みずほインサイト 米 州 2015 年 3 月 26 日 米国学生ローン問題の実態 欧米調査部ニューヨーク事務所 現行の救済策が示す問題の根深さ +1-212-282-3532 服部直樹 [email protected] ○ 米国の学生ローン問題には、①大学中退者が中心とみられる小額債務者のデフォルト、②雇用環境 改善の遅れによる大卒者の返済能力の低下、という2つの側面が存在 ○ デフォルトや返済負担の重さは、住宅市場に悪影響を及ぼすおそれがあることから、米国では学生 ローン問題への政策対応とその評価に関する議論が盛んに行われている状況 ○ 現行の救済策では、返済額が軽減される一方、返済期間の延長により総返済額が増加する弊害も。 救済策の利用は、債務者の資産形成の遅れという新たな問題を内包 米国の住宅バブル崩壊から8年が経過した。家計が過剰債務の調整を進める中、唯一残高が増加傾向 を続けている債務がある。それは学生ローンだ(図表1)。2014年末時点の残高は約1.2兆ドルと、こ の10年間でほぼ約3倍に増加し、自動車ローン(約1兆ドル)やクレジットカードローン(0.7兆ドル) の残高を上回るまでに至っている。また、学生ローンの返済延滞率1は高止まっており、景気回復によ って他のローンの返済延滞率が低下しているのとは対照的な動きだ(図表2)。 こうした学生ローンの債務残高の増加や返済延滞率の高止まりが、住宅市場に対する悪影響を通じ て景気拡大ペースを弱める可能性があるとの見方が、専門家の間で広がっている。そこで本稿では、 米国における学生ローンの実態と経済への影響について確認することとしたい。 図表 1 家計のローン残高 図表 2 16 (%) 1.4 (兆ドル) 1.2 1.0 学生ローン 自動車 ローン 14 1.16 クレジット カードローン 学生ローン 12 0.96 10 0.8 8 0.70 6 0.6 0.4 家計のローン返済延滞率 過剰債務調整 4 クレジット カードローン 2 0.2 自動車 ローン 住宅ローン 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (注)網掛けは景気後退期。 (資料)ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 (注)1.90日以上延滞した債務者の割合。 2.網掛けは景気後退期。 (資料)ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 1 1.学生ローン問題の 2 つの側面 (1)借入残高が小さいほど高いデフォルト率 今年2月にニューヨーク連銀が発表した学生ローンに関する分析2では、学生ローンのデフォルト(債 務不履行)に関する意外な事実が明らかになった。通常は、借入残高が大きく、返済負担が重い債務 者ほど、デフォルトに陥りやすいと考えられがちだが、最近の学生ローン債務者については全く逆の 傾向がみられるというものだ。 図表3は、2009年に学生ローンの返済を開始した人を、借入残高別にグループ分けし、それぞれのグ ループにおいて2014年末までにデフォルトした人がどの程度いるかを表したものである。ここでいう デフォルトとは、返済を270日以上延滞した人を指す。 これをみると、学生ローンの借入残高が小さいグループほど、デフォルトを経験した人が多いこと が分かる。借入残高が1,000~5,000ドルのグループではデフォルト率が33.5%、5,000~10,000ドルの グループでは28.5%と、返済開始から5年間でおよそ3割の人がデフォルトした計算だ。これらのグル ープは借入残高こそ小さいが、人数ベースでは4割超を占めており、その影響は決して無視できない。 では、なぜ、借入残高が小さく、返済負担が軽いと思われるグループでデフォルトが多発している のか。その背景には、大学中退、いわゆるドロップアウトの問題がある。大学中退者は在学期間が短 いため、当然ながら、その分学生ローンの借入残高も小さい。ただ、残高は小さいが、同時に中退し てしまうと年収の増加も期待できない3。その結果、大学中退者には収入の増加という恩恵がないまま 学生ローン債務だけが残り、返済が困難になってしまうというわけだ。学生ローン債務者に占める大 学中退者の割合は、2003~2009年時点で29%に達しているとの調査もあり4、こうした大学中退者の存 在がデフォルト率を上昇させる一因になったと考えられる。 図表 3 借入残高別にみたデフォルト率 図表 4 40 (%) 借入残高別にみた返済繰延率 30 (%) 30 20 20 33.5 28.5 23.5 10 23.4 10 20.7 20.6 17.6 8.5 0 22.4 17.1 10.8 12.5 0 1-5 5-10 10-25 25-50 50-100 100学生ローン債務残高 (千ドル) 1-5 (注)2009年に学生ローンの返済を開始したグループが 2014年末までにデフォルトを経験した割合。 (資料)ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 5-10 10-25 25-50 50-100 100学生ローン債務残高 (千ドル) (注)2009年に学生ローンの返済を開始したグループが 2014年末までに返済繰り延べを経験した割合。 (資料)ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 2 (2)借入残高が大きい債務者では返済負担の重さが問題に 一方、学生ローンの借入残高が大きいグループでは、残高が大きいゆえに返済負担の重さが問題と なる。前頁の図表4は、図表3と同様の方法で、2014年末までに返済を繰り延べたことがある人の割合 をみたものである5。借入残高が大きくなるほど、返済繰り延べを経験した割合が高くなる傾向がある ことが分かる。 ここでいう「返済の繰り延べ」とは、連邦政府が返済に窮した学生ローン債務者に対して提供して いる救済策を利用した人の割合である。この救済策を利用すると、通常10年の返済期間が最大20~25 年に延長されるとともに、返済額が収入の10~20%に軽減される(救済策の詳細と効果については後 述)。つまり、この割合が高いということは、デフォルトこそしていないが、当初の計画どおりに返 済を続けられない人が相応にいることを示している。 (3)大卒者の就職難により返済能力が低下 学生ローンの借入残高が大きいグループには、4年制大学卒業以上の学歴(修士号、博士号などを含 む)を保有している人が多いとみられる。4年制大学卒業以上の学歴を保有している人は、在学期間が 長い分、借入額も多くなるためだ。ただ、そうした人は、本来であれば高額な学生ローンに見合う収 入が卒業後に得られるはずである。事実、米国労働省のデータでは、4年制大学卒業者の年収は57,616 ドルと、高校卒業者(33,852ドル)の約1.7倍となっている。 しかし、全ての大卒者がこうした高い学歴の恩恵を受けられるという保証はない。とりわけ、若い 世代では、雇用環境が思うように改善していないことが、学生ローンの返済能力を低下させる一因と なっている可能性が高い。 図表5は、18~34歳で4年制大学卒業以上の学位をもつ人の広義失業率をみたものである6。広義失業 率とは、通常の失業率に、一時的に職探しを諦めた人や、不本意ながらパートタイム労働に従事して 図表 5 若年大卒者の広義失業率 図表 6 32 (%) 10 (%) 9 31 8 30 7 31.0 29 7.6 6 28 5 27 26 4 3 親と同居する若年層(18-34 歳)の割合 (年) (年) 25 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 (資料)センサス局より、みずほ総合研究所作成 (注)1.18~34歳で4年制大学卒業以上の学位をもつ人。 2.広義失業率=(失業者+縁辺労働力人口+経済的 理由によるパートタイム就業者)/(労働力人口+縁辺 労働力人口)。 (資料)センサス局より、みずほ総合研究所作成 3 いる人を加味したもので、雇用環境の改善・悪化度合いを幅広く捉えることができる指標である。 これをみると、景気後退によって広義失業率が急上昇(2007年:4.8%→2010年:9.8%)し、その 後の景気回復局面でも改善ペースが鈍いことが分かる。2014年時点の広義失業率は7.6%と、依然歴史 的な高水準だ。それだけ、若年大卒者の雇用環境が未だ厳しいことを意味している。 また、若年大卒者がフルタイムの職に就くことができたとしても、それが希望通りの職業であると は限らない。大卒者が大学卒業資格を必要としない職種で働く、いわゆるUnderemployment(不完全雇 用)の問題があるためだ。ニューヨーク連銀が昨年発表したレポートでは、大学卒業資格を必要とし ない職種で働く若年大卒者が増加傾向にあることが指摘されている7。さらに、そうした職種の中でも、 ウエイターや小売販売員といった相対的に賃金水準が低い職種で働く人が増えているという。こうし た結果も、若年大卒者を取り巻く就職環境の厳しさを表しているといえるだろう。 2.学生ローンの問題が、住宅市場に悪影響 近年、学生ローンのデフォルトや返済負担の重さといった問題が、若年層の経済活動に悪影響を及 ぼしているとの見方が増えている。とりわけ、米国で関心を集めているのが住宅市場への影響である。 ここで、学生ローンの問題が住宅市場に悪影響を与えるメカニズムを確認しよう。 まず、容易に想像できるのが、デフォルトによる信用度の低下などから住宅ローンの借り入れがで きなくなり、結果として住宅購入が困難になるケースである。事実、学生ローンは、返済を270日以上 延滞すればデフォルトと判定され、残債を即時返済することが要求される。