血液の性状と働き - Plaza.umin.ac.jp

B 血 液 の し くみ と 働 き
1 血液の組成 (101)
1.血液の一般的性状
・体重の1/13 (8%)
・全血液量
4.5-5リットル/体重約60kgの成人、新生児は約250ml/3 kg )
・血液 pH
7.4±0.05(弱アルカリ性)
基準値( pH7.35 ~7.45 )
・血液比重 1.055-1.066 (採血基準は比重1.052以上・血漿比重は1.030)
1) 血 液 の 性 状
成
分
はたらき
アルブミン
膠質浸透圧、物質の輸送
血 漿
αグロブリン
炎症性疾患で増加
(液体成分)
βグロブリン
ホルモンなどの運搬タンパク
Φフィブリノーゲンなど
血液凝固
γ -グロブリン
免疫グロブリン(抗体)
55%
赤血球 450~500万/μ ℓ
酸素運搬
白血球 3500~8500/μℓ
生体防御
寿命 120 日
①顆粒球
血球成分
好中球
(細胞成分)
好酸球
45%
60%最も多い
3%
好塩基球 0.5%最も少ない
化膿性炎症で増加、食作用
アレルギー、寄生虫で増加
即時型アレルギーで増加
②リンパ球
35%
細胞性免疫・液性免疫
③単球
5%最も大きい
貪食作用 ・ 抗原提示
血小板 15~40万/μ ℓ
一次止血、血液凝固
2) 血漿成分とは
血漿
全血液量の55% 男性の血漿量 2.8-3.0リットル/全血液量4.5-5リットル
女性の血漿量
水分
血漿成分
2.4リットル/全血液量4.5リットル
90%
総蛋白量
7.0-8.0g/㎗ (血清:6.3~7.8g/㎗)
グルコース
0.1% 細胞のエネルギー源(正常血糖値70~100mg/㎗)
脂 肪
1%
電解質
0.9%生理食塩水と血漿浸透圧(290mOsm/ℓ)が同じ
ガ ス
血液ガス(酸化ヘモグロビン ・二酸化炭素(重炭酸イオン))
老廃物
尿素、クレアチニン、尿酸、
その他
ホルモン、酵素
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3) 血漿と血清の違い
「 血漿とは 」
抗凝固剤入り採血管で採血
して放置すると、血球成分が
沈降して上澄みが出来る。こ
れが血漿である。血漿は凝
固 因 子 を含 む 。
「 血清とは 」
抗凝固剤のない採血管で採
血して放置すると、血球成分
は凝血する。これを血餅と呼
び、その上澄みを血清と呼
ぶ。血清は凝固因子を欠く。
採血
これは凝血によって凝固因
子とフィブリノーゲンが使用さ
れたためである。凝固因子
以外の成分は血漿と同じ。
4) 血漿蛋白
・ 血漿蛋白成分 ( 血漿総蛋白量
血漿蛋白の種類
アルブミン
含有量
産生場所
4.0~5.5g/dl 肝臓で産生
フィブリノーゲン
γ -グロブリン
7.0-8.0g/dl )
肝臓で産生
0.7~1.6g/dl 形質細胞で産
働 き
主要なタンパク、膠質浸透圧の維持
血液凝固因子
病原細菌を攻撃する抗体、感染で増加
5 )A/G比 1.5-2.0 (アルブミン/グロブリン 比)
A/G低下
アルブミンの減少
グロブリンの増加
栄養不足、肝硬変によるアルブミン合成障害、ネフローゼ
化膿性病原細菌の感染、炎症、多発性骨髄腫など
炎症があると A/G 比は低下するが総タンパク量はほとんど変化しない。
6) 血漿タンパク分画
感染症があると
アルブミン(正常)
γ-グロブリン
γ-グロブリン
α1 α2 β Φ
11
2 血液検査と数値
単位がg/㎗だよ!
男女差がない!
