(防災林造成編)の参考(第3章(その2))(PDF:1730KB)

参考
4-2-2
測量の種類
4-2-3
一般地形測量
4-2-4
汀線測量
4-2-5
深浅測量
4-3
設計高潮位及び設計津波の水位
4-3-1
設計高潮位
4-3-2
設計津波の水位
設計津波の水位の設定方法
設計津波の水位を設定する際は、
「設計津波の水位の設定等について」
(平成 23 年 7 月 8
日 農林水産省 国土交通省連名通知)を参考とする。
設計津波の水位の設定方法は、図4-3-1に示すとおりであり、同図の「③ 設計津波
の対象波群の設定」については、地域海岸の区分事例を図4-3-2に、地域海岸におけ
る設計津波の対象群の選定事例については、図4-3-3に示す。
なお、津波高と堤防高の関係を図4-3-4に示す。
参考
1)
設計津波の設定単位
設計津波は、地域海岸ごとに設定することを基本。
【地域海岸】沿岸域を「湾の形状や山付け等の自然条件」等から勘案して、一
連のまとまりのある海岸線に分割したもの。
2)
設計津波の水位の設定方法
①
過去に発生した津波の実績津波高さの整理
・痕跡高調査や歴史記録・文献等を活用。
②
シミュレーションによる津波高さの算出
・十分なデータが得られない時には、シミュレーションを実施しデータを補完。
・今後、中央防災会議等において検討が進み、想定地震の規模や対象範囲の直
し等が行われた場合は適宜見直すことが必要。
③
設計津波の対象津波群の設定
・地域海岸ごとに、グラフを作成。
・一定の頻度(数十年から百数十年に一度程度)で発生すると想定される津波
集合を選定。
④
「設計津波の水位」の設定
・上記で設定した対象津波群の津波を対象に、隣接する海岸管理者間で十分整
を図ったうえで、設計津波の水位を海岸管理者が設定。
※堤防等の天端高は、設計津波の水位を前提として、環境保全、周辺景観との
調和、経済性、維持管理の容易性、施工性、公衆の利用等を総合的に考慮し
て海岸管理者が設定。
図4-3-1
設計津波の水位の設定方法
(出典)設計津波の水位の設定方法等について(平成 23 年 7 月 8 日 農林水産省、国土交
通省連名通知)付属資料
参考
図4-3-2
地域海岸の区分の事例図
(出典)設計津波の水位の設定方法等について(平成 23 年 7 月 8 日 農林水産省、国土交
通省連名通知)付属資料
参考
図4-3-3
設計津波の対象群の選定事例
(出典)設計津波の水位の設定方法等について
(平成23年7月8日 農林水産省、国土交
通省連名通知)付属資料
図4-3-4
津波高と堤防高の関係
(出典)漁港海岸事業設計の手引
4-4
(公社)全国漁港漁場協会
H25.11
防潮工
4-4-1
防潮堤
4-4-1-1
防潮堤の目的
4-4-1-2
防潮堤の型式及び種別の選定
津波越流による堤防破壊のメカニズムの推定と構造上の工夫の方向性
「粘り強い構造」の基本的考え方は、設計対象の津波高を超え、海岸堤防等の天端を越
流した場合であっても、施設が破壊、倒壊するまでの時間を少しでも長くする、あるいは、
施設が完全に流失した状態である全壊に至る可能性を少しでも減らすといった減災効果を
目指した構造上の工夫を施すことである。
(1) 裏のり尻部、裏のり勾配
越流水は、裏のりを流下し流速が速くなった状態で裏のり尻部の地面等に衝突する
ことにより洗掘が起こり、これをきっかけに施設の損壊、流失を引き起こす被災形態
が考えられる。
裏のり尻部の強化と裏のりを緩勾配とすることにより水流を減勢させ洗掘防止に努
める。
(2) 天端被覆工、裏のり被覆工、表のり被覆工
参考
越流水は、天端部や裏のり部において流速が速くなることにより、天端被覆工、裏
のり被覆工等が流失する被害形態や、堤体土が被覆工の隙間から吸い出される被害形
