第 32 回神奈川県理学療法士学会 地域症例リレー [ 経過一覧表 ] 70 歳代 男性 左放線冠梗塞 右片麻痺 急 性 期 回 復 期 生 活 期 発症日∼ 28 病日 28 病日∼ 158 病日 158 病日以降 〈 終 期 〉 〈 初 期 〉 〈 初 期 〉 〈 終 期 〉 安静時 BP150 台 ⁄ 80 台 P80 台 安静時 BP140 台 ⁄ 80 台 P80 台 運動時 BP190 台 ⁄ 100 台 P110 台 運動時 BP180 台 ⁄ 90 台 P100 台 〈 初 期 〉 理学療法評価︵ 概要 ︶ Br. stageⅡ-Ⅱ-Ⅱ Br. stageⅡ-Ⅱ-Ⅲ 下肢 Br. StageⅡ 下肢 Br. StageⅢ~Ⅳ Br. StageⅡ-Ⅲ-Ⅲ 座位保持:監視 座位保持:自立 座位保持:自立 座位保持:自立 座位保持:自立 立位保持:軽介助 立位保持:監視 立位保持:監視 立位保持:自立 立位保持:自立 起居動作: 麻痺側管理 口頭指示にて可能 起居動作:自立 起居動作:修正自立 起居動作:自立 起居動作:自立 歩 行: 長下肢装具使用、 中等度介助 歩 行: 長下肢装具使用、 中等度介助 歩 行: SHB 使用、T-cane 歩行中等度介助 歩 行: SLB 使用、T-cane 歩行修正自立 歩 行: ( 自宅内 )杖使用、 装具未装着で自立 ( 通所先・屋外 ) 杖と装具装着にて 見守り 10m 歩行: 38.9 秒 ⁄ 36 歩 10m 歩行: 15.1 秒 ⁄ 21 歩 連続歩行:30m 高次脳機能は検査上 n. p 連続歩行:100m 10 m歩行: ( 屋内 )17.8 秒 ⁄ 24 歩 ( 屋外 )21.4 秒 ⁄ 24 歩 FIM:70 点 FIM:94 点 FIM:119 点 FIM:74 点 FIM:86 点 〈 終 期 〉 *介入開始から 短期間であり 初期評価のみ # 1 バイタルのコントロール不良 # 1 歩行時、右下肢への重心移動不十分 # 2-3 右大殿筋、中殿筋筋緊張低下 # 2 肩甲帯~腰背部の筋緊張亢進 # 4 # 3 歩行中等度介助 # 2 分回し歩行による、歩行効率の低下 ( 右足部の引っかかり ) # 1 左放線冠梗塞、右片麻痺 問 題 点 右腸腰筋筋緊張低下 # 5立位時の右大腿四頭筋、ハムストリ ングス筋緊張低下 # 4 階段昇降重介助 # 6 介助歩行 # 6 自宅が団地 2 階 # 7-8 起立着座、トランスファー軽介助 # 5 危険認識・病識低下 目 標 ( 4W ) 起立着座、トランスファー自立 (4M) 装具を使用し屋内 T-cane 歩行自立 ( 2M) AFO 装具+杖自力歩行 (5M) 家族介助での階段昇降・屋外 T-cane 歩行軽介助 ( 6M ) 屋内杖歩行、ADL 自立 目標達成状況 ( 4W ) トランスファー自立、立位動作、 監視~軽介助 引き継ぎ事項 等 歩行機能と能力の向上 長下肢装具のカットオフ できる ADL からしている ADL へ 屋外 T-cane 歩行軽介助以外達成 労作時の BP 上昇が著明で常に注意を要す。 病識・危険認識低下により装具を使用しない で歩行してしまう可能性がある。右下腿・肩 甲帯~腰背部の筋緊張が亢進し、麻痺側足関 節の可動域低下、疼痛出現、転倒のリスクが ある。 # 3 屋外歩行時の息切れ、血圧上昇 # 4 自宅周囲の屋外歩行困難 ( 3 ~ 4M ) 坂道( 30 m )上り下りが、 息切れなく歩ける ( 6M ) 自宅周辺の歩行ができる *介入開始から短期間であり対応中 【 今後の課題 】 デイケア利用開始時に、目標が不明瞭な 状態であった。