1 【基調講演「水素が変える、日本のエネルギー構造

【基調講演「水素が変える、日本のエネルギー構造」 橘川 武郎 氏】
○橘川氏 ご紹介いただきました。よろしくお願いいたします。
(拍手)
それでは、
「水素が変える、日本のエネルギー構造」ということで、これからお話をさせ
ていただきます。
まず、なぜ水素なのかという話から入らなければいけません。幾つか水素社会の意義と
いうのがあると思うんですが、まずやっぱり一番大事なことは、地球に優しいということ
じゃないかと思います。正確に言いますと、利用するときに二酸化炭素が出ない。水が出
るけれども、二酸化炭素は出ないということです。気をつけなければいけないのは、だっ
たら水素は全部グリーンなのかというと必ずしもそうではなくて、水素をつくるときに二
酸化炭素を使うことがあるわけですね。製油所の副生ガスだとかそういうところでいきま
すと、生成時にCO2を出すことがあります。それでも水素を有効に使うことは、全体とし
てCO2を減らしますが、最もいいやり方は、生成時も二酸化炭素が出ないものでつくる、
例えば風力発電だとか太陽光だとかと組み合わせて水素をつくれば、つくるときも使うと
きも出ない、これは最高の形でありまして、最終的な目指す世界はそちらだというふうに
思います。ただ、いずれにしても使うときに二酸化炭素が出ないというのは、ほかの燃料
と比べて非常に大きな特徴じゃないかなと思います。
それで、3.11 の原発事故の後、何となく日本の社会では二酸化炭素の問題がちょっと忘
れられがちなんですね。ところが、世界は全く違います。アメリカでは、シェールガスと
いう新しいガスが出てきて、石炭火力がどんどん天然ガス火力に変わっていますけれども、
これだけでもう4割ぐらい二酸化炭素が減りますので、急にオバマさんが元気になって、
ほかのことで何か余り人気がないせいもあるんですけれども、一番胸を張って今言ってい
ることは地球温暖化対策を言っています。一方、中国のほうは別の理由で、快晴の北京に
行っても太陽がなかったりするPM2.5 の問題なんかがありまして、一生懸命その原因の一
つであります石炭火力発電所を改造しているわけですね。中国はもうこういうことをやり
出すと早いですから、それは直接的に二酸化炭素を減らすことが目標ではなくて、固形の
粒子を減らしたり、そういう伝統型の公害を減らすために頑張るわけですが、あわせて燃
費もよくなりますので、二酸化炭素が減ってきています。ということで、世界で一番二酸
化炭素を排出しています中国とアメリカ、どちらかというと京都議定書のころは熱心でな
かったこの2つの国が今地球温暖化に力を入れていまして、やや日本だけが取り残されて
いるというのが現実なんですね。そういう中で考えますと、この水素をどうやってうまく
使うかということはすごく大事なことなのではないかと思います。これが1点目の意義で
す。
2つ目、水素にはいろいろな使い方があるわけですが、きょうの、今、自動車、ホンダ
とトヨタだけではなくて日産の車も来ていますし、フォークリフトで豊田自動織機のフォ
ークリフトも来ていますけれども、いずれも燃料電池というものを使っているわけです。
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それから、家庭用のエネファームとかというような形で家庭用の燃料電池もあります。こ
の水素を燃料電池としてこういう形で使いますと、電気の起こし方が効率的なんですね。
水素と酸素、一種の化学反応でできますので、ほとんど無駄がない。普通の電力は、発電
所が大体頑張っても6割くらいエネルギーが無駄になるものなんです、電気つくるときに。
それがないというのが非常に大きくて、燃料電池という使い方をする限り、発電のときの
効率が高いのが一つです。
それから、特に家庭用燃料電池は、熱と電気を合わせて使いますので、そういう意味で
も無駄がないと。こういう意味で、2番目の点はやっぱりこの水素を燃料電池として使う
と、省エネの切り札としての意義がある。これが2番目の大きな力です。
それで、3番目の話。ここが水素社会のみそなんですね。ほかのエネルギーを生かす、
いろいろなエネルギーと組み合わせることができる。もちろん再生エネルギーとも組み合
わせることができます。それから、省エネという形でも組み合わせることができますが、
実は化石燃料とも組み合わせることができます。石炭あるいは石油天然ガス、そういうこ
とをうまく組み合わせていきますと、日本のエネルギーのあり方全体を変えるくらいのそ
ういう可能性がある。
水素社会というのを一言で言うと、どういう社会であるか。私が言うのもなんですが、
まだよくわかりません、余りに可能性がたくさんあり過ぎて。このわからないところが魅
力なんですね。いろいろな使い方がありますよと。そうすると、ほかのエネルギーも生き
てきまして、ここのところが大事でしょうと。後ほど私はこの話を中心にきょうお話しし
たいと思います。
それから、水素の技術は今のところ日本は非常に強いわけです。特に燃料電池について
強いわけですね。特許の数で圧倒的に世界一を走っていますし、その燃料電池も、例えば
車に燃料電池を積むためには水素タンクというのがきっちりしていないとまずいわけです
が、その技術でも世界をリードしています。そして、何といっても家庭用の燃料電池、こ