態が考えられる。
天端被覆工や裏のり・表のり被覆工自体の重量や強度と連結部の強度を上げて、剥
離しにくくする方法が有効である。
(3) 波返工
波返工は、その構造上波が越流したときには、越流水または漂流物等の衝撃を受け
やすく、衝撃力がその強度を上回った場合には破壊を受ける被害形態が想定される。
波返工天端まで盛土をすることや、配筋による補強を施すことが有効である。
部位毎の被災メカニズムと構造上の工夫について表4-4-2に示す。
表4-4-2
部
位
部位ごとの津波による被災メカニズムと構造上の工夫(1)
裏のり尻部・裏のり勾配
被 災 メ カ ニ ズ 来襲した津波の水流が海岸堤防を越流した後、裏のりを流下し流速
ム
が速くなった状態で裏のり尻部の地面等に衝突することにより洗掘
が起こり、これをきっかけに裏のり被覆工等の損傷、流出を引き起
こす。
構造上の工夫
①
裏のり尻部に平場を設置することにより、落下してくる水流の
向きを水平方向に変えることにより洗掘から防護する。
②
裏のり尻部の被覆に加え、裏のり勾配を緩勾配化することによ
り水流を減勢させ、裏のり尻部における衝撃を抑える。
概念図
(出典)漁港海岸事業設計の手引
(公社)全国漁港漁場協会
H25.11
参考
表4-4-2
部
位
被災メカニズ
部位ごとの津波による被災メカニズムと構造上の工夫(2)
天端保護工(天端被覆工)・裏のり被覆工・表のり被覆工
①
ム
津波の水流が防潮堤等を越流する際、天端部、裏のり部で高速
になることにより、天端保護工(天端被覆工)、裏のり被覆工が
流出したり、堤体土が被覆工の隙間から吸い出される。
②
裏のり被覆工に不陸が生じ、まともに流れを受ける面が生じや
すくなる。
③
引き波の越流においても、天端部、裏のり部で高流速が発生す
ることにより同様の被災形態が想定される。
④
天端部に波返工がある場合には、波返工を乗り越え落下する水
流が天端保護工(天端被覆工)に衝突し損傷を引き起こす。
⑤
堤体内の被覆工と湿潤面に囲まれた空気の圧力上昇による揚圧
力が発生する。
構造上の工夫
⑥
裏のり肩付近に負圧が発生する。
①
天端保護工(天端被覆工)や裏のり被覆工、表のり被覆工を厚
くしたり、部材間を連結し、剥離しにくくすることにより、重量
や強度を確保する。
②
流れの上流側と下流側に切り欠きを設けたブロックを噛み合わ
せる。
③
天端保護工に(天端被覆工)おける空気抜き孔を配置し、透気
性の向上を図る。
④
天端保護工(天端被覆工)と法肩を一体化することにより、ブ
ロック単位の拡大を図る。
概念図
参考
(のり面被覆の例)
(出典)漁港海岸事業設計の手引
加筆)
(公社)全国漁港漁場協会
H25.11(括弧書き部分を
参考
表4-4-2
部
位
部位ごとの津波による被災メカニズムと構造上の工夫(3)
波返工
被災メカニズ ①
ム
設計津波の水位を超える津波の波圧作用により、波返工の陸側
への倒壊等を引き起こす。
②
引き波の波圧の作用による波返工の海側への倒壊も想定され
る。
構造上の工夫
①
海岸堤防(防潮堤)の設計外力を高潮でなく津波とする場合は、
波返工が倒壊しやすい構造であることを考慮して、天端まで盛土
構造とすることも検討する。
②
波返工を採用する場合には、強い波圧への耐力を向上するため
に、配筋による補強を施すことが有効であると考えられる。
概念図
(出典)漁港海岸事業設計の手引
(公社)全国漁港漁場協会
H25.11(括弧書き部分を
加筆)
4-4-1-3
防潮堤の位置及び法線
4-4-1-4
防潮堤の天端高
1
波浪計算の適用手法及び対象波の種類
図4-4-3に示した設計波浪(設計沖波諸元、換算沖波波高、砕波前の波浪変形及
び構造物設計位置での設計波高)の計算に用いる計算手法及びそれぞれ手法に対応する