そうした残債の返済が完 了するまでは、住宅ローンの借入はほぼ不可能とみてよい。加えて、残債の返済が完了した後でも、 デフォルトによって大きく低下したクレジットスコア8を修復するには数年を要するといわれている。 また、学生ローン返済負担の重さは、世帯形成の鈍化を通じて住宅市場に悪影響を及ぼす可能性が ある。学生ローンの返済負担の重さから、住居費(家賃もしくは住宅ローン返済資金)を捻出できず、 大学卒業後も親元を離れられない若者が増えるためだ。実際、若年層(18〜34歳)で親と同居してい る人の割合をみると、2007年以降急速に上昇し、今もなお高止まっている(前頁図表6)。それだけ、 世帯数の増加ペースが削がれているということだ。 なお、学生ローンの問題は、住宅市場だけでなく自動車購入にも悪影響を与えていると指摘されて いる。ニューヨーク連銀の調査によれば、自動車ローンを借り入れている学生ローン債務者の割合は、 今回景気回復局面に入って大きく低下したという9。住宅の場合と同様に、返済負担の重さから学生ロ ーン債務者が自動車ローンを利用しにくくなったとみられる。 3.救済策による返済額軽減には弊害も 学生ローンの問題に対して、連邦政府は学生ローン返済負担を軽減するための救済策を提供してい る。救済策には、主にPay As You Earn Plan(PAYE)、Income-Based Repayment Plan(IBR)、 Income-Contingent Repayment Plan(ICR)の3種類があり、これらを利用すれば、返済期間が通常の 10年から最大20~25年に延長され、月々の返済額が収入の10~20%程度に軽減される(次頁図表7)10。 4 しかも、返済期間終了時点で残っている債務については、特例として支払いが免除される仕組みだ11。 米教育省が示している数値例をもとに、救済策の内容を詳しくみてみよう。図表8は、救済策を利用 した場合に当初返済額、総返済額、返済期間がどのように変化するかを、借入額別に例示したもので ある。例えば、学生ローンを40,000ドルを借りた人のケースでは、通常の10年間の返済プランでは毎 月の返済額が491ドルとなるが、返済額が最も軽減されるPay As You Earn Plan(PAYE)を利用すると、 当初返済額が月間188ドルに抑えられる。一方、返済期間が10年から20年に延びるため、その分金利負 担が増し、総返済額は58,873ドルから85,237ドルに膨れ上がる。 連邦政府による救済策は、確かに足元の学生ローン返済負担を緩和するには有効である。救済策の 利用によって月々の学生ローン返済額が軽減されれば、家賃に充当できるキャッシュが増えるため、 賃貸住宅の需要拡大という面では住宅市場に一定の効果があるだろう。 しかし、先の数値例で確認したように、一部の人を除いて総返済額が大幅に増加する弊害があるこ とには注意が必要だ12。また、返済を長期にわたって継続することになれば、資産形成という面で大 きな問題が生じかねない。住宅価格が長期的にみて上昇傾向にある米国では、早い段階で住宅を購入 することが資産を形成するための重要なステップとなるからだ。資産形成の遅れにより、学生ローン 債務を抱える人とそうでない人の間で、将来的な資産格差が生じることも懸念されている13。政府の 救済策に対しては、問題を先延ばしにするだけで根本的な解決策になっていないとの批判も多いのが 現状である。 そうした中、オバマ大統領は学生ローン問題に対する政策対応の新たな一手として、学生ローンの 借入・返済に関する透明性の向上などを目的とした“Student Aid Bill of Rights”を発表した(3 図表 7 救済策 PAYE/ IBR(注2) IBR(注3) 救済策の詳細 軽減後の返済額 収入の10 % 収入の15 % 図表 8 借入額 最大返済期間 20年 25年 救済策の利用による返済条件の変化例 通常 PAYE/ IBR (注4) 固定返済額 総返済額 当初返済額 総返済額 返済期間(カ月) $20,000 $40,000 $60,000 $245 $491 $736 $29,437 $58,873 $188 $188 $188 $188 $188 $31,380 $85,237 $89,061 $89,061 $89,061 135 240 240 240 240 $281 $281 $281 $281 当初返済額 IBR(注5) ICR 収入の20 % 25年 総返済額 返済期間(カ月) 当初返済額 (注)1.収入は貧困ガイドライン額の150%を 控除した額。 2.IBRは2014年7月1日以降に新たに 学生ローンを借り入れた人が対象。 3.2014年6月30日以前に学生ローンを 借り入れた人が対象。 (資料)米国教育省より、みずほ総合研究所作成 利用不可 ICR 総返済額 返済期間(カ月) $191 $33,738 163 $80,000 $100,000 $981 $1,227 $88,310 $117,747 $147,183 $73,192 $149,964 $192,465 $200,062 175 271 300 300 $382 $472 $472 $472 $67,475 $106,678 $172,634 $272,028 163 176 227 (注)1.アラスカ州・ハワイ州以外の独身・単身世帯居住者について、当初の年収が 40,000ドルであり、その後年間5%のペースで収入が増加すると仮定。 2.借入金利は8.25%。 3.通常返済期間は120カ月として計算。 4.IBRは2014年7月1日以降に新たに学生ローンを借り入れた人が対象。 5.2014年6月30日以前に学生ローンを借り入れた人が対象。 6.救済策を利用した場合の総返済額が、通常返済時より増加する場合は赤字、 減少する場合は青字で示す。 (資料)米国教育省より、みずほ総合研究所作成 5 288 月10日)。その中で特に注目を集めているのは、デフォルト時における学生ローン債務の取り扱いに 関する基準を変更する必要性が指摘された点である14。現状では、デフォルトによる学生ローン債務 の免責は原則として認められておらず、債務者が返済負担から逃れられない要因となってきた。 しかし、デフォルトによる債務免責が認められれば、一部の債務者にとってはデフォルトによる不 利益を債務免責による利益が上回り、意図的なデフォルトにつながるという新たな問題が発生する。 デフォルトの増加によって債務免責額が予想以上に膨らめば、そのコストはローンを保証する連邦政 府を通じて、最終的に納税者が負担することとなる。そのため、債務免責を認めるための破産法の改 正には、共和党を中心とする強い反対が予想され、実現する可能性は今のところ小さい。 結局のところ、学生ローン問題を根本的に解決するためには、大学貯蓄口座(College-Saving Account)などを利用した学費の積み立てを奨励し、学生ローンへの依存度を低下させる政策対応が最 も現実的とみられている15。もちろん、こうした政策の効果が現れるまでには長い期間が必要であり、 問題を一朝一夕に解決することは難しい。 学生ローンが、高等教育の普及を通じて、経済の発展に重要な役割を担っていることは言うまでも ない。しかし、足元ではその副作用が若年層に対する重い負担として現れており、将来にわたって経 済成長力を弱める要因となることが懸念されている。今後、学生ローン問題の根本的な解決に向けて どのような政策が採られるのか、引き続き注視する必要がありそうだ。 【参考文献】 Abel, Jaison R., Richard Deitz and Yaqin Su (2014), “Are Recent College Graduates Finding Good Jobs?” Current Issues, Volume 20, Number 1, Federal Reserve Bank of New York Brown, Meta and Sydnee Caldwell (2013), “Young Student Loan Borrowers Retreat from Housing and Auto Markets” Liberty Street Economics, Federal Reserve Bank of New York, April 17 Brown, Meta, Andrew Haughwout, Donghoon Lee, Joelle Scally and Wilbert van der Klaauw (2015-1), “Looking at Student Loan Defaults through a Larger Window” Liberty Street Economics, Federal Reserve Bank of New York, February 19 Brown, Meta, Andrew Haughwout, Donghoon Lee, Joelle Scally and Wilbert van der Klaauw (2015-2), “Payback Time? Measuring Progress on Student Debt Repayment” Liberty Street Economics, Federal Reserve Bank of New York, February 20 Elliott, William and Melinda Lewis (2014), “The Student Loan Problem in America” The Assets and Education Initiative, University of Kansas Elliott, William, Melinda Lewis, Michal Grinstein-Weiss, and IlSung