9. - 大阪府立大学 大学院 工学研究科

9. 応 用 化 学 科 / 化 学 工 学 科 に お け る 安 全
9.1
一般的心得
実験室における事故は
1)不注意
2)安全に対する認識不足
3 ) 実 験 対 象 物 (機 械 , 器 具 , 薬 品 な ど )に 対 す る 無 知 ・
4)各種操作に対する慣れ
から生ずる.
化学系実験室においては薬品の毒性,危険性に関する不勉強や無知などからさまざま
な事故が発生する.
このような知識不足や無知のために,発生した事故による災害を大きくすることも少
なくない.
我々は安全の重要性を再確認し,災害防止のためにできる限りの努力をしなければな
らない.
しかし安全対策は事故の防止措置のみでは充分ではない.事故は万全の対策をしても,
なお起きる可能性がある.
したがって,万一事故が発生した場合の対策についても考慮を払い,被害を最小限に
くい止めるように努力しなければならない.
この「安全の手引」は,このような見地から書かれたもので,日常の練習実験,研究
実験を安全に行うための注意事項を整理したものである.学生諸君はこの程度の安全対
策を熟知して実験を安全に行うよう強く要望する.
9.2
9.2.1
1
防災安全対策
一般的注意
真剣に,誠実に行動すること
練習実験であっても真剣に取り組まなければならないことは当然である.実験には必
ず危険が伴う.いい加減にやった実験では良いデータが得られないだけでなく,事故が
起こりやすい.災害の原因のほとんどは不注意と慣れによる.
2
ものを良く知ること
実験に取りかかる前に,実験装置の操作法,使用薬品の性質,実験の意味などを説明
書や熟練者の指導によってよく知っておくこと.
3
整理,整頓
ごたごたと余計なものがあると事故が起きやすく,事故発生時に災害が大きくなる.
実験装置の周辺を整理しておくこと.特に出入口付近に物を置いてはならない.
113
4
衣服などの注意
きちんとした服装で実験すること.暑くても裸で実験してはならない.化学系の場合,
白 衣 を 着 用 す る 場 合 が 多 い が , 回 転 機 械 (モ ー タ , ブ ロ ワ , ボ ー ル 盤 な ど )を 扱 う 場 合 は
巻き込まれる危険がある.油や薬品で汚れた衣服には火がつきやすい.長髪やびらびら
の衣服も危険である.履物は滑らない,すぐには脱げない靴を履く.特にはしごや踏み
台を利用する場合は注意を要する.
5
保護メガネの着用
体 の 他 の 部 位 と は 異 な り , 目 に 損 傷 を 受 け る と 回 復 不 能 の 損 傷 (失 明 )に 至 る こ と が 多
い.万一の爆発や薬品の飛散によっても異物が目に入らないように,ふだんメガネをか
け て い な い 人 も 実 験 や 作 業 を 行 う 時 に は , 必 ず 保 護 メ ガ ネ (度 の な い プ ラ ス チ ッ ク 製 メ
ガ ネ が 良 い )を か け る 習 慣 を つ け る .
6
無理はするな
常に体調を整え,安定した精神状態で実験を行うこと.決して無理をしてはいけない.
病気,情緒不安定の状態の時,特に事故を起こしやすい.
7
禁煙
実験中に喫煙や飲食をしてはならない.実験に精神を集中して,気を散らすようなこ
とはすべて避けなければならない.
8
後始末も実験のうち
実験が終了したら必ず後始末をする.すぐに洗えば簡単にきれいになる汚れも,日を
置くととれなくなる.電気,ガス,水道の元スイッチ,元栓を閉めることは勿論である.
最終退室者は,それらの確認を行うと共に,戸締まりをする.
9
単独実験の禁止
夜間や休日は勿論,それ以外の時でも,一人で実験をしてはならない.小さい事故も
一人だとあわてて大事故に拡大させてしまう.
10
救急薬品などの設置場所と使用方法
安全用具の必要な場合は,面倒くさがらずに着用する.消火器,救急薬品置場と取扱
方 法 を 良 く 知 っ て お く こ と (学 科 毎 の 付 録 資 料 参 照 ).
9.2.2
1
薬品類の取扱
薬品類の性質,危険性を知ること
使用する個々の薬品の性質をよく調べておくこと.実験室で使用する薬品はすべてが
その使用量・取扱方次第で,事故につながる潜在的危険物質となり得るものと考えて,
常に細心の注意を払って取扱うように心がけるべきである.特に物質の種類毎の共通的
な 危 険 性 (例 え ば 無 機 物 , 有 機 物 を 問 わ ず , 過 酸 化 物 の 多 く は 発 火 性 , 爆 発 性 を 持 つ こ
と な ど )を 知 っ て お く こ と は , 事 故 を 避 け る た め に 有 効 で あ る .
2
爆発物
爆発には,可燃性ガスが空気と混合し爆発限界内の濃度になった時に引火して起きる
燃焼爆発と,分解しやすい物質が熱や衝撃で分解し,瞬時に気化する分解爆発とがある.
多 く の 可 燃 性 ガ ス (水 素 , ア セ チ レ ン 等 )は 前 者 に 属 し , 後 者 に 属 す る 物 質 (自 己 反 応 性
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物 質 )の 例 と し て 有 機 過 酸 化 物 , 硝 酸 エ ス テ ル 等 が 挙 げ ら れ る . ま た , 有 機 過 酸 化 物 は
実験・研究の対象として利用する場合に限らず,気付かないうちに反応や蒸留の際の副
生成物として生成したり,貯蔵中に自然に発生したりすることがあるので注意が必要で
あ る . さ ら に 真 空 排 気 用 油 回 転 ポ ン プ 中 の 油 が 排 気 さ れ る 酸 化 性 物 質 (例 え ば オ ゾ ン や
空 気 中 の 酸 素 で さ え )と 反 応 し , 有 機 過 酸 化 物 が 油 中 に 生 成 ・ 蓄 積 し , な ん ら か の き っ
かけで爆発する事がある.
取扱における全般的な注意事項としては,爆発の危険がある物質は極力小量の貯蔵
量・使用量で済ますことができるように実験・研究を行うこと.その貯蔵・使用に際し
ては,必ず指導教官の指示を受けること.
なお爆発物を含め,危険な物質全般の詳細な知見・注意事項を身につけるために安全
対策に関する成書を参照することを勧める.
(参 考 書 図 書 と し て は , 例 え ば 「実 験 を 安 全 に 行 う た め に 」, 第 4訂 , pp.3-21, 化 学 同
人 1989,な ど が 手 ご ろ で あ る ).
3
強酸,強塩基
強酸,強塩基を素手で扱ってはならない.強酸,強塩基の水溶液をつくる場合は,そ
れらを小量づつ,多量の水に徐々に加えていくこと.溶解,混合に際して,絶対に密閉
した容器内で振り混ぜてはならない.また強酸の中に水を加えてはならない.
4
有機溶剤
有機溶剤はすべて毒物であり,引火物であると心得よ.溶剤は呼吸器からだけでなく,
皮膚からも吸収される.溶剤で手足を洗うな.必要に応じて耐溶剤性手袋,防毒マスク
を着用し,消火器を近くに用意する.
5
微粉末
必ずマスクを着用する.換気に注意する.
9.2.3
1
ガラス器具の取扱とガラス細工
ガラス器具
使用前に点検し,傷のある器具の使用は避ける.特に加熱,減圧,加圧するところに
は使用しない.
2
急激な温度変化
急激な温度変化はできるだけ避ける.特に肉厚のガラス容器は急激な温度変化に弱く,
われやすいので注意する.溶剤等を入れた容器が割れると火傷や爆発,火災の原因とな
り,大層危険である.
3
ゴム栓等へのガラス管,温度計などの差し込み
実験室での事故で最も多いのは,ゴム・プラスチック栓,コルク栓,ゴム・プラスチ
ック管へ,ガラス管または棒状温度計を差し込む時に折れて,手のひらや指に突き刺さ
る事故である.傷が深く,太い血管や大切な神経を切断してしまう事が多い.差し込む
ときは,ゴム栓を一方の手に持ち,もう一方の手でガラス管の先端部分に水やグリセリ
ンを潤滑剤として塗布したガラス管をできるだけ短く持って,ゆっくりと栓または管を
まわしながら差し込む.この時,両方の手の間隔はできるだけ短くする.軍手やタオル
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などで手を保護して作業をするほうがより安全である.無理に押し込まなくても挿入で
きる程度でないと危険である.堅いときは穴を開け直すこと.絶対に無理やり押し込ん
ではいけない.取り外す時も注意を怠らないこと.特にガラス管と栓が密着して離れな
い時は諦めるか,栓を注意して切り取ってしまうほうが安全である.
4
ガラス細工
ガラス細工はバーナーでガラス管を溶融に近い高温に加熱して作業する.このため極
めて高温のガラスを手で保持することになるので,火傷に対する注意が最も肝要である.
ガ ラ ス が 暗 赤 色 に 近 い (500℃ 位 )時 は , 高 温 で あ る こ と が 分 か る が , 400℃ 付 近 で は 常 温
のガラスと見分けがつかないので,特に加熱したガラスの放置冷却の際に高温のガラス
をつかんで火傷をすることが多いので注意する.可燃性ガスの入っていたガラス容器を
細工するときは,残留ガスが残っていると爆発するので,ガス抜きには注意する.ポン
プ に よ る 排 気 や 不 活 性 ガ ス (窒 素 な ど )に よ る 置 換 な ど で も 完 全 に 除 去 で き る と は 限 ら な
い.水による置換,洗浄など確実な除去の方法を心がけること.
5
封管,密栓の開封
ガラスアンプル入りの薬品を開封する際などには,内圧がかかっていて噴出すること
があるので,注意深く,封止部を人に向けずに行うこと.
固着したスリ合わせのガラス栓を外すときは,水やグリセリンなどを潤滑剤としてス
リ合わせ部分にしみこませ,軍手などで手を保護して,ごくゆっくりと木槌などで栓を
周囲からまんべんなく,栓を外す方向に気長に何度も力を加える.それでも外れないと
き は 固 着 部 分 を 局 所 的 に 短 時 間 加 熱 し て , 前 記 の 操 作 を す る (温 度 差 に よ る オ ス , メ ス
の 膨 張 の 差 を 利 用 す る の で , 全 体 が 同 じ 温 度 に な っ て は 意 味 が な い ). た だ し 溶 媒 な ど
危険な物質が固着容器内に入っているときは加熱に直火を使うことは厳禁.温水で試み
る.これらの操作は特に危険であるからまず熟練者に相談することを勧める.経験のな
いものは絶対に勝手に無理やり栓を外そうとしてはいけない.
9.2.4
1
機械類の取扱
機械工作,土木作業など
熟練者の指示にしたがい,正しい作業方法で行う.特にだれもが比較的よく使うボー
ル盤,グラインダ作業においても,慣れによる不注意な負傷事故例が多いので充分注意
しなければならない.作業時には安全メガネを着用する.
2
モ ー タ 駆 動 (回 転 )機 器 の 取 扱
手袋は一切着用してはならない.回転機器の近くでは,回転部に巻き込まれる恐れの
あ る 白 衣 な ど を 着 用 し て は な ら な い .( 第 3.3節 他 を 参 照 )
3
高所,あるいは重量物の実験装置の組立て作業等
落下物の危険防止策としてヘルメットを,重量物を扱うときは安全靴を着用する.