1.血液検査値
赤血球数(RBC)
男 500万/μ ℓ
白血球数(WBC)
3500-8 5 0 0/μ ℓ
女 450万/μ ℓ
血色素量(Hb)
血球容積(Ht)
ヘモグロビン量
ヘマトクリット値
14g/dℓ±2g
40-50%(平均45%)
16g/dℓ±2g
35-45%(平均40%)
円盤状だよ!
1) 赤血球(RBC) (102)
赤血球は骨髄で作られ、中心部がへこむ円盤状の細胞で、酸素と結合するヘモ
グロビンを入れる。骨髄で核を失うので正常赤血球には細胞核がない。大きさは
約7.5ミクロン(7.5mm/1000mm)で、変形性がある。赤血球は全身に酸素を届
け、寿命は120日で、古い赤血球は変形性を欠き、脾臓や肝臓で破壊される。
2) ヘモグロビン(Hb)は末梢組織に酸素を運搬する。 (酸素解離曲線)
Hb
ヘム(鉄を含む色素)
成人HbはHbA、HbA1c(糖化ヘモグロビン)
グロビン(蛋白質)
胎児HbはHbF(半年後にHbAに変換)
酸化Hb
鮮紅色
動脈血(酸素と結合しているオキシヘモグロビン)
脱酸素化Hb
暗赤色
静脈血(酸素が結合していないデオキシヘモグロビン)
(還元Hb)
COHb
脱酸素化 Hb が5g/dl以上でチアノーゼ。(皮膚や粘膜が暗青色)
一酸化炭素はヘモグロビンに対する結合力は230倍で、中毒を生じる
Hbの98%が酸素と結合
静脈血でも酸素は 75%ある
酸素と結合して離さ
ない。(動脈血)
酸
素
飽
和
度
CO2 上昇・pH 低下や発熱によ
りHbの酸素供給が増加するの
でHbの酸素結合能は低下し、
P50
解離曲線は右方移動する。
末梢組織は酸素が
少ないのでHbは酸
素を解離しやすい。
酸素分圧
静脈血の酸素分圧
12
動脈血の酸素分圧
3) 白血球 (WBC)(104)
種
類
① 顆粒球
%
60%
働 き
白血球でもっとも多い。骨髄で産生され、生体防御に働く。
好中球
55%
好酸球
3%
寄生虫で増加する(アレルギー抑制作用のため)、細胞障害性因子放出
0.5%
ヘパリン放出、ヒスタミン放出、血管透過性亢進、Ⅰ型アレルギーで増加
② リンパ球
35%
慢性炎症、免疫に関与する。アレルギーやウイルス感染で増加
Tリンパ球
70%
胸腺で分化成熟後末梢血へ
Bリンパ球
30%
骨髄で分化成熟
5%
骨髄で産生
好塩基球
③ 単 球
単 球
細菌貪色作用、急性化膿性炎症で増加 ・ 数時間生存して死滅(膿)
細胞性免疫に関与
液性免疫に関与。形質細胞になり抗体を分泌
貪食作用、免疫反応で抗原提示細胞となる
組織中へ出てマクロファージ、クッパー細胞、破骨細胞-になる。
血小板は骨髄巨核球の細胞質がちぎれて生成されるので白血球では無く、核もない。
2.血液細胞の分化
骨髄系
寿 命
数時間
~1 日
3~
5日
リンパ系
100 日
~数年
赤血球系
120日
造血細胞
血小板7~8日
1)多能性造血幹細胞はあらゆる血液細胞に分化できる細胞で骨髄、臍帯血、末梢血に存在する。
2)単球は骨髄系細胞から分化する。形質細胞はリンパ系細胞から分化する。
3)末梢血の骨髄系幼若顆粒球の出現を左方移動、過分葉核の好中球の出現を右方移動という。
幼若球出現
左方移動
右方移動
骨髄性白血病
過分葉核増加
巨赤芽球症(悪性貧血:ビタミンB12不足)
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3.赤血球の造血
1) 造血の場所
成 人
胎 児
(髄外造血)
胸骨、肋骨、椎骨、骨盤の腸骨
病的な場合に骨髄以外の肝臓や脾
肝臓、脾臓 出生とともに骨髄へ移行
臓で造血が行われる場合がある。
2) 造血に必要なもの
鉄
胃酸(塩酸)で吸収されやすくなる(不足すると鉄欠乏貧血) 胃手術後貧血
葉酸
細胞核の成熟に必要で不足するとDNA合成が障害され悪性貧血を起こす
ビタミンB12