Nam (2014), “Student Loan Debt: Can Parental College Savings Help?” Review, Fourth Quarter 2014, 96(4), pp.331-357, Federal Reserve Bank of St. Louis Nguyen, Mary (2012), “Degreeless in Debt: What Happens to Borrowers Who Drop Out” Charts 6 You Can Trust, Education Sector, American Institute for Research, February 23 1 返済を 90 日以上延滞した債務者の割合。なお、デフォルト(債務不履行)は含まない。学生ローンの場合、270 日 以上の延滞はデフォルトに分類される。 2 Brown, Haughwout, Lee, Scally and Klaauw (2015-1) を参照。 3 米国労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)の学歴別週給データ(2013 年の中央値)をもとに、1 年を 52 週として年収を計算すると、学歴別の年収は高校卒業者が 33,852 ドル、大学中退者が 37,804 ドルとなる。 4 Nguyen (2012) を参照。 5 Brown, Haughwout, Lee, Scally and Klaauw (2015-2) を参照。 6 本稿では、米国労働省労働統計局が公表する雇用統計の U-6 を広義失業率と呼んでいる。U-6=(失業者+縁辺労働力 人口+経済的理由によるパートタイム労働者)/(労働力人口+縁辺労働力人口) であり、このうち、縁辺労働力人口 (Marginally Attached to the Labor Force)が「一時的に職探しを諦めた人」、経済的理由によるパートタイム労働 者(Part Time for Economic Reasons)が「不本意ながらパートタイム労働に従事している人」に該当する。 7 Abel, Deitz and Su (2014) を参照。 8 クレジットスコアは債務者の信用度を計測する指標であり、債務者のローン返済行動や債務残高などが点数化される。 代表的なものに Fair Isaac Corporation が作成した FICO スコアがある。 9 Brown and Caldwell (2013) を参照。 10 なお、返済額の計算に使用される収入額は、貧困ガイドライン額(2014 年は 1 人世帯で 11,670 ドル)の 150%を控 除したもの。 11 ただし、債務免除額には所得税が賦課される。 12 学生ローン借入額が大きく、かつ収入の少ない学生ローン債務者ほど、救済策を利用すれば返済期間終了時点で免 除対象となる残債額が大きくなるため、通常返済時よりも総返済額が減少する可能性がある。図表 8 の数値例の前提に 基づいて計算すると、各救済策を利用した場合に通常返済時よりも総返済額が減少する学生ローン借入額の閾値は、 Pay As You Earn Plan(PAYE)が約 60,000 ドル、Income-Based Repayment Plan(IBR、2014 年 6 月 30 日以前の借入)が 約 135,000 ドル、Income-Contingent Repayment Plan(ICR)が約 210,000 ドルとなる。一方、米国教育省のデータを 用いて、実際に各救済策を利用した債務者の一人当たり平均債務残高(2014 年末時点)を計算すると、Pay As You Earn Plan(PAYE)が約 41,000 ドル、Income-Based Repayment Plan(IBR)が約 56,000 ドル、Income-Contingent Repayment Plan(ICR)が約 35,000 ドルと、いずれも閾値を下回っている。したがって、救済策の利用によって総返済額が減少す るケースは必ずしも多くないとみられる。 13 Elliott and Lewis (2014) を参照。 14 Arne Duncan, “The Student Aid Bill of Rights: Enhancing Protections for Student Loan Borrowers” The White House Blog, March 10, 2015 を参照。 15 Elliott, Lewis, Grinstein-Weiss and Nam (2014) を参照。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 7
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