9.2.5
1
電気の取扱
電線,コンセント,コネクタ,テーブル・タップ,スイッチ類
116
必ず許容電流以下で使用する.床面や湿気の有るところではゴムキャブタイヤコード,
コンジットパイプ等を使用する.投込みヒータ,マントルヒータなどヒータ類には耐熱
コードを,白熱電灯には袋打や丸打コードを使用し,ビニールコードは使わない.
2
ヒューズ付スイッチ
表示電流以上のヒューズは絶対使わない.使用電流とちょうど同じ電流容量のヒュ-
ズを使用する.大電流容量のヒューズの使用は特に危険である.
3
電気器具のアース
配 電 盤 ボ ッ ク ス の ア ー ス 用 タ ー ミ ナ ル (E)か ら と る . ガ ス 管 , 水 道 管 に は ア ー ス し な
い.特にガス管は爆発の危険がある.また水道管では水道の使用時に感電することがあ
る.電気作業時には,体がアースとならないよう,器具,道具のまわりの乾燥,ゴム板
の利用,手の乾燥,ゴム手袋,ゴム靴の着用を励行する.感応コイル,ネオントランス
などの高電圧側は,特に囲いをして感電の危険を防止する.
4
自作エレクトロニクス機器など
必ず適正なヒューズとスイッチを組込むようにする.
5
感 電 と そ の 防 止 に 関 す る 事 項 は , 第 2.1.2項 , 第 2.1.3項 お よ び 第 8.1.1項 を 参 照
せよ.
9.2.6
1
高圧ガス容器(ボンベ)類の取扱
高圧ガス容器の運搬
1) 容 器 の 運 搬 に あ た っ て は , 圧 力 調 整 器 を と り は ず し , バ ル ブ 保 護 用 キ ャ ッ プ を つ
け,専用の二輪手押車を用いること.手押し車の使えない所では容器をわずかに傾け,
底の縁で転がすとよいが,滑り易い床では注意すること.決して衝撃を与えたり,衝撃
を与える危険性のある粗暴な取扱をしてはいけない.階上,階下への移動に際しては二
輪車にのせ,ホイストで昇降させること.絶対にキャップやバルブにロープをかけては
い け な い (バ ル ブ が 折 れ る と 噴 出 ガ ス の た め 容 器 が 100m近 く も 飛 ぶ こ と が あ る ).
2) 容 器 は 重 量 物 で あ る か ら , 運 搬 中 の 足 の 爪 先 , く る ぶ し , 手 指 の 保 護 の た め , 安
全靴と手袋の着用が望ましい.
2
高圧ガス容器の設置と保管
1) 容 器 は 直 射 日 光 , 火 気 を 避 け , -15℃ 以 上 40℃ 以 下 で 保 管 す る . 暖 房 器 具 か ら の ふ
く射にも充分気を配る.可燃物を周囲に堆積させない.
2) 電 流 の 流 れ て い る 電 線 , 電 池 , ま た は ア ー ス な ど の 近 く に 容 器 を 置 く と , 容 器 に
穴があいて大事故となることがあるから充分注意する.また腐食性薬品との接触を避け,
湿度の高い部屋に設置しない.
3) 容 器 の 設 置 に あ た っ て は , 転 倒 を 防 ぐ た め , 鎖 や バ ン ド 等 を 用 い て 丈 夫 な 建 物 の
柱や壁に固定する.なお万一のバルブからのガスの噴出によって容器がロケット状にな
って飛ぶのを防ぐため,容器は立てて使用するのがよい.液化ガスおよびアセチレンの
容器はかならず立てて使用しなければならない.
4) ガ ス 漏 れ (安 全 弁 の 自 然 作 動 を 含 む )に 対 し て 爆 発 , 中 毒 の 危 険 が な い よ う に , 室
内の換気には充分に配慮し,石鹸水等を用いて時々ガス漏れの有無を調べる.
117
3
高 圧 ガ ス 容 器 (ボ ン ベ )の 使 用
1) 容 器 の 内 容 を よ く 確 認 す る . 誤 用 や 不 用 意 な 高 圧 ガ ス の 混 合 は 大 災 害 を も た ら す
ことがある.
2) ガ ス の 出 口 の ネ ジ は 可 燃 性 ガ ス (た だ し 臭 化 メ チ ル と ア ン モ ニ ア を 除 く )お よ び ヘ
リ ウ ム ガ ス は 反 対 (左 )ネ ジ , 他 は す べ て 順 (右 )ネ ジ で あ る . 合 わ な い ネ ジ を 無 理 に 合 わ
せようとしてはならない.
3) 安 全弁 (下 図 参 照 )に は 絶 対 に 手 を 触 れ た り 細 工 を し て は い け な い .
図
安全弁
(安全弁に触ったり,細工をしてはいけない)
4) 容 器 に は 圧 力 調 整 器 (減 圧 弁 )を 取 り つ け て 使 用 す る . 調 整 器 に は い ろ い ろ の 種 類
があるので,充填ガスに専用のものを使用する.
5) 容 器 と 調 整 器 の 接 触 部 分 は よ く 清 掃 し (無 毒 , 不 燃 性 ガ ス で は 調 整 器 を 取 り つ け る
前 に , バ ル ブ を 少 し 開 け て ご み を 吹 き 飛 ば す と よ い ), パ ッ キ ン は 径 が 接 触 面 に よ く 適
合した寸法のものを使用する.またガスの種類に応じて適切な材質を選ぶこと.古いパ
ッキンや不適切な大きさ,材質のパッキンはガス漏れの原因になる.
6) 調 整 器 を 取 り つ け た ら , バ ル ブ を 開 け る 前 に , 調 整 器 の ハ ン ド ル を 左 に 回 し て 調
整ネジをゆるめておき,バルブを静かに注意深く開く.バルブを開き終わって異常がな
ければ調整ネジを徐々に右に回して,出口圧力を加減する.使用中バルブは全開にして
お く (ア セ チ レ ン は 除 く ). な お バ ル ブ の 開 栓 は ガ ス が 一 杯 入 っ て い る も の と 思 っ て 静 か
に注意深く行う.ガス出口を自分や周囲の人に向けてはならない.
ゴミや毒ガス,ガスの自然発火による火炎を顔に受けることがある.また強い力でバ
ルブの開閉を行うとバルブやパッキンを破損し,ガス漏れの原因となるから注意が必要
である.
7) ガ スの 使 用 中 は み だ り に 使 用 場 所 を 離 れ て は い け な い .
8) 使 用 中 の 高 圧 ガ ス 容 器 (ボ ン ベ )に は 必 ず ボ ン ベ 毎 に ハ ン ド ル を 用 意 し , 開 時 に は
ハンドルをコックにつけたままにして,緊急時に速やかに閉にできるようにしておくこ
と.
9) ガ スの 使 用 後 は 調 整 器 の 調 整 ネ ジ だ け で な く , 容 器 の 元 バ ル ブ も 完 全 に 閉 め る .
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10) 容 器間 の ガ ス の 移 し か え は 危 険 を 伴 う の で 禁 止 さ れ て い る .
11) 少 し 離 れ た 場 所 に ガ ス マ ス ク を 常 時 用 意 し て お く こ と . ま た あ ら か じ め ガ ス マ ス
クの種類と使用方法を熟知しておく.
4
ガスの種類別の注意事項
1)
酸素
油脂類との接触は酸化,発熱,燃焼,爆発につながるので絶対に避けなければならな
い (油 の つ い た 手 , 手 袋 の 使 用 も 許 さ れ な い ). 酸 素 用 以 外 の 調 整 器 は 絶 対 に 使 用 し て は
いけない.酸素は空気と違って思いもよらない燃焼災害を発生しやすいことに留意する.
2)
水素
水素はバルブのガス出口,安全弁などから急に噴出すると,火源がなくても着火する
ことがある.また空気と混合した爆鳴気に着火すると甚大な被害を被ることがある.
◎爆発範囲(水素の容積%)
区
3)
分
下限 界
上限界
空気と混合した時
4.1
74.2
酸素と混合した時
4.65
93.9
塩素
塩素は少しの漏れでも鼻,目,のどの粘膜を刺激するからドラフトの中,もしくは風
通しのよい場所で取り扱うこと.一度に多量のガスを吸入すると即死することもある.
容器の漏れテストにはアンモニア水を浸した布を近づけるのが有効である.バルブにた
まった水分などは良く拭き取る.
4)
アンモニア
アンモニアは水に非常によく吸収されるので,注水できるような場所で取扱うこと.
ガス漏れの検知には塩酸を浸した布を近付けるのが効果的である.
5)
ア セチ レ ン
ア セ チ レ ン は 燃 焼 性 , 爆 発 性 (分 解 爆 発 を 含 む )に 富 み , 極 め て 危 険 で あ る か ら 調 整 器
出 口 圧 力 が 1kg/cm 2 以 上 に な ら な い よ う に す る . 溶 媒 で あ る ア セ ト ン の 流 出 を 防 ぐ た め
に 容 器 を 直 立 し て 使 用 し , バ ル ブ は 全 開 に せ ず , ハ ン ド ル を 1.5回 転 以 上 開 か な い こ と
(通 常 は 1/4-1/2回 転 開 い て 使 用 す る ).
◎爆発範囲(アセチレンの容積%)
区
6)
分
下限 界
上限界
空気と混合した時
2.5
80.0
酸素と混合した時
2.8
93.0
その他のガス
種々の参考書を参照した上で使用する.
5
ガスボンベの刻印の見方と色分
1) ボ ン ベ に は 内 容 物 な ど を 明 示 す る た め に 次 頁 (図 )の 刻 印 が 打 た れ て い る .
2) 容 器 の 塗 色 , ガ ス の 性 質 を 示 す 文 字 , ガ ス の 名 称 な ど が , 充 填 す る ガ ス の 種 類 に
応じて次頁のように規定されている.
119
図
表
ガスの種類
高圧ガス容器の刻印の見方
容器の塗色,文字,色別表
容器の
ガスの名称
ガスの性質
塗色
の文字の色
の文字と色
酸素
黒
白
水素
赤
白
二酸化炭素
緑
白
アンモニア
白
赤
塩素
黄
白
アセチレン
褐
白
毒性ガス
ねずみ
白
可燃性ガス
ねずみ
赤
可燃性ガス,毒性ガス
ねずみ
赤
その他
ねずみ
白
120
「燃」白
「 毒 」 黒 ,「 燃 」 赤
「毒」黒
「燃」白
「毒」黒
「燃」赤
「 毒 」 黒 ,「 燃 」 赤
9.3
9.3.1
応用化学科における安全
学生実験における安全
◎[分析化学実験]
① 重量分析では得られた沈でんをるつぼにいれバーナーで強熱する.バーナーに点火
するには空気の流入をほとんど止めるようにし,ガス量もなるべくすくなくしたのち,
マッチをすってバーナーの上部に持ってきてからガスコックを開く.ガスコックを開い
てガスを出しながらマッチをさがすようなことをしてはならない.強熱されたるつぼを
間違っても手でさわらない.必ずるつぼバサミを用いて操作する.もし,火傷した場合
に は , 直 ち に 水 道 水 で 最 低 30分 以 上 冷 却 を 続 け る .
② ガ ラ ス 器 具 の 洗 浄 液 と し て 用 い る 過 酸 化 水 素 -硝 酸 混 液 ( 6N HNO 3 + 5%H 2 O 2 ) は 激 し
く皮膚を侵すから,皮膚に接触しないように,使用するときにはなるべくゴム手袋を着
用せよ.もし,目に入ったときには,実験室備え付きの洗眼器で長時間水洗したのち,
医師の治療を受ける.
