土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月) Ⅵ-207 国土交通省発注工事の入札と成績の動向について 国土技術政策総合研究所 正会員 ○田嶋 崇志 国土技術政策総合研究所 正会員 森田 康夫 国土技術政策総合研究所 大平 和明 株式会社 建設技術研究所 横井 宏行 1.目的 国土交通省直轄工事においては、平成 17 年 4 月に に関する懇談会」(座長:小澤一雅東京大学大学院工 施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法 学系研究科教授)に諮った直轄工事における総合評 律」の基本理念に基づき、透明性の確保、技術競争 価落札方式の実施状況について報告する。 促進等への改善等の効果を期待して総合評価落札方 2.総合評価落札方式の実施状況(経年変化) 式の適用拡大を図り、平成 19 年度以降はほぼ全ての 総合評価落札方式の経年変化について分析を行っ 直轄工事で総合評価落札方式を適用してきた。(図 た。実施状況の分析の対象データは、港湾・空港関 -1) 係工事を除く 8 地方整備局を対象とした。 (件) 総 合 評 価 落 札 方 式 実 施 件 数 97.1% 14000 12000 98.8% 99.2% 99.2% 98.7% 100% 76.2% 80% 10000 60% 8000 6000 4000 (1)1 工事あたりの競争参加者数の経年変化 99.4% 40% 16.9% 20% 2000 0 総 合 評 価 落 札 方 式 の 適 用 率 1 工事あたりの競争参加者数の経年変化について、 図―2 に示す。総合評価落札方式が全面適用された平 成 19 年度に比べ、平成 24 年度における 1 工事あた りの競争参加者数は増加していることが分かる。 0% H17年度 【1979件】 H18年度 【9172件】 H19年度 H20年度 H21年度 【10810件】 【11561件】 【11127件】 H22年度 【8916件】 H23年度 【9254件】 特にWTO(標準型)では、平成 19 年度の 9.4 者 H24年度 【9208件】 簡易型 標準型 標準型Ⅱ型 標準型Ⅰ型 高度技術提案型 施工能力評価型(Ⅱ型) 施工能力評価型(Ⅰ型) 技術提案評価型(S型) 総合評価適用率 から H22 年度には 20.9 者へと倍増し、その後も高い 水準となっている。 図―1 年度別・総合評価タイプ別実施状況(適用率・件数) 1工事あたりの競争参加者数 25 しかし、競争参加者・発注者の負担増大や総合評 20 価の理念からの乖離といった課題が顕在化してきた。 15 これらの課題に対応するため、総合評価タイプを二 10 極化するなどの改善方針を打ち出し、平成 24 年度か 5 ら試行を行っており、平成 25 年度からは本格適用と 対象工事7件 0 している。 H17 国土技術政策総合研究所では、地方整備局等(北 海道開発局、沖縄総合事務局含む)の総合評価落札 方式適用工事を対象に、先述した新たな施策の動向 を含む実施状況等に関する調査・分析を行っている。 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 簡易型 標準Ⅱ型 標準型・標準Ⅰ型 WTO(標準型) 高度技術提案型 施工能力評価型(Ⅱ型) 施工能力評価型(Ⅰ型) 技術提案評価型(S型) WTO(技術提案評価型(S型)) 図―2 1 工事あたりの競争参加者数の推移 本稿では、平成 17 年度から平成 24 年度までの総 合評価落札方式適用工事を対象に、競争参加者の動 (2)工事成績評定点の経年変化 向、工事成績評定点等を分析し、国土交通省が設置 する「総合評価方式の活用・改善等による品質確保 工事成績評定点の経年変化を図―3 に示す。平成 17 年度からの工事成績評定点は年々上昇して キーワード 調達問題、総合評価落札方式、技術評価点得点率、工事成績評定点 連絡先 〒305-0804 茨城県つくば市旭1番地 国土技術政策総合研究所 -413- TEL029-864-2211 土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月) Ⅵ-207 おり、工事品質の確保、向上等の効果が得られてい なお、価格競争については、簡易型、標準Ⅱ型よ る。旧標準型、標準Ⅰ型、技術提案評価型S型とい りも工事成績点が 80 点以上の割合が高くなっている った、高度な技術力が求められる工事に適用される が、そのうち工事成績評点が 80 点以上の工事の約 7 総合評価タイプ(以下「上位タイプ」という)と、 割(10 工事/14 工事)が災害復旧工事である。 