氏齊藤春海石黒和彦株式会社セブン銀行株式会社野村総合研究所取締役常務執行役員 P r o f i l e /K az uhiko 専務執行役員 P r o f i l e /Ha rumi Is hig ur o Saito 1980年三和銀行（現三菱東京UFJ銀行）入行。1998年システム部次 1982年野村コンピュータシステム（現野村総合研究所）入社。ITプ長。2001年ユーフィット（現 TIS）出向、取締役。2004年 UFJIS（現三菱ロジェクト推進部長、ECソリューション開発部長を経て、2002年に UFJインフォメーションテクノロジー）出向、取締役。2006年同社出向、 e-ナレッジ事業本部長。2004年執行役員証券システム事業本部副常務取締役。2009年セブン銀行入行、執行役員システム部長。2010年本部長に就任。情報技術本部長を経て、2009年4月より金融システ取締役執行役員システム部長。2013年より取締役常務執行役員。ム事業本部長。2010年4月より常務執行役員、2015年4月より現職。現金を出し入れする際、コンビニのATMの活用が当たり前の選択肢になって久しい。便利な場所で365日、 24時間、安定稼働している安心感が、利用者を増やし続けている。本来であれば、銀行にとって他行は競合他社。しかし、ATM事業で差別化を図るセブン銀行にとっては共存共栄の相手。他行とともに、ATMの進化をどう図っていくのか、セブン銀行の取締役常務執行役員　石黒氏に語っていただいた。石黒もともと当社は、「セブン-イす。それが、コンビニですぐに引きレブンにATMがあったらいいな」出せるようになったことで、お財布というお客様の声から生まれた銀行にたくさんお金を入れておくこと齊藤セブン銀行は、今年で15年です。今では、セブン-イレブンのほも、また家に置いておく必要もな目を迎えられます。ATM事業に特ぼ100％にATMが置いてあります。く、その都度下ろせばいいんだ、と化したユニークなサービスから開 ATMは、セブン銀行が開業するいう考え方に変わっていったと思い始され、現在、国内のATMの台数ずっと前から銀行の店舗内にあり、ます。少し大げさに言うと、新たなは2万台を超える規模になっていまそこで、お客様はお金をおろしてい需要をつくったということでしょす。年間の利用件数も7億件を超えました。また、その回数も、月にうか。ると聞いています。 1回か2回が一般的だったと思いま齊藤特に若い世代は、新しい行動 ATM事業を柱に展開 2 野村総合研究所　金融 ITナビゲーション推進部　©2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. パターンに順応します。野村総合研方は必ず動いている仕組みにしてい銀行からいただいています。つまり究所が行った調査では、現金の引きます。 ATMを使っていただく最終のユー出しにおいて最もよく利用する方法齊藤 ATM自体も進化しているんザーと提携銀行の両方がお客様でとして、コンビニのATMを挙げるですよね。す。したがって、提携銀行とウイ人が、20代、30代に高くなってい石黒第1世代は、2001年から稼ン・ウインの関係にならないと事業ます。また、50代、60代にもコン働したもので、コンビニの店舗には成り立ちません。そういう意味ビニのATMの利用者は広がってい置けるように小さく設計し、機能をで、共存共栄が一番大切なんです。ることが伺える結果が出ています。絞った画期的なものでした。しかもちろん、提携金融機関のカード石黒便利であるという側面が大きし、スピードはそれほど速いものでが利用できることだけが共存共栄でいと思いますが、ATMの稼働が安はありませんでした。普通であれはありません。ATMでのサービス定しているという信頼感も、お客様ば5～6年使うと思いますが、3～を充実させたり、セブン-イレブンに受け入れていただいた要因だと思 4年で見切りをつけて、2005年かを巻き込んで提携金融機関と一緒にいます。この14年間、大きなトラら第2世代に替えました。スピードキャンペーンをやったり、協働でブルはほとんどありませんでした。が約4倍になり故障率も下がりまし ATMを設置する活動も共存共栄の ATMにお金がなくなって引き出せた。また、グループで発行している考えのもとに成り立っています。なかった、というケースも少ない電子マネー「nanaco」のチャージ齊藤セブン-イレブンとコラボしです。もできるようにしました。た企画には、どのようなものがあるサンドイッチを買いに行ったら、第3世代は2010年から入れ始めんですか？売り切れていた。そういう欠品ロています。このスピードは、第2世石黒例えば、提携金融機関で新規ス、機会ロスを避けるために、セ代の約2倍になりましたし、省エネに口座を開設された方や給与振込口ブン-イレブンは努力をしてきましの対応を進めることで、使う電気を座を指定された方に、セブン-イレた。