③ 容量分析では強酸、強アルカリを用いるが,これらの試薬が皮膚に付着した場合,
直ちに大量の流水(水道水)で洗浄する.水で洗う前に,直ちに中和すれば,中和熱の
た め に さ ら に 被 害 が 増 大 す る お そ れ が あ る . ま た , 目 に 入 っ た 場 合 に は , 洗 眼 器 で 15-3
0分 間 ま ぶ た を 広 げ て 目 を 洗 浄 す る . 強 酸 性 の 塩 酸 , 硝 酸 , 硫 酸 や 弱 酸 で あ っ て も 酢 酸
などの原液などの取扱は慎重に行うこと。こぼしたときは直ちに拭き取って多量の水で
洗い流すか,炭酸水素ナトリウムで覆い多量の水に溶かして流しに流す。硫酸や燐酸は
不揮発性のため希薄溶液であっても水だけが蒸発して濃酸となるので取扱には十分注意
する。
④ 過酸化水素水,重クロム酸カリウム,次亜塩素酸などの酸化剤は相手を酸化分解す
るので,こぼした時や衣服や手についた場合はヒドロキシルアミンのような還元剤とと
もに水で洗い流すか,直ちに多量の水で洗い流す。
◎[無機化学実験]
① ポリリン酸の合成、酸化マンガンの熱還元などにおいて、坩堝をマッフルカバーを
用いて加熱する場合には、坩堝はかなり高温になり、また火を止めた後も冷却されるの
に時間がかかるので、取扱うときは必ず坩堝ばさみを用い、直接実験台の上においたり
しないように注意する。
② 熱溶融還元法の実験は、激しく反応が起こり火花が飛び散るので、必ず屋外で行わ
なければならない。また、素焼き坩堝はかなりの高温になるので、十分に冷却されるま
で手で直接ふれてはならない。
③ シリカゲルの原料として用いる水ガラスは、強アルカリ性、腐食性なので皮膚にふ
れないようにする。また、保護眼鏡を必ず掛けなければならない。手についた場合は、
直ちに大量の水で洗い流す。また、途中で用いる硫酸は、強酸であるので撹拌する際に
は周囲にはねとばさないように注意し、手についた場合は、直ちに大量の水で洗い流す。
121
④ 炭酸アンモニウムコバルト錯体の合成の実験において、炭酸アンモニウムを反応さ
せる場合にはアンモニアガスが発生するので、必ずドラフト内で実験を行い、ガスを直
接吸わないように注意する。
◎[物理化学実験]
① ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ の 実 験 で は 高 圧 の ボ ン ベ か ら Heガ ス を 導 い て 実 験 を 行 う の で ,
バルブの開閉には注意をし,指導者の指示に従うことが大切である.
② 液 体 窒 素 を 使 用 す る 場 合 は ガ ラ ス 製 の デ ユ ア 瓶 を 用 い る が , 液 体 が -196℃ の 低 温 な
ので,直接あるいは低温になった部分に手や皮膚を触れてはいけない.
③ 光化学反応は紫外線の強い高圧水銀ランプを用いて行うので,見つめないようにし
サングラスの着用が必要である.
④ 実験で使われる濃硫酸,濃塩酸,水酸化ナトリウム,過マンガン酸カリウム,ベン
ゼン,酢酸などは劇物,腐食性物質,あるいは有害物質のいずれかにあたるので取扱い
に注意し,手や皮膚に触れないようにする.
⑤ ガラス製の真空装置を用いて低圧のガスを取り扱う実験がいくつかあるが,圧力測
定などに使われる水銀が,誤った操作で外に出ないようにすることが大切である.
⑥ 真空ラインでは、ガラス製真空コックの無理な回転や締めすぎは破損を引き起こし、
それにより切傷等の怪我をすることがあるので、操作は無理をしないでゆっくりと行う
こと。
⑦ 真 空 ラ イ ン で 、 ガ ス 成 分 の 移 し 替 え ・ 精 製 (真 空 あ る い は 減 圧 蒸 留 )、 充 填 等 の 操 作
をするときは、大気圧以上の圧力になる部分を発生させないように十分注意すること。
特 に 、 低 温 (液 体 窒 素 等 に よ る )ト ラ ッ プ を は ず す 際 に は 、 ト ラ ッ プ 内 に 集 め ら れ た ガ ス
が一時に蒸発して系内の圧力が急激に上昇することのないよう、排気または大気解放し
つつ徐々に昇温すること。
◎[電気化学実験]
① 輸率の測定に用いる硝酸銀や拡散係数の測定に用いる硝酸タリウムの溶液は皮膚を
侵すので触れないように注意するとともに,皮膚についた場合は,直ちに大量の水で洗
い流す.
② 輸 率 測 定 , 拡 散 係 数 測 定 な ど , 電 気 化 学 実 験 の 電 源 に は 数 十 Vを 越 え る 高 圧 の も の
があるので,電源装置の出力側に誤って直接触れることのないように注意する.
③ 水素過電圧の測定の電解液と水素発生用に使用する水酸化ナトリウム水溶液は強ア
ルカリ性,腐食性だから皮膚に触れないようにする.また,発生した水素は爆発のおそ
れがあるので,実験台の周辺は火気厳禁とする.
④ 導電率測定セルの導通用や電位測定のカロメル電極に封入されている水銀は蒸気圧
が高く,ガス状で体内に取り込まれて危険である.飛散すると小粒になって回収が難し
いので,これらのセルは破損しないよう十分注意して扱う.万一破損した場合,必ず指
導教員に報告したのち,大きい粒はトラップをつけた吸引瓶で回収し,微小粒はアマル
ガム化して回収する.
122
⑤ 実験試料の熱処理や器具の乾燥に用いる電気炉,ホットプレート,電気乾燥器,ガ
スバーナーなどは取り扱いに十分注意し,試料や器具の出し入れには必ず手袋やトング
を用いる.
◎[有機化学実験]
・有機化合物の分離と確認
① 本実験では濃硫酸を使用するが,希釈する際には,激しく発熱するので冷却しなが
ら加える.過って濃硫酸が皮膚についた場合には,まず,拭き取ってから水洗する.特
に,目に入った場合には失明の恐れがあるので直ちに大量の水で洗い,指導教官に報告
する.
② 有機溶媒は殆どが可燃性である.特に沸点の低いエーテル,石油エーテル,アセト
ン,メタノール等の使用に当っては火災に注意する.もし火災を起こした場合は,まわ
りの人が消火器で消火にあたると同時に他の人が指導教官,または近くの研究室に知ら
せる.
③ 元素定性分析に使用する金属ナトリウムは水と反応して発火するので,水には特に
注意する.
④ 有機化合物には有害なものが多い.それ故,皮膚や衣服につけたり,ましてや口に
入れたりすることは絶対に避けなければならない.もし,そのようなことが起こったら
直ちに大量の水で洗い,指導教官に報告する.
⑤ 実験に使用するガラス器具は破損しやすいので,手に布を捲くなど取り扱いには特
に注意しなけばならない.
・有機化合物の合成
学生実験における安全対策の基本方針は次の3点である.
1)極めて危険性の高い薬品,強い有毒物質の使用を避け,より安全な薬品への代替を
考える.
2)反応容器,試薬類のスモ-ルスケ-ル化
3)使用する装置や薬品の危険性,有毒性について十分理解させ,その危険にたいする
心構えと対策を立てさせる.
以上の基本方針に則り,最近,実験項目の見直しを行い,テキストの改訂を行った.
① スチルベンの合成に用いるリン化合物は毒性が強いので身体に接触しないように手
袋の着用を義務づけ,接触した場合は直ちに大量の水で洗い流す.水酸化ナトリウム,
硫酸等の強酸,強アルカリについても同様である.
② ベンゾフェノンの光二量化反応に用いる高圧水銀灯は強い紫外線を出すので,点灯
中のランプの直視を避ける.止むを得ず見る場合は保護眼鏡をかける.
③ ベンズヒドロ-ルの酸化反応に用いる次亜塩素酸ナトリウムは強い酸化剤であるか
ら皮膚に付けないように注意する.付着した場合は直ちに大量の水で洗い流す.
④ 芳香族有機化合物のニトロ化反応に用いる硝酸,硫酸は強酸性なので,こぼさない
ようにする。また,皮膚および粘膜に触れると激しい薬火傷を起こすので,保護手袋,
123
保護メガネを着用の上,取扱いに十分注意する。なお,皮膚についた場合は,直ちに多
量の水で洗い流す。
⑤ メチル化反応に用いるヨードメタンは毒性が強いため皮膚に触れないように注意し
保護手袋を着用の上、ドラフトや風通しの良いところで取扱う。
⑥ エーテル合成反応に用いる水酸化カリウムは,強アルカリ性であり,また,腐食性
を示すので,保護手袋,保護メガネを着用の上,取扱いに十分注意する。なお,手に付
いた場合には,直ちに多量の水で洗い流す。
⑦ ガスバ-ナ-を用いるガラス細工の実験ではスペ-スを十分とるようにし,火傷,
怪我,火災等を起こさぬように注意する.
◎[高分子化学実験]
・高分子化合物の合成と反応
① 酢酸ビニルの重合容器の洗浄に用いる酸化剤(硝酸+過酸化水素)は強酸性なので,
こぼさないようにする.また,皮膚を侵すので取扱いに注意する.手についた場合は,
直ちに大量の水で洗い流す.また還元剤(亜硫酸水素ナトリウム水溶液)は亜硫酸ガス
を含んでおり,ガスを吸入すると粘膜が侵されるので,ドラフトまたは風通しの良い場
所で取り扱う.
② 重合開始剤として用いる過酸化ベンゾイルは爆発性があるので,取扱いには十分な
注 意 が 必 要 で あ る ( 加 熱 , 衝 撃 , 摩 擦 , 金 属 と の 接 触 を 避 け る ). 秤 量 に は , プ ラ ス チ
ック製の匙を使う.ポリマーの沈澱剤として用いるn-ヘキサンはよく燃えるので,火
気に注意する.
③ ポ リ 酢 酸 ビ ニ ル の け ん 化 に 用 い る 30% 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 は 強 ア ル カ リ 性 , 腐
食性なので皮膚に触れないようにする.手についた場合は,直ちに大量の水で洗い流す.
④ レゾール樹脂の合成に用いるフェノールは有毒で,皮膚を侵すので素手で扱っては
ならない.手についた場合は,直ちに大量の水で洗い流し,つづいて石ケンで洗い落と
す.アンモニア水は揮発性,刺激臭かつ腐食性で有害なので,眼,鼻などの粘膜に触れ
ないようにする.風通しのよい場所で取り扱う.
・高分子化合物の物性
① ポリスチレンの分別に用いるメタノールおよびメチルエチルケトンはよく燃えるの
で 、 火 気 に 注 意 す る 。 ま た メ タ ノ ー ル は 毒 性 が 強 い ( 致 死 量 10 ml) の で 取 扱 に 注 意 す
る。この蒸気を吸入しないように、ドラフトや風通しのよい場所で取り扱う。皮膚につ
いた場合は、多量の水で洗い流す。
② 粘度測定で用いるベンゼンは毒性が強いので取扱に注意する。この蒸気を吸入しな
いように、ドラフトや風通しのよい場所で取り扱う。皮膚についた場合は、せっけんで
洗いおとす。
③ マイクロカプセルの合成に用いるクロロホルムは有毒(肝臓、腎臓、心臓にダメー
ジを与える)なので取扱に注意する。この蒸気を吸入しないように、ドラフトや風通し
のよい場所で取り扱う。皮膚についた場合は、多量の水で洗い流す。またシクロヘキサ
124
ンは燃え易いので、火気に注意する。
9.3.2
研究室における安全
◎分析化学研究グループ
《バイオセンサー(システム)に関する研究》
実験には高圧ガスの使用が不可欠であるが,取り扱いには十分な注意が必要である.
