臨床研究 - 大日本住友製薬 医療情報サイト

臨床研究
アムロジン®
錠/OD®錠とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の
併用に関する特定使用成績調査
PARTNER Study
(Practical combination therapy of Amlodin and
Angiotensin Ⅱ Receptor Blocker;safety and efficacy
in paTieNts with hypERtension)
1
福田博文
1
内田昌子
1
石橋和士
1
1
佐藤房子
温井一彦
大日本住友製薬株式会社 信頼性保証本部 ファーマコビジランス部
はじめに
1
1
長尾宗彦
石光俊彦
2
2
獨協医科大学 循環器・腎臓内科
調査目的と実施の経緯
高血圧は心血管病の最大の危険因子であり,その予防
JSH2014 では,降圧薬の単独治療で目標血圧値に到達
1)
しない場合,CCB と ARB の併用が推奨されており,ア
では,24 時間にわたる血圧コントロールの重要性が強調
ムロジンと ARB 併用時の情報は重要である.一方,ア
されるとともに合併する種々の病態に適した降圧薬の選
ムロジンは 1993 年 10 月に承認され,再審査期間中に使
択が推奨されている.しかしながら,単剤で降圧治療を
用成績調査および特別調査を実施し,約 6,500 例の症例
おこなっている高血圧患者のうち,降圧目標を達成して
情報を収集したが,各調査期間は ARB 上市前であり,
のために「高血圧治療ガイドライン 2014(JSH2014)」
2)3)
もあ
ARB 併用例は含まれず,これまで併用例に関する情報
り,血圧コントロールはいまだ不十分である.JSH2014
は少ない.そこで,アムロジンと ARB 併用例について
では,単剤で降圧目標を達成できない場合や高リスク患
使用実態下での安全性および有効性に関する適正使用情
者において,併用療法が推奨されているが,そのなかで
報を得ることを計画した.また,アムロジン 10 mg まで
もわが国では長時間作用型 Ca 拮抗薬(CCB)と ARB が
増量可能とする用法・用量の一部変更の承認後,使用実
併用されることが多い.作用機序の異なる CCB と ARB
態下での調査を実施しておらず,本調査症例のうち 10
の併用により,各々の単剤を上回る降圧効果が得られる
mg 用量の安全性および有効性に関する適正使用情報を
いる割合は 40%以下にとどまっているとの報告
4)〜6)
とともに副作用の軽減も期待できる
.
得る目的で実施した.
PARTNER Study(以下,本調査)は,日常診療下にお
いてアムロジン®錠(以下,アムロジン)と ARB が併用
された高血圧症例の有効性および安全性の検討を目的
に,プロスペクティブな中央登録方式により実施した特
調査方法
7)8)
調査方法の詳細については先に報告した通りである
.
定使用成績調査であり,2011 年 7 月から 2 年 3ヵ月の予
定でおこなった.本調査結果を医療現場に迅速に伝える
目的から,2013 年に中間報告
7)8)
をおこなったが,今回す
べての調査が終了したことから,本剤の適正使用につな
げる目的で最終報告をおこなう.
64(128)
血圧 vol. 22 no. 2
2015
ઃ) 対象
調査対象は,アムロジンと ARB を新たに併用開始し
た高血圧症例とした.