エリスロポエチン
内因子
コロニー刺激因子
胃の内因子と結合して腸で吸収(細胞の成熟に必要で不足すると悪性貧血)
腎臓から分泌されるホルモン。血中の酸素濃度が低くなると分泌され、骨髄を
刺激して赤血球産生を刺激する。慢性腎不全で腎性貧血を起こす。
胃壁細胞から外分泌され、VB12の吸収(小腸で吸収)に必要な結合因子
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は顆粒球の分化を促進する。
4.鉄の代謝
赤血球は老化により脾臓(マクロファージ)や肝臓(クッパー細胞)の貪食細胞によって分解され
る。分解されたHb由来の鉄は体内で再利用される。鉄は血漿中でトランスフェリン(鉄運搬タン
パク)と結合し造血に再利用される。使われない鉄はフェリチンとして肝臓や小腸でヘモジデリン
(3 価鉄)として蓄えられる。
1) 血液中の鉄の状態
30%のトランスフェリンが鉄と結合し(血清鉄)、残りの70%が鉄と結合していない状態で存在する。
鉄がトランスフェリンと結合できる総量を総鉄結合能(TIBC)とよび、結合していないトランスフェリンを
不飽和鉄結合能(UIBC)という。総鉄結合能=不飽和鉄結合能+血清鉄の関係が成り立つ。鉄欠
乏性貧血では TIBC の上昇、UIBC の上昇(結合能上昇)、血清鉄の低下(鉄不足)がある。
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2) 生体内の鉄
鉄 の 含 有 量(人体の鉄総量は4.0-5.0g)
血色素(Hb)
3.0g(70%) 赤血球中の鉄
筋血素(ミオグロビン)
・
0.2g(3%)
横紋筋中に多い酸素結合タンパク
貯蔵鉄
1.2g(肝臓でフェリチン鉄として・骨髄・小腸にも貯蔵される)
血清鉄量
3-4mg
トランスフェリン+3価鉄の複合体
食物からの鉄の吸収量
1日 3mg
食物中の鉄は3価鉄(Fe3+)で吸収されにく
1日の鉄排出量
1日 3mg
い。胃液で還元されて 2 価鉄(Fe2+)で吸収
鉄の吸収 ヘム鉄
・・・レバー、牛 肉 、豚 肉 の鉄 分 は2価 鉄 で吸 収 しやすい。
非ヘム鉄 ・・ホウレン草は3価鉄で吸収が悪い。
・
鉄の吸収を促進させる
・・胃酸、ビタミンC(還元型の 2 価鉄にする)
・
鉄吸収を抑制するもの
・・お茶(タンニン酸)
・
鉄の損失 : 生理(45ml/月 20mg を失う)、慢性胃潰瘍、痔、癌などで損失する。
5.腸肝循環
1) 鉄以外の成分の利用
古くなった赤血球は脾臓で破壊され、ヘム中の鉄以外の物質のビリベルジンはビリルビンとなり、肝
臓で生成される胆汁中に含まれて十二指腸に排出されるが、腸内細菌によってウロビリノーゲンと
なり、さらにステルコビリン(ウロビリン)となり糞便の色となってほとんどが排泄される。しかしウロビリ
ノーゲンの一部と胆汁酸の多くは腸から吸収されて血中に入り、肝臓に再び運ばれて、再度胆汁と
なって再循環する。ウロビリノーゲンの一部は尿中に排出される。この循環を腸肝循環と呼ぶ。
酸化
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2) ビリルビンの種類
間接ビリルビン
0.1~0.8mg/dl
赤血球の溶血によって血中に増加する。アルブミンと結合するので腎糸球体を
通過できない。遊離型ビリルビンとも呼ばれ、脂溶性である。脳血液関門を通過
(脂溶性)して、脳基底核に沈着し黄染(核黄疸)する。(溶血性黄疸で増加)
間接ビリルビンのアルブミンは肝臓で外されて代わりにグルクロン酸で抱合さ
直接ビリルビン
れ水溶性のビリルビンとなる。これは抱合型ビリルビンと呼ばれる。アルブミンと
0~0.3mg/dl
結合していないので腎糸球体を通過し、ビリルビン尿を呈する。脳血液関門を通
過できない。 肝硬変や胆道閉鎖(閉塞性黄疸)などで増加する。