例えば,①室内の排気,②ボンベが転倒したりバルブが損傷を受けないように固定して
おく,③バルブの開閉は,特に可燃性ガスの場合,ガス摩擦で発火することがあるので
静かに行う,④いつもガス洩れがないことを確認する,などの注意が必要である.
寒剤として用いるドライアイス,液体窒素は相当注意して取り扱わねばならない.ド
ライアイスはアセトン,アルコールなどの有機溶媒と共に用いるので引火に対して注意
しなければならない.また,液体窒素を大量に用いるときは換気に注意する.冷却した
容器に素手で触れると,皮膚が容器に付着して取れなくなり,凍傷を起こすことがある
ので,専用の皮手袋を用いる.
◎無機化学研究グループ
《機能性無機材料の合成と特性評価》
①ガラスの溶融、セラミックスの合成などに高温の電気炉を使用する場合には、まず、
電気炉の周囲に有機溶剤や可燃物がないか確認してから加熱しなければならない。また、
電 気 炉 の 温 度 が お よ そ 1000゚Cを 越 え る よ う な 場 合 に は 、 耐 熱 手 袋 、 保 護 面 等 を 使 用 す る
こと。
②白金坩堝などを洗浄する際に硫酸水素カリウムなどの強アルカリの融液を用いる場合、
加熱中に吹きこぼれないように注意する。吹きこぼれた場合には冷却後、掃除を十分に
行うこと。但し、水溶液も強アルカリ性であるから直接ふれないように注意し、手につ
いた場合には大量の水で洗い流す。
③レーザーラマン分光計を使用する場合、失明するので、レーザー光を直視してはいけ
ない。また、光軸調整などを行う場合には、レーザーパワーを絞って行うよう注意する。
時計、指輪などレーザー光を反射させるものを身につけていると、反射した光が目に入
る危険性があるので、あらかじめ外すようにする。
④冷却剤として液体窒素を用いる場合、閉め切った部屋で用いないようにし、必ず換気
を行う。
◎物理化学研究グループ
《環境調和型触媒開発に関する基礎・応用研究》
(1)光触媒反応や光化学反応に用いる高圧や低圧の水銀ランプおよびキセノンランプ
は強力な紫外線を出すものであり、また、高圧の水銀ランプは使用点灯時には高圧状態
125
になっている。これらのランプを安全に使用するためには、ランプはランプハウスに入
れて使用すること。ランプハウス内をのぞく必要のある時は必ずサングラスを保護眼鏡
としてかけること。500Wなどの比較的大きなランプを使用するときにはランプの紫
外線でオゾンが発生するので、ランプハウス内の空気は室外に排気するようにする。
(2)触媒および光触媒反応はパイレックスガラス製の真空ライン(10
-5
~10
-6
mmHg の 真 空 状 態 ) を 使 用 す る の で ガ ラ ス 細 工 が 必 須 に な る 。 ガ ラ ス 細 工 中 に ガ ラ ス 破
片で手を切ったりガスバ-ナで火傷をしないように気をつけること。真空ラインには各
種の可燃性ガス取り付けてあるが、ガラス細工中に可燃性ガスに引火しなように気をつ
けること。反応生成物検出のためのガスクロやガスマスおよび流通触媒反応系において
は高圧ボンベ入りのガスを使うが、高圧ボンベの取扱には十分な注意を払うことが必要
である。また、触媒調製時などにおいは反応セルの温度を上げながら系を排気するが、
急激な温度上昇は急激な高圧状態を作り真空系の破損につながるので気をつける必要が
ある。
◎電気化学研究グループ
《電気化学的エネルギー変換の基礎と応用,電極触媒,電池、電解》
①セル・器具の洗浄に用いる硫酸-硝酸混液や硝酸-過酸化水素混液は強酸化性である.
表面処理用の電解液にも強酸性やアルカリ性,酸化性,腐食性のものが多い.皮膚,眼,
衣類を侵すから,手袋,保護眼鏡,白衣を着用して取り扱う.
②重金属は一般に有毒である.水素エネルギー系実験試料合金作製のための金属粉末や
エレクトロキャタリシス用電極作製のための金属粉末の混合・粉砕
はドラフトで行い,
金属微粉末を吸い込まないよう,必ずマスクをつけて行う.
③水素エネルギー研究試料の水素圧-組成等温線測定には高圧水素を用いるので,高圧
ガスボンベや調整器の取り扱いに十分習熟してから測定を始める.水素ガスは強い引火
性 が あ り , 空 気 中 の 燃 焼 限 界 は 4~ 75% の 広 範 囲 で あ る か ら 水 素 エ ネ ル ギ ー 系 の 実 験 で
は換気に十分注意する.
④金属の溶融に用いるアーク溶融装置は高圧が印加されるので電源の取り扱いに注意す
る.また,溶融の際は強い光を発するので直視しないようにする.溶融状態の観察が必
要なときは必ず保護眼鏡を着用する.
⑤X線回折装置は強力なX線を出すので,測定中はX線発生源にできるだけ近づかない
ように注意し,また,X線環境許容量以上にならないよう実験時間を考慮する.
◎有機反応化学研究グループ
《不安定活性種の創製と有機合成反応への応用》
《特異なπ電子系有機化合物の合成と反応》
《励起状態における分子識別》
①研究室で用いる有機溶媒は有害なものが多いので,細心の注意を払う必要がある.特
に,クロマトグラフィーや抽出等で有機溶媒を使用する際には換気に注意しなければな
126
らない.
②ジアゾメタンは猛毒であり,且つ爆発性であるので,取り扱う際には実験書に従い,
専用器具を用い,絶対に摺りあわせガラス器具や金属製の器具(匙やスパチュラ)を使
用してはならない.
③ジメチル硫酸,ヨウ化メチル,臭素等を使用する場合には,皮膚に触れないように,
実験用ゴム手袋を付けて,ドラフトで実験を行う.
④アルキルリチウム,ナトリウム,カリウム,リチウム等を扱う場合,空気に触れると
発火したり,水と激しく反応するので注意しなければならない.
⑤光反応に使用する水銀灯は強力な紫外線を出しているので直接目に入らないよう注意
する.保護眼鏡をかけたり,反応系をアルミホイルで蔽ったりする.
⑥過酸化物は爆発の危険があるので,使用量を最小限にとどめ,溶液にして用いるなど,
取り扱いには特に注意を要する.
⑦大量の液体窒素を取り扱う場合には,手に触れないように,また換気に注意を払う必
要がある.
◎有機機能化学研究グループ
《有機機能物質の合成と応用》
①種々の有機合成に用いる金属ナトリウムは,皮膚あるいは粘膜に触れると,火傷およ
びアルカリ薬傷を起こし,また,水と激しく反応して,発火するので,周囲に水気のな
い所で,保護手袋,保護メガネを着用して取り扱う。未反応の金属ナトリウムは,少量
ずつアルコールに加えて溶解し,中和処理を行った後に,廃棄する。
②空気中では不安定な有機化合物をアルゴンや窒素の不活性ガス雰囲気下で取り扱う場
合は保護手袋や保護メガネを着用し,また,容器の破損も考えられる場合は, 容器を金
網や布で包んで,透明な遮蔽板を立てて操作を行う。
③光反応の光源に用いるキセノンランプ,高圧水銀灯,色素レーザはいずれも強力な紫
外光や可視光を出すものであるから,点灯中はランプを直視してはならない。止むをえ
ず見る場合は,必ず保護メガネを着用する。
④有機化合物のメチル化剤であるジメチル硫酸やヨウ化メチルは,皮膚吸収などにによ
り発ガン性を示すので,保護メガネ,保護手袋を着用し,喚気の良いドラフト内で取り
扱う。皮膚に付着した場合,直ちにせっけん水で洗浄する。なお,未反応のジメチル硫
酸 は , ド ラ フ ト 内 で , 5%水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 中 に 滴 下 し , 加 水 分 解 さ せ た 後 , 一 夜
放置し,希硫酸で中和した後,廃棄する。
◎合成高分子化学研究グループ
《光機能性高分子の合成と応用》
①重合のための容器は使用するモノマーの沸点,重合目的,あるいは重合条件により選
択することが必要である.重合中,内圧が高くなるような場合は,耐圧ガラス反応容器
を使用する.自分で細工した容器は肉厚が不均一になりやすいので,急激な圧力変化で
127
破損することがあるので注意がいる.ラジカル重合では反応溶液中の溶存酸素を除くた
めに凍結脱気を行うが,水やメタノール,あるいはジメチルホルムアルデヒドなどを溶
媒として用いると,重合用ガラスアンプルは凍結操作時に破損することが多いので注意
が必要である.急速な重合熱の発生による内容物の膨張により,容器の破裂が考えられ
る場合には,反応器を金網と布でよく包んで反応させる.重合操作には必ず安全眼鏡を
つける.
② ポ リ マ ー の 単 離 に 遠 心 分 離 を 利 用 す る 時 に は , 試 料 を 遠 心 分 離 管 に そ の 内 容 積 の 70%
程度入れる.回転軸に対して対称の位置にある試料管の重量は内容物を含めて等しくな
ければならない.回転の加速は徐々に行い,異常振動があれば,すぐに運転を中止する.
③光反応に用いるキセノンランプや高圧水銀灯,また低圧水銀灯はいずれも強力な紫外
線を出すものであるから,点灯中はランプを直視してはならない.止むを得ず見る場合
は必ず保護眼鏡をかけるようにする.
◎有機合成化学研究グループ
《元素の特性を活かした有機合成反応の開発》
①有機金属錯体を用いる有機合成反応の開発には新しい有機金属錯体の合成が必要であ
る.一般に有機金属錯体は室温,空気中では不安定なものが多いので,その取扱には細
心の注意を要し,ドラフト内や不活性ガス雰囲気下での実験が必須である.また,発火
や爆発等の危険に備えメガネ,手袋,保護面の着用,ラボプロテクタ-の設置を励行す
る.
②有機合成には各種の有機溶媒や有機試薬を用いる.エ-テル,ベンゼン,クロロホル
ム等危険性が高く強い毒性をもつ有機溶媒はより安全なヘキサン,アセトン,ジクロロ
メタン等の溶媒に替える.また,生成物の分離のための各種クロマトグラフィ-には多
量の有機溶媒を用いるが,これらもより安全
性のよい溶媒を使用する.
③有機合成には各種の強酸と強アルカリを用いる.有機リチウム化合物,有機アルミニ
ウム化合物等は空気中で自然発火し,また,皮膚をおかすものも多い.したがって,使
用には注射器を用いこぼさないようにする.身体に付着した場合は大量の水で洗い流す.
④有機合成反応における容器,試薬等の量をできるだけ少量にしたスモ-ルスケ-ル化
を企る.
