ズムと よる効果 構造用合板を張った耐力壁

3.1 地震力と風圧力の流れ
構造用合板を張った耐力壁
4.1 壁倍率
の柱 脚固定 式とタイロッド式がある)の結果
に限る)の倍率は以下の方法で求める。
から表 16 のように定められている。在 来 軸
倍率=2.5倍×0.6×
(面材の高さ)
(
/ 横架材の内法)
● 地震力の流れ
下地材を経て柱に作用する。柱は風 圧力に
組構法における合板張り耐力壁の壁倍率は、
た だし、準 耐 力 壁 は、面 材の 高さ( 張り
地震力は重量(正しくは質量)のあるところ
対しては、土台と2 階の床(1 階部分の場合)、
仕様 によって 1 . 5 〜 2 . 5 倍である。2 . 5 倍 の
継いでもよい)が 横架 材内法の 8 0 % 以 上で
に作用する。特に重量のある部分は床と屋根で
あるいは 2 階 の床と屋 根(2 階 部 分 の 場 合)
倍率は、いわゆる二つ割り筋かい(2 . 0 倍)に
あること、腰 壁・垂壁は、それぞれの高さが
あり、床と屋根に作用した地震力は、耐力壁を
で支 持され縦方向に設 置された「はり」とし
木ずり(0 . 5 倍)を張った壁と同じ値である。
3 6 cm 以上、長さが 2 m 以下で、その両側には
経て基礎・地盤へ流れる(図4)
。
て働く。柱に作用した風 圧力は土台、2 階の
枠組壁工法における壁倍率は、仕様によって
耐力壁か準耐力壁があることが必要である。
● 風圧力の流れ
床、屋根などへ伝達され 、さらに耐力壁を経
2 . 5 〜3 . 5 倍である。
外壁に作用した風圧力は外装仕上げ材や壁
て基礎・地盤へ流れる(図 5)。
ここでいう壁倍率は、建築基
による性能表示制度(任意)を
羽子板ボルト
値が使用できるほか、建築基準
法では耐力壁として認められて
いない「合板 が土台、胴差し、
はり、けた等にかからない仕様」
でも、準耐力壁、腰壁・垂壁と
して耐力を算入することができ
面 材
1820
距離L
ストッパ
変位計
る。ただし、これらを除く正規
の耐力壁だけで必要 壁量を満
図5. 風圧力の流れ
3.2 耐震設計と耐風設計の要領
たすことが条件である。
変位計
図4. 地震力の流れ
表示する場合は、同じ壁倍率の
変位計
③
耐力壁はその
地震力を基礎・
地盤に伝える
①
風圧力は外壁
仕上げ材を介
して柱に加わ
る。
柱は屋根・床
に支えられて
いるので、
風
圧力は最終的
に床・屋根に
流れる
③
耐力壁は風圧
力を基礎・地
盤に伝える
ホールダウン金物
①
地震力は主と
して重量の重
い床・屋根に
加わる
②床・屋根は風圧力を
耐力壁に伝える
変位計
P正負交番加力
利用して耐震等級や耐風等級を
②床・屋根はその地震力を
耐力壁に伝える
梁:105×180ベイマツ
単位:㎜
図 6. 柱脚固定式の面内せん断試験の例
4.2 特認による壁倍率
釘を太くしたり、釘間隔を狭くすることによって
をCN 75釘で張った耐力壁「ネダノン スタッド
壁倍率を高くすることが可能である。ただし、そ
レス5 +(ファイブプラス)
」で倍率 5 . 0の認定を
耐震設計と耐風設計の目的は、床や屋根に
耐震設計に関しては、これまで耐力壁ばかり
のような耐力壁を利用する場合は、指定された試
受けた。仕様は、外壁用の大壁・真壁仕様と間
作用する地震力や風圧力を、建物を壊すことな
に注意が集まる傾向が強かったが、床や屋根
験機関において実験を基とする評価を受ける必
仕切り壁用(床勝ち)の大壁・真壁仕様の計4
く基礎・地盤へ流すことである。そのためには
は耐力壁と両輪のように働かなければならない
要がある。この場合に与えられる建築基準法上の
仕様である。特徴としては間柱が省略できるこ
床と屋根(水平構面)および耐力壁(鉛直構面)
重要な耐震要素である。
壁倍率の上限は5倍である。
と、剛性・耐力が高く粘り強いことが挙げられ
日本合板工業組合連合会(日合連)、東京・東北
る。特に粘りについては、一般の耐力壁が最大
合板工業組合(東京・東北工組)
、
(一社)
日本ツーバ
耐力に達した後、急激に抵抗力が失われるのに
イフォー建築協会では、この国土交通大臣の特認制
対して、その2倍以上の変形を生じてもなお最
度により、構造用合板張り耐力壁の認定を受けた。
大耐力に近い抵抗力があり(図 8 参照)、現在あ
をしっかり造ることが肝心である。
3.3 構造用合板を張ることによる効果
4
距離H
準法の壁倍率である。品確法
9
準耐力壁、腰壁・垂壁(いずれも大壁仕様
耐 力壁の 壁 倍 率は面内せん断 試 験( 図 6
2730
3
建物の耐震・耐風メカニズムと
構造用合板を張ることによる効果
