車両全損と買換諸費用 被害車両が全損と評価される場合,被害者は,被害車両を修理してこれを再び使用する ことはできず,元の利益状態を回復するには同種同等の車両を購入するほかはない。した がって,この新たな車両の購入に伴って生ずる買換諸費用は,車両の取得行為に付随して 通常必要とされる費用の範囲内において,事故による損害と認める。その必要性の有無 は,当該費用の性質・内容,取引の実情等を総合的に考慮して決する。 1 自動車税,自賠責保険料× 自動車税及び自賠責保険料は,車両の取得行為により発生するのではなく,車両を現 に所有すること等に伴い生ずる費用。しかも車両全損の場合,所定の手続を執ることによ り未経過分の還付を受けられる。相当因果関係を有する損害ではない。 2 自動車重量税○ 自動車重量税は,購入車につき自動車検査証の交付等を受ける場合及び車両番号の 指定を受ける場合,自動車検査証の有効期間及び自動車の重量に応じて課せられる。 自動車検査証の有効期間に未経過分があっても,1のように還付されない。事故時の自 動車検査証の有効期間の未経過分に相当する金額は損害となる。 ex.1年の自動車検査証の有効期間に対して8800円の自動車重量税が支払。事 故時においては,その有効期間が5か月分残存 8800円の12分の5の3666円が損害。 3 検査・登録費用,車庫証明費用○ 検査・登録費用及び車庫証明費用は,車両を取得する都度出捐を余儀なくされる法定 の費用(手数料)であるから,相当因果関係ある損害と認める。 ex.検査・登録費用は1940円,車庫証明費用は2500円 4 検査・登録手続代行費用,車庫証明手続代行費用,納車費用○ 検査・登録手続代行費用,車庫証明手続代行費用及び納車費用は,販売店の提供す る労務に対する報酬である。車両を取得する都度,検査・登録,車庫証明の手続や納車 が必要となり,車両購入者が通常それらを販売店に依頼している実情に照らし,買換えに 付随費用として損害を認める。 ex.税込合計4万8121円 - 1 -
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