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会計情報レポート
平成27年3月期 決算上の留意事項
会計監理部 公認会計士 江村羊奈子 公認会計士 吉田 剛 公認会計士 矢島 学
• Yonako Emura・Takeshi Yoshida・Manabu Yajima
品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する
』
『
「経理の状況」作成マニュアル』
『会
当法人内外への情報提供などの業務に従事。主な著書(共著)に『連結財務諸表の会計実務(第2版)
計処理アドバンストQ&A』(いずれも中央経済社)などがある。
Ⅰ はじめに
係る部分は筆者の私見である旨を、あらかじめお断り
します。
平成27年3月期より、企業会計基準第26号「退職
給付に関する会計基準」(以下、退職給付基準)の定
めのうち、退職給付債務等の計算に係る部分が原則適
用となります。また、企業会計基準第21号「企業結合
Ⅱ 改正退職給付基準(未認識項目の連結包括
利益計算書上の取扱い)
に関する会計基準」(以下、結合基準)の早期適用が
可能なほか、平成27年度税制改正が税効果会計に与
える影響も考慮する必要があります。
退職給付基準の改正事項のうち、連結財務諸表にお
ける未認識項目(未認識数理計算上の差異及び未認識
本稿では、これらを中心に平成27年3月期決算に
過去勤務費用)の即時認識は、平成27年3月期で適
当たっての留意事項を解説します。なお、文中意見に
用2年目を迎えます。前期首から早期適用した会社以
▶表1 未認識項目の会計処理(税効果考慮外)
取引形態
未認識項目の発生
未認識項目の費用処理*1
個別
連結
会計処理なし(遅延認識)
退職給付に係る調整額(その他の包括利益)を計上し、退職給付
に係る負債(資産)を増減(A)
退職給付費用を計上し、退職給付
引当金(前払年金費用)を増減
退職給付費用を計上し、退職給付に係る調整累計額(その他の包
括利益累計額)の組替調整を行う*2(B)
*1 個別財務諸表上遅延認識していた未認識項目を費用処理するケースを想定
*2 連結修正仕訳で示すと、個別財務諸表上増減させた退職給付引当金を戻し入れて、退職給付に係る調整額に振り替える処理が行われることになると考えられ
る(<図1>参照)。
▶図1
未認識項目の費用処理に係る退職給付費用(費用方向)の計上額100(税効果は考慮しない)
【個別】
100
/
(貸)退職給付引当金
100
(借)退職給付費用
【連結修正仕訳】
100
/
(貸)退職給付に係る調整額
100
(借)退職給付引当金
(組替調整額)
2 情報センサー Vol.103 April 2015
Ⅲ 改正退職給付会計基準(退職給付債務等の
計算に係る改正)
外は、前期末で未認識項目を連結貸借対照表において
計上しました。その場合、前期では、前期末における
発生分も含めて連結株主資本等変動計算書に直接計上
しましたが、当期からは変動額が連結包括利益計算書
1. 当期から原則適用となる退職給付債務等の計算に
へ計上されます。本章では、この未認識項目の連結包
係る改正
括利益計算書への影響を解説します。
退職給付債務等の計算に係る改正については、当期
首から原則適用されています。主に<表2>の改正が
1. その他の包括利益に計上される退職給付に係る
行われ、個別財務諸表及び連結財務諸表の双方に影響
が生じます。
調整額
これらの改正により、期首時点の退職給付債務を見
未認識項目の主たる会計処理は、連結財務諸表及び
個別財務諸表のそれぞれで<表1>のようになります。
直した場合、適用初年度においては、期首の利益剰余
<表1>の「連結」の列にあるように、連結財務諸
金に加減して計上します(平成24年改正退職給付基
表を作成している会社では、連結包括利益計算書に
準37項)
。例えば、見直しにより、退職給付債務が200
「退職給付に係る調整額」(その他の包括利益)が計上
減少した場合の仕訳例を示すと<図2>の通りです。
されます。なお、<表1>では考慮外としましたが、退
また、適用初年度における株主資本等変動計算書の
職給付に係る調整額の計上に際しては、税効果会計が
記載については、次ページの<表3>の通り、当期首残
