大学院生答辞(塩月ゆかり さん)

答辞
本日は、看護学研究科の学位授与式に、ご来賓の皆様をはじめ諸先生方のご臨席を
賜り誠に有難うございます。また、皆様からご懇篤なる励ましのお言葉を頂き修了生
一同を代表して深くお礼を申し上げます。
私たち修了生は看護実践や看護教育の場で抱いた問いを解決すべく本学看護学研究
科へ入学してまいりました。そして、自分の看護実践を見つめながら、看護とは何か
を探究する日々が始まりました。
入学当初、私は 26 年の総合病院での実務経験を経て療育施設に異動になりました。
この間、医療は高度化・複雑化し、新しい薬や医療器械が次々に開発され、検査方法
や手術様式も変化していきました。医師不足や看護師不足も深刻になり業務の効率化
のために機能別看護が推奨された時代も経験しました。管理の一端を担うようになる
と組織の中での制約や病院経営について考える機会が増えました。こうして年数を重
ねるうちに、効率よく業務が遂行できた時、手術の介助が上手くできた時など、診療
の補助的な部分で充実感や達成感を感じるようになっていました。一方、療育施設で
の看護業務は生活援助が主体になります。言語的表現が困難で成長発達が緩やかな子
どもたちの援助に、やり甲斐や達成感を見出すには難しさがあると感じていました。
本学への入学を機に理論と実践を結びつけて深く考える機会を得ることが出来まし
た。どの様な状況下であっても「看護とは生命力の消耗を最小にするように生活過程
を整えること」というナイチンゲールの看護理論を意識の根底に据えることで、看護
師はこの患者に何をするべきなのかを考える道標を得ることが出来ると実感し、理論
を持って実践することの重要性を強く認識しました。
研究の過程では、事実としっかり向き合うために、ともすれば流れてしまう日常の
援助場面を、忠実に再現することから始まりました。対象の些細な表情の変化や言動
を見逃さず、事象を丁寧に見つめて、自分の認識と向き合う日々が続きました。この
過程で、重度の精神運動発達遅滞のある子どもの、歩行器への移乗場面を動画に撮影
する機会がありました。援助の困難さを撮影することが目的でしたが、構えたカメラ
に向かって得意げな笑顔を見せながらスムーズに移乗したのを見たとき、この子の持
つ「自分を良く見せよう」とする力と脳の活性化につながる反応だったことに気づき
ました。そして、人間の持つ発達の可能性に鳥肌が立つ程の感動を覚えると共に児の
ことを少しでも理解できたことに喜びを感じました。そして、こういう対象の持つ力
に気づき引き出すことが看護なんだと看護師の役割を再認識し、看護専門職者として
の仕事に誇りを感じました。分析の過程では、科学的な看護の視点や研究の視点で現
象を捉えなおすことの困難さに直面しましたが、そんな時この子の笑顔が支えになり
ました。
研究の過程はとても苦しいものでしたが、大きな喜びを得ると共に自分の看護観を
発展させる契機になりました。今後は、私たちの研究成果をいかに現場に根付かせて
いくかが課題になります。
最後になりますが、私たちを励まし辛抱強くご指導くださった先生方、仕事と研究
が両立できるようにご理解をいただき応援してくださった職場の皆様、多くの励まし
や援助をしてくださった修了生並びに在学生の皆様、温かく見守ってくれた家族、そ
してこのような学びをくださった患者様方に深く感謝を申し上げます。本学の益々の
発展と諸先生方のご健康、ご活躍、並びに在学生の皆様のご健闘をお祈りいたしまし
て答辞とさせていただきます。
平成 27 年 3 月 17 日
看護学研究科修了生代表
塩月
ゆかり