⑤ヘテロ原子化合物には毒性を有するものがあることから、ドラフト内で手袋などを用
いて扱い、実験するまでに必ず指導教官と十分に打合せをする。また、高圧ガスや一酸
化炭素等の毒ガスを使用する場合には、ボンベをチェーン等で固定し、ドラフト内で使
用する。ボンベとラインの接合部に漏れがないか、絶えず調べておく。
◎生体高分子化学研究グループ
《ポリペプチドの合成》
①ポリペプチド合成に用いるガラス製容器は破損し易いので取扱に注意する。
②ポリペプチド合成に用いる有機溶媒(酢酸エチル、クロロホルム、メタノール、アセ
128
トンなど)は有毒なので取扱に注意する。この蒸気を吸入しないように、ドラフトや風
通しのよい場所で取り扱う。皮膚についた場合は、多量の水で洗い流す。また酢酸エチ
ル、ジエチルエーテル、メタノール、アセトンなどの有機溶媒はきわめて引火性が強い
ので、火気に注意する。
③保護基の除去に用いる塩酸は粘膜を冒すので、吸入しないようにドラフトや風通しの
よい場所で取り扱う。また皮膚についた場合、速やかに多量の水で洗い流す。
④接触還元に用いる水素ガスは火気に接触すると爆発するので、取扱には細心の注意を
要する。
⑤縮合反応に用いるカルボジイミドは、皮膚につくとかぶれを引き起こすので皮膚につ
かないように注意する。万が一皮膚についた場合、速やかにせっけんで洗い落とす。
⑥実験に際しては、試薬が目に入らないように保護眼鏡を必ず着用する。
◎環境化学研究グループ
《環境微量成分の分析と反応》
① 強 酸 (塩 酸 、 硝 酸 、 硫 酸 )、 強 ア ル カ リ (水 酸 化 ナ ト リ ウ ム )が 皮 膚 に 付 い た 場 合 、 速 や
かに多量の水で洗い流す。
② 高 圧 ガ ス ボ ン ベ の 運 搬 、 据 え 付 け 、 配 管 に 際 し て は 、 第 3章 1節 の 高 圧 ガ ス に 関 す る 項
目を読んで、取り扱うガスに関する危険性・安全対策の内容をよく理解した上で、作業
を実施すること。
③高圧ガスボンベの使用に際しては、部屋の換気に十分注意を払うこと。特に、人体に
対 し て 有 害 な 一 酸 化 炭 素 (CO)、 窒 素 酸 化 物 (NO、NO2)、 亜 硫 酸 ガ ス (SO2)や 可 燃 性 ガ ス で
あ る 水 素 (H2)、 メ タ ン (CH4)、 エ チ レ ン (C2H4)の 使 用 に 際 し て は ガ ス 配 管 か ら の 漏 れ 防
止や排気管の換気孔への確実な接続等に注意を払い、これらガスの実験室内での充満防
止に十分注意して実験を行うこと。
④多量のガス発生を伴う液体窒素やドライアイスの使用に際しては、②の場合同様部屋
の換気に十分注意を払うこと。窒素や二酸化炭素はそれ自身で直接人体に害を及ぼさな
くても、その充満が室内空気の酸素濃度低下を招き、気分を悪くさせたり気を失わせた
りして思わぬ事故に至る例も報告されている。
⑤液体窒素の入った容器を取り扱う場合、皮製の手袋を使用することが望ましい。それ
がない場合は、可能な限り素手で取り扱うこと(決して、軍手等布製の手袋を使用しな
い ! 液 体 窒 素 が こ ぼ れ た 場 合 、 か え っ て 凍 傷 に な る 危 険 性 が 高 い )。
◎無機高分子化学研究グループ
《有機ケイ素高分子の合成》
①ケイ素系高分子の合成には溶融状態のアルカリ金属を用いるので,保護眼鏡,ゴム手
袋,防護面を着用して実験する.アルカリ金属は水分にふれると激しく反応し爆発や火
災を誘発するので,使用するガラス器具や溶媒を十分乾燥し,実験装置周辺には水分が
ない状態を確保する.また,急激な反応によりコロイド状になった金属を含む反応混合
129
物があふれ出て火災に至ることがあるので,反応量を少なくし,十分な能力のある冷却
器を用いる.粉末状の高分子はコロイド状金属を取り込む場合があり,乾燥処理など高
温にすると発火するので,アルコールや水で洗浄を完全に行う.合成実験は必ず二人以
上の人がいる状態で行い,火災事故に備えて手の届くところに乾燥砂,粉末消火器を常
備しておく.金属ナトリウムなどの削りくずは貯めないで,その都度アルコールで分解
し中和処理する.
②反応原料のクロロシラン類は水分にふれると腐食性の塩化水素を発生するので,厳重
にシールして保管し,取り扱いはドラフト内に限定する.
③反応及び高分子の精製に用いるトルエンなどは有毒なことが多いので,吸入しないよ
うにする.溶媒蒸気による事故(毒性,火災)を避けるため必要量以上の溶媒を実験室
に置かない.
④放射線照射を行う場合には,照射のみを依頼し自分で管理区域に立ち入らない.
[参考書]
1 . 化 学 同 人 編 集 部 編 「実 験 を 安 全 に 行 う た め に (正 ・続 )」 化 学 同 人
(正 :1993、 続 :1987)
2 . 日 本 化 学 会 編 「化 学 実 験 の 安 全 指 針 (改 訂 3 版 )」 丸 善 (1991)
3 . Manufacturing Chemists' Association 編 ( 日 本 化 学 会 訳 編 )
「 化 学 実 験 の 事 故 と 安 全 」 丸 善 ( 1978)
4 . 畑 一 夫 , 渡 辺 健 一 共 著 「( 新 版 ) 基 礎 有 機 化 学 実 験 - そ の 操 作 と 心 得 - 」
丸 善 ( 1968)
5 . H. J. E. Loewenthal 著 ( 中 崎 昌 雄 訳 )「 有 機 化 学 実 験 法 - 指 針 と 助 言 - 」
東 京 化 学 同 人 ( 1982)
6 . 東 京 化 成 工 業 ( 株 ) 編 「 取 り 扱 い 注 意 試 薬 ラ ボ ガ イ ド 」 講 談 社 ( 1988)
7 . M. Windholz et al. 編 「 The Merck Index( 10版 )」 Merck & Inc.( 1983)
8 . 中 西 啓 二 、加 藤 俊 二 著 「化 学 実 験 の 事 故 を な く す た め に 」 化 学 同 人 (1984)
9 . 小 林 義 隆 「実 験 室 の 事 故 例 と 対 策 」 大 日 本 図 書 (1983)
10. E.メ ー ヤ ー 著 (崎 川 範 行 訳 ) 「危 険 物 の 化 学 」 海 文 堂 出 版 (1979)
11. 日 本 化 学 会 編 「化 学 防 災 指 針 (全 7 巻 )」 丸 善 (1979~ 1980)
[注]応用化学科では,実験の手引書とともに,参考書1および4をテキストとして学
生に購入させている.さらに,実験にあたっては,学生に次頁の「実験中の災害防止に
関する注意」を配布して注意を喚起している.
130
9.3.3
実験中の災害防止に関する注意
化学実験は各種の危険を伴う。ある程度なれた時期に注意をおこたって思わぬ事故を
招く事が多い。実験に際しては,つぎにあげる事項を最低必要な注意として,常に守れ
るように心がけることを希望する。
1.一般常識
化学薬品の中には,爆発事故や火災の原因になったり,皮膚を侵し,吸入により中
毒をおこすような危険な物質が多い。それらの危険性の種類や程度を十分知った上で
実験をする事が必要である。そのためには適当な指導書(例えば,日本化学会編「化
学 実 験 の 安 全 指 針 」 丸 善 ; 化 学 同 人 編 集 部 編 「 実 験 を 安 全 に 行 う た め に 」( 化 学 同
人)をいつもそばにおくこと。
2.保険への加入
万 一 の 場 合 に 備 え て , 学 生 教 育 研 究 災 害 傷 害 保 険 ( 略 称 “ 学 研 災 ”) に 加 入 す る こ と 。
3.眼がねの着用
実験中に薬品類やガラスの破片が飛散して眼を傷つけることが多い。場合によって
は失明を招くなどきわめて重大な結果を生ずる。この予防のため,実験はいつも眼が
ねを着用して行う。
4.爆発などの危険がある場合
(1)実験装置を防壁(例えば張り合わせガラスのつい立)でかこみ,実験着,手袋の
ほか顔面をカバーできる防護マスク(例えばプラスチック製顔面シールド)を着
用して行う。
(2)危険の程度を予測し,操作上の注意事項を十分認識して行う。
(3)前もって指導教官に申し出てその指示に従う。また,周囲の者にも危険性を知ら
せておく。
5.高圧ガスボンベの取扱い
(1)接触や地震などでも転倒しないように,ベルトや鎖で実験場所に固定するか,底
面の広いスタンドに立てる。
(2)可燃性ガスは排気の放出個所に十分注意して火災を防ぐ。
(3)ボンベの取扱いや運搬はとくに慎重にする。
6.毒性ガスの使用
応化屋上の“毒ガス実験室”で行う。毒性の程度や被毒したときの応急処置を認識
しておく。
7.電気関係の危険防止
(1)消費電力を十分上まわる電流容量をもつコードを使用して配線する。
(2)コンセントの容量をオーバーする“たこ足配線”は絶対にしない。
( 3 ) ス イ ッ チ そ の 他 結 線 個 所 の 露 出 は 感 電 事 故 の も と に な る ( 特 に 夏 期 )。 か な ら ず
絶縁被服やカバーをほどこす。
131
(4)高圧電線にはむやみに接近できぬように,柵などを設ける。
8.環境の保全(公害対策)
少なくとも化学を志すものは,地域の環境保全に十分配慮する必要がある。そのた
め , 実 験 で 使 用 し た 全 て の 試 薬 廃 液 ( 酸 , 塩 基 , お よ び 塩 類 ) は ,“ 赤 流 し ”( A 排
水:有害物質専用)に多量の水と共に捨てる。また,有機溶媒は専用容器に回収する。
“ 一 般 流 し ”( B 排 水 : 有 害 物 質 投 入 禁 止 ) に は , 試 薬 類 お よ び 有 機 溶 媒 は 絶 対 に 捨
てないように留意する。
9.事故に対する処置
(1)応急処置に関する常識を機会あるごとに確実にしておくことが非常に大切である。
(2)傷害や中毒による事故が起こった場合は,すぐ指導教員に報告し,必要な応急処
置 を し た 後 , 保 健 室 で 指 示 を 受 け , 早 期 治 療 の 時 期 を 失 し な い よ う に す る 。( 註 1 )
10.夜間および休日の実験
(1)深夜および休日における実験は原則として学生については認めがたいが,やむを
得ない場合は指導教員に申し出て指示をうける。ただし,複数人数でないと許可
されない。
(2)許可された場合でも,実験室が無人になることは絶対にさけるようにする。深夜
実験でも仮眠は交代でとる。
( 註 1 ) こ の 際 の 医 療 費 負 担 に つ い て は , 学 生 の 応 急 処 置 費 負 担 に 関 す る 内 規 (“ 学 生
生活の手引”など)を参照すること。
大阪府立大学工学部応用化学科
132
9.4
化学工学科における安全
9.4.1
学生実験における安全
【ケミカルエンジニアリングプラクティス】
ケミカルエンジニアリングプラクティスでは、講義・実験・実習・見学を通じ、
化学工学に初めて接する学生に化学工学を概説する。
実験・実習に参加する際には、白衣・保護メガネ(大学生協等で購入可能)を