■臨
登録症例
6,058
調査票収集症例
6,038
安全性評価除外症例
安全性評価対象症例
5,900
138
除外理由(重複あり)
初回以降来院せず
110
安全性に関する情報が未入手
80
併用開始日以前からアムロジンと ARB を併用
18
登録違反(2 週間超)
7
併用開始日前 12 週間にアムロジン以外の
アムロジピン製剤の投与あり
4
併用開始日が契約期間外
1
併用開始日が登録期間外
1
有効性評価除外症例
有効性評価対象症例
5,797
床 研 究■
103
除外理由
血圧未測定
併用開始日から 14 日以降の血圧値がない
休薬
81
21
1
図 1.症例構成図
઄) 調査項目
併用開始時の症例背景,アムロジンおよび ARB の投
結 果
与状況,併用開始前治療薬(併用開始前 4 週間の高血圧
ઃ) 患者背景
治療薬)
,併用薬,診察室血圧[収縮期血圧(SBP),拡張
本剤が採用された全国の内科・循環器科を中心に,主
期血圧(DBP)]
,脈拍数,臨床検査値[BUN,血清クレ
として開業医で実施し,2012 年 12 月までに 6,058 例が
アチニン(Cr)
,尿検査(アルブミン,蛋白)
,尿酸,血清
登録され,701 施設から 6,038 例の調査票を収集した.
カリウム(K)
],有害事象などについて調査をおこなった.
症例構成を図 1 に示した.6,038 例のうち,初回以降
来院せずなどの 138 例を除いた 5,900 例を安全性評価対
અ) 解析方法
象症例とした.安全性評価対象症例から血圧未測定など
2
安全性の要因別解析では c 検定を用い,要因区分に順
序性がある場合 Cochran-Armitage 検定も使用した.血
圧,脈拍数,臨床検査値などの定量データについては対
の 103 例を除いた 5,797 例を有効性評価対象症例とした.
安全性評価対象 5,900 例の症例背景別構成比を表 1 に
示した.
応のある t 検定を用いた.SBP 変化量の平均値の要因別
年齢の平均値は 66.5±12.7 歳(最小 22〜最大 97 歳)
解析においては Wilcoxon の順位和検定,要因区分に順
で あ っ た.入 院・外 来 区 分 は,外 来 が 98.5%(5,812/
序性がある場合 Jonckheere 検定も使用した.数値は平
5,900 例)と大部分を占めた.
均値±標準偏差で表示した.検定は両側検定とし,有意
SBP の平均値は 155.6±17.6 mmHg(最小 93〜最大
水準は 5%とした.副作用コーディングは MedDRA/J
240 mmHg),DBP の平均値は 87.6±12.8 mmHg(最小
(ICH 国際医薬用語集日本語版,Ver. 16)を使用し,基本
語を用いて集計した.
33〜最大 159 mmHg)であった.
高血圧分類では,Ⅰ度高血圧(SBP 140〜159 または
DBP 90〜99 mmHg)が 43.8%(2,582/5,900 例)と最も
多かった.また,収縮期高血圧(SBP≧140 かつ DBP<90
mmHg)の症例は,39.5%(2,330/5,900 例)であった.
合併症有の症例が 61.4%(3,621/5,900 例)と半数以
血圧 vol. 22 no. 2
2015
65‹129
表 1.患者背景別構成比
全症例
性別
年齢(歳)
入院・外来
2
BMI(kg/m )
喫煙習慣
収縮期血圧(SBP)
診察室血圧(mmHg)
拡張期血圧(DBP)
高血圧症分類(mmHg)
(JSH2014 分類)
罹病期間(年)
合併症
(内訳:重複集計)
既往歴
(内訳:重複集計)
CKD 分類
アムロジン
平均 1 日投与量(mg/日)
併用期間中の用量変更
ARB 単剤
ARB
種類
(内訳:重複集計)
ARB 配合剤
併用期間中の用量変更
66(130)
血圧 vol. 22 no. 2
2015
男
女
15〜64
65〜74
75〜
平均(min〜max, SD)
入院
外来
<25
≧25
不明
平均(min〜max, SD)
無
有
不明
例数
平均(min〜max, SD)
例数
平均(min〜max, SD)
正常血圧
SBP<130 かつ DBP<85
正常高値血圧
130〜139 または 85〜89
Ⅰ度高血圧
