一般財団法人日本産業協会 平成27年度事業計画 まえがき わが国では現在、高齢化、グローバル化、情報化など社会環境の急激な変化の中で、消 費生活を脅かす企業不祥事や高齢者に関する消費者トラブルが多発しており、安全で豊か な消費生活を営むことができる経済社会の構築や、高齢化の進展による買物弱者への対応、 ネット取引の拡大による新たなニーズへの対応など、喫緊の課題が山積している。 このような状況下、消費者の提案や意見を企業の経営に反映した消費者志向経営の推進 に貢献するとともに、企業や行政の消費者部門において専門性を発揮し苦情相談等に迅速 かつ適切に対応する消費生活アドバイザーの果たすべき役割は、ますます重要になってき ている。 そこで、消費生活アドバイザー資格制度創設35周年という節目の年に当たる今年度は、 消費生活アドバイザー資格制度を普及することにより幅広く社会貢献を果たすため、関係 機関とより緊密な連携・協働を図り、社会の変化に柔軟に対応した新たな一歩を踏み出し たい。さらには、消費生活に関する資格制度の目的を明確にし、現在実施している消費生 活アドバイザー資格試験とは別に、新たな消費生活相談員資格試験の登録試験機関にもな るための準備を着実に進めていく。 また、特定商取引に関する法律に基づく指定法人としての責務を果たすため、同法に定 める申出制度に係る指導・助言を行う。加えて、消費者庁から受託した電子商取引モニタ リング事業については、いわゆる迷惑メールを含むインターネット通信販売やインターネ ットオークション、テレビ通信販売に係る広告、表示などの法令遵守状況に関する調査を 実施し、電子商取引を巡る消費者トラブルの防止に努める。 なお、当協会は、国民の消費生活の維持・向上に引き続き寄与するため、以下の事業を 実施する。 会 議 業務の円滑な運営を図るため、次の会議を設置・開催する。 事 1.理事会 2.評議員会 3.運営委員会 4.技能審査委員会 業 当協会は今後、経営マインドを持ち、社会の変化に柔軟に対応し、自ら主体的に考え、 行動するとともに、関係機関との連携・協働により、消費生活アドバイザー資格等の制度 のさらなる普及振興を持続的に押し進めなければならないと考えている。 1 これまでは、企業の消費者志向経営の促進と消費者啓発に寄与するとともに、訪問販売 や通信販売など、特定商取引の適正化に資することをもって消費者利益と企業活動の調和 を図るため、 「事業者の行う消費者相談業務に関する知識及び技能審査事業(消費生活アド バイザー技能審査事業)」を実施してきた。 消費生活アドバイザー資格制度創設35周年という節目の年に当たる今年度は、同制度 のより一層の普及を図るため、経済産業省・地方経済産業局や消費者庁はもとより、(公社) 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)、日本商工会議所・ 各地商工会議所など関係機関とより緊密な連携・協働を図り、社会の変化に柔軟に対応し た新たな一歩を踏み出す。また、制度創設35周年記念事業を実施するとともに、消費生 活に関する資格制度の目的を明確にし、現在実施している消費生活アドバイザー資格試験 とは別に、新たな消費生活相談員資格試験の登録試験機関にもなるための準備を着実に進 めていく。さらに、制度の一層の理解と、消費生活アドバイザーの果たしている役割を広 く周知するため、各地において一般消費者や企業関係者、大学生などを対象とした説明会 を、NACSに委託して強化する。 以上の施策を実施することにより、消費生活アドバイザー資格試験の受験者数の増加を 果たす。 1.既存事業の推進と見直し・改善 (1)消費生活アドバイザー資格試験の実施 消費者相談業務に関する知識及び技能に係る審査を行い、審査の合格基準に達し、 かつ実務経験を有する者または実務研修を修了した者に対して、申請に基づき消費 生活アドバイザーの称号を付与する。なお、試験実施にあたっては、日本商工会議 所及び試験地の各商工会議所の協力を得る。 ① 第1次試験 消費生活アドバイザーとしての使命・責務を果たすための一定水準以上の基礎的 知識の有無を判定する「択一試験」を次のとおり実施する。なお、大規模災害等に より第1次試験が一部中止となる場合も想定し、予備問題の作成や会場(東京会場 のみ)の確保等について検討・実施する。 