株主総会の開催・運営をめぐるリスクと注意点

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編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2015.4.20
第 1470 号
SMBC経営懇話会
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【株主総会実務のチェックポイント①】
株主総会の開催・運営をめぐるリスクと注意点
小沢・秋山法律事務所
弁護士 香月 裕爾
1. 株主総会における代表的な決議事項には、会社の組織・事業の基礎的な変更に関する事項、役員の選任・
解任に関する事項、取締役の報酬に関する事項、計算書類の承認に関する事項があります。
2. 株主総会決議の手続きや内容に瑕疵がある場合、取消し又は無効となるおそれがあります。
1.株主総会における決議事項の例
株主総会は、株式会社における最高意思決定機関
です。会社法 295 条 1 項は、「この法律に規定する事
項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社
に関する一切の事項について決議することができる」と
し、取締役会設置会社においては「この法律に規定す
る事項及び定款で定めた事項に限り、決議することが
できる」と定めています(同条 2 項)。代表的な決議事
項は右表(1)~(4)の通りです。
表:株主総会における代表的な決議事項
(1) 定款変更など会社の組織・事業の基礎的な
変更に関する事項
(2) 役員の選任・解任に関する事項
(3) 取締役の報酬に関する事項
(4) 計算書類の承認に関する事項(会計監査人
設置会社の場合は、報告事項)
2.株主総会決議の瑕疵
株主総会決議の手続きや内容に瑕疵がある場合、会社法は、株主総会が集団的な法律関係に該当するこ
とから、一般原則を排除して特別な処理を認めています。(会社法 830 条、831 条)
提訴事由
提訴権者
提訴期間
①招集の手続き又は決議の方法が法令もしくは定款に違反
し、又は著しく不公正なとき(例:招集通知が出されていな
決議取消し
の 訴
え
かった場合や決議に株主以外の者が加わった場合 など)
②決議の内容が定款に違反するとき(例:定款所定の員数を超
えて取締役を選任した場合 など)
株主、取締
役、監査役等
株主総会決
議の日から3
箇月以内
③決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使
したことによって、著しく不当な決議がされたとき
決議不存在
決議が存在しないとき(瑕疵が著しく、決議があったとはいえな
確認の訴え
い場合)
決議無効
確認の訴え
決議の内容が法令に違反しているとき
限定なし
限定なし
限定なし
限定なし
(次頁に続く)
(1470-2/2)
3.代表的な決議事項における注意点
株主総会が法令または定款に従って適切に運営されていれば、決議の瑕疵は認められないでしょう。注意
すべきポイントは以下の通りです。
(1)定足数および決議要件
株主総会の決議には、①普通決議、②特別決議、③特殊決議の 3 種類があります。
普通決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(これを「定足
数」といいます)、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって成立します(会社法 309 条1項)。
特別決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株
主の議決権の 3 分の 2 以上に当たる賛成によって成立します(同条 2 項)。定款変更、組織再編行為(事業
譲渡、合併、株式交換、株式移転、会社分割)などの株主に大きな影響を与える事項において必要とされて
います。
より厳格な決議として、議決権を行使することができる株主の半数以上、かつ、議決権を行使することがで
きる株主の議決権の 3 分の 2 以上の賛成によって成立する特殊決議があります(同条 3 項)。定款変更に
よって株式を譲渡制限株式とする場合に必要とされています。
さらに、総株主の半数以上、かつ、総株主の議決権の 4 分の 3 以上の賛成が必要とされる特殊決議があ
ります(同条 4 項)。全株式譲渡制限会社において、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権
について株主ごとに異なる取り扱いをする旨の定款変更(ただし、当該定めを廃止するときは除きます)を行
う場合に必要とされています。
このように株主総会の決議事項によって、定足数と決議要件は異なります。これらを充足していないと決
議不存在確認の訴えの対象となりますから、注意が必要です。会社法は採決方法について規定していない
ので、賛否の数を確定する必要は法的な要請ではありません。しかし、争いのある議題については、疑義を
残さないために厳格に賛否をとり、採決を行うべきでしょう。
(2)代表的な決議事項において、特に注意すべき事項
① 定款変更など会社の組織・事業の基礎的な変更に関する事項
定款変更など会社の組織・事業の基礎的な変更に関する事項については、特別決議が必要です。議
決権の 3 分の 2 以上の株式を所有する大株主が存在する場合は問題ありませんが、3 分の 1 を超える
反対少数株主がいる場合には、否決される場合があります。
② 役員の選任・解任に関する事項
役員の選任や解任に関する事項ですが、まず、対象となる役員候補者や役員が株主である場合、当
該株主も株主総会に出席し、議決権を行使することができます。取締役会と異なり特別利害関係人の参
加が排除されていないからです。次に、取締役を解任する場合は、普通決議で足りますが(会社法 341
条)、監査役を解任する場合は、特別決議によることになります(同法 309 条 2 項 7 号)。
③ 取締役の報酬に関する事項
取締役の報酬は、定款に別段の定めがない限り、株主総会の決議によります(会社法 361 条)。報酬
の決議には取締役である株主も議決権を行使することができます。報酬等は、額が確定しているものに
ついては、その額、額が確定していないものについては、その具体的な算定方法、金銭でないものにつ
いては、その具体的な内容を決議しなければなりません。一般的には、総額の最高限度を決め、各取締
役に対する具体的な配分額の決定は取締役会の決議にゆだねる方法がとられています。
④ 計算書類の承認に関する事項
計算書類の承認決議は、普通決議ですが、注意すべき事項として、貸借対照表や損益計算書を株主
総会の招集通知に議案の内容として添付しなければなりません。
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-874-809
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