-13|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 原油価格(ドバイ)は、14 年度後半の 1 バレル=100 ドル台から下落を続けた後、1 月の 1 バレル= 40 ドル台を底に持ち直しつつある。このため、企業物価(前年比)はマイナスのピーク時(1 月:前年 比▲2.5%)から 3 月には前年比▲2.1%までマイナス幅が縮小している。当面、原油価格下落による物 価押し下げ効果が後ズレするため、消費税分を除いた企業物価(前年比)はマイナス圏での推移が続く ものの、原油安の一服でマイナス幅は徐々に縮小すると予想する。 2. 輸入物価は下落基調が鈍化 3 月の輸入物価(円ベース)は前年比▲8.1%(2 月:同▲10.1%)と下落幅が縮小し、前月比では 2.0% (2 月:同▲5.4%)と 4 ヵ月ぶりにプラスとなった。 3 月の輸入物価を寄与度別にみると、食料品・飼料が前年比 0.5%(2 月:同 0.7%)、金属・同製品が 前年比▲0.2%(2 月:同▲0.4%) 、石油・石炭・天然ガスが前年比▲11.7%(2 月:同▲13.2%)、化学 製品が前年比 0.2%(2 月:同 0.2%) 、機械器具が前年比 1.8%(2 月:同 1.6%) 、その他が前年比 1.3% (2 月:同 1.2%)となっている。 輸入物価指数変化率の寄与度分解 食料品・飼料は、円安による押し上げ効 果が続くなか、契約通貨ベースの下落幅拡 20% 大(2 月:前年比▲0.4%→3 月:同▲2.9%) 15% を主因として、円ベースでの伸びが縮小(2 10% 月:前年比 9.0%→3 月:同 6.9%)したこ 5% とが、寄与度の低下につながった。それに 0% もかかわらず、輸入物価(前年比)が大幅 -5% なマイナスを続けているのは、石油・石 炭・天然ガスの大幅な下落によるところが 大きい。3 月の石油・石炭・天然ガスの伸 (前年比) -10% その他 機械器具 化学製品 石油・石炭・天然ガス 金属・同製品 食料品・飼料 総平均 -15% 1203 1207 1211 1303 1307 1311 1403 1407 1411 1503 (月次) (資料)日本銀行「輸入物価指数」 びは前年比▲30.3%と、原油価格の下落基 調を背景に 2014 年 12 月以降 4 ヵ月連続で 2 桁のマイナスが続いている。ただし、天然ガスが緩やか な下落基調を続けるなか、原油価格(ドバイ)の下落に一服感もあって石油・石炭・天然ガスの下落幅 は 2 月の前年比▲34.4%から縮小している。 原油の国際市況価格は、時間的なラグを伴い原油輸入価格、天然ガスの輸入価格に反映される。足も とでは原油価格下落に一服感がみられることから、今後天然ガスの輸入価格下落に歯止めがかかる可能 性が高い。当面、原油安による物価押し下げ効果が円安による物価押し上げ効果を上回るものの、原油 安の一巡を主因として物価押し下げ効果は弱まるため、輸入物価(前年比)は緩やかなマイナス幅の縮 小が見込まれる。 2| |経済・金融フラッシュ 2015-04-13|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 3. 交易条件は 6 ヵ月ぶりに悪化 3 月の輸出物価は、前年比 3.6%(前月比 0.7%) 、輸入物価は前年比▲8.1%(前月比 2.0%)となった。一方、契約通貨ベースで 交易条件と為替レート (2010=100) (2010=100) 160 150 輸出物価 輸入物価 交易条件_右目盛り ドル円_右目盛り 150 140 は、輸出物価が前年比▲ 4.8%(前月 比 140 130 0.1%) 、輸入物価が前年比▲17.1%(前月 130 120 比 1.0%)となった。 120 110 3 月の交易条件(輸出物価/輸入物価× 110 100 100)は 96.5(2 月:97.7)と、14 年 9 月 100 90 以来 6 ヵ月ぶりの悪化となった。 90 80 1203 1207 1211 1303 1307 1311 1403 1407 1411 (資料)日本銀行「企業物価指数」、FinancialQUEST (注)ドル円レートは、2010=100で指数化したもの 1503 (月次) 4. 素原材料価格はマイナスが続く 3 月の需要段階別指数(消費税除く、国内品+輸入品)をみると、国内需要財価格は前年比▲3.6%(2 月:同▲4.3%)と 4 ヵ月連続のマイナスとなった。需要段階別指数を項目別にみると、素原材料が前 年比▲21.3%(2 月:同▲24.7%) 、中間 材が前年比▲2.0%(2 月:同▲2.3%) 、 最終財が前年比 0.2%(2 月:同 0.1%) となっている。素原材料、中間財は引き 需要段階別指数の推移 20% (前年比) 10% 続きマイナス圏である一方、最終財は 1 月(前年比▲0.3%)にマイナスとなっ た後、 2 ヵ月連続でプラスとなっている。 0% -10% 海外市況を反映しやすい素原材料は、 原油、非鉄金属など資源価格の下落が続 くものの、原油価格(ドバイ)が 1 月の 1 バレル=40 ドル台を底に持ち直してい 国内需要財(国内品、輸入品) 素原材料 -20% 中間財 最終財 -30% 1203 1207 1211 1303 1307 1311 1403 (資料)日本銀行「企業物価指数」 1407 1411 1503 (月次) るため、下落幅は縮小している。夏場以 降の素原材料価格の下落が引続き中間財、最終財価格の下押し要因となっている。 当面、足元の原油安を主因とした素原材料価格の下落が後ズレして中間財、最終財価格に波及するだ ろう。ただし、原油価格の下落に一服感もあって素原材料は下落幅を縮小していることから、夏場以降 最終財の上昇基調は明確なものになると予想する。 (お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報 提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。 3| |経済・金融フラッシュ 2015-04-13|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved
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