総 ビリルビン
正常値0.5~1.0mg/dl 、2mg/dl以上で皮膚が黄色(黄疸)くなる。
6.血液の働き( 運搬 ・ 調節 ・ 免疫 ・ 止血 )
1)ガスの運搬
酸素(O2)と二酸化炭素(CO 2 )の運搬
2)栄養素の運搬
消化管の毛細血管で吸収された栄養素は肝臓に運ばれる。
3)ホルモンの運搬
βグロブリンやアルブミンなどと結合して運搬
4)排 泄
5)体温の調節
老廃物(尿素・クレアチニン・尿酸)や余分な水分は腎臓に運ばれて排
泄する。
全身の温度を均等にする。熱を放出して体温を調節する。
1) 肺からCO2を排出(CO2 増加は血液を酸性にする)
6)酸・塩基平衡
2) 血液の緩衝作用(体液の pH を一定に保つ働き)により血液 pH は
一定である。酸の原因である H イオンは H・Hb となって緩衝される
3) 腎臓による酸(H+)排出、塩基物質(HCO3-)の調整
7)体液量の維持
膠質浸透圧(アルブミンの水分を引き込む力)で体液量は一定
8)免疫の働き
抗体や貪食細胞により感染から身体を防御する。
9)凝固の働き
出血すると止血(血小板)し、さらに凝固(血液凝固)して出血を防ぐ。
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3 貧 血
1) 赤 血 球 数 の減 少 や Hb 濃 度 の低 下 により酸 素 運 搬 能 が低 下 している状 態
① 赤血球数の減少 ・・・・・・・・・ 赤血球の産生低下、赤血球の破壊、大きい赤血球
② ヘモグロビン量の減少 ・・・・・ 赤血球数が正常でもHb量が減少すると貧血を起こす。
③ 貧血の人のチアノーゼは出にくい(Hbの絶対量が少ないため)。
造血幹細胞
造血能低下
の造血障害
(工場停止)
エリスロポエチン低下
Hb合成障害
分化障害
(材料不足)
赤血球損失
(製品破壊)
(VB12、葉酸不足)
溶血性疾患
出血
急性白血病、
②正色素性貧血
癌の骨髄転移・抗がん剤使用
③汎血球減少症
腎疾患(透析)
(さじ状爪)
悪性貧血(巨赤芽球性貧血)
DNA合成障害
溶血
①正球性
鉄欠乏性貧血
(鉄不足)
赤芽球への
再生不良性貧血
VB12欠乏、葉酸欠乏
胃摘出(内因子欠乏)
自己免疫性溶血性疾患
溶血性尿毒症性症候群:HUS
急性
出血性貧血(外傷)
慢性
慢性胃潰瘍(長期の少量出血)
①小球性
②低色素性貧血
①大球性
②正色素性貧血
①正球性
②正色素性貧血
①小球性貧血
2) 貧血の目安:男 13g/dl以下、女 11g/dl以下 (Hb量9g/dl以下は重症な貧血とされる)
爪床、口腔粘膜、口唇でみられる。
血液疾患と
症状の観察
チアノーゼ
①末梢性:心不全などの血流悪化、酸素飽和度は正常
②中枢性:先天性心疾患や呼吸不全、酸素飽和度は低下
貧 血
眼臉(まぶたの裏)結膜でみられる。
黄 疸
眼球結膜(白目)、皮膚でみられる。
4 止血と血液凝固のはたらき(107)
1) 一次止血(血小板血栓)
損傷した血管壁の膠原線維に血小板が粘着し、血小板血栓を生じて止血する。
血管収縮
損傷部位は血管平滑筋が収縮(血小板のセロトニン)し血流量が低下する。
損傷部位に血小板が粘着し、血小板による一次止血(白色血栓)をつくる。コラ
血小板の凝集
ゲンに接着するvWF(フォン・ビルブランド因子)受容体に血小板が接着し、血
液凝固に関与する。血小板が減少すると皮下出血(紫斑)が起こる。
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2)二次止血(血液凝固反応) (107)
一次止血に続くフィブリンと血液の凝血によって止血する二次止血を血液凝固反応という。
内因系(血液内)
外因系(損傷組織と血液の接触)
コラーゲンにⅫ因子が接触してスタート。Ⅻ・ Ⅶ因子が組織中の組織因子と接触し組織
