参考資料 第3分科会 これまでの議論での主な意見 1.我が国を取り巻く状況の変化を踏まえた教育投資の効果について (1)少子高齢化の進展とその社会・経済に及ぼす影響を踏まえ、教育投資にはどのよ うな効果が期待されるか。その際、少子化の克服、格差の改善、経済成長・雇用 の確保等の観点から、教育投資の効果をどう考えるか。 ○ 少子化の克服のためには、幼児教育と高等教育に係る教育費負担の軽減が必要 であるが、子供の幼児期はもう一人子供を持つかどうかを考える時期であり、負 担軽減の必要性がより高い。幼児教育無償化などの家庭の教育費負担の軽減によ り、教育政策の面からも少子化対策に貢献できる。 ○ 日本は、1960年代にはGNPに比して教育水準の高い世界が注目する国で、 教育費割合も高かった。それが我が国の成長を支えてきたが、第二次臨調以降、 GDPの伸びに教育費の伸びが追いつかなかったことが、現状につながっている。 ○ 教育には、所得階層の流動化により、世代を超えた貧困の連鎖を解消したり、 貧困を防止したりする機能がある。 ○ 教育の公的役割として、格差是正、経済成長、人口再生産、社会統合による社 会の安定の四点があることを、国民に対してもしっかりと訴求していくべき。 ○ 教育費負担の軽減には、個人にとっての所得再分配効果と、社会全体にとって の経済成長効果とがある。また、直接的な測定は難しいが、教育には犯罪や非行 を減少させる効果もある。 ○ 熊本県では、貧困の連鎖を教育で断つために、ひとり親家庭、生活保護世帯、 児童養護施設等の子供への支援を行い、家庭の経済状況にかかわらず、「夢」に チャレンジできるような、奨学資金の給付や学習教室の設置などの取組を進めて いる。 ○ 教育投資を効果的に行うためには、国民幸福量最大化のためにどのような社会 を作っていくか、という部分から考え、そのためにどのような教育政策に優先的 に取り組むかを考える必要がある。 (2)幼児教育、義務教育、高等学校教育、高等教育、生涯学習(社会人の学び直し) などの教育段階における教育投資の効果や優先度をどう考えるか。 ○ 経済社会の構造変化を踏まえると、これからは、子供を産み育てようとする若 1 い世代を重視した再配分が求められる。 ○ 幼児教育については、保護者負担が重く、施設による格差もあり、市町村の現 場から見て、最も課題を抱えているのではないかと感じる。 ○ 少子化の克服のためには、幼児教育と高等教育に係る教育費負担の軽減が必要 であるが、子供の幼児期はもう一人子供を持つかどうかを考える時期であり、負 担軽減の必要性がより高い。幼児教育無償化などの家庭の教育費負担の軽減によ り、教育政策の面からも少子化対策に貢献できる。(再掲) ○ 教育の社会経済的効果により、格差の是正や、医療費・介護費などの支出の削 減を図ることができる。それによって生じた財源を教育財源に振り向けることも 可能になるのではないか。 ○ 我が国の公財政教育支出については、幼児教育と高等教育いずれも不十分で、 課題が大きいのであり、ともに充実することが必要。 ○ 我が国の初等中等教育段階の公財政支出はOECD平均並であるが、実際には、 これ以外に学習塾をはじめとした学校外教育のための保護者負担は大きく、投資 の必要性が低いとは言えない。 ○ 学力テスト等も活用しつつ、教育の効果を客観的に計測し、数値を出していく ことが重要。 2.これからの教育投資、それを実現する教育行財政の在り方について (1) 教育投資の効果、現状等を踏まえ、幼児教育、高等学校教育、高等教育におけ る教育費負担の軽減、幼児教育、初等中等教育の質の向上、高等教育の質・量の 充実、グローバル人材の育成などのために、どのような投資が必要か。 ○ 教育投資は重要であるが、投資には自己責任が伴い、子供の教育権が親にある とすれば、親に選択の自由が保障されないといけない。スウェーデンではバウチ ャー制度が採られていると聞くが、一つの手法ではないか。 ○ 義務教育にも課題がある。我が国は教員の自尊感情が低い。教員の社会的評価 と子供の学力に相関があるとの指摘もあり、また、日本の教育は国際的に見て授 業以外の業務が多く、多忙との結果が TALIS で出ており、教員の質の向上ととも に、定数や処遇の改善が必要。 ○ 米国では、教員の処遇の低下が、教員の質の低下や保護者が教員を尊敬しなく なることにつながり、教育の劣化を招くことが懸念されている。 2 ○ 義務教育について、少人数指導、習熟度別指導のための定数が不十分であり、 また、耐震化やトイレなど施設面での地域間格差がある。義務教育環境に格差が 生じない措置が必要。 ○ 少人数教育などの指導改善、いじめ対応、保護者対応や事務作業などで学校現 場は多忙。35 人学級を 40 人学級に戻すという案は、現場の実態を分かっていな い。 ○ 実践的な英語教育と早期の海外経験でグローバル人材を育てることが重要。熊 本県では、中学生向け英語音声教材の作成・活用や海外留学支援に取り組んでい る。