れを 2009 年に日本では市場に出したわけですけれども、世界トップでした。そして、2014
年、昨年の 12 月に燃料電池の自動車が市場で販売されるようになったわけですけれども、
これも世界トップでした。そういう意味でいくと、日本の技術力を生かせる、日本の強さ
を生かせる分野でもあるということです。
エネルギーの中には、物によってはそうでもないところもあります。もう一つ、日本の
エネルギーが非常に生きるのは地熱発電です。例えば、地熱発電だとアイスランドなんか
が世界の最先進国だと言われていますけれども、そのアイスランドの地熱発電の仕組みも、
日本の技術で動いているわけですが、一方で、太陽光なんかは 10 年ほど前までは日本がリ
ードしていたんですけれども、その後、日本はやや競争力を失っているとかというような
分野もありますけれども、少なくとも水素に関する限り、まだまだ日本が強いと、こうい
うところがあります。
このほかにも、例えば先ほど知事が言われていたように、有事に強い、緊急時に強い、
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こういうような特徴もあります。そのうち、例えば地球に優しいところですとか、あるい
は有事に強いところは、実は燃料電池の自動車だけじゃなくて、電気自動車も同じような
強みを持っています。これは私の個人的意見ですけれども、燃料電池車とともに、やっぱ
り電気自動車の技術も日本は育てていて、東京オリンピックのときはこの両方の車がうま
く使われる仕組みができればいいなと、こういうふうに思っております。
さて、以上がなぜ水素なのかという話なんですが、それじゃなぜ東京なのかという、次
にこの点を考えていきたいと思います。
それで、それは何といっても東京オリンピック・パラリンピックという、ある意味で絶
好の機会があるからだということが大きいわけです。なぜ絶好の機会があるからというこ
とが大事なのか。これも知事が言われましたけれども、相当な税金を投入してオリンピッ
クやパラリンピックというのはやるわけです。皆さんの中で、この中で 1964 年の東京オリ
ンピックを見られたという方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。ざっと3分の1、4
分の1くらいでしょうかね。やはり見られた方はそれぞれに、私も中学1年でしたけれど
も、やっぱり思い出に残っていると思います。そして、やはり日本のことを考えますと、
あのオリンピックで新幹線ができたんだなと、高速道路ができたんだなと、こういうふう
に印象が残っているわけですね。税金をたくさん使う以上、次の世代の人たちに何か残し
ていく、それをレガシーという、遺産というような意味の言葉ですけれども、どうもエネ
ルギーの世界というのは英語がたくさん出てきまして、きょうはなるだけ使わないように
しているんですが、どうしても出てきちゃいますね。
余計な話なんですけれども、私、国立大学の教授というのをやっていますけれども、国
立大学の先生って不思議な職業でありまして、先生というのは保育園から高校の先生まで
みんな免許が必要なんです。大学の先生だけ免許要らないんです。国立大学というと公務
員並みということで、公務員になるときは公務員試験が必要なんですけれども、なぜか国
立大学の先生だけ何も試験ないんです。つまり、誰でもなれるんですよ、国立大学の先生
って。ただ1点だけ条件がありまして、それは偉そうに簡単なことを難しく言うという、
この技術がないと国立大学の先生にはなれない。ただ、私ちょっと阪神ファンでひねくれ
ていますので、なるだけその逆を行きたいんですが、そのレガシーという言葉は知事もた
くさん使われていますので、覚えておいてください。いい意味での遺産という意味です。
それを次の世代に向けての水素社会として残していこうと、こういう考え方なわけです。
そのときに、何で東京オリンピックやパラリンピックが絶好の機会になるのかというと、
みんながやっぱり前向きに同じ方向を向くめったにない機会だということです。このみん
なが1つのことに目を向けるということはどういうことかというと、実は水素社会って難
しいんですね。例えば、水素で動く燃料電池の自動車をつくろうとしても、水素ステーシ
ョンがないとだめだと。水素ステーションをつくろうとしても、車がないとだめだという
んで、何かこれを私が審議会で鶏が先か卵が先かと言ったら石油スタンドの人に怒られて、
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それじゃ夢がないから、花とミツバチって言ってくれと。花とミツバチ問題と言ってくれ
と言われたんですけれども、ともかく「せーの」で水素をつくるところから運ぶところ、
使うところ、ためるところ、これを全部一斉につくり上げなければいけない、こういう難
しさがあるわけです。
誤解のないように言いますと、日本は燃料電池の技術では世界を引っ張っています。し
かし、水素インフラに関していいますと、多分ヨーロッパ、あるいはアメリカよりもおく
れている面がはっきり言ってあると思います。そういうインフラの部分まで一緒に「せー
の」で立ち上げないと、水素社会というのはやってこないわけで、その「せーの」という
ふうにやるためには、やっぱりみんなが同じ方向を向いている、そういう機会が非常に重
要なんですね。それが東京で水素をやるということの一番大きな意義だと思います。