Ⅺ・Ⅸ、Ⅷの順に活性化してⅩ因子が活性 トロンボプラスチン(Ⅲ)複合体となりⅩ因子
化され、プロトロンビンに作用する。
第Ⅰ相
を活性化してプロトロンビンに作用する。
活性化第Ⅹ因子
第Ⅹ因子
第Ⅹ因子
プロトロンビン(Ⅱ因子)
①
この順番
2+
Ca
第Ⅱ相
ヘパリンの抗凝固作用
ⅫI フィブリン安定化因子
フィブリノーゲン (Ⅰ因子)
第Ⅲ相
血液凝固
③
④
フィブリン 不溶性
血栓の存在は障害を起こす。
を覚える
②
トロンビン
続く線溶活性で溶解される
3) 線維素溶解(線溶) (107)
第Ⅳ相
血栓溶解
① フィブリン分解産物(FDP)
② D ダイマー生成
プラスミン
時々血管内でも血液
アクチベータとは
凝固が起きるので溶
かす仕組みがある。
プラスミノゲンアクチベーター
プラスミノーゲンを活性化
活性化させる因子
ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、t-PA
4) 凝固因子
Ⅰ フィブリノーゲン
Ⅵ 欠番
Ⅺ PTA(内)
Ⅱ プロトロンビン
Ⅶ 安定因子(外)
Ⅻ ハーゲマン因子(内)
Ⅲ 組織トロンボプラスチン(外)
Ⅷ 抗血友病A因子:血友病 A(80%)
ⅫI フィブリン安定化因子
Ⅳ Ca++
Ⅸ クリスマス因子 血友病 B(内)
キニノゲン
Ⅴ 不安定因子
Ⅹ スチャート因子
カリクレイン
① Ⅲ・Ⅳ・Ⅷ因子(産生場所が不明)以外は肝臓で生成される。
② 血友病 A、B の血小板数は正常、出血時間は正常、活性化部分トロンボプラスチンは延長
③ 血友病A、B遺伝子は X 染色体上にあるので伴性劣性遺伝で男性だけに出現
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5) 抗凝固剤 (110)
脱カルシウム作用
凝固因子阻害作用
ビタミンK阻害作用
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)
血液一般検査、内分泌検査など
3.28%クエン酸Na
赤沈検査で 0.4ml+1.6ml と血液混合
デキストロース加クエン酸Na
輸血保存液用 30ml/200 血液
フッ化ナトリウム
解糖酵素阻害で血糖測定用
ヘパリン
アンチトロンビン作用、血液ガス用
経口投与(肝のⅡ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子抑制)
ワーファリン
血小板活性阻害作用
(納豆はワーファリンと拮抗作用がある)
アスピリン
血小板凝集を抑制する(TAX2 抑制)
6) 血液凝固と薬物
血小板凝集抑制作用
アスピリン(アセチルサリチル酸)
血小板凝集の抑制
抗血液凝固作用
ヘパリン、ワーファリン
血液凝固(血栓)の予防
血栓溶解剤
ウロキナーゼ、t-PA
すでに出来た血栓の溶解
7) 凝固不全(出血傾向、出血斑の出現する病気)
血管の脆弱性、内皮細胞の透過性亢進、炎症、壊血病(ビタミンC不足)、
血管の異常
ステロイドホルモン剤、クッシング病(血管蛋白の損失)
血小板数の減少
特発性血小板減少性紫斑病、白血病、再生不良性貧血、DIC
凝固因子の欠乏
血友病、肝硬変、白血病、アルコール中毒、ビタミンK欠乏
8) 出血時間と凝固時間の検査
出血時間
正常値 1~3分
凝固時間*
正常値6~15分
耳朶を刺傷して出血が停止する一次止血に要する時間
血小板数、毛細血管の強さ、vVW 因子に影響される。
採血後の凝固するまでの時間(血友病で延長)肝障害(VK
吸収障害)、DIC、ワーファリン、ヘパリンでも延長する。
*APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間のこと(内因系凝個因子の検査)の方が精度が高い。
9) ビタミンKと凝固因子の産生 (107)