140〜159 または 90〜99
Ⅱ度高血圧
160〜179 または 100〜109
Ⅲ度高血圧
≧180 または ≧110
不明
収縮期高血圧
≧140 かつ <90
<1
1≦ <5
5≦ <10
10≦
不明
無
有
脂質異常症
糖尿病
心疾患
高尿酸血症
脳血管障害
肝機能異常
腎機能障害
その他
無
有
脳血管障害
心筋梗塞
その他
非 CKD
CKD
重度の腎障害
不明
平均(min〜max, SD)
無
有
イルベサルタン
バルサルタン
オルメサルタン
カンデサルタン
テルミサルタン
ロサルタン
アジルサルタン
ロサルタン/HCTZ
カンデサルタン/HCTZ
テルミサルタン/HCTZ
バルサルタン/HCTZ
オルメサルタン/アゼルニジピン
無
有
症例数
構成率(%)
5,900
2,911
49.3
2,989
50.7
2,521
42.7
1,586
26.9
1,793
30.4
66.5(22〜97,±12.7)
88
1.5
5,812
98.5
2,366
40.1
1,533
26.0
2,001
33.9
24.4(13.2〜52.7,±3.9)
4,288
72.7
847
14.4
765
13.0
5,580
155.6(93〜240,±17.6)
5,578
87.6(33〜159,±12.8)
220
3.7
384
6.5
2,582
43.8
1,719
29.1
673
11.4
322
5.5
2,330
39.5
1,271
21.5
1,610
27.3
1,002
17.0
1,076
18.2
941
15.9
2,279
38.6
3,621
61.4
1,922
32.6
1,012
17.2
571
9.7
457
7.7
364
6.2
355
6.0
334
5.7
1,369
23.2
4,977
84.4
923
15.6
103
1.7
21
0.4
829
14.1
1,815
30.8
677
11.5
81
1.4
3,327
56.4
4.7(1.25〜10,±1.9)
5,677
96.2
224
3.8
2,957
50.1
665
11.3
651
11.0
628
10.6
564
9.6
148
2.5
5
0.1
105
1.8
1.2
73
67
1.1
61
1.0
26
0.4
5,800
98.3
100
1.7
■臨
床 研 究■
表 1.
(つづき)
併用降圧薬
(ARB 除く)
無
有
利尿薬
b 遮断薬
a 遮断薬
他 Ca 拮抗薬
ACE 阻害薬
レニン阻害薬
その他の降圧薬
無
有
−
±
+
++
+++以上
不明
≧90
60≦ <90
45≦ <60
30≦ <45
15≦ <30
<15
不明
平均(SD)
(内訳:重複集計)
透析
尿蛋白(定性)
eGFR
2
(ml/分/1.73 m )
5,317
90.1
583
9.9
222
3.8
152
2.6
68
1.2
47
0.8
27
0.5
26
0.4
4
0.1
5,864
99.4
36
0.6
1,370
23.2
240
4.1
173
2.9
89
1.5
50
0.8
3,978
67.4
434
7.4
1,458
24.7
450
7.6
150
2.5
35
0.6
36
0.6
3,337
56.6
71.8(24.5)
上を占め,内訳では脂質異常症 32.6%(1,922/5,900 例)
③非 CKD 症例
が最も多かった.
併用開始時 eGFR が算出可能な症例(重度の腎障害症
例および CKD 症例を除く
઄) CKD 分類
アムロジンの平均 1 日投与量は 4.7±1.9 mg(最小
本調査では併用開始前 3ヵ月の尿蛋白,血清 Cr など
の情報を収集していないため,日本腎臓学会編「CKD 診
9
1.25〜最大 10 mg)であった.
併用された ARB は,イルベサルタン 50.1%(2,957/
療ガイドライン 2013」 に記載されている CKD の定義
5,900 例)が最も多かった.また ARB 以外の降圧薬が併
を一部改変して使用した.非 CKD 症例が 1,815 例,
用された症例は 9.9%(583/5,900 例)で,利尿薬 3.8%
CKD 症例が 677 例,重度の腎障害症例が 81 例,判定不
能症例は,3,327 例であった.