構造用合板を床・屋根・壁に張ると、水平構
が箱のように一体化して、地震や風に強い強固
木造軸組構法(3階建てを含む)の住宅建築で
る耐力壁の中で最も耐震性に優れた耐力壁とい
面と鉛直構面が強固になるとともに、建物全体
な建物ができあがる。
使用できる耐力壁として厚さ24㎜の構造用合板
える。また、厚さ12㎜の構造用合板をCN6 5お
10
4
よびCN 5 0 釘で張った耐力壁で倍率 4 . 0、3 . 8、
の影響等を勘案して定める低減係数を乗じ、
3 . 6、3 . 5、3 . 4、3 . 2、3 .1の認定を受けた。仕様
1 . 9 6kN/m=倍率1として、倍率に換算する。
は、外壁用の大壁・真壁仕様と、間仕切り壁用
(a)見かけのせん断変形角が1/120 rad時の耐力
(床勝ち)の大壁・真壁仕様の計4仕様である。
(柱脚固定式の場合)、または真のせん断変形
枠 組壁工法の住宅建築で使用できる耐力壁
角が1/150 rad時の耐力
(タイロッド式の場合)
として、厚さ12 ㎜の構造用合板をCN 6 5およ
(b) 最大耐力に2 /3を乗じた値
びCN 5 0 釘で張った耐力壁で、倍率 5 . 0、4 . 8、
(c)降伏耐力、Py
4 . 5、3 . 6の認定を受けた。
(d) 終局耐力Puに(0 . 2 /Ds)を乗じた値
建設省および国土交通省告示の壁倍率に加え、
Py、Dsなどは、実験の荷重─変形関係をバ
大臣認定を受けたこれらの合板張り耐力壁によ
イリニア(2直線)化して得られる(図7 参照)
。
り、設計の自由度を広げることができる。
なお、信頼水準75%の5 0 %下限許容限界は、
なお、本耐力壁を用いる場合は、確認申請時に
試験体数が3の場合、平均値に(1-0 . 471V)
認定書の写しを添付する必要がある。
を乗じればよい(Vは変動係数)
。
● 壁倍率の認定を行う指定機関
● 評価方法の考え方と旧評価方法との違い
(公財)日本住宅・木材技術センター、
(一財)
耐力壁の特認は以前から行われてきたが、平
ベターリビング、
(一財)建材試験センター、
(一財)
成12 年の建築基準法改正により、その方法が
日本建築総合試験所。
以下のように変わった。
● 評価方法
第1は、改正基準法で、住宅を建てる際、柱
①試験体寸法:幅1, 820㎜、高さ2 ,730㎜が標準。
脚接合部が耐力壁より先行して破壊しないよう
②軸材:はりはベイマツ構造用製材JAS甲種3
に、柱脚金物の使用が規定されたことから、耐
級程度、柱、土台はスギ構造用製材JAS乙種
力壁の評価でも、これに合わせるため、載荷式
3級程度。
あるいは無載荷式では、柱脚接合部が破壊し
③試験体数:3 以上。
ないように、補強を講じることになったこと。
④支持方法:タイロッドを用いて柱脚の浮き上が
第2は、旧基準法の非構造部分による地震力
りを拘束する方法、または図6に示す柱脚固定
の1 /3 負担の仮定をやめたことに対する処置と
式(鉛直荷重相当の錘を壁頂部に載荷する載
して、壁倍率1を13 0 kgf/mから2 0 0 kgf/mに
荷式あるいは無載荷とする無載荷式)の方法
増加させたこと。これにより、従来の壁倍率は
による。ただし、柱脚固定式では、壁部分に
低減させる必要が生じるが、見直しの結果、旧
先立って柱脚接合部が破壊しないよう、十分な
法の下限品質のための低減係数の3/4に替え
強度を有するホールダウン金物等を使用する。
て、新法では平均値(5 0 %下限許容限界)を基
⑤加力方法:柱脚固定式の場合、見かけのせん
準とすることとしたこと、柱脚接合部の補強の
断変形角が 1 /45 0、1 /3 0 0、1 /2 0 0、1 / 15 0、
ため耐力が上がったことなどによる相殺があり、
1 / 10 0、1 / 75、1 / 5 0 radで原則として3回の
結果的に倍率は従来のままとなっている。
正負繰り返しを行い、荷重が最大荷重を過ぎ
第3は、大地震時の安全性を確保するため、保
てその8 0 % 以下になるか、変形が 1 / 15rad
有耐力(靭性とエネルギー吸収能力)に関する上
に達するまで加力する。タイロッド式では、上
記(d)を、また、比較的頻繁に来る地震に対する
記の見かけのせん断変形角を真のせん断変形
サービスアビリティーとして上記(c)を加えたこと。
角と読み替え、最初に1 /6 0 0 radを加える。
なお、新しい評価方法では旧法より多くの正
⑥倍率の算定方法:以下の(a) 〜(d)について、
負繰り返し加力を行うが、その目的は、除荷時
バラツキを考慮して統計的に求めた信頼水
の荷重─変形関係やエネルギー吸収の性能を