1.肝臓でつくられる第Ⅱ因子のプロトロンビンや第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の
産生に必要。 (肉・納豆と覚える)
2.ビタミンK不足や肝障害があると出血傾向を招く。(消化管出血)
ビタミンKのはたらき
VK は納豆に多い
3.ビタミンKは腸内細菌によっても合成されるが、新生児は腸内細菌
の活性が弱いのでVKシロップを与える。(新 生 児 メ レ ナ)
4.ビタミンKはオステオカルシンにCaイオンを結合し、骨化促進
5.ワーファリンはビタミンミン K の作用を阻害する(拮抗作用)。
6.ビタミン K は止血を目的に投与される。
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5
ABO式血液型 (108)
1.凝集原と凝集素
ABO式血液型
A型
B型
AB型
O型
凝集原(細胞膜抗原)
A
B
A・B
なし
凝集素(血清中抗体)
B(β )
A(α )
なし
A(α )・B(β )
① 膜抗原:A 型抗原(N-アセチルガラクトサミン/H 抗原)・・・・A抗体(B型)で凝集
B 型抗原(ガラクトース/H 抗原)・・・・・・・・・・・・・・・B抗体(A型)で凝集
② 血液型抗体:自然に生まれながらにして持つ抗体で規則抗体という。
1) ABO 式血液型と輸血の適否( 抗原と抗体の関係で決定される )
2) ABO式血液型の出現率と血液型の遺伝 (109)
A型
40%
AO遺伝子 ・ AA遺伝子
O型
30%
OO遺伝子
B型
20%
BO遺伝子 ・ BB遺伝子
AB型
10%
AB遺伝子
3) 両親の血液型遺伝子の組みあわせで出現する子供の血型
母
父
O型 OO
A型AO・AA
O型 OO
O型
O型 A型
A型AO ・AA
A型 O型
A型 O型
B型BO ・BB
B型 O型
AB型AB
A型 B型
O型 A型
B型 AB型
B型BO・BB
AB型AB
O型 B型
A型 B型
O型 A型
A型 B型
B型 AB型
AB型
O型 B型
A型 B型
AB型
A型 B型
A型 B型
A型 B型
AB型
AB型
AB型
AB型と他の血液型からはO型の子供は生まれない。例外(シスAB型:遺伝子 AB・O を持つ)
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4) ABO式血液型遺伝子の組み合わせと、その練習問題
対立遺伝子Aは優性、Oは劣性なので A・O は表現型では A 型となる。
母親
O
B
遺伝子型
AB AO
OB
OO
AB
AO
BB
BO
出現血型
AB
B
O
AB
A
B
B
B
B
母親
A
B
A
O
A
O 父親 母親
B 父親
A
母親
B
B
O 父親
A
O 父親
遺伝子型 AB
BB
OA
OB
(
) (
)
(
)(
)
出現血型 AB
B
A
B
(
) (
)
(
)(
)
5) O型輸血と異型輸血事故
受血と供血の関係(全血輸血の場合)
O型 →A 型 O型供血者の抗A・B抗体(少)は受血者の血液中でほとんど希釈される。
A型 →O型 受血者O型の抗A抗体(多)は供血者A型の血球抗原と激しく凝集反応する。
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輸血時の注意
a.実際の輸血は緊急時輸血(O型)を除いて同型同士の血液が使用される。
b.O型は万能血液と呼ばれるが、A抗体とB抗体を持つのでA型の人に輸血した場合、
A型の赤血球の抗原とわずかに反応して凝集を起こし、弱い副作用が見られる場合がある。
(軽い黄疸、発熱)
c.血漿の輸血の場合も血液型を合わせる。
患者の血液型が不明の場合は、抗体のない AB 型の血漿を使用
問)AB型の血球浮遊液 1 滴とO型血漿 1 滴を外で混合した。この場合凝集するか?