(222/5,900)が最も多かった.
尿蛋白(定性)データがある症例は 1,922 例で,その
うち尿蛋白陽性(+以上)の症例は 312 例であった.
・本調査における CKD 分類の定義
eGFR 算出可能な 2,563 例の eGFR 平均値は 71.8±
2
①重度の腎障害症例
24.5 ml/分/1.73 m であった.
以下の条件を一つ以上満たす症例
7 eGFR 30 未満(ml/分/1.73 m2
8
8 血清 Cr 3 以上(mg/dl
8
9 透析療法施行中
અ) 併用パターン
安全性評価対象症例 5,900 例におけるアムロジン,
ARB の併用パターンを 4 群に分類し図 2 に示した.
①アムロジン追加併用群 54.2%(3,198/5,900 例)
② CKD 症例
併用開始時 eGFR が算出できる症例のうち以下の
条件を一つ以上満たす症例
(重度の腎障害症例を除く
7 eGFR 30 以上〜60 未満(ml/分/1.73 m 
8
8 尿蛋白陽性(+以上
8
9 合併症として「腎機能障害」を有する
2
ARB 投与中で,アムロジンを新たに併用開始した症
例(併用開始時に中止された降圧薬なし.
*
また,併用終了時 のアムロジン 1 日用量から以下の
3 用量群に分類した.
血圧 vol. 22 no. 2
2015
67‹131
併用パターン
(1)ARB にアムロジンを追加
[アムロジン追加併用群]
症例数
構成率(%)
3,198
54.2
併用開始
1,148
低用量
中止降圧薬なし アムロジン 中用量
高用量
低用量(5mg 未満)
(1)アムロジン
追加併用群
ARB
アムロジン追加用量
の内訳
(併用終了時)
1.25mg n=1
2.5mg n=1,147
中用量(5mg)
1,894
35.9
59.2
156
高用量(5mg 超)
(2)アムロジンに ARB を追加
[ARB 追加併用群]
7.5mg n=9
10mg n=147
併用開始
*
低用量
中用量
高用量
中止降圧薬なし ARB
低用量
(2)ARB
追加併用群
ARB 追加用量の内訳
(併用終了時)
アムロジン
中用量**
1,511
25.6
409
27.1
1,037
68.6
52
3.4
高用量***
****
その他
(3)アムロジンと ARB を同時に併用
[同時併用群]
併用開始
4.9
13
0.9
(3)同時併用群
617
10.5
(4)切替併用群
574
9.7
*
各 ARB の中用量未満
各 ARB の中用量
イルべサルタン
100mg/日
オルメサルタン
20mg/日
バルサルタン
80mg/日
ロサルタン
50mg/日
カンデサルタン
8mg/日
テルミサルタン
40mg/日
アジルサルタン
20mg/日
***
各 ARB の中用量超
****
併用期間中に ARB の種類が替わった症例
**
アムロジン
中止降圧薬なし
ARB
(4)他降圧薬を中止して併用開始
[切替併用群]
併用開始時に中止された降圧薬がある
図 2.併用パターン
7 アムロジン低用量群 アムロジン 5 mg/日未満
8
8 アムロジン中用量群 アムロジン 5 mg/日
8
9 アムロジン高用量群 アムロジン 5 mg/日超
用開始時に中止された降圧薬なし).
④切替併用群 9.7%(574/5,900 例)
他降圧薬を中止して併用開始した症例.
② ARB 追加併用群 25.6%(1,511/5,900 例)
アムロジン投与中で,ARB を新たに併用開始した症
例(併用開始時に中止された降圧薬なし).
*
併用終了時は,観察期間中にアムロジンまたは ARB
のいずれかが投与中止された併用中止時を含む.
また,併用終了時の ARB 1 日用量を各 ARB の承認さ
れた用法用量を参考に以下の 3 用量群に分類した.