準75%の5 0 %下限許容限界の最小値(kN/
見ることではなく、繰り返しによる耐力低下の
m)に、壁材料の耐久性、使用環境、施工性
影響を含んだ包絡線(処女変形の荷重─変形
の影響、壁量計算の前提を満たさない場合
関係)を得ることである。
表16. 告示における木造軸組構法と枠組壁工法の耐力壁の倍率(日合連、東京・東北工組、
(一社)日本ツーバイフォー
建築協会で取得した合板の特認についてはP13表17を参照)
枠組壁工法の耐力壁
木造軸組構法の耐力壁
倍率
材料
材料
種類
厚さまたは断面(㎜以上)
施工例
種類
厚さまたは断面(㎜以上)
施工例
5.0
製材
(筋かい,
たすき掛け)
90×90
4.0
製材
(筋かい,
たすき掛け)
45×90
構造用合板1級
9
⑫
製材
(筋かい)
90×90
構造用合板1級
7.5(9.0未満)
⑫
製材
(筋かい,
たすき掛け)
30×90
構造用合板2級
9
⑫
ハードボード
7
パーティクルボード
12
3.5
3.0
構造用パネル
2.5
①,②
構造用合板1級,2級
(直張り,
受材真壁)
7.5
構造用合板2級
7.5(9.0未満)
パーティクルボード
(直張り,
受材真壁)
12
ハードボード
5.0(7.0未満)
硬質木毛セメント板
12
製材
(筋かい,
たすき掛け)
15×90
フレキシブル板
6
製材
(筋かい)
45×90
パルプセメント板
8
鉄筋
(たすき掛け)
φ9
硬質木片セメント板
(直張り)
12
炭酸マグネシウム板
(直張り)
12
ハードボード
(直張り)
5
1.7
構造用せっこうボードA種
(直張り)
12
構造用せっこうボードA種
12
1.6
構造用せっこうボードA種
(直張り床勝ち)
12
1.5
製材
(筋かい)
30×90
構造用せっこうボードB種
12
構造用合板1級,2級
(貫真壁)
7.5
製材(斜め打ち)
13×210
パルプセメント板
(直張り)
8
パーティクルボード
(貫真壁)
12
強化せっこうボード
12
構造用パネル
(直張り,
受材真壁)
2.0
③
⑫
構造用パネル
(貫真壁)
せっこうラスボード
(受材真壁)
9
構造用せっこうボードA種
(受材真壁)
12
土塗り
(両面)
70
1.3
構造用せっこうボードB種
(受材真壁)
12
1.2
構造用せっこうボードB種
(直張り)
12
1.0
木ずり
(両面)
せっこうボード
12
製材
(筋かい)
15×90
シージングボード
12
鉄筋
φ9
ラスシート(角波亜鉛鉄板)
0.4
シージングボード
(直張り)
12
ラスシート(メタルラス)
0.6
ラスシート(角波亜鉛鉄板,
直張り)
0.4
ラスシート(メタルラス,
直張り)
0.6
せっこうラスボード
(貫真壁)
9
せっこうボード
(受材真壁)
12
強化せっこうボード
(受材真壁)
12
構造用せっこうボードB種
(直張り床勝ち)
12
土塗り
(片面,
両面)
55
製材
(格子壁)
105×105
せっこうボード
(直張り,直張り床勝ち)
12
強化せっこうボード
(直張り,直張り床勝ち)
12
製材
(格子壁)
45×90
0.8
構造用せっこうボードA種
(貫真壁)
12
0.7
構造用せっこうボードB種
(貫真壁)
12
0.6
製材
(格子壁)
90×90
製材
(落込み板壁)
27×130
木ずり
(片面)
製材(筋かい)
18×89
土塗り
(片面)
製材(横打ち)
13×210
0.9
0.5
備考
せっこうボード
(貫真壁)
12
強化せっこうボード
(貫真壁)
12
上記の材料を併用した場合は倍率を加算することができるが、
5.0倍を上限とする。
枠組壁工法の倍率は、
たて枠間隔50cm以内の仕様のみ記載。
軸組構法は建築基準法施行令第46号および建設省告示第1100号。枠組壁工法は、国交省告示第1541号による。
11
12
Ⅴ
0.9Pmax
Pu
0.8Pmax
Ⅲ
荷重
Ⅰ
Py
Ⅱ
Du :
Ⅳ
Ⅰ :
Ⅱ :
Ⅲ :
Py :
Dy :
Ⅴ :
Ⅵ :
0.4Pmax
0.1Pmax
Pu :
Dy
Dv
Ds =
包絡線
Ⅵ
4.3 構造計算で設計する耐力壁の耐力
1
2Du/Dv̶1
0.8Pmaxの時の変形(実験で0.8Pmax以下に
ならない場合は1/15rad)
0.1Pmaxと0.4Pmaxを通る直線
0.4Pmaxと0.9Pmaxを通る直線
直線Ⅱを平行移動して包絡線に接する直線
直線Ⅰと直線Ⅲの交点の荷重
包絡線のPyに相当する変形
原点と(Dy,Py)を通る直線
包絡線とX軸及びDuを通りY軸に平行な直線
によって囲まれる面積が、ハッチの面積と等しく
なるように引いたX軸に平行な直線