ということで、東京都が立ち上げ、知事が立ち上げたこの水素社会の実現に向けた東京
戦略会議という、そういう審議会ができました。これは何かすごく変な審議会でした。実
は、水素についてすごく積極的にやろうと思っている会社と、そうでもなく思っている会
社と、いろいろ会社の戦略によってあるわけですね。でも、そういう人たちがみんな集ま
ってくるわけです。それで、1回目の会議で集まったメンバー以外に、あとから自分も入
れてくれって手を挙げてくる会社があるわけですね。ある会社なんか、6回しか会議がな
かった中で2回もプレゼンテーションやる会社とかいろいろありまして、妙に参加者が積
極的な会議でしたね。
それと、私、国の審議会もいつも出るんですが、国のほうだと大体最後の1回前に案が
出て、まあそれを一応みんなで持って帰って、最後しゃんしゃんで終わりと、こういうの
が普通なんですが、案が出た後、最終日に行ってみたらまた変わっているわけですね。導
入するバスの台数なんか2倍になっちゃったりなんかしていまして、どんどん話が進化し
ていくわけです。もともとの案だと、ちょっと 2020 年までは風力でつくった水素、風力の
もとで電気分解して水素をつくり、それを東京に持っていくというのは無理だよねという
雰囲気が漂っていたが、最終回になったらそれもやりましょうなんて話がプレゼンテーシ
ョンで行われているわけで、もう会議自体が成長していくというか変化していく、そうい
う会議だし、何となく主要な会社の人たちも、ここにメンバーを出しておかないと、東京
で何か大きなことが動きそうだと、この情報から外れるぞというのか、妙なわくわく感が
ある変な審議会だったというふうに思います。それは、別に審議会がよかったとかそうい
う話ではなくて、それよりは水素社会というものの持っている可能性の大きさ、何が起き
るかわからない、これからどういうふうに使っていけば、どういうことが起きるかわから
ないという、そこのわくわく感なんですね。それがやっぱり東京でやるということの意味
だと思います。
それともう一つ、やっぱり東京はワンストップといいますか、霞が関に行きますと大変
なんです。どの建物に入るか、どの建物のエレベーターを何階でおりるか、エレベーター
おりて右に曲がるか左に曲がるか、どの部屋に入るかによって政策が違っちゃったりする
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わけですね。水素といって、これはいいぞということでみんな各官庁が手を挙げたりして、
予算が例えば 10 個手を挙げると 10 分の1ずつに分かれちゃったりするわけです。そうい
う意味で縦割り行政になっている。
私、東北でたまたま震災の前から釜石の町によく出入りしていまして、釜石のまちづく
りをお手伝いしているわけですが、やっぱり復興の過程で一番困るというのは、いろいろ
な支援を国がしてくれるんですけれども、窓口がたくさんあって、必ずしも復興庁に窓口
が一本化されていなくて、たくさん分かれているところが非常につらいという話がありま
す。それに比べて、東京都の場合にはどうか。これは、東京都という1カ所で全てのこの
水素社会にかかわることをまとめてやろうと、こういう話ですから、そういうワンストッ
プ的な機能もあると思います。
それから、私、歴史家なんで、歴史をひもときますと、この町は国を上回って一歩先に
環境的な施策を打っていくという、こういう歴史があるわけですね。はるか昔の美濃部さ
んがいたころだと思いますが、公害の規制も東京都は上乗せで規制があったんです。それ
から、石原さんの時代にも、国のほうは二酸化炭素の排出量に対して、上限のキャップと
いう、帽子という意味のキャップというのをかぶせなかったんですけれども、東京都のほ
うは事実上、それに近い制度を入れまして、例えば丸の内のビルディングの電気というの
は、青森からやってくる風力と北海道からやってくる水力電気で動いている、そういうよ
うな仕組み、国がやっていない仕組みを東京都がやったというようなこともあるわけで、
国をリードしていくDNAみたいなものがあると。
そして、何といってもやはり東京は日本の顔でありまして、この東京の町が水素社会に
だんだん近づいていくということは、やっぱり世界に向けて非常に大きな発信力があるわ
けです。失礼な話なんですけれども、私よく学生に言うんですが、東京はすごくいい町だ
と。ザ・ベスト・セカンダリー・シティーだと、英語使うなと言ったくせに使いますけれ
ども、世界で一番すばらしい2番手の町だと。2番手の町というのは、世界ではやったも
のがすぐ東京にやってきて、東京だとあらゆるものがわかるんです。だけれども、よく見
ると東京発のものは余り多くないと、こういう阪神ファン的な皮肉も込めて言っているん
ですが、この問題は東京発の中身にしたいと。東京から世界に発信する、そういう意味で
の、東京が水素をやるということの意味はこういうところにあるのではないかと思います。
私は、先ほど言いました意義の中の3番目ですね、エネルギーのあり方を水素がどう変
えていくかという話をこれからしたいんで、若干日本のエネルギー全体の話をさせていた
だきたいと思います。
4日ほど前、1月 30 日に国の新しい審議会が動き出しまして、ようやく 2030 年へ向け
ての電源ミックス、エネルギーミックスを議論するという話になりました。ようやくと言