対象波の種類は、表4-4-3に示すとおり。
参考
表4-4-3
求める波浪諸元
波浪計算の適用手法及び対象波の種類
計算条件等
主な適用手法
対象波の
種類
沖波諸元
波の実測データ
(H0,T0,α0)
風の実測データ
数値計算法
不規則波
(スペクトル法)
海底地形データ
図解法
換算沖波波高
沖波諸元
(H0')
海底地形データ
(有義波法)
数値計算法
水深による波高 換算沖波諸元
変形(HD)
海底断面地形
(砕波前)
海底勾配
計算位置水深
規則波
不規則波
(エネルギー平衡方程式法)
数値計算法
不規則波
(エネルギー平衡程式法)
図解法
規則波
(浅水変形図)
構造物設置位置 換算沖波諸元
図解法①
での波高(HD) 海底勾配
不規則波
(不規則波の砕波帯内の分布図)
構造物設置位置
水深
図解法②
規則波
(規則波の砕波帯内の分布図)
2
設計波に対する必要高の決定方法
(1) 波の打ち上げ高による方法
波の打ち上げ高は図4-4-6に示すように静水面からの高さRで示し、換算沖波
波高H0'に対する相対打ち上げ高R/H0'で表す。
図4-4-6
(出典)漁港海岸事業設計の手引
波の打ち上げ高
(公社)全国漁港漁場協会H25.11
参考
①
一様勾配斜面堤の場合
この場合の算定に当たっては、図4-4-7を用い、防潮堤の前面の勾配と海底
勾配の種々の組み合わせによって推算する。
図4-4-7
直立堤
海底勾配
1/10
直立堤
海底勾配
1/20
一様勾配斜面の波の打ち上げ高の算定図(1)
(出典)漁港・漁場の施設の設計の手引
(社)全国漁港漁場協会
H15.10
参考
図4-4-7
一様勾配斜面の波の打ち上げ高の算定図(2)
(出典)漁港・漁場の施設の設計の手引
(社)全国漁港漁場協会
H15.10
参考
図4-4-7
一様勾配斜面の波の打ち上げ高の算定図(3)
(出典)漁港・漁場の施設の設計の手引
(社)全国漁港漁場協会
②
防潮堤や海底斜面などからなる複雑な海岸断面を有する場合
ア
仮想勾配法
H15.10
断面形状が複雑な場合は、図4-4-8に示すサビールの仮想勾配法により打ち
上げ高を算定する。防潮堤が汀線より陸側に設置される場合も、陸上部の地形を含
めた複断面堤と考えて仮想勾配法を適用する。また、サビールの仮想勾配法は非常
に緩い勾配の斜面では適合性が悪くなるため、海底勾配が1/30より急な場合に適用
するのがよい。仮想勾配法を用いた算定手順を示せば、次のとおりである。
(ア) 砕波点A(砕波水深)を図2-10-14より求める。
(イ) 波の打ち上げ高R1を仮定し、静水面(S.W.L)からR1の地点Bと砕波点Aを結び、
これを仮想勾配(cotα)とする。
(ウ) 図4-4-9の「打ち上げ高曲線」から、仮想勾配斜面上への打ち上げ高Rを
求める。
(エ) はじめに仮定した波の打ち上げ高R1とRが一致するまで計算を繰り返し、打ち
参考
上げ高を算定する。図4-4-9にはサビールの曲線のほかに、中村らの提案し
た曲線(破線)も併せて示してある。サビールの曲線による算定値が一般に小さ
な値を示すため、仮想勾配と実際の形状に大きな違いのある場合には、中村らの
曲線を使用する。
図4-4-8
図4-4-9
イ
仮想勾配法の説明図
仮想勾配法による波の打ち上げ高曲線
改良仮想勾配法
海底勾配が1/30より緩い湯合には、図4-4-10に示す中村らの改良仮想勾配
法により打ち上げ高を算定する。改良仮想勾配法を用いた算定手順を示せば、次の
とおりである。
(ア) 砕波点(砕波水深)を図2-10-14より求める。
(イ) 波の打ち上げ高R1を仮定し、静水面(S.W.L)からR1の地点bと波点までの
海浜断面積(図中斜線部の面積A)を求める。
(ウ) 図中斜線部の面積Aと同面積を有する仮想三角形(a,b,c)を想定し、その斜
