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車体塗装
主査
石川 順一 先生
(JA共済損害調査㈱)
Car Painting
自動車を、美しく、ムラなく彩る技能。
自動車は、誕生から 1900 年代初期までは、塗装に時間がかかり、生産で
きても量産できない時代がありました。しかし、1923 年に開発された硝化
綿ラッカーの出現により、自動車塗装は
一夜にして一変。以来、黒一色から多種
多彩な色に増え、多くの塗料も開発され、
スプレーガンなど周辺機器の開発も進み
ました。
カーオーナーが満足する
塗装技能を提供。
車社会に着実に貢献しています。
自動車は、使用目的や種類により
競 技 の ポ イ ン ト
車の損傷を正確に早く修復し、
損傷前の状態に復元する技能と装飾塗装に挑む。
1. 競技課題①・②:ソリッドカラーの調色
とフロントフェンダパネルのブロック
塗装Ⅰ
ソリッドカラーで塗装された調色課題
(色合わせ競技課題)
の支給パネルと同じ
色になるように、
5 つの原色塗料を使用
し、
決められた時間内に色合わせを行う競
技です。但し、
5つの原色塗料のうち1つ
の原色塗料はダミー原色塗料が含まれて
います。
また、
調色配合データ
(その塗色
に近くなるための基本配合割合の資料)
はありません。色合わせが出来たら提出
用の塗板に塗装を行い競技終了です。
ブロック塗装Ⅰは、
補給用新品パーツの
フロントフェンダに防錆のため塗装され
ている下塗り塗装の上に、
防錆・付着性・
平滑性・吸い込み防止を目的にプライマ
ーサフェーサーと呼ばれる中塗り塗料を
塗装するまでの競技です。
2. 競技課題③・④:メタリックカラーの調
色とフロントフェンダパネルのブロッ
ク塗装Ⅱ
メタリックカラーで塗装された調色課題
(色合わせ競技課題)
の支給パネルと同じ
色になるように、
9 つの原色塗料を使用
し、
決められた時間内に色合わせを行う競
技です。但し、
調色配合データ
(その塗色
に近くなるための基本配合割合の資料)
はありません。色合わせが出来たら提出
用の塗板に塗装を行い競技終了です。
ブロック塗装Ⅱは、
プライマーサフェー
サーまで塗装した競技の継続競技であ
り、
プライマーサフェーサーの表面研磨か
ら開始します。平滑に研磨したパネルに支
給されたメタリック塗料で塗装する競技
です。但し、
塗装終了後の塗装肌は展示し
てある見本パネルの塗装肌に限りなく近
づけた状態で仕上げる競技です。
54 The 52th National Skills Competition
魅 力
の「防錆」と「美観」を保つ技能として
そして現在、「車体塗装」は、自動車
第51回技能五輪 競技風景
第51回技能五輪 競技課題例
3. 競技課題⑤・⑥・⑦・⑧:修正塗装Ⅰ
・
Ⅱ
・Ⅲ
と装飾塗装
2日目の競技の修正塗装Ⅰ
・
Ⅱは、
前日に
メタリック塗装したフェンダパネルの損傷
部にパテを使用し形状を復元させプライ
マーサフェーサーを塗装して修正面を仕
上げます。
その後、
プライマーサフェーサーを乾
燥させた後、
プライマーサフェーサー研
磨後に支給されたメタリック塗料で塗装
を行うが、
塗装範囲はフェンダパネル先端
から指定された範囲内でボカシ塗装によ
り仕上げる競技です。
修正塗装Ⅲでは、
ボカシ塗装した際の部
分含めフェンダパネル全体にコンパウン
ドを使用し磨き作業を行い仕上げます。
な
お、
仕上がったフェンダパネルの塗装肌は
展示してある見本パネルの塗装肌に限り
なく近づけた状態で仕上げる競技です。
装飾塗装は、
支給された塗料と装飾塗
装作業要領書及び競技課題寸法図に従
い、
指定された器具・資材を使用し装飾塗
装を完成させる競技です。
また、2015 年 に 技 能 五 輪 国 際 大 会
(WorldSkillsCompetition)が 開 催 さ
れるブラジル・サンパウロのステッカーを
指定された位置に貼り、
装飾塗装の競技
は終了です。
素材材料やデザインが大きく異なり
ます。軽量化を推し進めるために、
鉄のみならず、アルミや多種にわた
るプラスチック材料も採用されてい
ます。しかし、金属自体の防錆力や
プラスチックで表現できる色には限
界があります。車体塗装は錆びない、
美観に優れた機能を提供します。
「車体塗装」は
自動車を生産・修
理するためのもの
ではなく、カーオ
ーナーの方々にも
満足していただけ
る魅力あふれる技
能です。
将 来 性
さらなる自動車の発展と共に、
塗装品質の向上で貢献。
自動車は、人々の生活や産業にお
ける移動や輸送の手段として欠かせ
ません。そして将来においても、社
会のさまざまな分野で自動車はます
ます大きく貢献していくことでしょ
う。それに伴い、「車体塗装」技術
も “ 下地処理 ” から “ 意匠性に富む上
塗り塗装 ” まで、さらに技術を磨き、
多くの人々の要望に応えつつ塗装品
質向上のために貢献し続けます。