また、国としても「トビタテ!留学 JAPAN」地域人材コースを実施してほし い。 ○ 学業、スポーツ、文化活動で模範となる学生を表彰するなど、才能のある子供 を見つけ出し顕彰すると、本人のモチベーションも上がり、少ない予算で多大な 効果が期待できる。 (2) 国と地方の役割・関係、国公立学校と私立学校の役割・関係、それに応じた公財 政支出の在り方を含め、これからの教育行財政はどうあるべきか。 ○ 家庭の経済状況のため大学に行けない人の進学支援など、教育の機会均等や底 上げは、国として積極的に取り組むべき。 ○ 国、地方の財政が逼迫する中で、切り込みやすかったのが大口の教育費。その 中で、義務教育費国庫負担金の割合も、全国知事会等でも議論の上、1/2から 1/3に引き下げられたが、地方への十分な財政措置がなされておらず、今では 失敗だったと思っている自治体が多いのではないか。 ○ 義務教育について、少人数指導、習熟度別指導のための定数が不十分であり、 また、耐震化やトイレなど施設面での地域間格差がある。義務教育環境に格差が 生じない措置が必要。(再掲) ○ 義務教育は国家的な必要性に応じて行われる事業であるので、その財源につい ては、本来、地方ではなく、国が大部分を担うべきではないか。 ○ 国として果たすべき責任があるというからには、全額ないし半額負担するぐら いの意気込みが必要。国税の控除見直しで収入が確保できた分は国として出すべ きだが、その上で、地方として必要であれば、その分は住民税の控除縮減で生じ た財源によって給付するという形が考えられる。 3 ○ 教育には、国家公共財と、地域に根ざした公共財という二つの側面がある。現 場での自由な創意工夫を促すためには、使い道が限定される国費と、自由に使え る自主財源とをうまく組み合わせていくことが必要。 ○ 国立大学の授業料が現在のように高くなると、所得が低い家庭の子供が、能力 があっても大学教育を受けられなくなっているのではないか。 ○ 大学教育による公的な便益は、国公立大学による場合と私立大学による場合と で違いはないので、公財政支出の差の見直しも必要。 3.教育財源の確保の在り方について (1) 世代を超えて全ての人たちで子供・若者を支える安定的な教育財源を確保する ための財源の在り方はどうあるべきか。その際、幼児教育、初等中等教育、高等 教育といった教育段階や、機関補助、個人補助の違いなどに応じてどのように考 えるか。 ○ 教育予算に関しては、単に毎年の比較でのみ考えるのではなく、まずは複数年 度に渡る大きな目標や計画を立てて、それを実現するために政府としても財源を 考えていくべき。 ○ もっと教育を政治の場で論点として取り上げられるようにし、政治のイニシア ティブによって、教育投資の拡大を図っていくべき。 ○ 貧困家庭の子供にも等しくチャンスが保障される夢のある国にするためには、 高齢者世代の社会保障経費からも子供たちへの教育投資に移し替える必要があ る。 ○ 教育投資の充実のためには国民的な理解が必要。議論を通じて、少子高齢化の 中、孫を持つ祖父母世代からも、社会保障よりも教育を優先すべき、ある程度の 負担をしても良いという声が上がるような環境づくりが必要。 ○ 税率が高くても政府が最後まで面倒を見てくれるという信頼があれば、抵抗感 は少なくなる。また、税金を「取られる」という意識を切り替えることも重要。 そのためには、初等中等教育段階から、税制に対する理解を深めるような教育が 必要ではないか。 ○ 高等教育の教育費負担の軽減が必要であり、国民に税を使うことを納得しても らう必要がある。そのためには教育の社会経済的効果を具体的に示すことが必要。 4 ○ 教育財源確保のために増税するには、教育効果を定量化して情報開示していく とともに、今ある政策のビルド・アンド・スクラップを行うという順序を踏むこ とが求められる。 ○ 35 人学級見直しの議論は、義務教育予算を削って幼児教育無償化に回し、教育 予算の枠内で帳尻を合わせようというもので、本末転倒。省庁や分野を超越した 議論、新たな財源の在り方に関する議論こそ必要。 ○ 現代社会は高度化・複雑化しており、基礎・基本だけでは通用しない。社会で 活躍するのに必要な教育を高等教育段階まで受けるのに、その負担を個人や家庭 だけに委ねるのは限界。幼児教育から生涯学習まで、それぞれ機関補助と個人補 助の適切な組み合わせを考えていく必要がある。 ○ 教育の社会経済的効果により、格差の是正や、医療費・介護費などの支出の削 減を図ることができる。それによって生じた財源を教育財源に振り向けることも 可能になるのではないか。(再掲) ○ 教育政策のうち、少子化対策への関わりが強い取組の充実に当たっては、社会 全体で費用負担していくべき。財源確保に向けて、①全世代で負担、②高齢者か ら子供へ世代的な予算配分の見直し、③配偶者控除の見直しなど現役・子育て世 帯内での予算配分の見直し、の3つの方向性が考えられる。 ○ 教育政策の実現のためには、 「教育投資の重要性に関する国民への訴え」と、 「安 定的な財源確保」が必要。教育予算の重要性への理解の素地は既にあるので、今 後は、既存の予算の見直しや、優先順位の整理によって最も効果的なものに投資 する、という視点が必要。また、「新たな財源の確保」は是非とも必要であり、 具体的には消費税のアップによっても確保できるのではないか。 ○ 消費税の 10%引き上げに関しては、低所得の年金生活者への給付が議論されて いるが、今後の消費税増税の議論の中では、若い世代の低所得者対策についても、 前もって制度を企画し、提起していくべき。 ○ 格差によって人々から教育の機会が奪われることは、経済成長のマイナス要因 になる。経済成長を促進する観点から教育財源を考えるならば、成長を損なわな いよう、薄く広く課税することが望ましい。 ○ 大学は消費増税の仕入課税分を転嫁できずに自ら負担している。それなら、授 業料に課税(消費税)し、その財源を給付型奨学金に活用することも考えられる。 ○ 我が国の所得税制は、控除が過度に手厚いため、課税対象所得が減り、所得再 配分機能・所得格差是正機能が小さい。累進税率を上げる前に、まずは各種の控 5 除を見直すべき。このような課税ベースの侵食の見直しで確保された財源を、未 来への投資や貧困の連鎖の防止としての教育にあてることについては、国民の理 解も得られやすいのではないか。 ○ 所得格差是正効果を考慮して、税額控除も活用すべき。控除の見直しと給付と を結びつけるためには、控除によって恩恵を受けていたのと同じ年齢層への給付 として活用する方法が考えられる。具体的には、扶養控除を縮減・廃止すること によって得た財源は、低所得の世帯の子供の授業料の減免や奨学給付の拡充等に 活用してはどうか。また、特定扶養控除の見直しによる、大学生への給付型奨学 金や授業料減免の拡充も考えられる。 ○ 世代内と世代間の両方における所得の再分配を、同時に進めていく必要がある。 配偶者控除の見直しは慎重にすべきだが、子育て世代の経済的負担を軽減するた めのものであれば必要。 ○ 配偶者控除については、政府税調でも見直しの議論が行われているが、これに より生まれる財源の活用方策の議論はなされていない。幼児教育の財源に充てた いと考えるのであれば、早めに打ち出すのが良いのではないか。 ○ 公的年金控除の見直しについては、年金高所得者層の控除に上限を定めて課税 対象を広げる方法が考えられる。そこで得られた財源は、世代を超えた支え合い に活用する方向で議論を進めていくべき。 ○ 高齢者世代の遺族年金については、課税前同額の年金収入を得ている人との間 で不均衡が生じないよう、課税対象とするよう、見直していくべきではないか。 ○ 相続税を強化して生じた財源を教育に回すことができれば、家族の枠を越えた 再配分・所得階層の流動化が可能となる。相続税の強化と贈与税の減税をうまく 組み合わせていくべき。 ○ 幼児教育のためには、例えば、特別相続税など独自の財源を考えるべきではな いか。 ○ 高等教育のために、出世払い方式の奨学金や、新人採用の人数に応じた企業法 人税なども財源として考えられるのではないか。 ○ 採用・雇用にかかる税金には、雇用を阻害する側面がある、という点に留意が 必要。企業には、雇用を作り新しい付加価値を生み出すという、最も重要な役割 に特化してもらうほうがよい。 6 (2) 在学中の費用を卒業後の収入に応じて負担する所得連動返還型奨学金、税制上 のインセンティブを通じた民間資金の活用、世代間資産移転などの方策による財 源確保の在り方についてどう考えるか。 ○ 民間資金の導入は必要だが、まず国や県が自ら投資しようという主導的な姿勢 と、応援を得るための政策 PR が必要。 ○ 給付型奨学金は意味があるが、外に財源を求めるだけでなく、大学の授業料に ついて、成績上位者の授業料を引下げ、下位者は引き上げるなどメリハリを付け ることも考えられる。 ○ 大学は高授業料・高奨学金とした上で、様々なインセンティブを付して奨学金 を獲得させるようにする方が、勉学のモチベーション向上にもつながるのではな いか。 ○ 一方で、学生の成績により授業料を変えることや高授業料・高奨学金とするこ とは、大学の中では賛同を得るのは難しい。 ○ 所得連動型奨学金や高等教育への寄附・基金の拡充などの教育費の配分構造を 再検討することが必要。 ○ 法人からの寄附に関する所得・税額控除の仕組みも必要。また、ふるさと納税 を参考にして、ある地方大学に寄附をした場合に、好きな授業やコースが受けら れるような仕組みも考えられるのではないか。 ○ 税の見直し以外に、自助努力を促進する仕組みも必要。具体的には、非課税の 貯蓄口座の拡充や、社会人の学び直しにかかる授業料の所得控除、PPP や PFI の 活用、ボランティアによる高齢者の活用なども考えられる。 [了] 7
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