各自で予め準備し、着用にあたっては、実験・実習の担当者の指示を仰ぐこと。
工場見学を行う前には、工場見学参加するに当たっての注意事項を説明するの
で、厳守すること。
【化学工学実験Ⅰ】
実験初日の説明会時に必要な資料を全員に配布し、防災安全対策、緊急時の対
策と緊急連絡方法等を安全のための手引をもとに説明する。安全のための手引は
常に指定の場所に置いておくので、常に参照すること。
実験室における事故は、不注意、安全に対する認識不足、さらに実験対象物質
(装置、器具、薬品などに対する無知から生じるので、実験に際しては以下のこ
とに留意する。
(1)あらかじめ実験指針書を熟読し、計画的に実験を行う。
(2)体調を整えて、真剣に行う。
(3)白衣、保護メガネを着用する。
(4)実験台、装置周辺等の整理・整頓を絶えず心がける。
(5)決して単独では実験を行わない。
(6)実験室内における安全用具、緊急用具、消火器、救急箱などの設置場所を
確認する。
実験は8テーマからなる。共通する安全対策(管理)を以下に述べる。
1.強酸、強塩基:素手で取り扱ってはならない。皮膚に付着した場合、目に入
った場合は直ちに大量の流水で洗浄する。水溶液を作る場合は常法に従い、
少量ずつ慎重に行う。決して強酸中に水を加えてはならない。なお、希釈溶
液を採取する場合はピペットマンを使用する。また、廃液は適宜希釈・中和
してA廃水(赤流し)に捨てる。
2.有機溶剤:有機溶剤は全て毒性があり、引火物であると心がけ、取り扱いに
細心の注意を払う。有機溶剤を用いる実験は、常にドラフトチャンバーを使
用し、換気・排気に注意する。また、有機溶剤廃液は回収し専用の容器に保
管する。決して流しに廃棄してはならない。なお、強酸、塩基、有機溶剤等
の試薬は、実験室の棚に最小限を用意し、予備のものは準備室の戸棚内に施
錠し保管してあるので、無くなった場合は指導教官に連絡する。
3.ガラス器具:実験でガラス器具を使用する際は、割れやすいので取り扱いに
133
注意し、破損した場合は必ず届ける。なお、破損によりけがをした場合は直
ちに指導教官に届ける。
4.電気関係:実験前に電気系統の配線に誤配線や危険な場所が無いかを確認す
る。また、必ず許容電流以下で使用し、タコ足配線はしない。
5.高圧ボンベ(窒素)の使用:実験開始前に取り扱いを指導するので、勝手に
操作しない。ボンベ容器は直射日光および火気を避け、転倒による災害を防
ぐために固定する。
6.測定装置:各テーマに用いる測定機器については、実験指針書の解説を熟読
し、何が原因で事故を起こしやすいかをあらかじめよく理解しておく。特に、
気液平衡及び単蒸留の実験では、突沸防止のために沸石を必ず使用する。
【化学工学実験Ⅱ】
主な実験は、生産技術センターの化学機械室にて行う。
1.各種の固体、液体の試薬(溶液や有機溶剤)を使用するので、実験室内での
飲食、喫煙は厳禁する。また、衣服は原則として長袖、長ズボンとし、直接
肌に薬品類が触れないように注意する。特に半袖・半ズボン・スカート等の
衣服に注意する。
2 . 比 較 的 大 量 の 酢 酸 の 有 機 溶 剤 (ケ ロ セ ン )溶 液 を 扱 う の で 、 火 気 お よ び 換 気 に
充分注意すること。
3.モーター、ブロワー、ポンプ等の回転機器を使用するので、衣服、頭髪が巻
き込まれる事のないように、充分注意すること。
4 . 各 種 の 酸 (塩 酸 等 )、 ア ル カ リ (水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 、 水 酸 化 バ リ ウ ム 等 )を 使 用
するので、調製時、使用時には眼鏡をかけるなど、取扱に注意すること。
5.酸、アルカリ、重金属を含む廃液は赤流しに捨てること。有機溶剤の廃液は
回収し、専用の容器に入れること。滴定に際しては、ゴム球をつけたピペッ
トを用いて操作し、直接口で吸い込まないこと。
6.瀘過実験の炭酸カルシウムスラリ廃液は、溝や配管のつまりを防ぐため、固
形分を沈降分離し、廃炭酸カルシウムを流しや、下水に流さないこと。
7.床に水をこぼした場合は、転倒等の危険があるので、モップ等で必ず拭き取
ること。
8.実験室内には、精密な測定機器等があるので、教員の指示がない場合はむや
みに触らないこと。
9.4.2
研究室における安全
【微粒子工学グループ】
「微粒子の測定、性質、利用」
1.静電気利用の粒子測定装置(DMA)は高電圧を利用する場合があるので、
感電予防には注意を払うこと。また粒子発生装置では高温度の電気炉を用い
る場合、あるいは沸点の高い有機物を用いる場合があるので、火傷をしない
134
ように、また換気を十分に行うように注意する。
2.各種の実験には高圧ガス(ガスボンベ)を用いるので、高圧ガスボンベの取
扱については十分習熟し、誤操作のないように注意すること。
3.微粒子の性質、物性測定では有機溶剤を用いることが多い。人体への付着に
注意するとともに、換気ならびに火気には十分に気を付けること。
4.計測用光源に、出力は小さいがレーザー光線を用いることがある。皮膚等に
対して直接損傷はないが、眼にはいると障害を起こす。可搬式であるので、
特に自分ならびに周囲の者に注意してレーザー光を使用すること。光源をの
ぞきこまないこと。また、不注意に眼を照射することのないよう注意するこ
と。
5.ガラス細工に際しては、炎から離れたところでも高温のガスで火傷する。ガ
スバーナーに不注意に体を近付けないこと。他人に向けないこと、高温のガ
ラス(眼で見ただけでは分からない)による火傷および火災の危険があるの
で、冷めていないガラスの取扱に特に注意すること。
「小型オートクレーブの使用」
反応器として用いる小型オートクレーブは、本体の高圧容器(ステンレス製)
のほかに、圧力計、高圧弁、安全弁、攪拌機、ヒーターなどの付属部品から構成
されている。
高圧実験は危険度が高いので、各種機器の構造、取扱法を十分に理解した上で
慎重に行わなければならない。
1.オートクレーブを操作するときは、指定の場所で取扱書の指示に従う。
2 . 容 器 の 内 容 積 の 1/3以 上 の 原 料 溶 液 を 仕 込 ん で は い け な い 。
3.温度計は、確実に反応溶液中に入っているように注意する。
4.容器の内部およびパッキン部は清潔に保つ。
5.フランジ式のふたを閉めるときは、ボルトは対角線上にあるものを一対とし、
順次に数回に分けて一様な力で締めるようにする。
6.本体に刻示されている耐圧試験圧力、常用圧力、最高使用温度を確認し、そ
の範囲内で使用する。
7.反応終了後にふたを開けるときは、容器内の圧力が大気圧まで、容器温度が
室温まで下がっていることを確認する。
「その他のテーマ」
有 機 溶 剤 な ど の 薬 品 類 お よ び 高 圧 ガ ス の 取 扱 に つ い て は 、 7.2 項 を 熟 読 ・ 参 照 の
こと。個々の具体的なケースについては、指導者の指示に従うこと。
【反応工学グループ】
「酵 素 や 微 生 物 を 用 い た 実 験 、 高 分 子 微 粒 子 の 合 成 に 関 す る 実 験 、 お よ び マ イ ク ロ
デバイスに関わる実験」
1.微生物実験および生化学実験では人体にとって非常に有害な薬品を用いるこ
とが多い。特に突然変異を誘発させる化学物質、タンパク質変性剤、神経毒、
抗生物質、酵素、酵素阻害剤などを用いる場合は取り扱いに注意すること。
135
2.微生物を用いて実験を行う場合、感染しないよう注意すること。実験台、実
験器具などを常に清潔な状態に保つ。
3.高圧滅菌器(オートクレーブ)を用い、加圧水蒸気により培地などを滅菌す
る場合、釜内に充分な水が入っていることを確かめてからふたを閉めてスイ
ッ チ を い れ る 。 滅 菌 処 理 が 終 わ っ た ら 、 釜 内 温 度 が 80 ℃ 以 下 、 釜 内 圧 力 が ゼ
ロになったことを確かめ、安全弁を開放した後、ふたを開ける。
4 . 遠 心 分 離 器 を 用 い 試 料 を 遠 心 分 離 す る 場 合 、 試 料 は 遠 心 管 容 積 の 7割 以 下 に し 、
容器、試料およびふたを含めた重さのバランスを調整する。ローターに汚れ、
腐食および異物がないことを確認した上、確実にローターを遠心器にセット
すること。ローターのふたを確実に締める。ローターの許容回転速度以上で
は絶対に操作せぬこと。遠心器の設定を再確認した後、作動させ、設定した
回転速度に達するまで遠心器を監視すること。もし、異常音などを発したら
速やかに遠心操作を中断すること。また、完全に回転が止まるまで決して遠
心器のふたを開けてはならない。
5.安全キャビネットやクリーンベンチで無菌操作を行う場合、滅菌(紫外)灯
を消してから作業すること。安全キャビネットやクリーンベンチ内でガスバ
ーナーを用いる時には必ずブロワーを作動し、使用後はガスの元栓を確実に
締めること。
6.UVトランスイルミネーターやマスクアライナーなどの紫外線照射装置を用
いる場合、必ず紫外線用保護面を着用し、ランプを直視せぬこと。
7.電気泳動装置を用いる場合、高電圧、高電流の電気を通電するので、感電せ
ぬよう注意すること。
8 . 超 低 温 冷 蔵 庫 ( - 80 ℃ ) お よ び 超 低 温 に 冷 や さ れ た 試 料 、 あ る い は 電 気 炉 や
乾熱滅菌器、高温処理した器具および試料を取扱う場合、軍手などを着用し
て凍傷や火傷に注意すること。
9.重合開始剤として用いる過酸化ベンゾイルなどは爆発の危険があるので、取
扱いに注意すること。特に秤量時はプラスチック製の薬匙を使用すること。
10 . 溶 剤 や モ ノ マ ー 、 レ ジ ス ト 、 エ ッ ジ ン グ 溶 液 に は 、 可 燃 性 の も の や 人 体 に と
って有害なものが多いので、取り扱いには十分注意し、必要に応じて、ドラ
フト、防護前掛、保護メガネ、手袋、保護面等を使用すること。
11 . ド リ ル や エ ン ド ミ ル 等 の 微 細 な 工 具 の 使 用 に 際 し て は 、 切 削 片 や 工 具 の 破 損
断片による指先や眼の切傷に十分注意し、必要に応じて保護メガネ、手袋等
を使用すること。
【分離工学グループ】
「イオン交換・吸着法による希少・生理活性物質等の高度分離、ゼロエミッショ
ン環境プロセス」
1.研究室における安全に対する一般的な注意:
研究実験には、種々の有害な、重金属(イオン)類、有機溶媒を使用した
り、微量でも毒性の高い試薬を使用するので、実験者は各自が用いる試薬類
136
について安全面からその性質を熟知し、自分自身だけでなく、周囲への安全
への配慮を怠ってはならない。また、逆に自分の研究だけでなく、実験台の
周囲で、他の人が何を使ってどのような実験を行っているか常に注意を払い、
事故が起こらないようお互い気を付け合うことが肝要である。
2.実験装置の設置および実験を行う場合の留意点:
1)装 置 周 辺 の 整 理 整 頓 を 励 行 す る こ と 。