7 ARB 低用量群 各 ARB の中用量未満
8
オルメ
8 ARB 中用量群 イルベサルタン 100 mg/日,
8
サルタン 20 mg/日,バルサルタン
8
8
80 mg/日,ロサルタン 50 mg/日,
8
8
カンデサルタン 8 mg/日,テルミ
8
8
サルタン 40 mg/日,アジルサルタ
8
8
ン 20 mg/日
8
9 ARB 高用量群 各 ARB の中用量超
③同時併用群 10.5%(617/5,900 例)
アムロジン,ARB 両剤を同時に投与開始した症例(併
68(132)
血圧 vol. 22 no. 2
2015
આ) 安全性
安全性評価対象症例 5,900 例の副作用の発現状況を表 2
に示した.
5,900 例中 85 例に 101 件の副作用が認められ,副作用
発現率は 1.44%(85/5,900 例)であった.
おもな副作用(5 件以上)は,
「血圧低下」
11 件
(0.19%)
,
「浮 動 性 め ま い」10 件(0.17%),「末 ¿ 性 浮 腫」6 件
(0.10%),
「Á怠感」5 件(0.08%),
「動悸」5 件(0.08%)
であった.
重篤な副作用は「うっ血性心不全」と「腎機能障害」
の 2 件(2 例)であった.
■臨
床 研 究■
表 2.副作用発現状況(CKD 分類,併用パターン)
症例数
発現
発現
症例数
症例率
(件数)
全例
C
K
D
分
類
1,815
24
CKD 症例
677
重度の腎障害症例
81
非 CKD 症例
用量群
11
10
6
32
5
(32)
5
1
1
0.54%
内訳
(3 例以上)
発現
発現
症例数
症例率
(件数)
①
血圧低下
11
浮動性めまい 10
7
#怠感
5 (7)
体位性めまい 3
2
1.32%[うっ血性心不全] 1
6
0.33% 浮動性めまい
3
0
0.00%
16
2.36%
血圧低下
4
6
0.89%
4
2
0.30% p=0.02
4
4.94%
[腎機能障害]
1
1
1.23%
0
0.00%
9
5
4
3
3
20
血圧低下
0.63% 浮動性めまい
#怠感
9
5
4
4
0.13%
血圧低下
50
1.56%
アムロジン
1,148
低用量
22
1.92%
血圧低下
7
10
0.87%
血圧低下
7
1
0.09%
アムロジン
1,894
中用量
27
1.43%
浮動性めまい
#怠感
4
3
11
0.58%
浮動性めまい
#怠感
4
3
3
0.16%
156
1
0.64%
0
0.00% p=0.015
2
0.13%
0
0.00%
1
0.10%
0.00%
1
1.92%
ARB 追加併用
1,511
12
0.79%
ARB
低用量
409
2
0.49%
ARB
中用量
1,037
9
0.87%
ARB
高用量
52
1
1.92%
同時併用
617
8
切替併用
574
15
0.00%
浮動性めまい
浮動性めまい
4
3
5
0.33% 浮動性めまい
1
0.24%
3
0.29% 浮動性めまい
4
3
0.97%[うっ血性心不全] 1
3
0.49%
1
0.16%
2.61%
3
0.52%
0
0.00%
[腎機能障害]
1
傾向検定
(Cochran-Armitage)
①
②
③
0.12%
3,198
アムロジン
高用量
用量群
c 検定
血圧低下
浮動性めまい
#怠感
ほてり
動悸
アムロジン追加併用
併
用
パ
タ
ー
ン
別
発現
発現
症例数
症例率
(件数)
おもな副作用
[重篤な副作用]
血圧低下
浮動性めまい
末W性浮腫
85
5,900
1.44%
#怠感
(101)
動悸
[うっ血性心不全]
[腎機能障害]
③浮腫
(末W性浮腫
含む)
②過度の血圧低下との関連が
疑われる副作用
①副作用
p=0.006 p=0.025 NS
NS
NS
NS
NS
NS
NS
「血圧低下」,
「低血圧」
,
「起立性低血圧」
,
「浮動性めま
アムロジン追加併用群におけるアムロジン用量別の副
い」,
「体位性めまい」,
「Á怠感」を「過度の血圧低下と
作用発現率は,低用量群 1.92%(22/1,148 例),中用量
の関連が疑われる副作用」と定義したところ,過度の血
群 1.43%(27/1,894 例),高用量群 0.64%(1/156 例)
圧低下との関連が疑われる副作用の発現率は 0.54%
であった.アムロジン用量増加に伴う副作用発現の増加,
(32/5,900 例)であった.