日 程:平成27年10月4日(日) 試験地:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の8カ所 合格発表:平成27年11月上旬 ② 第2次試験 第1次試験の合格者に対して、出題の理解力、課題の捉え方、表現力などを審査 するための「論文試験」、及び、消費生活アドバイザーとして相応しい態度、積極性、 見識などを審査するための「面接試験」を次のとおり実施する。 日 程:平成27年11月28(土) 〔29日(日)〕 試験地:札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5カ所 2 ※東京及び大阪のみ、一部の受験者の面接試験が翌29日(日)と なる場合がある。 合格発表:平成28年2月上旬 ③ 実務研修 第2次試験合格者のうち、1年以上の実務経験を有しない者に対して、企業や行 政における相談業務の実情などについて理解を深めてもらうことを目的として、事 例研究などを中心とした実務研修を実施する。なお、現在 4 日間の研修期間は、受 講者の負担等を軽減するため、これまでと同等のレベルを確保しつつ、3日間とし 1日短縮する。 日 程:平成28年2月下旬 開催地:東京、大阪 ④ 称号の付与・登録など 上記の第1次試験及び第2次試験に合格し、かつ1年以上の実務経験を有する者 または実務研修を修了した者に対して、申請に基づき消費生活アドバイザーの称号 を付与する。あわせて、消費生活アドバイザー登録名簿(データベース)に登録し、 管理するとともに、消費生活アドバイザー証を交付する。 なお、称号の有効期限は、登録日から原則として5年間とする。 (2)称号の更新及び更新研修の実施 ① 称号の更新 有資格者に対して、消費生活アドバイザーとしての知識及び技能の維持・向上に 資するため、更新研修を実施するとともに、更新のための申請があった修了者には、 消費生活アドバイザーの称号付与の有効期限を5年間延長する。 ② 更新研修の充実 消費生活アドバイザー更新研修(集合講座及びeラーニング講座)については、 引き続き外部有識者からなる「更新研修カリキュラム委員会」において、受講者の 意見を踏まえたテーマや講師選定などの具体的検討を行い、充実に努める。特に、 eラーニング講座については、受講者の利便性に資するよう、平成26年度は5講 座だった同講座を平成27年度は7講座(うち集合講座収録版は、前年度比4講座 増の5講座)に拡充するとともに、大規模災害等緊急時には集合講座からeラーニ ング講座に振替え対応も可能としていく。平成28年度以降は、eラーニング講座 をさらに拡充する一方で、東京会場と大阪会場の集合講座開催日数の削減も検討し たい。 なお、集合講座は、運営・実務の一部を(学)産業能率大学に委託する。 (3)通信講座事業の推進 消費生活に関する幅広い基礎的知識の習得を目的とした企業内教育や消費者啓発 のみならず、消費生活アドバイザー資格取得を目指す人材の養成に有効な通信講座 3 を実施する。 通信講座で使用するテキストは、学習意欲・効果を高めるために、例年通り掲載 内容の見直しを行う。なお、受講者の管理及び添削指導などの業務については、 (学) 産業能率大学に委託する。 加えて、近年、通信講座受講者が減少傾向にあることから、同大学と協力し関係 機関とも連携のうえ、企業への個別訪問や各地における普及イベントなどを通じて 講座の周知活動を積極的に展開する。 (4)相談及び調査事業の推進 特定商取引に関する法律に基づく指定法人としての責務を果たすため、消費生活 アドバイザー有資格者が同法に定める申出制度の相談業務を行う。また、申出制度 の普及のため、パンフレットの配布や相談事例等をホームページで紹介するなど、 引き続き消費者啓発に努める。 いわゆる迷惑メールを含むインターネット通信販売やインターネットオークショ ン、テレビ通信販売に係る広告や表示などの法令遵守状況を調査する電子商取引モ ニタリング事業(消費者庁受託事業)については、当協会内に設置した「電子商取 引モニタリングセンター」において、消費生活アドバイザー有資格者が中心となり 3調査を行い、その結果を消費者庁に報告する。なお、消費者庁の電子商取引モニ タリング事業については、平成25年度に3年契約で受託し、平成27年度が3カ 年目となるため、事業継続に向け、新たな提案を作成する。 (5)広報活動の積極展開 ① ホームページを活用した情報発信 ・ 消費生活アドバイザー資格制度や試験の関連情報、申出制度の案内、消費生活 アドバイザー有資格者に対する求人情報などをホームページに掲載し、有効かつ 積極的に情報を発信する。 