ATMもそれと一緒で、いつ半分ぐらいに抑えられるようになりブンの商品の引換券を発行すると行っても動いているし、お金が出てました。いったキャンペーンがあります。くるようにしています。そうした安また、地方銀行から紹介いただい心感の積み重ねが利用につながってた遊休地に、セブン-イレブンとそいると思います。他行と共存共栄を図る銀行齊藤システムそのものが安定しての銀行の支店を一緒に出店したり、銀行の広い敷地の駐車場にセブン- 動き、また現金を切らさないように齊藤セブン銀行の経営ポリシーのイレブンを出店させていただくことするために、どのような工夫をされ中に「共存共栄」という言葉が使わもあります。これにより、お客様のているのでしょうか。れています。120行以上の銀行と利便性向上と相互送客がはかれると石黒システム面ではかなり堅牢な提携していると聞いていますが、同考えています。システムをつくっています。普通、じ銀行同士ですので、バッティング ATMについては、更に共存共栄銀行は法人にお金を貸して、それがするエリアも当然出てくると思いまを進めていきたいと思っています。返ってこないと不良債権で倒れてしす。そういう中で一番考慮されてい当社のATMは提携金融機関との共まいますが、当社は、システムが止る点をお聞かせいただけますか。同ATMです。自行のATMだと思っまるとお金が一銭も入ってこなくて石黒提携金融機関のカードが当社ていただいて、いろいろサービスが倒れてしまうという特殊な銀行でのATMで使えることが当社の顧客できるということをもっとアピールす。ですから、ATMと提携金融機サービスです。例えばATMでお客して伸ばしていきたいと思っていま関をつなぐシステムは東西で常に稼様が提携銀行のカードを使った場す。例えば、セブン銀行のATMの働しており、大地震が発生しても片合、我々はATM受入手数料を提携入出金待ちの際に表示される画面な Financial Information Technology Focus 2015.4 3 2012年10月にATM運営会社を買います。円安の影響もあり、銀座に収しました。行きますと、中国や台湾からの旅行東南アジアでのビジネス展開も随者を多く見受けます。そういう旅行分前から考えていました。東南アジ者に対してのATMのニーズも多々アでも日本で培ったノウハウを十分あると思うんです。その辺りはどんに生かせると思っていましたが、東なサービスをお考えでしょう。南アジアの国々は、規制、特に外国石黒セブン銀行では2007年か資本の金融に対する規制が厳しく、ら、海外のカードの取り扱いを始めどで、提携金融機関はカードローンなかなかうまくいかなかったというました。最初はなだらかな伸びでしや投資信託の宣伝をしていますが、ことがあります。いろいろと検討すたが、ここ数年で３倍ぐらいの量にそういった宣伝だけではなくて、る中で、インドネシアで、条件が適なってきています。2013年度が ATMで申込みが完結できるといっしたパートナーが見つかりました。 240万件、14年度は400万件をたところまで活用していただけたらパートナーと組んで一からネット超えると思います。いいなと考えています。ワークを広げていく取り組みを今利用件数の伸びは嬉しいことですまた、昨年、銀行事務の受託業務やっているところです。が、一方、海外カードは結構偽造がを営むバンク・ビジネスファクト齊藤海外の国では、紙幣が日本ほ多いんです。スキミング対策などのリー（BBF）という会社を設立しど綺麗ではないため、ATMでの読セキュリティへの投資が必須になっました。銀行の事務は本当に多種多み取りが大変である、という話をよてきます。また、今後はICカード様なため、人手がかかるものが多いく聞きます。の国際標準規格はEMVになりますですし、繁閑差が激しいという特徴石黒東南アジアでは、偽札の問ので、それへの対応もしていく予定もあります。ですので、そういう事題もあり、入金できるATMは少なです。務処理をBBFに出していただくこいです。日本のようにリサイクル型齊藤訪日客は、積極的に地方へもとで、事務面での共存共栄のサービのATMにしてしまうと、入金され観光に行かれてますね。スにつながるのではないかと考えてた偽札が、そのまま出金にまわって石黒地方銀行から、外国人の方がいます。しまうことになり、そうなると当然来られても日本円を引き出すATM 信用問題にもなります。ですので、がない、という話をよく聞きます。その辺りは慎重にやらないといけまそこは、私どもが協力できるところせん。だと思っています。また、東南アジアでは、機械から実際、飛騨高山にある十六銀行高齊藤海外戦略も積極的に進めていお金が出てくるのは全然構わないの山駅前支店に私どものATMを置からっしゃいますね。2012年にはだけれども、機械にお金を入れるこせていただきました。