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NPO法人 HERO
RYU PROJECT 佐藤 真実(さとう・まみ)氏
年間250回、幼稚園や保育園へ。子どもたちの歓声と
笑顔に囲まれるオリジナルヒーロー「破牙神(ばきし
ん)ライザー龍」。2014年には無料のライブショーを石
巻市で開催し、そのクオリティの高さに子どもも大人
も感動した。宮城県生まれのヒーローが被災地の子
どもたちに夢と勇気を与え続けている。
来場者満足度が高いライブショー
「想像していたよりもすごいクオリティで感動しました。これほど作り込んだものを身近に見られること
はなかなかありません」(塩釜市/30代男性)
「ウチの子は、龍が幼稚園に来る日を大きくカレンダーに書いて楽しみにしています。これからも子ども
たちを元気な笑顔にしてください」(美里町/20代女性)
「りゅう、かっこよかったよ。ありがとう♥」(石巻市/10歳未満女子)
「ようちえんにきてください。ともだちになろうね」(栗原市/10歳未満男子)
「忘れていた大切な〈あきらめない気持ち〉を、このショーで龍に思い出させてもらいました。素晴らしい
贈り物をありがとう。息子と娘も目に涙をいっぱいためながら必死で応援していました」(石巻市/40代男
性)
7月に宮城県石巻市で開催された「破牙神ライザー龍 スーパーライブ2014」。2日間のステージに693人
の応援メッセージが寄せられた。来場者総数は1,533人だから、アンケートの回収率は45 %を超えてい
る。この種のイベントとしては異例の高率だ。満足度も96%と高い。
一分の隙もない完璧なキャラクター造形。プロのスーツアクターが演じる本格的なアクション。テレビで
おなじみのヒーローに勝るとも劣らないクオリティの高さに、来場した親子がそろって魅き込まれた。しか
7月12日(土)、13日(日)の2日間で計1,533名の親子
がスーパーライブを楽しんだ
もボランティアスタッフによる全席無料の公演だ。
カッコいいヒーローショーに「本物だ!」
「ヒーローに会いたい!」──被災地の子どもたちの声を届ける1本の電話ではじまったRYU
PROJECT。2011年10月から、子どもたちの笑顔を取り戻し勇気を届けるため、幼稚園や保育園な
どに無償で出向き、握手会や撮影会、クイズ大会、交通安全教室など、さまざまな内容の公演を続
けている。
すでに前回の取材時(2012年5月)に公演実績はおよそ200回を数えていたが、2014年はさらに
増えている。今年初めて開催したスーパーライブは、悪役のキャラクターデザイナーや声優、歌手
の協力も仰いだ本格的なヒーローショーだ。
RYU PROJECTを進める「NPO法人HERO」のスタッフでMC(司会)役の佐藤真実さんは「子ども
たちはショーを見て『本物だ!』って言うんですよ。ニセモノを見たことあるのかわからないですけ
衣装を着てマイクを握るMCの佐藤真実さん。専門学校時代に
ボランティアでRYU PROJECTを手伝い、そのままスタッフに
なった
ど」と笑う。「悪役が怖くて泣いちゃう子も、泣きながら応援してくれる。そういうのを見ると、『ちゃん
と伝わってるんだな』と思います。夏のスーパーライブの観覧抽選に漏れた子たちが300人以上い
るので、幼稚園や保育園の訪問も続けつつ、2015年はできれば2回開催したい。みんなでスポンサー探しなどに奔走しているところです」
(C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved.
