地域と連携した粗飼料生産による低コスト繁殖肥育牛一貫経営 那須 純一(遊佐町) 1 受賞者の概要 遊佐町白井新田にて昭和42年に就農し、現在は繁殖牛47頭、肥育牛55頭、子牛30頭の繁 殖肥育一貫経営を行いながら、水稲2.4haに加え、稲発酵粗飼料(稲WCS)14.3ha(作業受 託) 、牧草8.8ha、稲わら2.0haの自給飼料を生産している。 繁殖肥育一貫経営や稲WCS利用の先駆けであり、稲WCSの肥育牛への給与研究や、 町ぐるみの連携による堆肥活用に重要な役割を果たしてきた。その取組みや経営は地元の 肥育部会からも高い評価を受けている。 2 活動内容 (ha) 稲WCSの面積推移 (1)素牛・飼料の自給 30 遊佐町 第1次オイルショックによる素牛・飼料の高騰をきっかけ 24.17 25 那須氏 に、昭和49年に繁殖牛導入による一貫経営に切り替え、平成 20 16.5 12年には、県内でも先駆けて稲WCSの生産・粗飼料利用を 15 14.3 開始した。現在稲WCSの栽培は、地域の耕種農家と畜産農 14 家が連携することで、転作作物として取り組みやすい品目と 10 7 10 なり、安価な自給粗飼料として、遊佐町全域に取組みが拡大 5 2.8 5.3 した。 2 0 H14 H17 H20 H23 H26 (2)稲WCSの研究 一般的に、肥育牛への稲WCSの給与は、肥育牛の肉質・ 階級を決めるサシの入りをコントロールすることが難しいとされている。 那須氏は、肥育牛にも稲WCSを給与出来れば、さらなるコスト削減が出来ると考え、 平成16年から肥育牛への稲WCS給与の研究を、県畜産試験場と共同で行った。この研究 で、完熟期の立毛乾燥状態の稲を使用することで肉質を高められることを明らかにした。 この研究は県内外に公表され、全国から問い合わせが来るなど注目を集めた。 (3)町が進める循環型農業に貢献 町には「遊佐町共同開発米部会」が組織され、特別栽培や有機栽培の米作りに、町ぐる みで取り組んでいる。そのため、畜産農家の牛ふん・豚ぷんを使用した堆肥の積極的な利 用を進めている。 那須氏も、町内のカントリーエレベーターで発生したもみがら等と混合した完熟堆肥を、 耕種農家へ安価で販売している。耕種農家からの引き合いも強く、散布面積で30ha分を供 給し、町一体で進める循環型農業の重要な一翼を担っている。 3 今後の発展方向 平成19年に長男の那須俊祐氏が後継者として経営に参画 し、繁殖牛50頭・肥育牛70頭の経営を目指している。稲W CS等自給飼料を活用しながら、素牛の安定供給や、肥育 牛の枝重・品質向上に引き続き取り組み、外部環境に左右 されない足腰の強い経営を実践していく。 那須純一氏(左)と後継者俊祐氏(右)
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