ったのは、もうとっくに決めていなきゃいけないんと思うんですけれども、なかなか決ま
ってこなかった。そのために、去年新しいエネルギー基本計画というのが決まって、下に
書いてありますように、再生エネも大事だ、原子力も大事だ、石炭も大事だ、天然ガスも
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大事だ、石油も大事だ、LPガスも大事だと言っていて、じゃ全体どうするのという、こ
の見取り図が出ていないんです。簡単に言うと木を見て森を見ないみたいな状況になって
いるんです。
だから、多分一番関心が高い原子力のところなんか、何言っているんだかよくわかんな
くなっちゃうわけですね。
「重要なベースロード電源です」と言っています。「しかし」と
来て、
「可能な限り原発依存度は減らします」
、また「しかし」と来て、
「確保していく規模
を見きわめる」
。これ2つ「しかし」が入りますと、審議会でそういうふうに申し上げたん
ですけれども、槇原敬之の歌みたいになっちゃうわけです。
「もう恋なんてしないなんて言
わないよ絶対」みたいな感じで、何言っているかよくわかんなくなっちゃうわけですね。
というふうに申し上げたら、マッキーのファンの人からたちまちメールで怒られまして、
この歌ははっきり二重否定になって、がんがん恋するという意味で、全然わかりにくくな
いじゃないかと怒られたんですが、でもこの歌のタイトルは「もう恋なんてしない」とい
うタイトルなんで、やっぱり混乱していると思うんですよ。
まあその話はどうでもいいんですけれども、要するに今の国の政策というのは、このミ
ックスを言わないがゆえにわかりにくくなっちゃっている、ここに問題があります。木を
見て森を見ない状態が続いています。ただ、いつまでもこの状態が続くわけではなくて、
ことしの 12 月、パリでCOP、これは国連の地球温暖化対策の会議ですけれども、それが
開かれまして、2020 年以降の世界的な二酸化炭素を減らしていく枠組みが決まっていくわ
けですね。そのための準備として6月から実務者の会議が始まりますし、その6月にはサ
ミットがドイツで開かれます。多分オバマさんが胸張って言えることはこの二酸化炭素対
策ぐらいしかないので、必ずこの話が話題になると思いますので、そういう意味で言うと、
そこまでにやっぱり日本はミックスを決めていかないと。これが決まらないと、原子力だ
とか再生可能エネルギーの比率が決まらないと、二酸化炭素をどれだけ減らすかという計
算ができませんので、そういう形でこれから決まってくるんじゃないかなと思います。
そのときの決め方なんですが、これはあくまで私の私見です。個人的意見ですが、どう
してもみんな原子力が関心があるんで、原子力から考えたいんだけれども、私は違うと思
うんですね。原子力については国民の意見が分かれています。そうではなくて、国民の意
見が一致しているところ、再生可能エネルギーを可能な限りふやすと。それから省エネを
可能な限りやって節電をする。そして、火力発電について燃料費をなるだけ下げるととも
に、二酸化炭素が出ないような、できればゼロエミッション、二酸化炭素が出ない状態の
技術革新をやる、この3つがまず第1目標であって、これはでも技術革新なんで不確定な
要素が残ります。相手国との交渉もあります。これを全部やり切れば、原発なんか余り要
らないと。その技術革新が進まないと、ある程度原発を使わなきゃいけないというふうに、
原発の比率は基本的に引き算で決めるべきじゃないのかなというのが、ずっと私の 3.11 以
後言っている考え方であります。
でも、やっぱり数字がちょっと欲しいよね、大体の見通しが欲しいよねというならば、
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まずは再生可能エネルギーが重要なので、現状 12%くらいなんですけれども、これを 30%
ぐらいにふやす。これはかなり大変だと思いますけれども、それくらいに持っていく。そ
れから、コジェネといいまして、先ほど家庭用燃料電池で申し上げましたけれども、熱と
電気を合わせて使うというそういう仕組みなんですが、これが現状3%くらいなんですけ
れども、これが省エネに効果があるということで 15%ぐらいに持っていく。そして、火力
40%で原子力 15%くらいかなと。原子力 15%の根拠は、40 年で原発をとめていくという
今の規則がそのまま運用されたときに、今 48 基ある原発は 30 基、2030 年の 12 月までに
とまります。そうしますと、今、工事中の2基を足したとしても、原発の依存率は大体 15%
くらいになると、こういう根拠であります。これは個人的な意見ですが、大体私はこれぐ
らいになるんじゃないかと思います。ということは、再生にかなり頑張ってもらわなけれ
ばいけないし、火力も相当使うと。そういうときにコジェネを使う、こういうことに一つ
一つが水素とかかわってくるというのがこれからお話ししたいことの中身であります。
まず、再生可能エネルギーと水素ということを考えてみたいと思います。
再生可能エネルギーは、やや誤解があるんですが、もうとっくのとうに、3.11 の前に、
2007 年度時点で、出力で言いますと原子力より大きくなっています。キロワットでいきま
すと。水力を含みますので。ところが、出てくる電気の量、キロワットアワーでいきます