普通、自行の米国のATMの運営会社を買収されとにすごく抵抗があるんです。支店に他行のATMを置くことは考たり、2014年にはインドネシア齊藤取られてしまう、という感覚えられないと思うんです。お客様ののATMネットワーク会社と合弁会があるんですね。ニーズに応えようとする十六銀行さ社を設立されました。石黒ですから、ほとんどが出金専んの大英断だと思います。石黒米国はセブン-イレブン発祥用です。ですが、やはりリサイクそのほかにも、地方の空港にも国の地で、セブン-イレブンが至る所ル型のATMはすごく効率的ですの際便が発着しますので、地方銀行かにありますし、外国資本に対する規で、その辺りは現地の事情と併せてらのご紹介で、空港でのATMの設制が少ないということもあり、ま考えていきたいと思っています。置を進めています。ずは米国で始めようということで齊藤昨今、訪日の旅行者が増えて齊藤日本に住む外国人のための海 ATM事業を活かした海外戦略 4 野村総合研究所　金融 ITナビゲーション推進部　©2015 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. の中からなくなって全部電子化され外送金のサービスなども実施されていますが、その辺りのニーズも高く新世代のサービスに向けてるかというと、それもないと思っています。ですので、ATMでの現金なっているのでしょうか。石黒おかげさまで海外送金もかな齊藤セブン銀行は、お客様のニーの出し入れの事業は続くと思っていりの勢いで伸びています。サービズに、更に利便性を加えたサービスます。現金の流通が減ると、利用件スを開始したのが2011年3月で、を常に考えていらっしゃいます。3 数が少なく、採算の合わないATM ちょうど東日本大震災の起こった月月11日には、また新たなサービスは徐々に撤去されていくかもしれまでした。当時は、日本から帰ってしとして、新しい移動ATM車両を披せんが、その時に我々が現在以上のまう外国人が多くいましたので、ど露されました。シェアを持ち、最後のとりでとしうなることかと思いましたが、順調石黒東日本大震災の後、ATMがて、現金の決済を守っていかないとに推移しています。昨年度が39万稼働するまでに時間を要する地域にいけないと考えています。件、今年度は60万件を超えてくる移動ATM車両を3台派遣し、被災ただ、現在のATMは、現金のと思いますので大体5割増しのペー地のお客様の生活を支援しました。出し入れができる、電子マネーのスで伸びています。その時に寄せられた意見を反映したチャージができるといった機能がメ齊藤どこの国の方の利用が多いんものが、この度できあがった新移動インですが、必ずしも、これからはですか。 ATM車両です。そうではないかもしれません。コン石黒圧倒的にフィリピンが多いで今までの移動車両では、お客様がビニという今や日本の社会インフラす。フィリピンは、海外で働いて母階段をのぼって車両の中でATMをになった場所に置いてある箱で現金国に送金するという比率が高く、利用する形態でしたが、ATMを車の出し入れ以外に何ができるかとい GDPの10％に相当するといわれて両の外に設置できるようにし、高齢うことも含めて、幅広に考えたいといます。しかも、フィリピンの方々者や体の不自由な方にも利用しやす思っています。は毎月1回、まめに送金されるのくしました。また、ATM専用バッ是非、その辺りは、NRI さんにで、利用件数はかなり多いです。テリーを搭載したり、従来より小型もご協力いただきたいと思ってい齊藤私は海外送金をしたことがの車両にすることで、場所を選ばずます。ないんですが、銀行の振り込みににサービスが提供できるように改良齊藤是非、協力させていただきた比べてかなりお安くできるのでしょを行っています。いと思います。うか。 3月14日から仙台で開催され本日は、貴重なお話をありがとう石黒そうですね。銀行の窓口でた国連防災世界会議でも、新移動ございました。送金する場合に比べると、安いし ATM車両を披露し、お陰様で好評早いと思います。セブン銀行に口座を得ました。をつくって海外送金の契約をしてい齊藤 A T M の利便性が増す一方ただければ、24時間、365日、いで、いろいろなテクノロジーが生まつでも送れます。利便性は高いと思れてきており、電子マネーが若者をいます。中心に普及したり、幾つか新しい決齊藤銀行の窓口が空いている時間済の波のようなものも来ています。に送金に行かれない人も多いので、石黒現金の需要がどこまであるのセブン-イレブンなど身近な場所でか、現金を下ろすという行為が未来時間帯を気にせず利用できるのは本永劫続くのかというと、決してそう当に便利でしょうね。ではないと思っています。一方で、（文中敬称略） 10年後、20年後に現金がこの世 Financial Information Technology Focus 2015.4 5