特 集 知らなかったでは済まされない。 短期暴露評価導入により変更される 農薬の使用方法の概要について 農薬は使用方法を誤ると、農作物だけではなく 人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。 今月号の特集では、この度厚生労働省が導入に 踏みきった農薬の「短期暴露評価」について取り 上げます。 短期暴露評価導入の背景 ∼長期暴露評価と 短期暴露評価 こ れ ま で 残 留 農 薬 に つ い て は、 一日摂取許容量(ADI)を超え なければ食品衛生上問題ないとさ れていましたが、国際的には健康 への影響度をADIに加えて急性 参照用量(ARfD)を用いて評 価しています。 そこで厚生労働省は摂取者(= 消費者)の一日最大摂取量につい て調査を進めていましたが、この たびARfDを加味した農薬残留 基準値設定の目処が立ったことか ら、急性参照用量(ARfD)を 指標とした農薬の 短期暴露評価を 導入しました。 これからは農薬の安全性につい ては長期暴露評価と短期暴露評価 の両方を用いて評価することとな り、既存の農薬については再評価 が必要となっています。 長期暴露評価と短期暴露評価 ⃝ 一日摂取許容量(ADI) 一生摂取し続けた場合の、 1日における体重1kgあたりの許容量 長期暴露評価 ⃝ 急性参照用量(ARfD) 短時間(24時間)に大量に摂取した場合の、 一日における体重1kgあたりの許容量 考え方 起こりやすい 事態を想定 最悪の事態を想定 食品摂取量 平均的摂取量 多食者の摂取量 残留濃度 (可食部) 4 短期暴露評価 現実的 最大 (残留試験の中央値) (残留試験の最大値) に基づいた毒性評価によって行わ 農 薬 の 安 全 性 評 価 は、 毒 性 試 験 われている薬剤もあります。薬剤 い、 既 に 登 録 内 容 変 更 の 申 請 が 行 農薬の短期暴露評価導入に伴 フルバリネート マブリック水和剤20、マ ブリック EW など7剤 大粒種ぶどう、トマトの削除 レタスの使用時期の変更 フェナリモル ルビゲン水和剤 スペックス水和剤 トマト、ももの削除 NAC ミクロデナポン水和剤85 など6剤 ぶどう、はくさいの削除 ベンフラカルブ オンコル OK 粒剤、ジャッ ジ箱粒剤など12 剤 きゅうり、すいか、メロン、 なす、なばな、キャベツ、は くさい、だいこん、ブロッコ リーなどの削除 ベンフラカルブ ジメトエート乳剤、ジメ トエート粒剤、ベジホン なす、ねぎ、はくさい、トマ ト、ピーマン、かぼちゃ、か 乳剤 ぶ、にんじん、たまねぎなど の削除 ※変更内容は農薬(商品名)ごとに異なる。 登録内容の変更申請が行われている薬剤の一例 Vol.392 5 備考 H27.2 月頃 登録変更予定 短期暴露評価導入に伴う 薬剤の登録変更について れ て い ま す。 こ の 毒 性 は、 急 性 毒 の一例を下表に示していますが、 主な変更内容 農薬の安全性評価 ∼誰に対する毒性の評価? 性と慢性毒性の2種類に分類され こういった薬剤を使用している場 主な農薬名 ま す。 そ れ ぞ れ の 毒 性 の 内 容 に つ 有効成分名 薬剤を散布する自園地の作物だ 農薬の安全性評価 けではなく、近隣の園地で栽培さ ・慢性毒性は農作物を摂取する人を想定。 ・農薬の使用法に基づく暴露量評価 れている作物に気をつけることも 重要です。 ② 慢性毒性 長期間にわたって微量の農薬を摂 取し続けた場合の毒性。 ADIとして既に導入済み。 合は注意が必要です。 これまでは急性毒性については散布者の みを想定。 今般、新たに消費者に対する急性毒性に ついて急性参照用量(ARfd)を導入 いて左 表 に ま と め ま し た 。 ① 急性毒性 短期間に農薬を摂取した場合の毒性。 適用病害名 ・・・ 作物名 適用病害名 ・・・ りんご 黒星病、・・・ ・・・ りんご 黒星病、・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ りんご 黒星病、・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 新たな農薬の使用方法と ﹁ラベル主義﹂ 短期暴露評価によって使用方法 が 変 更 さ れ た 農 薬 に つ い て は、 変 更 さ れ た 使 用 方 法( 登 録 内 容 ) に 基づいて新たな残留基準値が設定 さ れ ま す。 そ の た め、 使 用 方 法 が 変更された農薬については従来の 適用病害名 最終有効年月 2015.09 ② 短期暴露評価の導入後 この例の場合、①の短期暴露評価導入前であれば 最終有効年月まではラベル通りの内容で使用できる (ラベル主義)が、②の短期暴露評価後は最終有効 年月によらずラベル通りの内容で使用できなくなる。 作物名 使用方法の変更 方法で使用すると残留基準値を超 ① 短期暴露評価の導入前 最終有効年月 2015.09 過 す る 可 能 性 が 高 い こ と か ら、 ラ 作物名 最終有効年月 2015.09 使用方法の変更 ベル主義によらずに変更後の使用 方法に基づいて使用する必要があ おわりに ∼これからの対応 短期暴露評価導入により使用方 法が変更される農薬については、 引き続き青森県を通じて国から情 報が提供されます。 現時点でりんご生産に関わる部 分についての使用方法変更の情報 はありませんが、今後使用方法の 変更についての情報が発表された 場合は、当広報誌「林檎の森」や 巡回講座、店頭への掲示などを通 じて皆さんへ周知いたします。組 合員の皆さんにおかれましては、 農薬使用の際には今一度使用方法 を確認しくださるよう、よろしく お願いいたします。 ※ 参考資料 日開催) 」配 6 ります 。 な お、 使 用 方 法 の 変 更 に 伴 っ て 適 用 外 と な っ た 作 物 に つ い て は、 一律の 残 留 基 準 が 設 定 さ れ ま す 。 ※ ラベル主義 登 録 内 容 が 変 更 さ れ て も、 最 終 有 効 年 月 内 に お い て、 変 青 森 県 農 林 水 産 部 食 の 安 全・ 安 心 課 主 催「 ﹃短期暴露 月 24 更される前の使用方法で使用 できるとされている。 評価導入により変更される農 年 12 薬の使用方法﹄に係る研修会 (平成 付資料 26 適用病害と使用方法 適用病害と使用方法 適用病害と使用方法 新しい農薬の使用方法とラベル主義
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