適用されます。また、退職給付に係る調整額のうち、少
高の次に、会計方針の変更による累積的影響額として
数株主持分相当は「少数株主に係る包括利益」に集計
行を追加し、変更後の期首残高を会計方針の変更を反
されるとともに、連結貸借対照表上の「退職給付に係
映した当期首残高として表示することが考えられます。
る調整累計額」のうち少数株主持分相当は、「少数株
主持分」として表示する点に留意することが必要です。
2. 退職給付債務見直しの重要性基準
退職給付債務は、退職給付見込額を、期末の安全性
の高い債券の利回りを基礎として決定した割引率によ
2. 組替調整額の注記
連結包括利益計算書では、その他の包括利益の内訳
り期末までに発生していると認められる額を計算しま
項目別の注記が必要です。<表1>の「連結」に記載
す。この割引率等の計算基礎については、重要な変動
の(A)の額が当期発生額として、(B)の額が組替調整
が生じていない場合には、見直さないことができます
(退職給付基準(注8))。
額として開示されることになります。
割引率の変更により発生した差異は、通常は数理計
▶表2 退職給付債務等の計算に係る改正
項目
① 退職給付見込額の期間
帰属方法の見直し
② 割引率の設定
③ 予想昇給率の見直し
改正前
改正後
期間定額基準が原則
期間定額基準又は給付算定式基準のいずれかを選
択適用
退職給付の見込支払日までの平均期間を原則とす
る(実務上、従業員の平均残存勤務期間に近似し
た年数も容認)
退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するもの
確実に見込まれる昇給等が含まれる
予想される昇給等が含まれる
▶図2
退職給付債務の変動額200 (見直し前:1,000 → 見直し後:800)
法定実効税率35%(繰延税金資産の回収可能性あり)
200
/
(貸)利益剰余金
(借)退職給付引当金
(借)利益剰余金
70
/
(貸)繰延税金資産
200
70
情報センサー Vol.103 April 2015 3
会計情報レポート
▶表3 株主資本等変動計算書の表示
株主資本
資本剰余金
当期首残高
資本金
資本
準備金
その他
資本
剰余金
×××
×××
×××
利益剰余金
資本
剰余金
合計
利益
準備金
×××
×××
その他利益剰余金
別途
積立金
×××
会計方針の変更を反映
した当期首残高
×××
×××
×××
×××
×××
×××
自己株式
株主資本
合計
△×××
×××
×××
×××
×××
×××
×××
×××
×××
△×××
×××
純資産
合計
×××
∼中略∼
会計方針の変更によ
る累積的影響額
繰越利益
剰余金
利益
剰余金
合計
×××
×××
当期変動額
・・・・・・・
×××
株主資本以外の項目
の当期変動額(純額)
×××
当期変動額合計
×××
×××
─
×××
×××
─
×××
×××
×××
×××
×××
当期末残高
×××
×××
×××
×××
×××
×××
×××
×××
△×××
×××
×××
算上の差異に含めることが考えられますが、適用初年
ある「直近の積立状況等」のうち、「年金財政計算上
度の期首においては、会計方針の変更の影響額に含め
の給付債務の額」については、従来と実質的に同じ内
て、期首の利益剰余金に加減する取扱いも認められて
容の額の注記を求めることとし、名称を「年金財政計
います。また、新基準の変更時である期首時点におい
算上の数理債務の額と最低責任準備金の額との合計
て、重要性基準を考慮せず、新基準による算定方法に
額」と変更して、注記すべき金額を明らかにすること
より算定した新しい割引率を使用して退職給付債務を
が提案されています。
算定した場合にも、適用後の期末以降で従来通り重要
性基準を考慮できると考えられています※1。このた
め、重要性基準を継続適用する、重要性基準の適用を
Ⅳ 企業結合に関する留意事項
取りやめる、適用初年度の期首のみ重要性基準を考慮
しない、という三つのケースが考えられるので、適用
初年度において慎重に検討することが必要です。
平成25年9月に改正された結合基準及び関連する会
計基準等は平成27年4月1日以後開始する連結会計年
なお、本稿記載時点では、国債の応募者利回りが前
度及び事業年度の期首※2から原則適用ですが、<表4>
