ハロウィンの夜 大石久美 明日からは十一月。十月三十一日の夜、玄関の前が騒がしい。玄関を開けると、十五、六人の子 供が集まっていた。そして、そのまま、六、七人の子が家に入ってきた。 よく見ると女の子は少し化粧し、髪にヴェールを被っている。仮装をしている子も何人かおり、 にこ に こ と し て 立 っ て い る 。 子供達に聞くと「ハロウィンだから」と口々に言う。ハロウィンは聞いた事はあるけれど、何故 こんなに押し掛けてきたのか訳が解らない。しかし子供達は全員にこにことして、何か期待をして いる ら し い 。 「ハロウィン。おばさんは初めて聞くので解らないのよ」と言いながら、お菓子の買い置きが無い か嫁の和子さんにも探してもらったが、折悪しくあまり数が無い。とりあえず小さな子供達にクッ キーなどを配って、「この次には用意しとくからね」と退散してもらった。 翌日の昼、玄関のベルが鳴り、中年の女の人三人が立っていた。 「昨日は、子供達が大勢押しかけてすみません」 。同じマンションの下の階の住人と言う。 恐縮しながら、大きな林檎を二個置いて行かれた。 ハロウィンとは? 広辞苑で調べようと思ったのだが、私の持っている広辞苑は、昭和六十年の 第三版のものである。古いけれど、普段は充分これで間にあう。しかしハロウィンは出ていない。 小さな電子辞書で調べると、「諸聖人の祝日の前夜(十月三十一日)に行われる祭り。スコットラ ンド・アイルランドに起源を持つアメリカの祝い」と出ている。 来りなのか。 しきた な る ほ ど 、 ア メ リ カ の 仕 私が若い頃通った教会は、メソジストで、プロテスタントの一派で敬虔主義だったように思う。 その頃、同居していた姑が、新興宗教に凝り、異常な行動に出るようになったので、若かった夫は、 家の中での一切の宗教を禁じ、私の教会行も行かれなくなった事がある。 その姑も夫も、とっくに現世の人ではない。 む く さす 腫んだ足を摩りながら、春を待って 暖かくなったら、ハロウィンの事を調べてみよう。薬害で浮 いる 私 で あ る 。 42 展景 No. 77 展景 No. 77 43
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