35 車体塗装 主査 石川 順一 先生 (JA共済損害調査㈱) Car Painting 自動車を、美しく、ムラなく彩る技能。 自動車は、誕生から 1900 年代初期までは、塗装に時間がかかり、生産で きても量産できない時代がありました。しかし、1923 年に開発された硝化 綿ラッカーの出現により、自動車塗装は 一夜にして一変。以来、黒一色から多種 多彩な色に増え、多くの塗料も開発され、 スプレーガンなど周辺機器の開発も進み ました。 カーオーナーが満足する 塗装技能を提供。 車社会に着実に貢献しています。 自動車は、使用目的や種類により 競 技 の ポ イ ン ト 車の損傷を正確に早く修復し、 損傷前の状態に復元する技能と装飾塗装に挑む。 1. 競技課題①・②:ソリッドカラーの調色 とフロントフェンダパネルのブロック 塗装Ⅰ ソリッドカラーで塗装された調色課題 (色合わせ競技課題) の支給パネルと同じ 色になるように、 5 つの原色塗料を使用 し、 決められた時間内に色合わせを行う競 技です。但し、 5つの原色塗料のうち1つ の原色塗料はダミー原色塗料が含まれて います。 また、 調色配合データ (その塗色 に近くなるための基本配合割合の資料) はありません。色合わせが出来たら提出 用の塗板に塗装を行い競技終了です。 ブロック塗装Ⅰは、 補給用新品パーツの フロントフェンダに防錆のため塗装され ている下塗り塗装の上に、 防錆・付着性・ 平滑性・吸い込み防止を目的にプライマ ーサフェーサーと呼ばれる中塗り塗料を 塗装するまでの競技です。 2. 競技課題③・④:メタリックカラーの調 色とフロントフェンダパネルのブロッ ク塗装Ⅱ メタリックカラーで塗装された調色課題 (色合わせ競技課題) の支給パネルと同じ 色になるように、 9 つの原色塗料を使用 し、 決められた時間内に色合わせを行う競 技です。但し、 調色配合データ (その塗色 に近くなるための基本配合割合の資料) はありません。色合わせが出来たら提出 用の塗板に塗装を行い競技終了です。 ブロック塗装Ⅱは、 プライマーサフェー サーまで塗装した競技の継続競技であ り、 プライマーサフェーサーの表面研磨か ら開始します。平滑に研磨したパネルに支 給されたメタリック塗料で塗装する競技 です。但し、 塗装終了後の塗装肌は展示し てある見本パネルの塗装肌に限りなく近 づけた状態で仕上げる競技です。 54 The 52th National Skills Competition 魅 力 の「防錆」と「美観」を保つ技能として そして現在、「車体塗装」は、自動車 第51回技能五輪 競技風景 第51回技能五輪 競技課題例 3. 競技課題⑤・⑥・⑦・⑧:修正塗装Ⅰ ・ Ⅱ ・Ⅲ と装飾塗装 2日目の競技の修正塗装Ⅰ ・ Ⅱは、 前日に メタリック塗装したフェンダパネルの損傷 部にパテを使用し形状を復元させプライ マーサフェーサーを塗装して修正面を仕 上げます。 その後、 プライマーサフェーサーを乾 燥させた後、 プライマーサフェーサー研 磨後に支給されたメタリック塗料で塗装 を行うが、 塗装範囲はフェンダパネル先端 から指定された範囲内でボカシ塗装によ り仕上げる競技です。 修正塗装Ⅲでは、 ボカシ塗装した際の部 分含めフェンダパネル全体にコンパウン ドを使用し磨き作業を行い仕上げます。 な お、 仕上がったフェンダパネルの塗装肌は 展示してある見本パネルの塗装肌に限り なく近づけた状態で仕上げる競技です。 装飾塗装は、 支給された塗料と装飾塗 装作業要領書及び競技課題寸法図に従 い、 指定された器具・資材を使用し装飾塗 装を完成させる競技です。 また、2015 年 に 技 能 五 輪 国 際 大 会 (WorldSkillsCompetition)が 開 催 さ れるブラジル・サンパウロのステッカーを 指定された位置に貼り、 装飾塗装の競技 は終了です。 素材材料やデザインが大きく異なり ます。軽量化を推し進めるために、 鉄のみならず、アルミや多種にわた るプラスチック材料も採用されてい ます。しかし、金属自体の防錆力や プラスチックで表現できる色には限 界があります。車体塗装は錆びない、 美観に優れた機能を提供します。 「車体塗装」は 自動車を生産・修 理するためのもの ではなく、カーオ ーナーの方々にも 満足していただけ る魅力あふれる技 能です。 将 来 性 さらなる自動車の発展と共に、 塗装品質の向上で貢献。 自動車は、人々の生活や産業にお ける移動や輸送の手段として欠かせ ません。そして将来においても、社 会のさまざまな分野で自動車はます ます大きく貢献していくことでしょ う。それに伴い、「車体塗装」技術 も “ 下地処理 ” から “ 意匠性に富む上 塗り塗装 ” まで、さらに技術を磨き、 多くの人々の要望に応えつつ塗装品 質向上のために貢献し続けます。
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