辺(a,b)を仮想勾配とする。
(エ) その仮想勾配から図4-4-10の「打ち上げ高曲線」で打ち上げ高Rを求め
る。
(オ) はじめに仮定した波の打ち上げ高R1とRが一致するまで計算を繰り返し、打ち
参考
上げ高を算定する。
図4-4-10
③
改良仮想勾配法による波の打ち上げ高曲線(中村・佐々木・山田)
波の打ち上げ高に影響する要因
打ち上げ高は波の特性、防潮堤の形状、設置水深、海底勾配、消波工の有無など
により変化する。打ち上げ高に影響する各種要因は次のとおり。
ア
堤脚水深
打ち上げ高は、水深の増加とともに増え、砕波水域でほぼ最大となり、以後減少
する。水深が汀線から砕波点を過ぎるあたりまでは、堤脚水深のわずかな変化で打
ち上げ高が大きく変化する。
イ
海底勾配
打ち上げ高は、防潮堤設置箇所の海底勾配が急なほど大きいが、重複波領域では
海底勾配の影響はほとんど受けない。海底勾配は、砕波波高に影響を及ぼし、海底
勾配が急なほど、砕波点から岸側までの距離が短くなる。
したがって、海底勾配が急なほど大きな砕波後の波があまり減衰せずに構造物に
衝突することになり、波が高くはい上がり打ち上げ高も増大する。
参考
海底地形が複雑な場合は、Saville(1958)及び中村・白石(1972)の仮想勾配法を
用いる方がよい。
ウ
のり面勾配
打ち上げ高に及ぼすのり面勾配の影響は、波の性質によって次のように規定され
る。
砕波水深以深の重複波領域においては、打ち上げ高を最大にするのり面勾配と越
波流量を最大にするのり面勾配は一致し、概ね1:1~1:2.5である。
一方、砕波水深以浅及び汀線域で構造物に波が作用する場合は、打ち上げ高と越
波流量の最大値は必ずしも一致しない。この領域は、のり面勾配が大きくなると斜
面上で再度砕波し、極めて複雑な現象が生ずるので注意する。
エ
風向・風速
打ちあげ高を規定する要因として上記の他に風向・風速があるが、現時点ではこ
れらと打ちあげ高の関係については、十分に解明されていない。したがって、必要
に応じて飛沫防止対策(防護柵)等を別途講じる。
(2) 越波流量による算定
①
越波量とは越波した水の総容積であり、越波流量とは越波量を測定時間で割って
得られる単位時間当たりの平均容積である。通常、これらは単位幅当たりの量で示
される。
②
越波流量(q)は、構造物のり先水深、海底勾配、のり面勾配、天端高、消波工
の有無等によって影響される。越波流量は、既往の資料、模型実験等によって算定
するが、越波流量推定図が作成されており、これによって越波流量を求めることも
できる。
③
設計に当たっては、算定された越波流量が背後地の土地利用状況に応じた許容量
以下となるように天端高を決定する必要があるので、表4-4-4に示した被災限
界越波流量、表4-4-5に示した許容越波流量を参考として、現地の許容越波流
量を決定する。
表4-4-4
種別
防潮堤
防潮護岸
海岸防潮堤・護岸の被災限界越波流量(合田)(m3/m/s)
被覆工
越波流量
コンクリート三面巻き 0.05
天端舗装、裏のり未施 0.02
天端舗装無し
0.005以下
背面舗装済み
0.2
背面舗装無し
0.05
注)防潮堤は、裏のり面があって後背地が天端よりも低いもの、防潮護岸は裏のり
面がないものとして分類した。
参考
表4-4-5
背後地に被害が予想される場合の許容越波流量
要
越波流量
件
q(m3/m/s)
背後に人家、公共施設等が密集しており、
特に、越波、飛沫等により重大な被害が
予想される地区
ア
0.01程度
(バケツ1杯程度)
その他の重要な地区
0.02程度
その他の地区
0.02~0.06
直立型に対する算定
防潮堤の基本型を直立型とした場合の不規則波越波流量推定図を、図4-4-1
1及び図4-4-12に示した。
