ニッセイ基礎研究所 No.14-214 18 Mar. 2015 資金循環統計(14 年 10-12 月期) ~個人金融資産は過去最高の 1694 兆円、前年比で 50 兆 円増 経済研究部 上野 剛志 E-mail: [email protected] シニアエコノミスト TEL:03-3512-1870 1. 個人金融資産(14 年 12 月末): 前期比では 40 兆円増 2014 年 12 月末の個人金融資産残高は、前年比 50 兆円(3.0%)増の 1694 兆円となった1。残高はこれ までの最高であった 9 月末を上回り、過去最高を更新した。年間で資金の流入超過が 27 兆円あったのに 加え、円安・株高を受けて時価2が 23 兆円増加(うち株式・出資金が 9 兆円増、投資信託が 7 兆円増)した ことで残高が大きく拡大した。 四半期ベースでは、前期末(14 年 9 月末)比で 40 兆円の増加となった。例年 10-12 月期は一般的な賞 与支給月を含むことからフローで流入超過となる傾向があり、今回も 23 兆円の流入超過となった。また、 10-12 月期には、日銀の追加緩和等を受けて大幅な円安・株高が進んだため、時価が 17 兆円増加(うち 株式・出資金が 8 兆円増、投資信託が 5 兆円増)し、残高をさらに押し上げた(図表 1~4)。 (図表1) 家計の金融資産残高(グロス) (兆円) 1800 1644 1694 1552 1600 1552 1579 1645 1654 1694 1602 1609 1644 1624 (図表2) 家計の金融資産増減(フローの動き) (兆円) 30 23 18 1400 20 11 1200 10 1000 800 0 その他 保険・年金準備金 株式・出資金 投資信託 株式・出資金・投信以外の証券 現金・預金 600 400 200 0 -10 -7 14/4Q 14/3Q 14/2Q 14/1Q 13/4Q 13/3Q 13/2Q 13/1Q (暦年末) 12/4Q 14 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 0 (四半期末) (資料)日本銀行 現金・預金 投資信託 株式・出資金 13/4Q 14/1Q 保険・年金準備金 その他 -20 12/4Q 13/1Q 13/2Q 13/3Q 14/2Q 14/3Q 20000 14/4Q (四半期) (資料)日本銀行 (図表3) 家計の金融資産残高(時価変動) (兆円) 40 株式・出資金・投信以外の証券 (図表4) 株価と為替の推移(月次終値) (円) (円/ドル) 125 日経225平均株価 30 19000 17 20 17 ドル円レート(右メモリ) 120 18000 115 9 10 10 17000 110 0 -10 -20 16000 その他 保険・年金準備金 株式・出資金 投資信託 株式・出資金・投信以外の証券 現金・預金 105 15000 -13 (資料)日本銀行 13/1Q 13/2Q 100 14000 -30 12/4Q 14年 10-12月 13/3Q 13/4Q 14/1Q 14/2Q 14/3Q 14/4Q (四半期) 13000 95 14/4 7 10 14/1 4 7 10 15/1 (年月) (資料)日本銀行、日本経済新聞 (注)直近は2015/3/17時点 1 2014 年 7-9 月期の計数は、確報化に伴って遡及改定されている。 2 統計上の表現は「調整額」 (フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、 「時価(変動) 」と表記。 1| |経済・金融フラッシュ No.14-214|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved なお、その後の 1-3 月期は資金流出期に当たるものの、12 月末以降も急速に株価が上昇しているため、 足元の個人金融資産残高はさらに増加している可能性が高い。 2.内訳の詳細: リスク性資産残高は高水準に 10-12 月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、季節要因(賞与等)によって例年 同様、現預金、とりわけ流動性預金(普通預金など)への資金流入が顕著であるが、その規模は前年を 5 兆円程度上回る。雇用者数の増加や冬の賞与増額などが影響していると考えられる。 リスク性資産については、株価上昇局面であったため利益確定売りが進み、株式・出資金は 2 兆円余り 減少したが、投資信託への資金流入(1.3 兆円)は続いた。時価の上昇もあり、株と投資信託に外貨預金や 対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は 276 兆円、その個人金融資産に占める割合は 16.3%と、 それぞれ 2007 年のピークに迫りつつある。 その他証券では、国債からの資金流出が拡大する一方、事業債への資金流入が拡大した。国債の利回 りが低下し、ほぼゼロ金利となるなかで、少しでも高い利回りを得るべく、事業債へと資金が流れた可能性 がある(図表 5~8)。 (図表5)家計資産のフロー(各年10-12月期) (兆円) 25 (図表6)現・預金のフロー(各年10-12月期) (兆円) 20 内訳 2012年 2013年 内訳 2014年 2012年 2013年 2014年 20 15 15 10 10 5 5 0 (資料)日本銀行 外貨預金 譲渡性預金 定期性預金 流動性預金 現金 (資料)日本銀行 (図表7)株式・出資金・投信除く証券のフロー(10-12月期) (兆円) 0.5 -5 現金・預金 その他 保険・年金準備金 株式・出資金 投資信託受益証券 株式・出資金・投信以外の証券 家計資産計 現金・預金 0 -5 (図表8)リスク性資産の残高と割合 (兆円) 350 20 その他 投資信託 株式・出資金 個人金融資産に占める割合(右軸) 内訳 300 0.0 18 16 250 -0.5 14 12 200 -1.0 2012年 2013年 10 2014年 その他 信託受益権 事業債 金融債 地方債 株式・出資金・投信以外の証券 国債・財融債 150 -1.5 8 6 100 4 50 2 0 0 98 (資料)日本銀行 00 (資料)日本銀行 02 04 06 08 10 12 14 (年) (注)株式・出資金、投資信託、外貨預金、対外証券投資、信託受益権を対象とした 3.部門別資金過不足等: 企業に前向きな動き、海外勢の国債保有が過去最高に 14 年 10-12 月期の資金過不足を主要部門別にみると、大枠として、家計の資金余剰で政府の資金不 足を賄っている状況に変化はない。ただし、例年はこの時期に資金余剰になる傾向が強い民間非金融法 人が、今回は▲2.4 兆円の資金不足となっている。 また、12 月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高が 231 兆円と、過去最高であっ 2| |経済・金融フラッシュ No.14-214|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved た 9 月末(233 兆円)から 1 兆円減少する一方で、負債サイドの借入金は 9 月末以降 8 兆円増加したため、 純借入金残高(借入金-現預金、118 兆円)は 10 兆円増加している。例年、10-12 月期は純借入金が増加 しやすい傾向はあるものの、今回の増加幅は例年をかなり上回っている。 さらに、企業の対外直接投資(フロー)は、本来であれば逆風となる円安下にもかかわらず、投資超過を 続けており、企業部門の資金において一部で前向きな動きが確認できる(図表 9~12)。 国庫短期証券を含む国債の 12 月末残高は 1023 兆円と 9 月末から 8 兆円増加し、過去最高を更新した。 前年比では 36 兆円の増加になっている。 国債の保有状況を見ると、近年のトレンド同様、従来から最大の保有主体である預金取扱機関(銀行な ど)の保有高(297 兆円)が 9 月末から 12 兆円減少し、300 兆円を割り込む一方で、異次元緩和で国債の 大量買入れを継続している中央銀行(日銀)の保有高(256 兆円)が 23 兆円増加、両者の差が大きく縮小 している。この結果、全体に占める日銀の保有シェアも 25.0%(9 月末は 22.9%)へと上昇している。日銀は 今後も異次元緩和を継続するため、国債の日銀シフトは引き続き急ピッチで進むことになる。 また、海外部門の国債保有高も増加基調にある。12 月末時点では残高が 95 兆円、そのシェアが 9.3% と、それぞれ過去最高を更新している。欧州金利が低下基調を強める中、相対的に魅力度を増した日本 国債への海外からの資金流入が進んだとみられる(図表 12)。 (図表9)部門別資金過不足(各年10-12月期) (兆円) 240 20 (図表10)民間非金融法人の現預金・借入 (兆円) (兆円) 360 現預金 15 借入(右軸) 230 350 220 340 210 330 200 320 家計 10 5 0 民間非金 融法人 -5 一般政府 -10 海外 -15 -20 10 11 12 13 14 190 (兆円) 310 11 (年) (資料)日本銀行 12 13 14 (年) (資料)日本銀行 (図表11)民間非金融法人の現預金・対外直接投資(フロー) 15 45 現金・預金 (%) (図表12)預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア 対外直接投資 預金取扱機関シェア 40 日本銀行シェア 海外シェア 10 35 30 5 25 0 20 15 (5) 10 5 11 (10) 10 (資料)日本銀行 11 12 13 14 12 13 14 (年) (資料)日本銀行 (注)国債は、国庫短期証券と国債・財投債の合計 (お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情 報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。 3| |経済・金融フラッシュ No.14-214|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved (年)
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