と、やはり原子力のほうが3倍くらい大きかったというのが 3.11 の前なんですね。そこで、
よく原発推進派の人が言うんだけれども、だから再生はだめなんだと、稼働率低いと言う
わけです。
ところが、これは正確じゃないんですね。再生可能エネルギーの中にも稼働率がよくて
出力変動がない、筋がいいというか使いやすいものがあるわけです。それがタイプAと書
きました地熱と小水力とバイオです。ただし、これらはなかなかでき上がってこない。ど
こかにボトルネックといいますか、詰まっているところがある。それを解消しなきゃいけ
ないんです。
それはどこかというと、地熱に関していいますと、1つは自然公園法の規制。どういう
ことかというと、日本の地熱に適しているところの8割は国立公園、国定公園の中ないし
その周辺にありますので、環境アセスメントが非常に厳しいと。これをどうやって環境を
維持しながら規制を緩和していくのかというのが1つの問題ですし、もう一つは、温泉業
者の方の反対です。日本全国に 19 の地熱発電所がありますけれども、それで温泉が枯れた
という例は報告されていないんですが、温泉業者の人にとっては死活問題ですから、やっ
ぱり反対運動はあるでしょう。こういうときはどうするか。別府の杉乃井ホテルや霧島国
際ホテルのように、温泉業者自身が地熱をやるだとか、地熱発電をやるだとか、あるいは
大分のある地熱発電所でやっていますけれども、地熱発電というのは使い終わった温かい
蒸気をもう1回地中へ戻すんですが、その蒸気の一部を地元にただで配るだとか、こうい
うような割といろいろな手だてを打つことによってこういう問題を解決していくことが必
要だと思います。
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小水力は、今の技術ですと、2メーターの落差があると発電できると言われています。
ただし、電力会社はほぼやり切りました。残っている可能性で一番大きいのは、上下の水
道用水と農業用水です。ここもやっぱり規制緩和が問題になります。
バイオマスは、最大の問題点は物流コストが高いんですね。したがって、森の間伐材な
りごみなりがどこでとれて、どこでどう使うかって、このマッチングをきっちりやるとい
うことがバイオマスのポイントになるんです。
とはいえ、このタイプAのほうは、今大体もう 10%ぐらい使っていて、2030 年までにあ
と頑張って延ばしても5%伸びるか伸びないかというところですね、電源構成の中で。そ
うすると、再生 30%ということは、残りの少なくとも 15%はこの太陽光・風力でいくしか
ないと、こういうふうに思うわけです。確かに難しいです。稼働率低いです。太陽光は大
体 12%ぐらいしか、風力は丘の上だと 20%、海の上でも 30%と言われています。原子力
発電所は、3.11 の前、柏崎刈羽が半分とまっている状況でも 62%でしたから、やっぱり稼
働率に問題がある。それから、出力変動が激しいというのが問題になります。ただし、太
陽光・風力の最大の魅力は、今どんどん技術革新が進んでどんどん安くなっているんです
ね。ですから、伸び代がありまして、やっぱりこれを 15%以上持ってくるような社会をつ
くらなければいけない。
そうすると、おととし始まりましたFIT、固定価格買い取り制度にみんなすぐ目が行
きます。でも、2030 年のことを考えたら、あえて言っちゃいますけれども、誤解のないよ
うに、FITに頼っているようなエネルギーじゃだめなんです。げた履かせてもらって普
及するようなエネルギーじゃだめで、もう市場ベースで太陽光や風力がどんどん入ってく
るような世界に持っていかなければいけないと思うわけですね。FITで考えますと、我々
がモデルにする国はドイツだったりスペインだったりするわけです。これはFITの制度
で急に伸びました。ただ、両方とも負担が重いので、だんだんとFITの制度が弱ってき
ています。でも、もうちょっと世界に目を広げると、アメリカの中西部とか、オーストラ
リアの西のほうだとか、中国の一部だとか、ヨーロッパにいえば北ヨーロッパだとか、F
ITに頼らないで市場ベースで太陽光なり風力が相当入っているエリアがあるわけですね。
そこのところに目を向けなければいけないということになります。
じゃ、そういう地域に共通する一番の大きなポイントは何かというと、送電網がしっか
りしているということです。ですから、この太陽光・風力を本格的に入れるために最大の
問題は、FITをどうするかよりも、私はこの送電網をきっちりするということだと思い
ます。ただ、これは大変なんです。そう簡単にいかない。だからだめなんだというふうに
よく言われるんですが、諦めるのは早いです。3つくらいやり方があります。
本当に送電線は余っていないんですかというのがまず第1のポイントです。今、九州電
力がメガソーラーで手が挙がったものを受け入れないって保留して、それが広がりました
けれども、あの話で1つ忘れていることがあるんですね。それは何かというと、これから
原発が減っていくということを忘れているんです。さっき言いましたように、2030 年に向
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けて 30 基廃炉になってくるわけですから、その 30 基分の送配電設備が余るわけですね。
これを使うというのがまず一番簡単なアプローチであります。これが今のところ減らさな