過度の血圧低下との関連が疑われる副作用の増加,およ
CKD 分類別では腎障害が重度な群ほど副作用の発現
び浮腫(末¿性浮腫を含む)の増加は認めらなかった.
率,過度の血圧低下との関連が疑われる副作用の発現率
ARB 追加併用群における ARB 用量別についても同様
が高かった.CKD 症例の副作用発現率は 2.36%(16/
であり新たな問題は認められなかった.
677 例)であった.3 件以上認められた副作用は,血圧低
下 4 件であった.
また重篤な副作用は認められなかった.
重度の腎障害症例の副作用発現率 4.94%
(4/81 例)は,
ઇ) 有効性
有効性評価対象症例のうち併用開始時と併用終了時の
CKD 分類のなかで最も高かった.副作用の内訳は,高 K
血 圧 値 が あ る 5,484 例 の 併 用 開 始 時 の SBP/DBP は
血症,血中 K 増加,浮動性めまい,腎機能障害が各 1 例
155.5±17.5/87.5±12.8 mmHg で あ り,4 週 時 で は
であった.
137.4±14.7/78.6±11.0 mmHg,8 週 時 135.7±14.0/
血圧 vol. 22 no. 2
2015
69‹133
(mmHg)
180
155.5(17.5)
n=5,484
160
SBP
137.4(14.7)
n=4,809
135.7(14.0)
n=4,509
140
*
*
134.2(13.7)
n=4,753
134.6(14.4)
n=5,484
*
*
120
mean(SD)
*
p<0.001
対応のある t 検定による
87.5(12.8)
n=5,484
DBP
100
78.6(11.0)
n=4,809
77.6(10.6)
n=4,509
80
*
60
併用開始時
*
77.1(10.4)
n=4,754
77.4(10.4)
n=5,484
*
4 週時
8 週時
73.9(10.3)
n=3,082
73.7(10.2)
n=2,957
*
12 週時 併用終了時
(回/分)
90
74.6(11.0)
n=3,488
脈拍数
80
73.4(10.3)
n=3,488
73.4(10.3)
n=3,488
*
*
*
*
mean(SD)
*
p<0.001
対応のある t 検定による
70
60
併用開始時
4 週時
8 週時
12 週時 併用終了時
図 3.血圧値,脈拍数の推移
77.6±10.6 mmHg,12 週 時 134.2±13.7/77.1±10.4
アムロジン追加併用群(2,986 例)ではアムロジン用
mmHg,併用終了時 134.6±14.4/77.4±10.4 mmHg と
量が多いほど併用開始時の SBP 値が高く,かつ SBP 変
いずれも併用開始時と比較して有意な低下(p<0.001)
化量が大きかった[傾向検定(Jonckheere)p<0.001]
.
が認められた(図 3)
.
また,いずれの用量群も併用終了時 SBP 値は約 135
有効性評価対象症例のうち併用開始時と併用終了時の
mmHg であった.ARB 追加併用群(1,382 例)では
脈拍数がある 3,488 例の併用開始時の脈拍は 74.6±
ARB 用量と SBP 変化量に相関が認められたが[傾向検
11.0 回/分であり,4 週時 73.9±10.3 回/分,8 週時 73.7
定(Jonckheere)p=0.002]
,中用量群と高用量群の
±10.2 回/分,12 週 時 73.4±10.3 回/分,併 用 終 了 時
SBP 変化量はいずれも約 19 mmHg とほぼ同等であった.