期末と比較して大幅に下落しているため、期末の割引
の通り、表示に関する改正を除いて、平成26年4月1日
率については慎重に検討する必要があります。
以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早
期適用ができます。
3. 複数事業主制度の会計処理及び開示についての
改正案
1. 取得関連費用の取扱い
複数事業主制度については、平成24年1月31日付
改正前は子会社株式の取得関連費用の一部(取得の
で厚生労働省から通知が発出され、厚生年金基金及び
対価性が認められる費用)については、取得原価に含
確定給付企業年金の財務諸表の表示方法が<図3>の
めることとされていましたが、今回の改正により発生
ように変更されました。これを受けて、ASBJから複
した事業年度で費用処理することとされました。
数事業主制度の会計処理及び開示についての改正案が
平成26年12月に公表されています。
なお、個別財務諸表における子会社株式の取得原価
は会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関す
具体的には、複数事業主制度における、確定拠出制
る実務指針」に従って算出する(すなわち取得原価に
度に準じた会計処理及び開示を行う場合の注記事項で
含まれる)こととされているため、連結と個別では子
※1 企業会計基準委員会(以下、ASBJ)ウェブサイト(会員サイト)に掲載の退職給付会計基準の解説の脚注4参照
※2 暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される企業結合
4 情報センサー Vol.103 April 2015
▶図3 厚生労働省通知による厚生年金基金・確定給付企業年金の財務諸表の表示方法の変更
【厚生年金基金】
(改正前)
(改正後)
純資産(負債)
純資産(負債)
純資産(資産)
純資産(資産)
基本金(不足金)
責任準備金
給付債務
未償却過去勤務債務
残高(B)
数理債務
(A)
最低責任準備金
(継続基準)
基本金(不足金)
責任準備金
(プラスアルファ
部分)
(A)
-
(B)
最低責任準備金
(継続基準)
(注記)
数理債務 XXX 、未償却過去勤務債務残高 XXX
(改正前)
【確定給付企業年金】
純資産(資産)
(改正後)
純資産(負債)
未償却過去勤務債務
残高(B)
基本金(不足金)
純資産(資産)
基本金(不足金)
数理債務
(A)
純資産(負債)
責任準備金
-
(B)
(A)
(注記)
数理債務 XXX 、未償却過去勤務債務残高 XXX
▶表4 改正結合基準等による改正事項と適用時期
主な改正項目
①取得関連費用の取扱い
②暫定的な会計処理の確定の取扱い
会計処理
表示
早期適用
• ①∼③を同時に適用する場合のみ、早期適用可
• 平成26年4月1日以後開始する連結会計年度(事業年度)の期
首から
③非支配株主との取引の会計処理
• 支配が継続する子会社に対する親会社の持分変
動による差額
• 支配が継続する子会社株式一部売却時ののれん
の未償却額
• 暫定的な会計処理の確定の取扱いは、平成26年4月1日以後開
④表示の取扱い
• 現行の「少数株主損益調整前当期純利益」を「当
期純利益」とする等の改正
• 早期適用不可
会社株式の取得原価が異なることになります。
始する連結会計年度(事業年度)の期首以後実施される企業結
合から
に対する親会社の持分を変動させる取引を損益取引と
していました。すなわち、追加取得した場合の持分増加
2. 暫定的な会計処理の確定の取扱い
額と追加投資額との差額は「のれん(又は負ののれん)
」
改正前は、取得原価の配分に関して暫定的な会計処
として処理し、持分を一部売却した場合の持分減少額
理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合、企
と売却価額との差額は売却損益として処理してきまし
業結合年度に当該確定が行われたとしたときの損益影
た。これが今回の改正により、支配が継続している場
響額を、確定した年度において特別損益に計上するこ
合のいずれの取引においても損益取引ではなく、資本
ととされていました。今回の改正により、確定した取