直線ⅥのY軸の値
倍率
仕様
主な施工場所
2級
以上
○
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0335
中通り 200㎜以下
④
○
○
CN50
外周 75㎜以下
FRM-0416
中通り 200㎜以下
④
3.1
○
○
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0415
中通り 200㎜以下
④
3.6
○
○
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0334
中通り 200㎜以下
⑤
CN50
外周 75㎜以下
FRM-0414
中通り 200㎜以下
⑤
⑤
3.6
大壁床勝ち
外壁
外壁・間仕切り壁
軸
組
3.2
受材真壁
外壁
3.5
受材真壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
3.6
5.0
枠 組
2級
以上
2級
13
CN50
○
×
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0337
中通り 200㎜以下
⑥
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0339
中通り 200㎜以下
⑦
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0338
中通り 200㎜以下
⑦
外周 100㎜以下
FRM-0483
中通り 200㎜以下
⑦
○
×
×
×
○
CN65
○
○
CN75
外周 100㎜以下
FRM-0297
⑧
大壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
FRM-0296
⑨
外壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
受材真壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
○
○
CN65
枠組壁
4.5
外壁・間仕切り壁
○
○
○
枠組壁・横張り
※ 商品名 ネダノン スタッドレス 5
※※CNZくぎも使用
● 認定書請求先
○
受材真壁
4.8
1.5
○
外周 100㎜以下
FRM-0336
中通り 200㎜以下
外壁
3.6
9 以上
10 未満
○
大壁
5.0
12
○
○
4.0
2級
以上
施工例
○
大壁
くぎの間隔
認定番号
種類※※
3.4
24 ※
くぎ打ちの方法
1000
3.8
12
モジュール
910
4.0
外壁・間仕切り壁
○
計算や限界耐力計算による設計ルートを採る
ただし(公財)日本住宅・木 材 技術センター
ことが可能である。この場合、耐力壁は釘接
編集「木造軸組 工法 住宅の許 容応力度設計
合許容せん断耐力や合板に生じるせん断応力
(2 0 0 8 年版)」は、通常の住宅の設計において
度等から設計することができる(P. 2 5を参照)。
は13 . 72 kN/m(倍率 7 相当:=7×1 . 9 6)を上
基準法では、このルートで設計した耐力壁に耐
限とすることを推奨している。
4
4.4 実験に見る合板張り耐力壁の性能
表17. 合板張り大臣認定耐力壁の倍率
等級
力の上限はない。
Du
せん断変形角
図7. 荷重一変形関係のバイリニア化の方法
厚さ
工法
(㎜)
在来軸組構法や枠組壁工法では許容応力度
○
○
○
○
FRM-0298
⑩
⑪
外周 50㎜以下
TBFC-0114
中通り 200㎜以下
⑫
CN50
外周 50㎜以下
TBFC-0112
中通り 200㎜以下
⑫
CN65
外周 75㎜以下
TBFC-0111
中通り 200㎜以下
⑫
CN65
外周 100㎜以下
TBFC-0113
中通り 200㎜以下
⑫
CN50
外周 100㎜以下
TBFC-9034
中通り 200㎜以下
⑬
耐力壁の倍率はせん断実験の結果を基に定
裕があること、スギ合板 12㎜の耐力壁は告示仕
められている。図 8は実験結果の一例で、合板
様に比べて耐力も変形性能(粘り)も向上して
張り耐力壁の場合、在来軸組構法住宅の許容
いること、さらにネダノン スタッドレス5 + は、他
変形角である1 / 12 0 rad時の耐力は、基準法・
の耐力壁にはない高い耐力と優れた変形性能
告示の倍率(倍率2 . 5 = 4 . 9 kN/m)に対して余
を有することが見て取れる。
30
スギ合板24㎜、
2級
(スタッドレス5+大壁.