いという建前になっているから、そういう議論はしていないんだけれども、もうここまで
来たら、ちゃんとそういうところ、例えば九州電力だったら、玄海1号、2号なんてもう
動くはずないわけだから、その廃炉分の送変電をどうやって使っていくのかというのがま
ず一番重要なプロセス。
2番目、送電線をつくるということです。送電線をつくるのはお金がかかって大変だ、
電力会社はつくらないんじゃないかと言われますけれども、本当にそうでしょうか。今、
どこもかしこも送電線が足りないって困っているわけです。足らないものはつくればもう
かるというのは経済学の常識なわけですね。確かにどかんともうからないかもしれないけ
れども、確実にもうかっていけるわけで、電力会社の人に頭を変えてもらう必要がある。
今まで原発を持っているから、石炭火力を持っているから株価が高くなるという世界が続
いてきました。これからは変わると思います。送配電のネットワークがしっかりしている
ところ、それが格好よくて、お金も集めやすくなるし株価も高くなる、そういう社会をつ
くらなきゃいけないということですね。ということはどういうことかというと、逆潮とい
いますが、潮流、電力会社が発電から家庭まで一方的に流している流れの逆、太陽光や風
力で余ったものを買い取る、この逆潮の比率が高い会社ほど株価が上がるというような社
会をつくらなきゃいけないと。そういう意味で、送電線をつくるということは、僕はやり
ようによっては十分、そこには政策的支援も必要だと思いますけれども、あると思います。
3つ目、送電線がそもそも要らないような仕組みをつくる。これがかなりもう一つ重要
な点です。送電線に対する負荷を減らしていく。どうするか。まずは、地元で電気を使う。
地産地消という考え方です。自治体ごとに電力をつくっている量と使っている量を比較し
ますと、つくっている量のほうがはるかに大きいところがたくさんあるんですね。長野県
なんてもう再生だけで消費電力を上回るぐらいの電気の量をつくっています。そういうと
ころで、なるべく地元で使うような仕組みをつくる、これが大事なんです。
そこで、次にもう一つ、水素をうまく使って、水素をエネルギーを運ぶ手段として使う、
こういう考え方なんです。これが今ヨーロッパで、ヨーロッパで水素というとこれが一番
はやっていて、日本ではほとんど聞かない言葉なんですが、ぜひ覚えておいていただきた
いんですが、パワー・トゥ・ガスという考え方があります。どういうことかというと、パ
ワーは電力で、ガスはガスです。トゥですから、電力からガスへ。日本の考え方と逆です
ね。ガスで電気をつくる、日本はそういうふうに考えるところですが、逆なんですね。と
いうのは、デンマークですとかドイツの北側でたくさん風力発電がありまして、風がいい
日にはもう電気が余っちゃうんですね。ところが、日本と同じようにやっぱり送電線が弱
いところがある。どうするかと言いますと、その風力発電の地元で、余った電気を使って
水の電気分解を行いまして、水素をつくるわけです。それで、その水素を送電線よりもそ
の隣でまだ余裕があるガス管の中に入れるんですね。ガスとして使う。つまり、天然ガス
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の中に水素をまぜる。電力をガスに変えていく。水素を 10%くらいまぜても、全然ガスの
性能に影響がないと、こういうふうに言われています。ヨーロッパだと今この使い方が一
番水素の中で注目されている考え方です。
ということは、たちまち日本はだめなんじゃないかと、日本のガスのパイプラインは弱
いぞと、都市ガスのエリアというのは面積でいうと5%しかないよというんですが、地域
によって違うわけです。この東京を中心とした関東エリアというのは、相当ガスパイプラ
インというのが広がっていますから、最初から諦める必要はなくて、このパワー・トゥ・
ガスというやり方を使えば、水素を使って運ぶということが可能になります。
それ以外にも、今話題になっていますのは、この水素を例えば東北でつくって、東北の
風力で水の電気分解をやって水素にして、船で東京に運んでくるですとか、あるいはトル
エンという化学物質等をまぜると、常温で普通の瓶に入れても運べるようになる。こうい
う技術開発が今進んでいます。今の2つはもうちょっと時間がかかるかもしれませんけれ
ども、いずれにしても電気が余っちゃうところの電気を使って電気分解をやって、水素と
いう形で運ぶ、あるいは水素をガスの中に入れる、こういうようなやり方で水素が再生可
能エネルギーを生かしていくという、こういう使い方があるわけですね。水素も生きるし、
再生可能エネルギーも生きる。このやり方が一番理想的です。つくるときも使うときも二
酸化炭素が出ない、こういうやり方になるわけです。
次に、省エネルギーとの関係を考えていきたいと思います。
今、省エネルギーで、日本はよく世界の先進国だと言われています。なぜかというと、
石油に対する依存度が高かったんで、石油の価格が上がった石油ショックのときに、特に
経済性に敏感な産業界が一生懸命省エネをやったんですね。これが今日の世界トップの省
エネ大国をつくったわけですが、今言ったのは産業界がメーンでやっていますから、残っ
ている分野が2つ大きなところがあるわけです。1つは家庭用といいますか、建物です。