対象とした防潮堤の断面形状は、図に記載したとおりである。図は、海底勾配1/
10と1/30の場合が示してあるが、波形勾配及び海底勾配が図のものと異なる場合は、
適宜内挿または外挿して推定する。
表4-4-6
越波流量の限定値に対する真値の想定
参考
図4-4-11
直立護岸(直立型防潮堤)の越波流量推定図(海底勾配1/30)(1)
(出典)海岸保全施設の技術上の基準・同解説
(括弧書きの部分を加筆)
海岸保全施設技術研究会
H16.6
参考
図4-4-11
直立護岸(直立型防潮堤)の越波流量推定図(海底勾配1/10)(2)
(出典)海岸保全施設の技術上の基準・同解説
(括弧書き部分を加筆)
海岸保全施設技術研究会
H16.6
参考
図4-4-12
消波ブロック被覆護岸(消波工付き防潮堤)の越波流量推定図
(海底勾配1/30)(1)
(出典)海岸保全施設の技術上の基準・同解説
(括弧書き部分を加筆)
海岸保全施設技術研究会
H16.6
参考
図4-4-12
消波ブロック被覆護岸(消波工付き防潮堤)の越波流量推定図
(海底勾配1/10)(2)
(出典)海岸保全施設の技術上の基準・同解説
海岸保全施設技術研究会
H16.6
(括弧書き部分を加筆)
イ
傾斜型に対する算定
傾斜型ののり勾配が3割より急な場合の打ち上げ高及び越波流量に対する必要高
は、直立型と同様に算定する。3割より緩い場合は図4-4-13に示す豊島らが
実験結果より作成した打ち上げ高の算定図を用いて必要高を算定する。なお、この
図中の破線は、堤脚水深h=0の特例で、のり尻が十分高いところにあって汀線まで
にかなりの砂浜があるときに使用する値である。のり尻が汀線に近いときは、実線
の方を使用する。
参考
図4-4-13
緩傾斜型の設計用天端算定図(海底勾配:1/20)
(3) 簡易算定図を用いる方法
簡易算定図を用いる方法は、従来から用いられている方法である。海底勾配と天端
高等との関係を図4-4-14及び表4-4-7に示した。この必要天端高は、打ち
上げ高さ及び越波量の実験結果並びに既設構造物とのつりあいを考慮して定めたもの
である。このときの沖波の波形勾配は、0.01~0.03、越波量は、0.005~0.01(m3/
m/s)程度である。
表4-4-7
海底勾配と天端高等の関係
参考
図4-4-14
3
簡易算定図
消波工を設けた場合の天端高の低減率
算定した防潮堤の天端高が、背後地の保全対象等からみて調和がとれない場合は、
消波工を設置して天端高を低くすることができる。
(1) 密着型消波工を設置した場合(消波工付防潮堤)
①
打ち上げ高、簡易算定図による方法に対する低減率
消波工の天端幅、天端高が表4-4-8を満足する場合は、経験的に打ち上げ高、
簡易算定図による方法によって求められた必要高を70%まで低減できる。
参考
表4-4-8
防潮堤の天端高を低減しうる消波工の条件
消波工の天端厚
消波工の天端高
ブロック2個並び
0.8hc 以上
ブロック3個並び
0.7hc 以上
ブロック4個並び
0.5hc 以上
ただし、hcは、打ち上げ高、簡易算定図による方法によって求めた防潮堤の天端高
の70%に相当する高さ(m)
②
越波流量による方法に対する低減率
消波工を設置した場合の越波流量推定図は、図4-4-12のとおりである。消
波工を設けると、図4-4-11の消波工無の場合に比べて天端高を低減できる。
図4-4-12の場合は、天端においてブロック2個並びとし、消波工から防潮堤
の天端高までの距離を0.1H’ 0程度にしたときのものである。また、図4-4-1
5は、天端ブロックの個数を変化させたときの防潮堤の必要高の変化を示したもの
である。
図4-4-15
ブロック個数による必要高の変化
h:堤脚水深(m)
hc:水面上の天端高(m)