地域で暮らしていくこと を見据えたゴール設定、目標・経過等の 情報を引継ぐことが、円滑な支援をする 為に重要。本症例は、体調やバイタルに 配慮し、家族や社会資源を活用し、無理 なく外出できるよう提案していく必要が ある。 地域症例リレー 急 性 期 横浜総合病院 リハビリテーション科 比留木 由季 【 症例紹介 】 〈 性別 〉男性 〈 年齢 〉70 代 〈 疾患名 〉左放線冠梗塞 〈 合併症 〉HT、腎不全(透析) 〈 現病歴 〉発症日夕方、犬の散歩中に右半身脱力により転倒し救急搬送。 【 初期評価 】機能評価 〈 Br. stage 〉Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ 〈 MMT 〉左下肢 5 〈 筋緊張 〉右肩甲帯、骨盤帯周囲筋、体幹筋低下 姿勢評価 〈 座位 〉監視。体幹左側屈、骨盤右後方回旋位。 〈 立位 〉軽介助。体幹左側屈、骨盤左側偏移、右後方回旋位。 動作評価 〈 TCT-s 〉61 点 〈 起居動作 〉麻痺側管理口頭指示にて可能。 〈 起立 〉軽介助。離殿時、体幹左側屈、右骨盤後方回旋。 〈 歩行 〉長下肢装具使用、中等度介助。右 Swing 外転、外旋。右 IC 骨盤右後方 回旋、左骨盤後傾。右 Mst 時骨盤右偏移、左遊脚時間短縮。 〈 FIM 〉74 点 【 問 題 点 】 〈 健康状態 〉# 1 左放線冠梗塞、右片麻痺 〈 身体 〉# 2-3 右大殿筋、中殿筋筋緊張低下 # 4 右腸腰筋筋緊張低下 #5 立位時の右大 腿四頭筋、ハムストリングス筋緊張低下。 〈 活動 〉# 6 介助歩行 # 7-8 起立着座、トランスファー軽介助 【 理学療法目標 】 〈 4W 〉起立着座、トランスファー自立 〈 2M 〉AFO 装具 + 杖自力歩行 〈 6M 〉屋内杖歩行、ADL 自立 【 理学療法プログラム 】 ブリッジ、キッキング、プレイシング、基本動作練習、KAFO 使用での介助歩行練習 【 治療経過 】 〈 2 日 〉リハ開始、安静度ベッドアップ 〈 5 日 〉安静度端座位 〈 8 日 〉安静度解除、KAFO 使用介助歩行練習 〈 16 日 〉BRSⅡ→Ⅲ 〈 25 日 〉トランスファー自立 〈 29 日 〉転院 【 終期評価 】機能評価 〈 Br. stage 〉Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ 〈 筋緊張 〉肩甲帯、骨盤帯周囲筋、体幹筋低下 姿勢評価 〈 座位 〉自立 〈 立位 〉監視。骨盤左側偏移。 動作評価 〈 TCT-s 〉100 点 〈 起居動作 〉自立 〈 起立 〉自立。右骨盤後方回旋。 〈 歩行 〉長下肢装具使用、中等度介助。右 Swing 時左膝関節屈曲減少。 右 Mst 時骨盤右偏移。 〈 FIM 〉86 点 【 目標達成状況 】 〈 4W 〉トランスファー自立。立位動作監視~軽介助。 【 考 察 】本症例は、初期評価時右下肢 BRSⅡ、TCT-s61 点、座位保持良好、手すり使用にて立位可 能などの因子より、Veerbeek、前田、二木らの予後予測研究から 6 カ月後に屋内歩行自立 獲得と予測した。犬の散歩など活動範囲の広い本症例の背景より、自宅の他、病院や商業 施設など外出先でも歩行することを想定し、効率のよい歩行を獲得することが望ましいと した。そのため、運動機能の回復が望まれる 4 ~ 6 週間にあたる急性期では、長下肢装具の 使用と麻痺側の振り出しを介助し踵接地を作ることでの歩行練習を中心に、筋緊張やアラ イメントの改善を重視したリハビリを展開した。約 3 週間の介入で麻痺側随意運動の出現、 歩容の改善を認めた。 