~ 東京都足立区におけるコンプライアンス推進(公益通報制度等)の取り組み ~ 1 足立区の取り組みと制度の特色 (1)導入にあたっての背景と特色 区民保養所の委託化をめぐる不祥事(H17 年度) 制度導入とコンプライアンス宣言(H18 年度) 主に部長級庁議メンバーで構成するコンプライアンス推進委員会による進行 管理とコンプライアンス経営の徹底(推進本部制) 外部委員で構成する「職員不祥事根絶対策懇談会」への諮問と提言(H19 年度) (2)コンプライアンス推進のための事業三本柱 ①足立区職員等の公益通報に関する要綱 対象労働者 区職員、教職員(正職員、非常勤職員、臨時アルバイト職員等全て) 区と契約関係にある事業者従業員 指定管理者制度における指定管理事業者の従業員 ②足立区への提言、要望等に関する取扱い規程(訓令) 区政に関する外部からの不正行為要求、不当な要求 (いわゆる口利き等の抑止) 記録し報告する義務、開示対象 ③啓発関係事業 職員の意識向上と各種啓発研修 指定管理者事業者とその従業員に対する啓発研修 啓発情報紙発行 2 通報および相談等の体制 公益監察員2名(弁護士) 内部通報窓口(公益監察事務局)コンプライアンス推進担当課長 担当係長 庁内ヘルプライン 人事課 行政監察担当課 政策課 ほか 外部通報窓口 区民の声相談課 公益監察員から区長に対して勧告と報告 これを受けて足立区長から改善指示命令や処分 1 3 運用実績 (1) 公益通報・一般相談および提言・要望等の実績 年度 受付総数 公益通報 提言要望 相談助言 18年度 19 0 4 15 19年度 29 2 0 27 20年度 29 1 0 28 21年度 30 2 0 28 22年度 22 1 0 21 23年度 22 2 0 20 24年度 24 5 0 19 25年度 29 2 0 27 15 4 175 ) ( 類 計 194 毎年の運用実績を議会へ報告、広報ホームページで公表 (2)様々な内容の相談や通報事案とその傾向 職員等からの相談と通報 内部の人間関係、人事労務関係、組織体制等に関わる事案がほとんど 職場の問題を訴えることができる駆け込み寺的機能を要求される 上司から部下に対するパワーハラスメント事案の増加(3 割前後) 組織第一線管理監督者の重要な役割と責務 民間事業者従業員からの相談と通報 労基法、労働契約法、労働安全衛生法に関わる事項が多い 教示と足立区の行政責任、管理監督責任が要求される 足立区に処分権限のある法令等違反は企業名等の議会報告 住民(足立区民、他自治体住民)からの足立区と職員に対する苦情など 区政への苦情要望 公共交通機関や飲食店内での職員の言動に対する苦情や意見 上階の職員宅からの深夜騒音等に対する職員倫理と職員指導について 4 運用上の課題など (1)地方自治体においては、公益通報者保護法に限定した対応では課題問題は解決 できず、法令遵守のみならず広義で捉えたコンプライアンス推進の考えで対応 すべきである(ガバナンスやCSRの一層重視) 2 (2)コンプライアンスの制度や目的に「少しでも合致する」相談や通報は積極的に 取り上げるべきであり、その一方で、制度の主旨から「明白に外れる」相談や 通報はきっぱりと断るべき、であるのだが‥ (線引きと仕分けと説明説得の難しさ) (3)事実関係調査に伴う協力(義務)と調査協力者への情報提供の範囲(守秘義務) 職員等には調査への協力義務と事情聴取など調査等で知り得た情報の守秘義務 が規定されているが、調査等が事業主や住民に及ぶ場合には事情聴取や証拠提 出など公益監察員の職務権限が及ばないことがある。必要に応じて首長の権限 発動(下記(4))も行っているが‥ (権限や義務の範囲と限界) (4)公益監察員の権限が及ばない分野に調査の必要性がある場合には、地方自治 法 244 条の 2 等に基づき首長の権限で調査・指示 (公益通報者保護法上における調査権限の付与と同法上におけるペナルティ) (5)通報者・非通報者の双方から情報公開請求 公益監察員からの勧告や報告内容資料を訴訟等への活用 本人開示請求と行政情報開示請求 (6)公益通報制度調査結果の利用 上記(5)と類似するが、主として公益監察員の見解を求めてその内容を通報者 の本来目的(例えば訴訟等の目安)への利用に資する(不正や悪意はない) (7)解決と収拾に向けた調停機能(仲裁)の求め 通報者と非通報者双方の意見が真っ向から対立する場合など 5 その他 (1)公益監察事務局や事務局職員に対するクレーム 不平不満や逆恨み (2)その他 3
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