2)電 源 ( 容 量 オ ー バ ー 、 タ コ 足 配 線 、 高 電 圧 電 流 ) に 注 意 す る こ と 。
3)装 置 が 高 所 に あ る 場 合 、 落 下 物 に 注 意 し 、 安 全 眼 鏡 を 使 用 す る こ と 。
4)服 装 に 注 意 し 、 機 械 類 に 巻 き 込 ま れ な い よ う に 心 が け る こ と 。
5) 高 温 ・ 高 圧 で の 実 験 、 真 空 度 の 高 い 実 験 、 加 熱 水 蒸 気 を 使 用 す る 実 験 を 行 う
場合には、実験準備を特に慎重に行い、安全具を必ず使用すること。
3.ガス類の使用:
1) ガ ス 類 は あ ら か じ め 定 め ら れ た マ ニ ュ ア ル ど お り に 操 作 し 、 異 常 が 見 ら れ た
ら 速 や か に 教 員 に 知 ら せ る こ と ( 自 分 勝 手 な 操 作 は 絶 対 に し な い )。
2)実 験 中 は 、 ガ ス 圧 、 流 量 、 臭 気 等 に 留 意 し 、 ガ ス 漏 れ 等 に 注 意 を 払 う 。
3)ボ ン ベ な ど の 移 動 等 は 学 生 だ け で 行 わ ず 、 教 員 の 指 導 の 下 に 行 う 。
4.廃棄物:
実験使用後の廃棄物は多岐にわたるので、その処理にあたっては、教員の
指 導 の 下 で 行 う こ と 。 特 に タ ン ク 等 に 貯 蔵 後 、 一 括 処 理 す る も の や A廃 水 に よ
り処理するものについては、その取り扱いを厳重に行う必要がある。
【資源工学グループ】
「環境分野における微生物の有効利用、未利用資源からの金属有価物の回収プロ
セス」
1.実験に際しては体調に注意し、無理をせず、適切な服装で計画的に行う。夜
間や休日等、やむを得ない場合を除き、単独での実験は決して行わない。
2.実験室内においては、装置の周辺、実験台等の整理整頓を絶えず心がける。
3.使用する重金属イオン類や有機溶剤のなかには爆発性、引火性、有毒性が強
いものが含まれているので、使用に際しては薬品の性状、危険性をよく調べ
た上で使用する。特に、有機溶剤使用時は火気に注意し、ドラフトチャンバ
ー内で実験を行うなど、蒸気を吸入しないよう常に換気・排気に注意を払う。
4.強酸、強塩基は素手で取り扱ってはいけない。誤って衣服や身体に付着した
場合、目に入った場合には直ちに大量の水で洗い流す。また、強酸に水を加
えてはならない。
5.酸、塩基および重金属イオンの水溶液廃液はA排水(赤流し)に捨てる。高
濃度の場合は中和または希釈して捨てる。また、有機溶剤廃液は回収し専用
の容器に保管した後、教員とともに指定の場所へ廃棄する。
6.オートクレーブを用いて加圧水蒸気により培地等を滅菌する場合は、装置内
に十分な水が入っていることを確認し、加圧を始める。滅菌終了後は、装置
内の温度が室温まで低下していること、圧力が大気圧まで低下していること
137
を確認した後、ふたを開ける。
7.遠心分離器を用いて試料を分離する場合は、試料の液量、ローターの重量バ
ランス、回転速度等に注意する。特にローターの許容回転速度以上では絶対
に操作しない。
8.高圧ガスの取り扱いは教員の指導を受け熟知すること。特に、バルブの開閉
を慎重にし、ガス漏れがないこと絶えず確認する。また、ボンベは転倒やバ
ルブの損傷がないようにしっかりと固定する。
【クラスター制御工学グループ】
「気相反応を利用したナノ粒子、薄膜の作製」
1.実験室内で飲食しない。実験で発生したゴミは、紙類、金属類等に分別収集
し、リサイクル出来る資源は廃棄しない。
2 . 溶 剤 等 に つ い て :専 用 の 用 器 に 入 れ 、 皮 膚 に か か ら な い よ う に 安 全 メ ガ ネ や 耐
薬品性手袋を使用する。また、毒性の高い溶剤については、使用方法を熟知
してから使用する。
3.真空装置等について:真空排気装置の原理を理解し、使用方法を熟知する。
配線や装置の周りを整然と整頓し、感電、漏電、やけどに注意する。使用中
で有ることが一目で分かるような指示板を利用することが望ましい。故障等
の場合は速やかに担当教官に連絡する。
4.評価装置等について:X線回折装置、走査(透過)電子顕微鏡、SQUID、
膜厚計などは、動作原理、目的、使用方法を熟知してから使用する。
5 . 高 圧 ガ ス ( 高 圧 容 器 ( ボ ン ベ )) 等 に つ い て : 取 扱 方 法 を 熟 知 し て か ら 使 用 す
る。火気を近づけないように注意し、定期的に配管からのガス漏れチェック
を行う。使用量を正確に測定し、記録する。使用するガスの性状(可燃性、
支燃性、不活性等)を理解し、安全に使用する。
6 . 低 温 媒 体 (液 体 窒 素 、 ヘ リ ウ ム ) 等 に つ い て : 取 扱 に 習 熟 し 、 凍 傷 や 換 気 に 注 意
する。
7.その他:夜間や休日の実験は原則として行わない。やむを得ない場合は、必
ず複数で作業する。
【資源工学グループ】
「環境分野における微生物の有効利用、未利用資源からの金属有価物の回収プロ
セス」
1.実験に際しては体調に注意し、無理をせず、適切な服装で計画的に行う。夜
間や休日等、やむを得ない場合を除き、単独での実験は決して行わない。
2.実験室内においては、装置の周辺、実験台等の整理整頓を絶えず心がける。
3.使用する重金属イオン類や有機溶剤のなかには爆発性、引火性、有毒性が強
いものが含まれているので、使用に際しては薬品の性状、危険性をよく調べ
た上で使用する。特に、有機溶剤使用時は火気に注意し、ドラフトチャンバ
ー内で実験を行うなど、蒸気を吸入しないよう常に換気・排気に注意を払う。
138
4.強酸、強塩基は素手で取り扱ってはいけない。誤って衣服や身体に付着した
場合、目に入った場合には直ちに大量の水で洗い流す。また、強酸に水を加
えてはならない。
5.酸、塩基および重金属イオンの水溶液廃液はA排水(赤流し)に捨てる。高
濃度の場合は中和または希釈して捨てる。また、有機溶剤廃液は回収し専用
の容器に保管した後、教員とともに指定の場所へ廃棄する。
6.オートクレーブを用いて加圧水蒸気により培地等を滅菌する場合は、装置内
に十分な水が入っていることを確認し、加圧を始める。滅菌終了後は、装置
内の温度が室温まで低下していること、圧力が大気圧まで低下していること
を確認した後、ふたを開ける。
7.遠心分離器を用いて試料を分離する場合は、試料の液量、ローターの重量バ
ランス、回転速度等に注意する。特にローターの許容回転速度以上では絶対
に操作しない。
8.高圧ガスの取り扱いは教員の指導を受け熟知すること。特に、バルブの開閉
を慎重にし、ガス漏れがないこと絶えず確認する。また、ボンベは転倒やバ
ルブの損傷がないようにしっかりと固定する。
【装置工学グループ】
「粉粒体を用いた実験、および装置、試験試料の作製等」
実験に際しては体調に注意し、適切な服装で計画的に行う。研究実験内容は事
前に指導教員とよく打ち合わせをして、危険の無いように準備する。
夜間・休日に実験を行わない。やむを得ず実験を行う場合には必ず許可を得る。
その場合には特に注意を払い、必ず複数の人員が身近にいるようにする。単独で
の実験は絶対に行わない。
整理整頓を徹底し、実験試料、器具、工具等はそれぞれ置き場・置き方を定め、
決まったところに正しく置く。後かたづけと整理を実験・作業毎に終了後速やか
に行う。
粉粒体を扱うので発塵・防塵に注意する。実験時には各人に配布する防塵マス
クを必ず着用する。その他常備の使い捨て簡易マスクや安全眼鏡を用い、集塵機
の作動を常にチェックして換気に注意する。粉体吸入予防のため、出入口にマッ
トを設置するとともに定期清掃を行い、床面の清浄に努める。使用済みの粉体試
料等は、教員の指示に従って適切に処置する。
1.溶剤関係:小分けにして使用する。容器は決められた安定な場所に置く。実
験時には溶剤用安全マスク(吸着剤入り)を着用する。
2.高温関係:ヒーターや媒体を使用する箇所を明示する。高温箇所に示温テー
プ を 貼 り 付 け る 。 耐 熱 手 袋 を 常 備 す る 。「 実 験 中 ( 連 続 運 転 中 )」 等 の 表 示 を
する。
3.冷却水:冷却水が適切に流れて装置の過熱がないかを常時チェックし、配管
や接合部等からの漏水に注意する。
4 . 高 圧 ボ ン ベ ( ア ル ゴ ン 、 ヘ リ ウ ム 、 窒 素 ): 教 員 に 取 り 扱 い 方 法 の 指 導 を 受 け 、
139
習熟する。決められた場所に設置し、転倒を防止する。重量物運搬には教員
が立ち会う。換気に注意する。
5.真空関係:ポンプの設置場所や排気に注意する。
6 . 低 温 媒 体 ( 液 体 窒 素 ): 取 り 扱 い を 習 熟 す る 。 凍 傷 ・ 換 気 に 注 意 す る 。
7.電気関係:電源のオン・オフ時には必ず周囲に声をかけて他の装置への影響
がないことを確認する。コンセント、コード類を整理して踏みつけないよう
に配線を工夫し、タコ足配線は絶対にしない。コンセント部を清掃しショー
トや発火を防止する。
8 . 機 械 装 置 ( 特 に 自 作 の 装 置 等 ): 回 転 体 や 移 動 体 に 安 全 カ バ ー を 設 置 す る 。 調
整や試運転時の安全チェックを行う。重量物の移動・設置・取り扱いには特
に注意する。
9.工作関係:装置部品や材料試験に用いるテストピース等を作製する際に使用
する旋盤や電動鋸等の工作機械の使用方法を習熟し、工作中は必ず安全眼鏡
を着用する。特に工作物が小さいときは直接手に持って作業しない。
10 . 火 気 注 意 : 直 火 は な る べ く 使 わ な い 。 ガ ス 給 湯 器 に つ い て は 特 に 注 意 す る
( 換 気 ・ 元 栓 )。 廊 下 の 消 化 器 置 き 場 を 確 認 し て お く 。
【材料プロセス工学グループ】
「フォトリソグラフ操作における注意点」
1.フォトリソグラフに用いるフォトレジストは、使用前に予め保管用冷蔵庫か
ら出し、クリーンブース内にて室温状態にすること。また、フォトレジスト
の取り扱いには十分注意すること(絶対に光に当ててはならない)
2.クリーンブース内への入室は、必ず指定されたクリーン服、帽子、足袋を着
用のこと。またクリーンブース内の清浄度保持のため、必要なもの以外はク
リ ー ン ブ ー ス 内 に 持 ち 込 ま な い こ と 。( ク リ ー ン ブ ー ス 内 で は 、 ボ ー ル ペ ン ・
マ ジ ッ ク を 使 用 し 、 紙 は 専 用 の 紙 を 用 い る こ と 。)
3.露光機(アライナー)は、人体に有害な紫外光を発するため、発光部の直視
および試料以外の照射は絶対行わないこと。
4.現像液の中には人体に有害な物質もあるため、取り扱いには注意すること。
万が一こぼした場合は、速やかにふき取ること。
5.使用後は、使用した装置の電源を全て切り、コンセントも抜いておくこと。