特認5倍)
25
長さ1m当たりの耐力(kN/m)
4
Pmax
20
スギ合板24㎜、
2級
(スタッドレス5+真壁.
特認5倍)
スギ合板12㎜、
2級
(大壁、特認4倍)
15
スギ合板12㎜、
2級
(受材真壁、特認3.4倍)
10
ラワン合板7.5㎜、
1級
(告示2.5倍)
5
軸材の樹種
耐力壁
柱・土台
桁
合板24㎜
スギ
ベイマツ
スギ
ベイマツ
合板12㎜
合板7.5㎜
0
二つ割り筋かい ベイツガ ベイツガ
ベイツガ二つ割り筋かい
ツガ二つ割り筋違い
(基準法2倍)
(基準法2倍)
2
ベイツガ ベイツガ
6
4
見かけのせん断変形角
(10
−2
8
10
rad)
図8. 構造用合板耐力壁のせん断性能
+
・軸組 12㎜ 枠組 12㎜…日合連(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です。
)
・軸組 24㎜(ネダノン スタッドレス 5 +)…東京・東北工組(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です。
)
・枠組 9㎜以上 10㎜未満…(一社)日本ツーバイフォー建築協会(但し、認定書の発行には会員登録が必要となります。
)
14
4
4.5 筋かいとの違い
4.6 合板張り耐力壁の施工方法
● 方向性がない
● 合板には JASマークの付いた構造用合板
筋かい耐力壁は、図 9 のように基本的に筋
力の方向
力の方向
を使用する
幅の最小値は9 0 cm以上、告示仕様の合板張り
耐力壁の幅の最小値は6 0 cm以上かつ階高/
例え JASマークが付いていても、コンクリー
幅は5以下とされている。国土交通大臣特認の
筋かいが圧縮となるときは、端部が土台 ・柱・
ト型枠用合板(コンパネ)等の他の合板を使用
耐力壁の幅の最小値については、個々に変形性
胴差しなどに接する( 胴 付きとなる)ことに
すると建築基準法違反になるので、絶対に使用
能が異なるため、9 0 cmとも6 0 cmとも言及され
よって、力が 伝 達されるが、筋かいが引張り
しない。
ていないものもあるが、これらの幅の最小値に
かいが圧縮になるときに抵抗する。これは、
ついては最終的には建築主事の判断と考えられ
を受けるときには、筋かい端部の接合部は十
分に抵抗できないからである。そのため、筋
● 釘は規定された種類のものを使用する
るので、問題がありそうな場合は事前に建築主
かい端部は金物で補強することになっている
市販されている釘には、N釘、CN釘、FN釘な
事に確認ください。
が、それでも耐力は圧縮の時の半分程度であ
どいくつかの種類がある。FN釘はこの中で最
枠組壁工法では、
(一社)日本ツーバイフォー
も多く出回っている釘であるが、胴部径の細い
建築協会発行・国土交通省監修「2 0 0 7年枠組
造作用釘であり耐力に乏しい。国土交通省(建
壁工法建築物構造計算指針」によると、幅の最
設省)告示や国土交通大臣の認定書に規定され
小値は6 0 cm以上となっている。
た釘を使用しないと、所定の耐力が出ず建築基
合板を張り継ぐ場合は、合板はできるだけ大
準法違反となるので、設計時だけでなく施工時
きくすることが望ましい。
る。このような理由から、筋かい耐力壁は、
同一耐力壁線上で、筋かいの方向が一対とな
るように配置することになっている。これに
筋かいは圧縮
筋かいは引張
筋かいは柱と横架材の
軸組の中で突っ張る
筋かい端部が柱や横
架材から離れる
対して、合板 張り耐 力壁には方向性が無く、
図9. 筋かい耐力壁の方向性
これが筋かいと比べて最大のメリットである。
例えば 狭 小な敷地で間口部分に半間の壁し
の現場管理でも細心の注意が必要である。
か設けられない場 合、筋かいを1 本入れても
合板を留め付ける釘は N釘またはCN釘であ
一対にならないが、合板を張れば有効な耐力
り、以下のようになっている。
壁とすることができる。
と、図 10 のように荷重がゼロの付近で容易に
変形するスリップ成分が見られる。これは筋
かい端部が土台・柱・胴差しなどに接するま
での隙間によるものである。これに対して合
板耐力壁の場合は初期剛性が高く、筋かいの
ようなスリップ成分はない。
筋かいの耐力壁の初期のスリップ成分は金
物補強により減 少させることはできるが、端
部の隙間は施 工 精度に依存し、その影 響を
完全になくすことは困難である。したがって、
合板耐力壁は、高い施工精度がなくても、初
長さ1m当りの荷重(kN/m)
● 施工精度に左右されない
一対の筋かいに繰り返し荷重を作用させる
4
10
切に調整する
・ 軸組構法の告示の耐力壁(表16)
:N50
空気圧が過大で、釘が合板にめり込むと、終
・ 枠組壁工法の告示の耐力壁(表16)
:CN50
局強度が低下し、破壊の性状が脆性的になる
・ 軸組構法の大臣認定耐力壁(表17)
:仕様に
など、耐震性をそこなうことになる。
よりCN50、CN65又はCN75
20