剰余金を増減させる取引として整理され、これらの差
得原価の配分額の見直しを、比較情報となる当該企業
額は「資本剰余金」に計上することになりました。な
結合年度の財務諸表に反映させることになります。
お、株式売却により支配が喪失する場合でも、それ以
前に子会社株式の追加取得又は一部売却により生じた
3. 非支配株主との取引の会計処理
資本剰余金は、そのまま計上することになります。
(1)支配が継続する子会社に対する親会社の持分変動
による差額
改正前は、支配が継続している場合における子会社
情報センサー Vol.103 April 2015 5
会計情報レポート
(2)支配が継続する子会社株式一部売却時ののれんの
未償却額
支配が継続する子会社株式の一部売却時において、
2. 少数株主損益の会計処理
前ページの<表4>の通り、従来の「少数株主損益
調整前当期純利益」を「当期純利益」として表示する
改正前は、のれんの未償却額がある場合には持分の減
こととされ、国際的な会計基準との差異がなくなった
少に対応する額を減額していましたが、改正後は、減
ため、修正項目からの削除が提案されています。
額しないことになりました。
追加取得時にのれんを計上しない処理と整合的な取
3. 適用時期等
扱いとする改正であり、前記の通り、支配が継続する
改正後の実務対応報告は、平成27年4月1日以後開
子会社株式を一部売却した場合の差額は資本剰余金と
始する連結会計年度の期首から適用することが提案さ
して処理することになりましたが、その際に売却持分
れています。ただし、今回の改正により削除された
相当ののれんの未償却額を減額しないこととなります。
「少数株主損益の会計処理」に関する取扱いを除き、
改正後の実務対応報告公表後最初に終了する連結会計
年度の期首から適用できるとされています。
Ⅴ 実務対応報告第18号改正に関する留意事項
なお、改正後の実務対応報告公表後、平成27年3月
期決算において改正後の実務対応報告を早期適用する
ASBJは、平成26年12月に実務対応報告第18号の
場合であっても、のれんに係る経過的な取扱いは、連
改正案「連結財務諸表作成における在外子会社の会計
結会計年度の期首にさかのぼって適用することになり
処理に関する当面の取扱い(案)」を公表し、次の修正
ます。
項目について見直しを提案しています。
1. のれんの償却
Ⅵ 単体開示の簡素化
米国において平成26年1月に、財務会計基準審議会
(FASB)による会計基準のコード化体系であるFASB
Accounting Standards CodificationのTopic 350
「無形資産−のれん及びその他」が改正され、非公開
単体開示の簡素化については、適用2年目を前に、
関連する会計基準の改正案と、適用2年目における留
意事項について解説します。
会社はのれんを10年(又は一定の場合はそれ以下)
で償却する会計処理を選択できるようになりました。
ない場合」には、連結決算手続上規則的に償却する修
1. 自己株式会計基準等の改正案
ASBJから次の三つの注記について、記載の要否の
明確化を図るための改正案が、平成26年12月に公表
正をするとした上で、経過的な取扱いとして、改正後
されています。具体的には、個別株主資本等変動計算
の実務対応報告の適用初年度の期首に連結財務諸表に
書の注記事項として自己株式の種類及び株式数に関す
おいて計上されているのれんのうち、在外子会社が前
る事項を記載する場合等には、これらの注記を併せて
記の米国基準に基づき償却処理を選択したのれんにつ
行うことが提案されています。
このため、在外子会社において「のれんを償却してい
いては、企業結合ごとに次のいずれかによる取扱いが
提案されています。
【経過的な取扱い】
① 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に
基づき償却する。
① 取締役会決議後消却手続を完了していない自己
株式の注記
② 無償取得した自己株式に関する注記
③ 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する
取引に関する1株当たり情報・自己株式の注記
② 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間と