その他の総合評価タイプ(簡易型、標準Ⅱ型・施工 (2)工事成績評定点と技術評価点得点率の関係 能力評価型Ⅰ型・Ⅱ型)、価格競争の 3 つに分類して 図―5 を見ると、技術評価点の得点率が高い工事ほ 傾向を見ると、近年では上位タイプの成績点が最も ど、工事成績評定点の平均が高く、80 点以上の高評 高く、次いで他の総合評価タイプ、最後に価格競争 点を得る割合が高くなっている。このことから、入 という順となっている。このことから、総合評価の 札段階における技術力評価が高い企業が請け負う工 普及・拡大に伴い、難しい工事ほど工事品質確保の 事ほど工事成績評定点が高いと言える。特に技術評 向上の効果が得られていることが伺える。 価点得点率が 90%以上の者については 90%以下の者 特に上位タイプにおいては、平成 17 年度から 24 年度を比較すると 3 点以上工事成績が伸びており、 と比べて、工事成績 80 点以上の割合が 2 倍程度に向 上している。 その他総合評価タイプ、価格競争よりも伸び率が大 工事成績の内訳 工事成績の平均 100% きくなっている。 85点 80% 80 点 80点 100% 97.1% H17 品確法施行 総合評価方式 本格実施 78 点 76.2% 工 76 点 事 成 績 74 点 評 定 点 72 点 75.1 点 75.3 点 75.1 点 98.8% 99.2% 76.6 点 76.8 点 76.4 点 75.8 点 75.3 点 75.0 点 74.2 点 99.4% 78.5 点 77.7 点 76.1 点 75.6 点 74.9 点 80% 総 60% 合 評 価 実 40% 施 率 76.0 点 75.6 点 74.1 点 74.0 点 73.0 点 98.7% 75.0 点 74.3 点 74.7 点 99.2% 77.9 点 75.9 点 77.1 点 76.7 点 60% 75点 40% 70点 20% 65点 20% 72.5 点 H21末 工事成績評定 要領改正 16.9% 0% 70 点 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 件数: H24年度 工事成績(価格競争) 工事成績(簡易型・標準Ⅱ型・施工能力評価型Ⅰ型・Ⅱ型) 工事成績(旧標準型・標準Ⅰ型・技術提案評価型S型) 総合評価実施率 図―3 60点 技術評価点の得点率 0% H17年度 74.9 点 0%-80% 80%-85% 85%-90% 90%-95% 95%-100% 【87件】 【522件】 【2122件】 【3968件】 【3441件】 85-100 70-72.5 工事成績評定点の推移 図―5 3.総合評価落札方式の実施状況(平成 24 年度) 82.5-85 67.5-70 80-82.5 65-67.5 77.5-80 0-65 75-77.5 計 72.5-75 工事成績の平均 工事成績評定点と技術評価点得点率の関係 4.おわりに 平成 24 年度完成工事の工事成績評定点について、 平成 25 年度から全ての地方整備局において総合評 分析を行った。実施状況の分析の対象データは、港 価方式の新方式を本格導入している。今後もデータ 湾・空港関係工事を除く 10 地方整備局を対象とした。 等に基づき、新方式本格導入前後の工事成績評定結 (1)総合評価タイプ別の工事成績評定点 果の比較、総合評価タイプごとの入札状況の比較、 図―4 を見ると、上位タイプを適用した工事ほど、 二極化導入に伴う事務手続きの負担軽減効果等、総 工事成績 80 点以上の割合が増え、工事成績の平均も 合評価落札方式の二極化についてフォローアップを 高まる傾向が見受けられる。 行い、効果の検証を進めていく予定である。 100% 80% 76.8 点 76.4 点 77.1 点 78.3 点 77.8 点 78.7 点 局の方にはデータ提供について多大なご協力を頂き 80点 ました。ここに深く謝意を表します。 工 60% 事 成 績 40% の 内 訳 20% 75点 工 事 70点 成 績 の 65点 平 均 0% 件数 最後に、今回の分析を行うにあたり、各地方整備 85点 60点 価格競争 簡易型 【57件】 【7761件】 0-65 図―4 65-70 標準Ⅱ型 【1996件】 70-75 標準Ⅰ型 【100件】 75-80 WTO 標準型 【169件】 80-100 高度技術 提案型 【11件】 参考文献 1) 国土交通省国土技術政策総合研究所:直轄工事 における総合評価落札方式の実施状況(平成 24 年度 年次報告) 工事成績の平均点 総合タイプ別の工事成績評定点 -414-
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