「電子顕微鏡操作における注意点」
1.電子顕微鏡使用前には、鏡塔部の真空度・真空ポンプ内のオイルおよび冷却
装置内の冷却水の残量を確かめ、不足している場合は足しておくこと。
2.観察する試料は、観察前に予め真空チャンバーに入れ脱水処理を行うこと。
また、絶縁性試料および高倍率観察用試料は予め金属蒸着処理を施すこと。
3.試料の取り扱いは、慎重に行うこと。特に試料の挿入時における脱落等のな
いよう試料台への装着および挿入準備は入念に行うこと。
4.試料観察時における無理な操作(試料位置の急激な変更など)は、顕微鏡の
故障につながる恐れがあるため、絶対に行わないこと。また、試料未挿入時
140
のフラッシング・観察等は故障の原因になりかねないので絶対に行わないこ
と。
5.地震等の自然災害が発生した時は、速やかに操作を止めること。また、顕微
鏡が設置している建物における停電時は、停電開始の前日までに電源を切っ
ておくこと。さらに停電終了後は速やかに再稼動を行うこと。
6.使用中にトラブルが発生したら、速やかに担当教官もしくは所属大学院生に
連絡し指示を仰ぐこと。
「薬品使用における注意点」
1.劇物・危険物指定薬品の使用時および購入時には、必ず使用記録ノートに使
用(購入)日時・使用者・使用(購入)薬品およびその量を記載すること。
また、残量は常に確認し、不足分は担当教官に連絡・承認ののち購入のこと。
学生・大学院生の独断での発注・購入は禁止。
2.実験に使用した溶液の後処理は、厳重に行うこと。腐食性物質を含む溶液の
流しへの廃棄は水質汚染や配水管の腐食を進行させる原因となるため、研究
室指定の廃液タンクに廃棄すること。また、こぼした場合は速やかにふき取
ること。
3.強酸・強塩基は素手で取り扱わないこと。誤って衣服・肌に付着した場合は
大量の水で洗い流すこと。また強酸に水を加えてないこと。
4.劇物・毒物・危険物に指定された薬品を使用するため、実験室内での飲食・
喫煙は厳禁する。また実験特に劇物・毒物・危険物に指定された薬品を使用
する実験のさいは、白衣を着衣し、直接薬品類が肌に触れないように注意す
ること。
「その他の装置の操作における注意点」
1.ポテンショスタットなどの電気化学測定機器使用のさいは、使用説明書の注
意点をよく読み、正しく使用すること。端子の接続ミスなどの単純な操作ミ
スが、装置の故障・事故につながる恐れがあるため、くれぐれも使用のさい
は慎重に取り扱うこと。また、配線が蛸足にならないように計画的に配線す
るとともに、コード類を整理し踏みつけることのないように配置すること。
2.高圧ガス(窒素・酸素)容器使用のさいは、あらかじめ担当教官および大学
院生に取り扱い方法特に圧力調整器の使用法の指導を仰ぎ、取り扱い方法を
習熟してから使用のこと。またボンベ設置のさいは、必ず指定のボンベ立て
に転倒防止に努めること。
3.使用中にトラブルが発生したら、速やかに担当教官もしくは所属大学院生に
連絡し指示を仰ぐこと。
4.退室時は、電気・戸締りに注意し、施錠を確認すること。
141
9.5
応用化学科/化学工学科における事故例
9.5.1
ガラス容器・器具による負傷
1.グラスフィルターをゴム栓から引き抜こうとして破損し血管を切断した。
2.洗い物をしているとき、口の欠けたビーカーで右手人差指を裂傷、病院で2
針縫う事故に会った。
3.学生実験中、ガラス棒でかき混ぜていた時、ガラス棒が突然折れて怪我をし
た。
4.ゴム栓にガラス管を通そうとして途中で折れ、手に刺さり、中にガラス片が
残って、切開除後2針縫った。
5.押し蓋(フタ)式のサンプル瓶の蓋を片手でしめようとして親指に力を入れ
た途端に底が抜け、親指の動脈と神経を切断し、救急車で病院に運ばれたが、
3~4針縫う大きな事故となった。
9.5.2
実験中の火傷
1.バーナーの火に直接手が触れて皮膚から煙がでるほどの火傷をした。
2.ガラス細工中に、まだ熱いガラス管に直に手を触れて火傷をした。
3.バーナーの火で髪の毛を燃やした。
4.三角フラスコに入れたメタノール溶液を急いで暖めようとして、バーナーの
直火で加熱したところ、メタノールが突沸して手にかかり、バーナーの火が
引火して大やけどをした。
9.5.3
薬品による皮膚や眼の損傷
1.ビーカーで水酸化ナトリウムを水に溶かすためかきまぜているとき、底をぶ
ち ぬ き 、 ア ル カ リ 水 溶 液 が ジ ー パ ン の 上 に 大 量 に か か っ た 。( 水 酸 化 ナ ト リ ウ
ムなどの強アルカリ溶液やフェノールなどの劇薬は皮膚を侵す。眼に入ると
失 明 の 恐 れ が あ る の で 、 必 ず 保 護 眼 鏡 を 着 用 し て 実 験 す る こ と 。)
2.フラスコに栓をして反応溶液を加熱中、顔を近づけた途端栓が飛んで中の溶
液 が 吹 き 出 し 顔 に か か っ た 。( フ ラ ス コ に 栓 を し て 加 熱 し て は い け な い 。)
3.ホールピペットで溶液を吸っていて口に入ったが、すぐ吐き出してうがいを
し た の で 大 丈 夫 だ っ た 。( 溶 液 の 種 類 に よ っ て は 口 が 腫 れ 上 が る も の も あ る の
で 注 意 が 必 要 で あ る 。)
4.濃硫酸に水が入って突沸し、しぶきが顔や身体にかかった。顔は大量の水で
洗 っ た の で 大 丈 夫 で あ っ た が 、 服 は 穴 が あ き 、 ぼ ろ ぼ ろ に な っ た 。( 実 験 用 白
衣 、 ズ ボ ン 、 靴 を 身 に つ け る 。)
5.フェニルイソシアナートなどの眼や鼻の粘膜を刺激する薬品をこぼしそれが
142
揮発したため、眼・鼻・のどがひりひりし、涙が止まらず息苦しくなった。
部 屋 の 外 に 出 て う が い を し 、 眼 を 洗 う と 直 っ た 。( 取 扱 は ド ラ フ ト 内 で 行
う 。)
9.5.4
火災事故の例*
1.有機溶媒の蒸留をしていて、途中で沸石を入れるのを忘れたことに気づき、
急いでフラスコの中に沸石を入れたところ、溶媒がふき出し、バーナーの火
が 引 火 し た 。( 室 温 に 温 度 が 下 が っ て か ら 沸 石 を 入 れ る 。)
2.金属ナトリウムを入れてベンゼンの蒸留を行った後、メタノールで金属ナト
リウムを処理して流しに捨てたところ、残っていた金属ナトリウムが水にふ
れ て 発 火 し 、 ベ ン ゼ ン が 燃 え 上 が っ た 。( 気 泡 が 出 な く な る ま で メ タ ノ ー ル と
反 応 さ せ る 。)
3.湯沸器のそばの棚に置いてあったアセトンなどの有機溶媒の入った洗浄瓶が
気 温 の 上 昇 に よ り 中 の 溶 媒 が 湯 沸 器 に 吹 き 出 し 引 火 し た 。( 洗 浄 瓶 を 湯 沸 器 か
ら 離 す こ と 。)
*
いずれの場合も、すぐに消火したので大事には至らなかった。粉末消火器を
研究室で使ったところ、途中でとめることが出来ないため、部屋中が消火器
の白い粉で覆われ、それを取り除くのに大変な労力を強いられた。また、コ
ンピュータや精密測定機器の中にも入り込んで悪影響を与えたと思われるの
で、研究室では、まず炭酸ガスの消火器を試みることを勧める。
9.5.5
爆発事故の例**
1.エーテルを蒸留中、ついうっかりして完全に蒸発乾固させてしまい、爆発を
起 こ し た 。( エ ー テ ル は 過 酸 化 物 を つ く り や す く 、 加 熱 に よ り 爆 発 を 起 こ す の
で 途 中 で 蒸 留 を や め る の が コ ツ で あ る 。)
2.試験管を溶封した封管中で加熱しながら反応を行っていたところ、突然爆発
し、内容物とともにガラス破片が飛び散った。
3.真空ラインを使ったあと、トラップを液体窒素に漬けたまましばらくコック
を開放状態にしていてトラップ内で空気が液化していたのに気づかず、コッ
クを閉じたので、しばらくして液体窒素がなくなってトラップの温度が上が
った時、中の液体空気が気化して真空ラインが爆発した。
* * い ず れ の 場 合 も 、 幸 い 大 き な 怪 我 は な か っ た 。( ガ ラ ス 器 具 の 爆 発 で は ガ ラ
スの破片が勢いよく飛び散るので極めて危険である。危険が予想される時は
防 護 壁 な ど で 囲 う な ど の 用 心 が 必 要 で あ る 。)
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9.5.6
その他の事故例
1.蒸留水製造装置の空だき:蒸留水製造装置を作動開始後、数時間して安全装
置が作動して蒸留操作が自動停止した。水道水(原水および冷却水)の流量
が 低 下 し 、 空 だ き 状 態 に な っ た た め で あ る 。 実 害 は な か っ た 。( 水 道 水 の 流
量・水圧は早朝、昼間、夜間など刻々変化するので長時間にわたって水道水
を使用する場合は、時々流量をチェックするか、安全装置を取り付ける必要
が あ る )。
2.温水槽の空だき:温水槽を投げ込みヒーターで加熱中、蒸発により水位が下
が り 、 温 水 槽 壁 を こ が し た 。( 定 水 位 器 を 付 け る か 、 温 度 感 知 器 に よ る 安 全 装
置 を 設 置 す べ き で あ る 。)
3.配管からのガスもれ:大学院生がガス吸収実験を始めようと、硫化水素
(2%)ボンベを開けたところ、配管途中からガスもれが起こり、若干量の
硫化水素を吸入した。原因は、配管途中の3方コックの切り換えミスであっ
た。
9.5.7
最近の事故例
1 . 応 用 化 学 分 野 実 験 室 に お け る 事 故 に つ い て ( 平 成 16年 6月 )
合成用試薬のブチルイソシアナートを開封し一部を使用した後、残りをア
ンプルに移し変えようとしていたとき、誤って試薬敏を転倒させてしまっ
た。本人にはかからなかったがコンクリート床に落ち、数十秒で刺激臭の
蒸気が広がり、分解用のアルコールを撒いたが刺激臭が充満してきたため
全員が部屋から非難した。当該学生はすぐにトイレでうがいと手洗いを行
った後、保健室から救急車を要請し、ベルランド総合病院にて処置した。
その後、堺東警察署から事情聴取を受けたが、事件性無しとして処理され
た。
2 . 化 学 工 学 分 野 に お け る 事 故 に つ い て ( 平 成 16年 11月 )
学 部 4回 生 が 、 教 員 の 監 視 の 下 で ボ ン ベ を 1 階 か ら 2 階 に 運 ぼ う と し た が 、
ボンベが転倒し、それを支えようとした当該学生もボンベといっしょに倒
れ、右足首を強く捻った。患部を冷やすとともに車で邦和病院に行き、処
置 し て も ら っ た が 右 足 首 腓 (ひ )骨 骨 折 で 完 治 に 1ヶ 月 半 か ら 2ヶ 月 必 要 と の
ことであった。
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