見せてあげられるのはオレたちしかいない
スーパーライブ開催のきっかけは、気仙沼へ公演に行ったRYU PROJECTのメンバーが、父兄
からこんな話を聞いたこと。
「テレビヒーローのライブツアーが毎年、仙台にやって来て、テレビで盛んに宣伝するので、子ど
もたちは見に行きたがる。でもライブツアーの観覧料は数千円。気仙沼から親子4人で行けば、昼
夜の食事代も含めて3~4万円の出費に。連れて行ってあげたいが、仮設住宅暮らしでは、とても
そんな余裕はない」。
テレビヒーローのライブツアーと同レベルのショーを見せてあげられるのは、オレたちしかいない
──RYU PROJECTのメンバーは動き出す。スタッフ、キャストはノーギャラのボランティアでも、会
場、舞台設営、音響、照明、広報などの費用に300万円程度はかかる。幸いなことに大口のスポン
幼稚園や保育園ではクイズ大会や撮影会、握手会などで子ど
もたちとRYUは仲良くなる。10回以上訪問しているところも
サーが名乗りを上げ、結果的に8つの協賛企業・団体の支援をもらうことができた。
チラシを2万枚印刷して、幼稚園、保育園での公演で子どもたちに手渡す。あっという間になくなり、2回増刷して7万枚を配った。
スーパーライブで初めて「破牙神ライザー龍」を見た子どもたちも多い。黄色い大歓声の応援と満足度の高さに、スーツアクターとしても役者冥利に尽
きると思いきや──。「僕らは子どもたちに申しわけない気持ちでいっぱい」と、スーツアクター歴30年を越すRYU PROJECTチーフ・プロデューサーは
慎ましい。「現役バリバリの頃はもっとカッコよかったのに! 精一杯やるだけです」MCの佐藤さんは「日々、そう言ってるんですよ」と笑う。
「アクションは『約束された真剣勝負』。手を抜くな。殴る時は顔の正面から行け。それをよけて受けるから本気の格闘に見える」。先輩たちの教えを
忠実に守り、体現するベテランのプロの矜持(きょうじ)。それが子どもたちを魅了している。
女の子も熱狂するイケメン・ヒーロー
「破牙神ライザー龍」は宮城県生まれのヒーローだが、県外でも活躍している。昨年、岩手県大
船渡市の父兄から「子どもたちに会って欲しい」と電話があった。事務局を置く仙台から大船渡まで
は車で3時間以上。ガソリン代もかかるし、どうしようかスタッフは迷ったが、子どもたちに元気に
なって欲しいと切望する父親の真剣な声に動かされた。それ以来、大船渡の子ども園には何度も
通っている。福島県国見町の幼稚園、保育園にも呼ばれた。今や宮城県のヒーローを超え、被災
地のヒーローになりつつある。
普通、ヒーローに熱狂するのは男の子だが、「破牙神ライザー龍」は女の子にも人気が高い。
「最近の子はマセてるのか、イケメンとして好きみたいです」と笑う佐藤さん。
「男の子は『龍になりたい』と言ってくれる子が多くて。わたしの着ている衣装が『すごくかわい
い、お姉さんみたいになりたい』と言ってくれる女の子も。子どもたちの憧れや目標のキャラクター
Tシャツや段ボールクラフト、スーパーライブDVDなど、破牙神ラ
イザー龍グッズの数々。今後はキャラクタービジネスの展開を
目指す
になっていることが嬉しいですね」
「NPO法人HERO」に今のところ常駐スタッフはいない。スーツアクターも各々仕事の合間をやりくりして公演に出向く。今後の課題は雇用を生み出せ
る経済基盤づくり。遊園地などでの一般公開では、ショーを年間契約で販売している。マンガ化が進行中で、電子書籍として出版される予定。肖像権や
意匠権を販売するキャラクタービジネスに活路を見出したい。LED電球や充電ライト付ラジオなどのパッケージやパブリシティに「破牙神ライザー龍」が起
用された。
今日も「破牙神ライザー龍」は子どもたちに囲まれている。RYU PROJECTメンバー15名の気持ちを奮い立たせるのは、こんな声だ。
「3歳になった息子は東日本大震災の直後に生まれました。何もなくなってしまった中での出産でした。たくさんの人々の支えのもと、生まれてきた息
子には特に、やさしく、たくましく育って欲しいと願っています。これからも子どもたちに夢と勇気を与える活動を頑張ってください」(石巻市/30代女性)
2014年10月取材
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