Interview

金属技研㈱ 技術本部 テクニカルセンター 次長
山本泰弘氏
Yasuhiro Yamamoto
三菱電機㈱ 産業メカトロニクス事業部 主管技師長
岩崎健史氏
Takeshi Iwasaki
HIP 処理と金属積層造形を組み合わせた
高付加価値技術を確立し、
新たな市場開拓を目指す
岩崎 近年、金属 3D プリンタを用いた積層造形(ア
界最高水準の 3 次元積層造形装置」の開発が期待さ
ディティブ・マニュファクチャリング;AM)による
れています。
部品づくりが注目されています。海外では米ゼネラ
今回はそのプロジェクトのメンバーでもあり、金属
ル・エレクトリックが航空機エンジン部品への一部適
積層造形に熱間等方圧加圧(HIP)処理を組み合わせ
用を決めるなど、AM シフトが始まっている工程も
た高付加価値な造形品の開発を進めている金属技研㈱
あるようです。
の取組みを、技術本部テクニカルセンターの山本泰弘
一方、国内では国家プロジェクトとして、国産の金
次長にうかがっていきたいと思います。
属 3D プリンタの開発が産学官で進められており、
「世
型技術
第 30 巻 第 4 号 2015 年 4 月号
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PROFILE
山本 泰弘(やまもと
やすひろ)
1995 年 兵庫県立姫路工業大学(現・兵庫県立大学)
理学部 物質科学科 学士課程 修了
同
年 金属技研株式会社 入社
生産本部 姫路工場 製造課 製造係 配属
2004 年 生産本部 姫路工場 製造部 製造課 課長
2011 年 生産本部 姫路工場 工場次長
2012 年 技術本部 テクニカルセンター 次長
HIP 処理を中心にエネルギー、
航空・宇宙業界へ複合提案
の高密度化のほか、鋳造品の内部空孔除去、粉末材料
の加圧焼結によるニアネット成形、3 次元形状や異種
金属の拡散接合のおおよそ 4 つに大別されます。粉
岩崎 まずは、御社の事業概要から教えてください。
末焼結を例にあげますと、工程としては、まず粉末ま
山本 当社は、1960 年に理化学研究所の金属工学の
たは粉末成形体などの被処理体を、気密な材料ででき
研究グループが創業した会社で、金属熱処理を基幹と
たカプセル内に封入し、真空封止した後、HIP 装置
して、ろう付、HIP 処理、ホットプレス、表面改質
内に入れて処理を行います。全方向から等しい圧力が
処理などの特殊工程の受託加工から、機械加工や設計、 カプセルに加わるため、通常の焼結では緻密にできな
分析・解析までを行っています。国内には群馬、茨城、 いような材料でも高密度化を達成することができます。
千葉、成田、神奈川、滋賀、姫路の 7 工場を擁して
当社の場合、全工場で 16 機の HIP 装置を保有し、
おり、海外では中国の蘇州に現地法人があります。基
ワ ー ク サ イ ズ はφ200×H 300 mm の 小 型 か ら、
本的に、各拠点では近郊の顧客ニーズに合わせて各種
φ2,
050×H 4,
200 mm の世界最大サイズまでを保有
装置を揃えていますが、2011 年設立の千葉と 2012
しています。また、最高使用温度は 2,
000℃、最高使
年設立の成田は航空機の部品修理事業に特化していま
用圧力は 196 MPa です。
す。千葉では国土交通省航空局(JCAB)の認証を、
岩崎 HIP 処理だけでもいろいろな用途に展開でき
成田はアメリカ連邦航空局(FAA)と欧州航空安全
そうですが、自社内で保有する技術を複合させれば、
機関
(EASA)
の認証を取得し、エンジンのブレード・
顧客ニーズに合ったさまざまな提案を行えることが御
ベーンの修理を行っています。2013 年度の売上げ構
社の強みと言えますね。
成比としては、事業別では HIP、熱処理、機械加工
御社では熱処理や HIP 処理を用いて、金型向けの
の比率が高く、分野別営業売上げは、発電用ガスター
受託加工も行っているのですか。
ビンのなどのエネルギー関連向け熱処理や HIP、ろ
山本 当社の技術は金型向けにも応用でき、金型用鋼
う付、半導体の製造に用いる薄膜の元材料となるター
の熱処理のほか、複雑な冷却水管の拡散接合なども受
ゲット材の粉末焼結、航空機部品関連向けの熱処理や
託しています。
修理の順に高くなっています。将来的には、航空・宇
岩崎 山本さん自身はテクニカルセンターの所属です
宙関連の比率を高めていきたいと考えています。
が、どのような業務を担っていますか。
岩崎 HIP 処理は御社の代名詞とも言える技術です
山本 テクニカルセンターは、神奈川工場内にあり、
が、その特徴について簡単に説明してください。
2006 年に設立されました。メンバーは 6 人です。社
山本 HIP 処理は、ガス圧を利用して極めて高い静
内の製造業務の中で不具合が起きたときの調査や、新
水圧と高温を被処理体に同時に加えて処理するプロセ
たな仕事に対応する事前試験、分析や解析業務などを
スです。現在 HIP 処理の利用技術としては、焼結品
行っています。さらに、新たな製造プロセスの開発や、
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