比べて在外子会社が採用する償却期間が下回る
場合、当該償却期間に変更する。この場合、変更
後の償却期間に基づき将来にわたり償却する。
2. 適用2年目以降から財規第127条の規定を用いる
場合
連結財務諸表を作成している会社のうち、会計監査
人設置会社(別記事業会社等を除く)は、特例財務諸
6 情報センサー Vol.103 April 2015
表提出会社とされ、財務諸表等規則(以下、財規)第
決算に反映する必要があります。
127条の適用により会社法の要求水準に合わせた様式
や、注記等を行うことができます。適用初年度におい
2. 繰越欠損金の繰越控除割合の引下げ
て財規第127条の規定を用いた場合には、表示方法の
今回の税制改正では、税率の引下げに対応する課税
変更の注記が行われましたが、影響額の記載は求めら
ベースの拡大策の一つとして、繰越欠損金の繰越控除
れていませんでした(改正財規の附則第2条第2項)。
割合の引下げが大綱に含まれています。
いる場合にも、影響額の記載は不要と考えられます。
具体的には、これまでの80%が、平成27年度には
65 %、平成29年度には50 %となります。平成29年
ただし、適用初年度に例えばリース注記や一株当たり
度以降は、課税所得を大きく超えるような多額の繰越
情報の省略等、附則第2条第2項の括弧書きに規定さ
欠損金を有している企業であっても、欠損金控除前の
れている連結財務諸表作成会社の開示免除規定を一部
課税所得の半分は課税の対象となります。
適用2年目以降から初めて財規第127条の規定を用
でも適用した場合などには、影響額の注記が必要とな
ると考えられます。
税効果会計への影響としては、平成27年3月期末
での繰越欠損金の将来の解消スケジュールが変化する
ことで、繰延税金資産の計上額が減少する可能性があ
ります。
Ⅶ 平成27年度税制改正が税効果会計へ与える
影響
3. その他
その他に税効果会計へ影響を与える大綱の項目とし
ここでは、平成27年度税制改正がこの平成27年3
て、受取配当等の益金不算入に係る規定の改正が挙げ
月期の決算における税効果会計へ与える影響を整理し
られます。<表6>では、当該改正により、将来課税
ます。
所得の見積りに影響する可能性があるほか、連結決算
なお、本稿は平成27年1月14日に閣議決定された
に影響を及ぼす可能性がある関連会社からの受取配当
「平成27年度税制改正の大綱」(以下、大綱)に沿っ
金に係る益金不算入割合を、改正の前後で比較してい
て解説します。最終的に公布される法令の改正内容に
ます。
よっては、税効果会計へ与える影響が異なるケースも
▶表6 関連会社からの受取配当金の益金不算入割合
あるため、ご留意ください。
の改正(抜粋)
1. 税率変更に係る改正
改正前
大綱では、成長志向に重点を置いた法人税改革の目
玉として、税率の引下げが示されています。具体的に
は、平成27年度の法人税率の引下げ、及び平成28年
株式保有割合 益金不算入割合 株式保有割合 益金不算入割合
25%以上
100分の100
1 /3 超
100分の100
25%未満
100分の50
1/3以下
100分の50
度の事業税率の引下げにより、法人実効税率は<表5>
のように段階的に引き下げられます。
改正後
*1
*1
*1
*2
*1 負債利子控除の対象
*2 負債利子控除の対象外
▶表5 法人実効税率の引下げ
(標準税率・3月決算の場合)
平成27年3月期
平成28年3月期
平成29年3月期
34.62%
32.11%
31.33%
特に、株式保有割合が25 %以上1 / 3以下のケー
ス で は、 益 金 不 算 入 割 合 が こ れ ま で の100 % か ら
50%へと減少します。これらの結果、連結財務諸表
税効果会計に適用される税率は、期末時点の一時差
における関係会社の留保利益に係る税効果への影響が
異が将来的に解消されると見込まれる期の税率であり、
考えられ、繰延税金負債の計上額が増加する可能性が
かつ、期末日までに公布されている法令に従うことに
あるため、留意が必要です。
なります。このため、大綱通りの税率引下げが期末日
までに公布された場合には、税率引下げの影響をこの
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