建物が省エネ化する。それと、もう一つは車ということで、車のところはもうここのとこ
ろ、いろいろハイブリッド等々ありますように、大分進んできました。さらに進むと、こ
の電気自動車だとか燃料電池自動車という形になってきます。
もう一つ、やっぱり一番大きいのは、省エネの今後の可能性が高いのは建物なんですね。
住宅だとかビルです。そこでよく言われるのがゼロエネルギーハウスとか、ゼロエネルギ
ービルディングという言い方、ZEH・ZEBとかっていうんですが、エネルギー使わな
い家やビルなんてないわけです。そうではなくて、使う分だけつくるという考え方が大事
なんです。太陽光電池を屋根の上に載せて、それからエネファームみたいなのを持って使
う。自分のところで使うものはつくると。ただ、問題が1つあるんですね。つくって出て
くる電気の量と使う電気の量にずれが生じるんです。足りないときは電力会社から買えば
いいわけだけれども、余っちゃったときどうするか。やっぱり電力会社に買ってもらう仕
組みをつくらなきゃいけない。となると、やっぱりここでもネットワークが重要になるわ
けです。今後の電力会社は、やっぱりネットワークが強い電力会社が格好よくて競争に勝
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っている、こういう社会に変えていかなければいけないというふうに思います。車に関し
ても、家庭用のエネファームに関しても、燃料電池に水素を使うということがポイントに
なりますので、省エネに関してもこの水素というのが一番大事な最前線の武器になるので
はないかと、こういうふうに思います。
次に、意外なことに化石燃料と組み合わせるということがあるんですね。それはどうい
うことか。例えば、オーストラリアでも、メルボルンのあたりにビクトリア州というのが
あります。行くとわかりますが、もう国土が全部真っ茶色、ブラウンコールと言われる褐
炭という質の悪い石炭です。北のほうのオーストラリアは、真っ黒で非常にいい石炭をと
って、どんどん輸出して豊かになっているんですが、メルボルンなんかでは使っていない。
それを使いたい。使うと二酸化炭素が出ます。それで、それを埋めるところはCCSとい
うんですが、最初のCはカーボンですね、二酸化炭素。次のCはキャプチャー、捕まえる、
それから次のSはストレージ、貯蓄するという意味でCCSとよく言うんですが、この二
酸化炭素を分離して貯蔵するような場所、日本には余りない場所が向こうにはある。ただ、
そのときに、その二酸化炭素を分離していくときに水素がとれるわけですね。その二酸化
炭素を分離しCCSにするというところで日本が協力し、そこで水素を日本に運んで来れ
ば、使っていないオーストラリアのメルボルンの褐炭が使えるようになるし、そして日本
はCO2がもう埋められた状態で、CO2と関係ない水素を日本に持ってくることができる
と、こういうやり方ができるわけで、実は石炭と結びつけることによって、石炭も生きる
し水素も生きるって、こういう世界があるんです。
それから、今、福島県の勿来と、それから広島の大崎というところでタイプの違う実験
が始まっていますが、石炭のガス化発電。これは二酸化炭素が出る量が少ない、燃焼効率
が高い発電なんですが、そこではガス化にしますと、そこのガスの中に水素をまぜるとい
うことがまた可能になるんですね。水素をまぜればまぜるほど、石炭発電から出るCO2を
減らすことができるわけで、こういうやり方をすると、石炭も生きるし水素も生きるとい
うようなことが可能になります。
あるいは、石油・天然ガスとの考え方からいきますと、一番たくさん出るのは産油国だ
ったり産ガス国だったりのところの製油所とかで出るわけですね、水素、そこから持って
くることができる。そこで、水素と二酸化炭素を分けて、先ほど言ったCCSというのを
油田やガス田に入れると。油田やガス田ってどういうものかというと、あれは実際のほと
んど、地学の教科書なんかを見ると、いかにも油田というと地下に湖があったり、ガス田
というと地下に空洞があったりするイメージですが、そんなことあるはずないんですね。
ぺしゃんと潰れちゃいますから。実際にはほとんど砂岩という層で、そこに軽石の穴のよ
うな層が通っていて、そこに原油が入っていたり天然ガスが入っているのが油田やガス田
で、鉄パイプが来ると、そこの砂岩が割と密度が低いので、ある程度自噴するというのが
油田、ガス田なんですね。全体のあるものの3割ぐらいしか回収できないわけです。そこ
にCO2、水素と合わせてできます二酸化炭素を押し込みますと、さらに原油や天然ガスが
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出てくるようになる。これをEORというんです。石油・ガスの増進回収法というのを英
語で言うとEORというんですが、こういうのと結びつけて、その際出てくる水素を日本
に運んでくる、こういうことがまた可能になるわけであります。
それから、先ほど言いましたガスのパイプラインへの水素の混入なんていうのは、まさ
に天然ガスと水素の結合なわけで、化石燃料の効率的な使い方とも水素はかかわってくる。
そして、今一番日本で、これはつくる際に二酸化炭素が出ますから理想形ではないんで
すが、一番安い形で水素がたくさんつくられているのはコンビナートなんですね。そこで
水素が必ずしも有効活用されているとは言えない。その分を有効活用すれば、それまで使