・ 枠組壁工法の大臣認定耐力壁(表17):仕様
によりCN50又はCN65
10
5
●自動釘打機を使用する場合は、空気圧を適
● 合板の張り方には大壁仕様と真壁仕様と
がある
なお、CN釘の代わりに、CN釘に亜鉛メッキ
大壁仕様の場合は、柱と横架材に直接釘打
処理したCNZ 釘を使用してもよい。
ちし、真壁仕様の場合は、横架材に合板の胴つ
なぎ材を取り付けてこれに合板を釘打ちするか
-10
10
20
-10
頂部の水平変位(cm)
-5
10
20
30
-10
(a)
三つ割り筋かい入り
(b)
合板張り
図10. 耐力壁の復元力特性
● 合板を張り継ぐ場合は、目地部分に胴つな
ぎ材を設けて釘を打つ
(受材タイプ)、貫を入れてこれに合板を釘打ち
する(貫タイプ)。
この胴つなぎ材は合板と合板とを継ぐための
受材タイプの真壁仕様はメカニズム的には大
一種の添板であるから、胴つなぎ材の端部は柱
壁仕様と同じであるが、受材と柱・横架材がす
や間柱に強固に接合する必要はない。一般的
べりを生じないように強固に接合する必要があ
には釘の斜め打ちで留め付ける程度で良い。
る。貫タイプの真壁仕様は、メカニズムが他の
期剛性の高い安定した性能が容易に得られ
2 つと異なる部分があり、実際の剛性と耐力は
● 耐力壁の幅の最小値を守り、合板の大きさ
る耐力壁であるといえる。
やや低くなる傾向がある。
はできるだけ大きくする
● 力が分散するので粘りがある
建築基準法では耐力壁の幅の最小値や合板
● 耐力壁の構造用合板に設ける開口はできる
筋かい耐 力壁は、筋かい自身とその 接 合
これに対して、合板耐力壁では合板と軸組と
の最小の大きさについての規定はないが、在来
だけ小さくし、大きい場合は開口周囲を補
部に大きな力が集中する構造であり、場合に
の力の 伝 達が 多数の釘を介して行われるの
軸組構法では、
(公財)日本住宅・木材技術セ
強する
よっては土台が引き裂かれたり筋かいが折れ
で力が集中せず、粘り強い構造となる。
ンター編「木造軸組工法住宅の許容応力度設計
従来から、耐力壁の構造用合板に配管、電
(2 0 0 8 年版)」によれば、筋かい等の耐力壁の
気配線、換気扇等の小さい孔を設けることは許
たりして脆 性的な破壊を生じることがある。
15
16
4
容されていたが、国住指第 13 3 5号「国土交通
ぼ元の状態に戻るので、床仕上げの前には十分
省住宅局建築指導課長通知(技術的助言)」に
に乾燥することが必要である。
より、
「木造の耐力壁について、周囲の軸組か
強度は水分によって変化するが、乾けば元に
ら離して設ける径50cm程度の換気扇用の孔は
戻る。合板の製造には、JAS規格に規定された
「開口部」に該当しない」と明示された。しかし、
特類(屋外又は常時湿潤状態となる場所で使
合板の厚さが 12㎜以下で換気扇用等の比較的
用)または1類(断続的に湿潤状態となる場所
大きい孔を空ける場合は、孔の周囲を木材で適
で使用)の接着剤が使用されているため、単板
切に補強することが望ましい。
がはがれるようなことはない。
(雨や湿気で単
4
板がはがれた合板を見ることがあるが、このよ
● 雨ぬれを生じた場合の考え方
うな合板は、耐水性の低い接着剤を使用した
合板は木材と同様に水分を吸放出する性質
造作用の合板である。
)
があり、それにともなってわずかではあるが寸
また、雨ぬれによってスギやカラマツなどに
法変化を生じる。雨ぬれによって水分を多く吸
含まれる化学成分が反応し、板面が褐色や黒
収すると、膨らみ、ねじれ等を生じる。雨ぬれ
色に変色することがあるが、そのために強度が
の程度が激しいと膨らみ、ねじれ等が戻らない
低下することはない。
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
ことがある。雨ぬれの程度が軽微であればほ
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図12. 施工例−② 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁部 告示「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
貫15×90以上
@610㎜以下
5本以上
間柱
300㎜以下
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
合板を張り継がない場合
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
合板を張り継ぐ場合
図11. 施工例−① 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁部 告示「大壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
17
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