73.4±10.3 回/分といずれも併用開始時とくらべ有意な
CKD 群と非 CKD 群の SBP 変化量,併用開始時およ
減少(p<0.001)が認められた(図 3)
.
併用パターン別および,CKD 分類別の SBP 推移(併
用開始時-併用終了時)を図 4 に示した.
併用パターン各群の併用終了時 SBP 値は,いずれも
血圧 vol. 22 no. 2
有効性評価対象症例のうち併用終了時の降圧目標達成
率が算定できる 5,484 例の 140/90 mmHg 未満への達成
率は 70.7%(3,877/5,484 例)であった(表 3).
アムロジン追加併用群(2,986 例)におけるアムロジ
約 135 mmHg であった.
70(134)
び併用終了時の SBP 値には大きな違いはみられなかった.
2015
■臨
(mmHg)
170
併用パターン別
p<0.001
傾向検定(Jonckheere)
CKD 分類別
p=0.002
傾向検定(Jonckheere)
158.8
(17.9)
160
155.7
(16.0)
154.0
(16.4)
150
SBP
−19.1
−22.9
−23.4
161.8
(21.5)
156.3
155.6
(17.6) (18.2)
155.2
(16.3)
150.2
(14.6)
149.7
(20.5)
−19.5
−21.5
164.2
(21.2)
158.1
(19.4)
156.8
(16.0)
153.3
(15.6)
−18.1
床 研 究■
−19.1
−30.7
−20.8
−21.5
mean
(SD)
−20.6
○併用開始時
●併用終了時
−15.0
−15.1
140
130
134.1
(14.0)
134.3
(14.2)
133.9
(13.7)
135.5
(16.7)
アムロジン アムロジン アムロジン
低用量
中用量
高用量
n=1,083 n=1,761
n=142
135.9
(14.4)
135.2
(15.4)
ARB
低用量
n=383
136.1
(13.9)
ARB
中用量
n=941
141.0
(16.2)
138.6
(16.5)
134.6
(15.7)
133.5
(14.7)
135.7
134.0 (15.7)
(14.4)
ARB
高用量
n=45
120
アムロジン追加併用
n=2,986
ARB 追加併用
n=1,382
同時併用 切替併用 非 CKD CKD 重度の腎障害
n=571 n=545 n=1,693 n=633 n=75
図 4.SBP 推移(併用開始時-併用終了時)
ン用量別の 140/90 mmHg 未満の達成率は,いずれも約
表 3.降圧目標到達率(併用終了時)
70%であった.ARB 追加併用群(1,382 例)における
症例数
ARB 用量別の 140/90 mmHg 未満の達成率は,ARB 高
用量群で 46.7%(21/45 例)と他の用量群より約 20%低
かった.
糖 尿 病 合 併 症 例 の 130/80 mmHg 未 満 の 達 成 率 は
34.5%(326/946 例)であった.
年齢
CKD
分類
非 CKD 症例で BUN の有意な上昇が認められた(p=
0.004)
.
CKD 症例で eGFR の有意な上昇が認められた(p=
2,346
65 歳以上
3,138
非 CKD
1,693
946
140/90
130/80
70.7%
68.2%
72.6%
34.5%
71.4%
633
重度の腎障害
75
54.7%
2,986
71.6%
アムロジン低用量 1,083
用量群 アムロジン中用量 1,761
アムロジン高用量
併用
パターン
140/90
CKD
アムロジン追加併用
す影響
の推移を図 5 に示す.