【 予後予測 】 〈 4W 〉起立着座トランスファー自立 〈 2M 〉短下肢装具 + 杖歩行 〈 6M 〉屋内杖歩行自立 【 引き継ぎ事項 】歩行機能と能力の向上、装具のカットオフ。ADL できる→しているへ。 地域症例リレー 回 復 期 麻生リハビリ総合病院 リハビリテーション室 中野 友晴 【 症例紹介 】70 歳代男性。脳梗塞(左放線冠)発症、保存的加療。28 病日後、当院へ転院。慢性腎不全に より透析を行う。妻と二人暮らしで自宅は団地 2 階(EV なし) 。 【 初期評価 】 機能評価 〈 バイタル 〉安静時 BP150 台 ⁄ 80 台 P80 台、運動時 BP190 台 ⁄ 100 台 P110 台 〈 Br. Stage 〉Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ 〈 感覚 〉表在覚低下・深部正常 〈 下肢関節可動域 〉n. p 〈 MMT 〉健側下肢 3 ~ 5 〈 筋緊張 〉肩甲帯~腰背部筋緊張亢進(R > L) ・右下肢低緊張 〈 反射 〉足クローヌス + 〈 TUG 〉29.4 秒 〈 10m 歩行 〉38.9 秒 ⁄ 36 歩 〈 連続歩行 〉30m 動作評価 〈 起居動作 〉修正自立 〈 座位保持 〉自立 〈 立位保持 〉監視 〈 歩行 〉中等度介助(SHB、T-cane 使用) 〈 階段昇降 〉重介助 〈 FIM 〉70 点 【 問 題 点 】#1 バイタルのコントロール不良 #2 肩甲帯~腰背部の筋緊張亢進 #3 歩行中等度介助 #4 階段昇降重介助 #5 危険認識・病識低下 #6 自宅が団地 2 階 【 理学療法目標 】 〈 4M 〉装具を使用し屋内 T-cane 歩行自立 〈 5M 〉家族介助での階段昇降・屋外 T-cane 歩行軽介助 【 理学療法プログラム 】 ROMex、神経筋促通 ex、筋力 ex、基本動作 ex、歩行 ex、エルゴメーター 【 治療経過 】28 病日介入開始、51 病日棟内車椅子自立、82 病日 AFO 完成、125 病日家屋評価実施、 138 病日 T-cane・SLB 使用し棟内 T-cane 歩行自立、158 病日自宅退院 【 最終評価 】機能評価 安静時 BP140 台 ⁄ 80 台 P80 台、運動時 BP180 台 ⁄ 90 台 P100 台 〈 Br. stage 〉Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ 〈 感覚 〉正常 〈 MMT 〉健側下肢 5 〈 筋緊張 〉肩甲帯~腰背部筋緊張亢進(R > L) ・右下肢低緊張 〈 反射 〉足クローヌス + 〈 TUG 〉22.7 秒 〈 10m 歩行 〉15.1 秒 ⁄ 21 歩 〈 連続歩行 〉100m 動作評価 〈 起居動作 〉自立 〈 座位保持 〉自立 〈 立位保持 〉自立 〈 歩行 〉修正自立(SLB、T-cane 使用) 〈 階段昇降 〉手すり使用し監視 〈 FIM 〉94 点 【 目標達成状況 】 屋外 T-cane 歩行軽介助以外達成。 【 考 察 】本症例は BP・P が高く、練習時頻回の休憩を要した。病棟と連携し飲水量の徹底を図ると ともに、Dr. へ降圧剤の服用を依頼し、コントロールを図った。歩行練習の頻度を減らし、 エルゴメーター駆動練習を併用したところ、歩行能力は改善した。しかしエルゴメーター においても、BP・P 上昇の為連続 5 分以上行えず、全身持久力向上が図れなかった。結果 として屋外 T-cane 歩行軽介助は達成されなかったと考える。 