d.輸血は輸血量や受血者の状態、輸血血液の適合性によっても種々の副作用を伴う。
6
Rh式血液型 (110)
同じABO血型でも赤血球膜にRh抗原(D抗原:Rh因子)を持つ人と持たない人がいる。D抗
原と抗D抗体を反応させると、凝集するのがRh(+)で、D抗原を持たない人は凝集しない。こ
れをRh(-)という。 通常ヒトは抗原に対応する抗体を保有していない。
Rh陽性率
日本人陽性者
陰性者
99.5%
Rh(+)抗原を持つ人
0.5-07%(約0.5%:200 人に 1 人)
Rh(-)抗原のない人
1.血液型不適合妊娠
1)Rh不適合妊娠
Rh 陰性の女性が Rh 陽性の胎児 Dd、Rh(+)を妊娠すると起こる。(不適合な)胎児の赤血球
が胎盤を通過して母体に入り、感作された母体は抗D抗体を生じる。2 仔目からは抗体(IgG)
が胎盤を通過して胎児に入り、胎児赤血球を破壊して溶血を招く。最初の感作は Rh(+)の胎
児の妊娠や流産によって生じる。妊娠する毎に免疫化が重症化する。胎児あるいは新生児は
脳関門を通過した間接ビリルビンにより致死的な障害(流産、死産、核黄疸、)を起こす。これ
を胎児性赤芽球症という。
1 仔目の出産
Rh(+)の胎児血球が経胎盤で母体に入
り、母体中に抗D(+)抗体が作られる。
2仔目の出産
抗D抗体はIgGで胎盤を通過して胎児に
入り、胎児赤血球を破壊溶血する。
これを防止するために
1仔目出産時に母体が感作されないよう
に抗D免疫抗体*(母体内に入った胎児
の Rh(+)血球を破壊)を投与する。妊娠
中と出産後 72 時間内に投与する。
*
Rh(-)で作られた抗D抗体製剤
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Rh遺伝子の組合せ(Dは+で優性遺伝子、dは-で劣性遺伝子)ddがRh(-)となる。
夫Dd
妻dd
Dd
dd
50%(Rh+)
50%(Rh-)
夫DD
妻dd
夫Dd
Dd
Dd
DD
100%(Rh+)
妻Dd
(Dd
dD)
dd
25%(Rh+)・50%(Rh+)・25%(Rh-)
(1) Rh血液型遺伝子と表現型
DD(Rh++)
D抗原を持つので Rh+である
Dd(Rh+-)
D抗原を持つので Rh+である
dd(Rh - -)
D抗原がないので Rh-である
(2) Rh遺伝子と生まれる子供の関係(ABO型遺伝子と同じようにDD、Dd、ddがある)
・ Rh-(dd)の母親とRh+(DD)の父親から生まれる子はRh+である。Ddは(+)である。
・ Rh-(dd)の母親とRh+(Dd)の父親から生まれる子の50%はRh-で生まれる。
・ 母親と父親の双方にDdがある場合、25%でRh-の子が生まれる。
(3) Rh抗体と輸血
・ Rh-のヒトへの輸血はRh(-)の血液を輸血する。
・ Rh+のヒトへのRh-のヒト(抗原を持たない)の輸血は可能である。
・ Rh(-)の母親のRh(+)の二児目の胎児、新生児の交換輸血にはRh(-)の血液が必要。
2.輸血とは
大量の出血、体内で血液が十分に作ることができなくなった場合に、血液成分を体内に輸注
することである。輸血は大きな意味で移植のひとつである。
1)移植片対宿主病(GVHD)を防ぐために輸血する血液はX線照射を行う。(輸血する血液を
照射してキラーT 細胞(CTL)を破壊する)拒絶反応と GVHD の違いを見てみよう。