図13. 施工例−③ 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁・間仕切り壁 告示「貫真壁仕様」基本施工例
18
4
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
4
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
受材
(見付)
×45以上
30
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
合板を張り継がない場合
図14. 施工例−④ 構造用合板12㎜厚 外壁部 特認「大壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
図16. 施工例−⑥ 構造用合板12㎜厚 外壁部 特認「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
合板を張り継ぐ場合
受材
(見付)
×45以上
30
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継ぐ場合
図15. 施工例−⑤ 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 特認「大壁仕様」(床勝ち)基本施工例
19
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図17. 施工例−⑦ 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 特認「受材真壁仕様」(床勝ち)基本施工例
20
4
受材
45×45以上
合板を張り継がない場合
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図18. 施工例−⑧ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁部
特認「大壁仕様」基本施工例
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
受材
45×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図20. 施工例−⑩ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁部
特認「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
受材
45×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
受材
45×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図19. 施工例−⑨ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁・間仕切り壁
特認「大壁仕様」(床勝ち)基本施工例
21
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
4
受材
45×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図21. 施工例−⑪ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁・間仕切り壁
特認「受材真壁仕様」(床勝ち)基本施工例
22
4
4.7 合板張り耐力壁のメカニズム
頭つなぎ
(204)
頭つなぎ
(204)
上枠
(204)
上枠
(204)
ブロッキング
(204)
たて枠
(204)
たて枠
(204)
合板張り耐力壁のメカニズムは、図2 4 のよう
接合部の変形による軸組全体のせん断変形、
に垂直に立てた片持のIビームと同じである。
③柱の浮き沈みによる軸組全体の回転変形、
すなわち、外側の柱はフランジとして曲げの力に
④柱の引張・圧縮による軸組全体の曲げ変形
対して抵抗し、合板はウェブとしてせん断力に対
からなる。この中では特に①〜③が支配的で、
して抵抗する。合板耐力壁の剛性・強度が高
それぞれ、合板の厚さとせん断弾性係数(G)、
いのは、柱と横架材に合板を張り付けることに
合板を留めている釘接合部の剛性(釘の太さと
よって、せいが大きく長さが短いIビームが構成
間隔)、柱と土台・胴差し・桁・はりなどの接合
されるからである。
部の剛性によって決まる。このうち、③の変形
合板耐力壁の変形は、図2 5に示すように、①
については改正基準法でホールダウン金物等を
合板自身のせん断変形、②合板を止めている釘
用いて強度の確保を図ることとなった。
4
下枠
(204)
下枠
(204)