また、有資格者に広く活躍する場の情報を提供するため、企業や地方自治体、 事業者団体などに対して求人情報サイトの活用の周知を図る。 ・ 平成25年度よりWeb化した広報誌「あどばいざあ」について、有資格者を はじめ賛助会員、資格取得を目指す受験者などへの参考に供するため、関係機関・ 企業等の協力を得て、有資格者の活動状況や企業の取り組みなどの最新情報を随 時紹介するとともに、掲載内容のさらなる充実を図る。 また、消費生活アドバイザー資格制度の普及振興を図る方策として、メールマ ガジンの配信先の拡大に努める。 ② メディア対応 消費生活アドバイザー資格制度や試験、通信講座をはじめ協会事業について広く 社会一般の理解と支援を得るため、新聞・雑誌・テレビなどメディアに対するパブ リシティ活動を積極的に推進する。 4 ③ リーフレットの作成・配布 消費生活アドバイザー資格制度や試験日程などを紹介したリーフレットを引き続 き作成し、各地の消費生活センターや商工会議所、関係団体、大学などに設置・配 布する。 (6)外注コストの削減 「これまでよりも安かろう 良かろう」を追求し、外注コストの削減を果たす。 2.新規事業の推進 (1)消費生活相談員資格の登録試験機関取得に向けた対応 平成28年度中の改正消費者安全法施行に向けて、高齢者等の消費者被害の未然 防止を図る地域見守りネットワークの活動を推進するとともに、新たに創設される 消費生活相談員資格制度導入のための政省令やガイドラインの整備が今後予定され ている。 当協会では、現在実施している消費生活アドバイザー資格試験とは別に、新たな 消費生活相談員資格試験の登録試験機関にもなるための準備を着実に進めていく。 (2)ガイドブックの作成・頒布 新たに、消費生活アドバイザー資格制度の概要に関するガイドブックの作成、頒 布を検討する。 3.消費生活アドバイザー資格制度創設35周年記念事業の実施 消費生活アドバイザー資格制度創設35周年を、賛助会員を含む関係者全員で祝うとと もに、消費生活アドバイザー資格制度の一層の普及と消費生活アドバイザー資格保有者の 地位向上につなげ、受験者及び賛助会員の増加に資することを目的に記念事業を実施する。 (1)時期・場所:平成27年11月~12月頃 東京 (2)主 催:当協会 (3)後 援:経済産業省、消費者庁、(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタ ント・相談員協会、(公社)消費者関連専門家会議、賛助会員、その他 (4)内 容:○特別講演「消費者志向経営関連(案)」 ○パネルディスカッション ○企業・功労者表彰(大臣表彰、当協会会長感謝状) ○記念パーティ 4.中期経営計画(平成27年度~平成29年度)の策定と推進 5 (1)中期目標の設定(抜粋) (単位:人、千円) 平成27年 平成28年 平成29年 第 1 次試験 2,000 2,500 3,000 受験申請者 (+481) (+500) (+500) △4,620 100 1,100 収 支 *平成28年度以降は、第1次試験受験申請者数に消費生活相談員資格試験受験者も含む。 (2)消費生活アドバイザー資格制度の普及と消費生活アドバイザー資格保有者の地位 向上 全国の大学で消費生活アドバイザー関連科目の遠隔講義受講が可能になるような 大学講義のネットワーク化と社会人大学院の創設や、消費生活アドバイザーを中核 に据えた産学官連携による消費者志向経営等に関する実践的な学会の組成、地方の 中堅・中小企業における消費者志向経営を普及させることによる地方創生支援、経 営協議会(仮称)の組成による資格保有者の地位向上などを検討・実施する。 5.その他 (1)交流事業の推進 当協会の目的に賛同し、事業に協力いただいている賛助会員を主な対象として、 企業における消費者志向経営の促進や消費者対応の適正化、消費生活アドバイザー の活用促進に資するためのセミナーや交流会などを開催する。 また、消費生活アドバイザー資格制度創設 35 周年を契機に、賛助会員制度を広 く企業などに周知し、会員数の拡大を図る。 (2)消費生活アドバイザー有資格者の活動支援 地域における中小企業の消費者志向経営の推進に資すること、及び、消費生活ア ドバイザーの活躍の場を拡げることを目的として、有資格者の活用について企業や 関係機関などへの働きかけを積極的に行う。 6
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