(2) 遊水部付消波工を設置した場合(越波流量による方法に対する低減率)
遊水部付消波工は、防潮堤の前面に距離を離して消波工を設置したもので、密着型
消波工より越波を抑制することができる。既設防潮堤の天端高を嵩上げせずに越波を
抑えたい場合に適しているが、採用に当たっては既往の調査、研究成果を参考にする
か、必要に応じて水理実験を行うことが望ましい。また、遊水部における水位上昇や
消波工の断面増加による経済性を考慮する。
参考
なお、間辺ら(1986)によると、消波工の設置位置や形状が所要の条件を満足する
場合は、越波流量推定図の図4-4-12より求められた密着型消波工を設置した場
合の必要高80%程度まで、低減できるとしている。
4
波返工を後退させた場合の換算天端係数
図4-4-16(合田・岸良ら、1976)は、波返工を護岸前面から後退させたときの
換算天端高係数の変化を示したものである。これによると入射波高の5倍程度後退させ
ることにより、護岸の所要天端高を約半分程度に抑えることができる。ただしこれは一
実験結果であり、実際の設計にあたり設計条件が実験条件と大きく異なる場合は、水理
模型実験等を行い決定することが望ましい。
図4-4-16
(出典)漁港海岸事業設計の手引
4-4-1-5
波返工を後退させた護岸の換算天端係数
(公社)全国漁港漁場協会
防潮堤の断面
4-4-1-5-1
防潮堤の表のり勾配
4-4-1-5-2
防潮堤の天端厚
4-4-1-5-3
防潮堤の裏のり勾配
4-4-1-6
防潮堤の安定の検討
4-4-1-6-1
防潮堤の安定計算に用いる荷重
H25.11
参考
1
単位体積重量
堤体自重の算定等に用いる各種の単位体積重量は、次の数値を標準とする。
無筋コンクリート(試験を行わないで用いる場合)
23kN/m 3
割石・玉石
18kN/m 3
清浄な砂または砂利
18kN/m 3
清浄な砂または砂利を多量に含む透水性の低い砂質土
18kN/m 3
硬質粘土、粘土を多量に含む砂質土
17kN/m 3
軟質な有機質以外またはシルト粘土
16kN/m 3
海水
2
上載荷重
2
上載荷重
10.1kN/m 3
防潮堤の上載荷重は、天端被覆工の利用状況等、現地の状況に応じて設定することが
望ましいが、標準的な値は以下のとおりとする。
常時
5kN/m2
地震時
2.5kN/m2(常時の 1/2 とする)
(出典)漁港・漁場の施設の設計の手引
3
(社)全国漁港漁場協会
H15.10
背面土圧
土圧の算定は、砂の含有量が 80 %以上の場合は砂質土、80 %未満の場合は粘性土と
して、次により算定する。
(1) 砂質土の土圧
砂質土の土圧は、クーロンの式によって算定する。
クーロンの式により砂質土の土圧を算定する場合、内部摩擦角φ、壁面摩擦角δ等
を求める。内部摩擦角φと壁面摩擦角δは次の方法による求める。
①
砂質土の内部摩擦角の決定方法
砂質土の内部摩擦角は、三軸 CD(圧密排水)試験によって求められる。しかし、
三軸試験に供する砂質土の不撹乱試料の採取は、技術的に難しく多額の費用を必要
とする。このため、設計に用いる砂質土の内部摩擦角は、標準貫入試験の N 値か
ら推定する場合が多い。内部摩擦角を N 値から求める際、次式より推定する。
φ  25+3.2
100 N
70  p v 0
'
ただし、φ:設計に用いる砂質土の内部摩擦角(゚)
N:標準貫入試験より得られる N 値
pv0':標準貫入試験の N 値を測定したときの有効土がぶり圧(kN/m2)
②
砂質土の壁面摩擦角の決定方法
通常、壁面摩擦角は± 15 ゜の値を用いる。
(2) 粘性土の土圧
地表面が水平な場合に直立壁に作用する主働土圧強度は、次の式によって計算する。
本式では、土と壁面の間に働く粘着力は無視しており、崩壊面が水平面となす角度は
45 °である。