【 予後予測 】 在宅生活開始 1 ヶ月 SLB、T-cane を使用し、透析(3 回 ⁄ W) ・デイサービス(2 回 ⁄ W)に 通い、ご自宅で安全に生活を送る。 在宅生活開始 3 ヶ月 ドライウェイト管理を継続的に徹底し、BP コントロールを図る。 屋外 T-cane 歩行軽介助となる。 【 引き継ぎ事項等 】労作時の BP 上昇が著明であるため常に注意を要す。病識・危険認識低下により装具を使用 しないで歩行してしまう可能性がある。右下腿・肩甲帯~腰背部の筋緊張が亢進し、麻痺 側足関節の可動域低下、疼痛出現、転倒のリスクがある。 地域症例リレー 生 活 期 介護老人保健施設リハリゾート青葉 菊池 奏恵 【 症例紹介 】 〈 性別 〉男性 〈 年齢 〉70 代 〈 疾患 〉脳梗塞 〈 現病歴 〉脳梗塞を発症。発症翌月より、前院に転院。発症後約 5 か月で退院後、デイケア 週 3 回利用開始。個別訓練は週 2 回介入。現在デイケアとは別日に、人工透析の 為、週 3 回通院。 【 初期評価 】 〈 主訴 〉右手を自由に使えるようになりたい。自宅の生活で困っている事は特にない。 〈 感覚障害 〉左右差なし 〈 Br. Stage 〉上肢Ⅱ 手指Ⅲ 下肢Ⅲ 〈 片脚立位(装具・杖) 〉右 2 秒 ⁄ 左 10 秒 〈 FIM 〉119 点 〈 起居動作 〉自立 〈 座位保持 〉自立 〈 立位保持 〉自立 〈 屋内歩行 〉杖使用し自立。自宅は装具なし。施設・病院等では装具使用。 〈 屋外歩行 〉杖、装具使用、見守り。右遊脚期、右足部引っかかりあり。易疲労。 〈 10m 歩行 〉 (屋内)17.8 秒 ⁄ 24 歩 (屋外)21.4 秒 ⁄ 24 歩 〈 TUG 〉21.0 秒 【 問 題 点 】# 1 歩行時、右下肢への重心移動不十分 # 2 分回し歩行による、歩行効率の低下(右足部の引っかかり) # 3 屋外歩行時の息切れ、血圧上昇 # 4 自宅周辺の屋外歩行困難 【 理学療法目標 】短期目標(3 ~ 4M) :坂道(30m)上り下りが、息切れなく行える 長期目標(6M) :自宅周辺の歩行ができる 【 理学療法プログラム 】 ① 右上下肢関節可動域訓練 ② 右への重心移動訓練 ③ 右下肢ステップ練習 ④ 屋外歩行 【 治療経過 】 〈 発症後約 5 か月 〉当施設でのデイケア利用開始 個別リハビリ介入開始 〈 理学療法開始介入より 2 週間後 〉屋外歩行練習を開始 (今後訪問リハビリの導入も検討) 【 考 察 】対象者は、買い物や、外出の希望があるが、長距離の屋外歩行が困難である。また、人工 透析、デイケアに各週 3 回通っているため、現在は外出の時間が確保しにくい状況にある。 屋外歩行獲得し、地域での活動量を上げることで、デイケア利用回数を減らし、外出可能 な時間を増やすことを考えた。さらに、屋外歩行に自信をつけることで外出、旅行、余暇 活動へ挑戦し、充実した生活を送れるきっかけとなるのではないかと考える。 【 今後の課題 】今回の対象者は、デイケア利用開始時に、目標が不明瞭な状態であった。地域で尊厳をもっ て、自分らしい生活をして行く為に、在宅復帰が最終的なゴールではなく、地域で生活し て行くことを見据えたゴール設定が早期より必要と思われる。目標や、経過等の情報を引 継ぐことも、円滑な支援をする為に重要と考える。 また、本症例は人工透析を実施しており、易疲労やバイタルの変動もみられる。運動時の 体調やバイタルへ配慮することに加え、家族の協力や社会資源を活用し、無理なく外出で きるよう、提案していく必要がある。
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