2)骨髄移植は患者の造血能を破壊してから、HLAを一致させた多能性幹細胞を含む骨髄を
移植(再生不良性貧血や白血病が対象)する。移植後血液型も変わる。
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3)輸血前に行う検査には・・
a)ABO式 ・ Rh血液型
受血者の血液型を調べる
b)不規則抗スクリーニング
受血者血漿中の溶血の原因となる不規則抗体を調べる
c)クロスマッチ試験
受血者血清と輸血血球との適合性を調べる
4)ABO血液型と規則抗体
A型
抗B抗体
これらの抗体は自然に生まれながらにして持つ抗体で規則
B型
抗A抗体
抗体と呼ぶ。血液型抗原は赤血球にある糖タンパクで、規則
O型
抗A、抗B抗体
抗体は輸血において適合させれば問題とはならない。
AB型
抗体なし
しかし・・・・
5)不規則抗体(不完全抗体)とは
同じABO型同士の輸血でも凝集する場合がある。頻 回 輸 血(他人の血液がたびたび身体に
入ること)や、分娩時の新生児の赤血球が胎盤を経由して母胎へ入ると抗原となり、免疫抗体
ができる場合がある。このようなABO型の規則抗体以外の免疫抗体を不規則抗体という。不規
則抗体によっては輸血障害を起こし溶血性貧血などが問題となる。
不規則抗体がつくられてしまう過程
(1)不規則抗体を持つ可能性の人 (不規則抗体は先天的には保有していない抗体である)
① 過去に輸血をした人(他人の血液は抗原となる)
② 出産(分娩時の経胎盤出血など)
不規則抗体があれば特異性を調べて抗原のない血液を準備して輸血することができる。
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(2)不規則抗体を検査しないで輸血すると・・・
① 同じABO式血液型同士の輸血でも凝集・破壊・溶血することがある。
② 致命的な移植片対宿主病(GVHD)や輸血障害(受血者の赤血球が破壊溶血)を招く
③ 貧血や黄疸、低血圧を起こすことがある。
不規則抗体の種類
Rh系、 Kell系、Duffy系、 Kidd系、 MNSs系、
(ABO式以外の血液型抗体)
Lewis系、P系、 Xg系、 Jra系、Bg系など
3.交差適合試験(クロスマッチ)とは
クロスマッチ試験は輸血血液による不規則
抗体による副作用を防止するのが目的であ
る。患者と同じ血液型の輸血用血液を使っ
て、血液同士の適合性を最終チェックする
検査である。使用する血液パックとの適合
性反応を二人以上で確認する。凝集や溶
血が認められたら、この血液パックは使用し
ない。適合が確認されてから輸血される。
【検査】
交差適合試験は、患者血清中に輸血血
球に対する抗体があるかどうかを調べる
主試験と、輸血血清中に患者血球に対
する抗体があるかどうかを調べる副試験
がある。
主試験=患者血清+輸血赤血球
副試験=患者赤血球+輸血血清
4.血液製剤と有効期限
保存法
成
分
輸
血
赤血球(MAP)
新鮮凍結血漿
血小板
全
血
2~6℃
有効期限
21日間
-20℃以下
20~24℃(室温)
2~6℃
貧血、酸素不足
1年間
凝固因子が複数欠損した出血
3日間
血小板減少による出血
21日間
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適 用
大量出血など全ての成分の不足