っていたほかの燃料を節約することができますから省エネになると。こういう形で、そう
いう意味でコンビナートにたくさん残っている可能性がある水素をどうやって使っていこ
うと、こういうこともありますので、化石燃料と水素というのも組み合わせることができ
ます。水素社会のおもしろさというのはここにあるわけです。いろいろなことができる。
ただ、これが最後のスライドですが、水素社会にももちろん課題があります。
何といっても、一番の問題はコストだと思います。今、ほっておきますと、例えば水素
で単純に発電しようとすると、相当高い形になっちゃいます。これはもちろんのこと、燃
料電池車がたくさん走り、家庭用の燃料電池が普及し、水素ステーションが広がって大量
生産大量販売の状況になると、コストが劇的に下がります。今のところ、どうも水素ステ
ーションをつくるコストは、ヨーロッパに比べると日本のほうが2倍近く高いと言われて
いるのはなぜかというと、ヨーロッパでは既に大量販売の効果が生まれつつあるんですけ
れども、そこがまだ日本ではきいていないのがあるわけで、どういうふうに量産のステー
ジを迎えていくのかと。これは、ここで「せーの」といったような話が大事になるわけで
すね。ある目標へ向かってみんなが一斉に動き出すということが大事になってきます。
それから、そうはいっても、理想形は再生エネルギーを使った水素なんですけれども、
つなぎとしては、今余っている副生の水素、製油所だとか製鉄所で使われる水素をどう生
かしていくのかということが大事になってきます。これはコストを下げる上で、そういう
形で水素社会の入り口としてはこの副生水素が大事になってくると思いますが、そうなっ
てくると東京だけじゃ済まない話になりまして、千葉あるいは川崎、京浜・京葉のコンビ
ナートとの連携というのも必要になります。そして、埼玉県も非常に水素社会なんかに力
を入れていますから、やっぱり周辺自治体との協力というのも必要になってくるんじゃな
いかと。
それから、先ほど言いましたように、特に石炭と組み合わせた場合には、石炭は安いけ
れども環境に悪いと、こういうものなんですね。水素は環境にいいけれども高い、こうい
う組み合わせですから、お互いを組み合わせることによっていいとこどりができる可能性
があると思います。そういう意味で、意外な感じなんですけれども、水素・白と石炭・黒
の組み合わせといかというのが、コストを下げていく上では重要な意味を持つと思います。
それから、2番目、これは大分前に資料をお送りしたんで、社会的受容性という言葉を
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使っているんですが、この間の審議会で、都の事務局の文書にもこれが入って委員のメン
バーの人に非常に怒られたんですけれども、偉そうだと、社会的受容性なんて、この上か
ら目線になっているんで、ちょっとこの言葉はよくないと思って、変えなきゃいけないん
ですが、やっぱり水素社会というのはみんなでつくり上げていくものですから、みんなが
やっぱり安全面で安心して、それから納得がいく形で、できれば皆さんが参加する形でつ
くっていかなければいけない、ここが大事なんですね。どうもエネルギーについては、何
となく原発みたいにこそこそ隠すとかというエネルギーもなきにしもあらずだったわけで
ありまして、水素に関してはわかっていることを全部みんなが知って、その上でどうやっ
て使っていくのかということが大事だと思うんです。
おもしろい話がありまして、この間、山口県の周南というところに行ってきたんですが、
そこでも水素ステーションと自動織機のフォークリフトを使って食品市場を水素化しよう
としているんですけれども、最初結構地元の方は反対していたみたいなんですが、この東
京の動きを見て、オリンピックで水素を使うんだ、燃料電池車が発売されるんだという話
が入った途端、それじゃ逆にみんなでやろうよっていうふうになって、今、水素ステーシ
ョンを市場のど真ん中につくるという工事をやっていますけれども、そういうことが大事
だと思うんです。
これから安全性の問題については、この後詳しいお話があると思います。1点だけ、よ
く水素が怖いと思うようになったのは、福島の水素爆発と結びつけるから。あれは水素が
爆発したことは間違いないんですが、問題は、あれは水素を抜くことができなかったから
爆発しちゃった。何で抜くことができなかったかというと、放射能が含まれていたからで
す。あそこはそれでも抜こうとしたんだけれども、また抜けなかったという別の問題もあ
りますが、あの問題は、やっぱり水素が怖いという問題じゃなくて、放射能が怖いという
問題であって、そこのところはちゃんと区別しておく必要があるんじゃないかと思います。
いずれにしても、日本は燃料電池では先頭を走っていますけれども、水素インフラをつ
くるという課題はまだまだこれからです。この花とミツバチ問題を解決して、「せーの」で
水素をつくるところから使うところまでの流れを一挙につくり上げていくということが重
要で、それをこの東京の町から、東京オリンピック・パラリンピックのときに始めていき
たいなと、こういうふうに思います。
以上で私の話を終わらせていただきます。
(拍手)
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