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り付けている
② 釘接合部分が変形する
合板を張り継ぐ場合
図22. 施工例−⑫ 枠組壁工法 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 告示・特認 基本施工例
柱はフランジに相当
力の方向
(曲げの力に抵抗)
フランジ
(せん断力に対
して抵抗)
ウェブ
合板は
ウェブ
に相当
合板がせん断
変形を生じる ①
この柱には引張
応力が生じる ④
頭つなぎ
(204)
この柱には圧縮
④ 応力が生じる
反力
合板耐力壁
上枠
(204)
Iビーム
図24. 合板耐力壁のメカニズム
③ 柱が土台から
引き抜ける
③ 柱が土台に
めりこむ
図25. 合板耐力壁の変形
たて枠
(204)
下枠
(204)
構造用合板2級9㎜以下10㎜未満
CN50 外周@100以下
(水平方向の目地を除く)
その他の部分@200以下
図23. 施工例−⑬ 枠組壁工法 構造用合板9㎜厚以上10㎜厚未満 外壁・間仕切り壁
特認 基本施工例
23
24
4
4.8 許容応力度計算における
合板張り耐力壁のせん断耐力
構造用合板を張った床
● 軸組構法
● 枠組壁工法
5.1 水平構面の役割
軸組構法において、3階建て建物や延べ床
枠組壁工法の場合も、軸組構法と同様に、
● 水平構面に加わる地震力を耐力壁に伝達
面積が 5 0 0 平米を超える場合は、許容応力度
3階建てなどになると許容応力度計算が要求
計算が要求される。一般的に、告示や特認に
される。告示や特認の耐力壁のせん断耐力に
水平構面の第一の役割は、水平構面に作用
までであるが、現実的には間取りや敷地条件な
よる耐力壁のせん断耐力については、倍率1=
ついては、倍率 1=1 . 9 6 kN/mとして倍率から
する地震力を耐力壁に伝達することである。い
どからそのようにならざるを得ない場合が多い。
1 . 9 6 kN/mとして壁倍率から換算する方法で計
換算するのも軸組構法と同様である。これら
かに耐力壁が十分に配置されていたとしても、
図 2 7のように、耐力壁の配置が悪い建物の
算することとなっている。また、これら以外の
以外の耐力壁については、
(一社)日本ツーバ
水平構面が弱いと建物は分解する。
場合、水平構面の剛性が低いと、水平構面はひ
耐力壁については、
(公財)日本住宅・木材技
イフォー建築協会発行「2 0 0 7年枠組壁工法建
強度だけでなく剛性も重要である。水平構面
し形に変形し、地震力は二つの妻壁に等分に
術センター「木造軸組工法住宅の許容応力度
築物構造計算指針」に釘接合耐力等から計算
の剛性が低いと、図 2 6 のように内部耐力壁は
加わることになる。従って開口の大きい手前の
設計(2 0 0 8 年版):通称 グレー本」に釘接合
で誘導する方法が記載されている。この式は、
外壁の耐力壁より大きな変形を生じることとな
妻壁は大きく変形し、建物は大きな損傷を受け
耐力等から計算で誘導する方法が記載されて
軸組構法を対象としたグレー本の式よりシンプ
る。このような変形を生じると、内部耐力壁に
ることになる。
いる。ただし、これによる耐力は、13 . 72 kN/m
ルであるが、耐力を安全側に見積もる傾向が
は過大の地震力が集中し、逆に外壁の耐力壁
しかしながら、水平構面が剛床であれば、水平
ある。
(倍率 7 相当)までとなっている。
すること
バランスな建物であった。耐力壁の配置のアン
バランスは、設計が悪いといってしまえばそれ
は十分に働かないことになる。水平構面の変形
構面は変形せずに矩形を保つので建物は図に
なお、ネダノン スタッドレス5 + の倍率は5であ
は耐力壁間距離が大きくなると、また、吹き抜け
示すようにねじられる。ねじりに対しては地震の
るが、実力はそれ以上あり、柱頭・柱脚接合部設
などを設けると大きくなるので、このような場合
力の方向と直角の方向にある耐力壁も抵抗する
計用の耐力としてその倍率(仕様によって5 . 9 ~
は、特に水平構面の剛性を高くする必要がある。
ので、この直交壁の耐力が大きければねじり変
7. 0)が付随している。従ってネダノン スタッドレ
ス5 の耐力は、この柱頭・柱脚接合部設計用の
+
倍率を換算した値を使用する。
5
形は小さくなる。すなわち、開口の大きい手前の
● 耐力壁の配置のアンバランスによる悪影響
を少なくすること
妻壁の変形と反対側の妻壁の変形との差が小さ
くなる。このように水平構面の剛性が高いと、耐
阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた木造
力壁の配置がアンバランスであっても、直交壁を
住宅の一つのパターンは、耐力壁の配置がアン
補強することで、その悪影響を減少させることが
できる。
壁
耐力
の
小
線
形
変
線
壁
耐力
の
大
形
変
線
壁
耐力
中の
形
変
線
力壁
耐
小の
形
変
震力
地
図26. 水平力と耐力壁の変形
25
26