65 歳未満
糖尿病
ઈ) 腎機能,血清尿酸値および,血清 K 値に及ぼ
併用前後で eGFR,BUN,血清 K 値が測定された症例
5,484
全症例
降圧
降圧目標
目標値
達成率
(mmHg)
ARB 追加併用
用量群
140/90
140/90
68.6%
71.7%
71.7%
142
69.0%
1,382
68.2%
ARB 低用量
383
ARB 中用量
941
ARB 高用量
45
140/90
69.5%
68.7%
46.7%
同時併用
571
140/90
72.7%
切替併用
545
140/90
70.3%
0.001)
.
非 CKD 症例,CKD 症例,重度の腎障害症例で血清 K
値の有意な上昇が認められた(いずれも p<0.001).
CKD 症例における尿蛋白(定性)の推移(併用開始時併用終了時)を表 4 に示す.
た場合を悪化と定義したところ改善 22.3%(74/332 例)
と不変 72.0%(239/332 例)が大部分を占め,悪化は
5.7%(19/332 例)であった.
併用前後で尿蛋白(定性)が 1 段階以上減少した場合
併用開始時の血清尿酸値 7 mg/dl 以上の尿酸高値症
を改善,変化がなかった場合を不変,1 段階以上増加し
例(258 例)の併用前後の尿酸推移を図 6 に示す.併用開
血圧 vol. 22 no. 2
2015
71Ó135Ô
eGFR
(ml/ 分 /1.73m2)
90
80
81.4 80.4
(23.7)
(19.0)
血清 K
48.84 (mEq/l)
46.76(21.5)
6
(19.8)
p<0.001
5
40
70
55.4
53.2 (20.1)
(13.9)
4
30
p=0.004
20
30
NS
20
14.8 14.8
(9.9)(11.1)
4.26 4.35
4.10 4.17 (0.5)(0.5)
(0.4)(0.4)
mean
(SD)
NS
50
40
4.84 4.88
(0.7)(0.7)
p<0.001
p<0.001
p=0.001
60
NS
BUN
(mg/dl)
50
NS
3
18.65 18.65
(5.7)(5.7)
14.89 15.23
(4.2)(4.2)
■ 併用開始時
■ 併用終了時
2
10
1
10
0
非 CKD
CKD
n=1,221
n=486
0
重度の
腎障害
n=66
非 CKD
CKD
n=1,094
n=433
0
重度の
腎障害
n=64
非 CKD
CKD
n=1,029
n=420
重度の
腎障害
n=64
図 5.eGFR,BUN,血清 K の推移
表 4.CKD 症例での尿蛋白の推移
併用終了時
併
用
開
始
時
−
±
+
++
−
185
3
1
1
±
16
9
8
+
11
7
15
3
++
4
2
24
17
3
4
13
23
21
51
25
16
332
+++以上
合計
3
219
始 時 7.94±1.11 mg/dl か ら 併 用 終 了 時 7.03±1.28
mg/dl へと有意に低下した.併用パターン別では,アム
ロジン追加併用群(n=123)は併用開始時 7.87±1.28
(mg/dl)
10
8
mg/dl から併用終了時 7.15±1.30 mg/dl へと有意に低
下し(p<0.001)
,また ARB 追加併用群(n=62)は併用
+++以上 合計
190
改善
74
22.3%
33
不変
239
72.0%
1
37
悪化
19
5.7%
2
49
p<0.001
符号検定 p<0.001
p<0.001
p<0.001
7.94
7.87
7.93
(1.11)
(1.28)
(0.85)
7.15
7.03
6.85
(1.30)
(1.28)
(1.16)
mean
(SD)
■ 併用開始時
■ 併用終了時
6
開始時 7.93±0.85 mg/dl から併用終了時 6.85±1.16
.
mg/dl へと有意に低下した(p<0.001)
考
2
察
アムロジンは,血中濃度半減期が約 36 時間と長く,1
日 1 回投与で 24 時間にわたる持続的な降圧臨床効果を
10)
示すことを特徴 としている.ALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart
11)
Attack Trial) ,ASCOT-BPLA(Anglo-Scandinavian
Cardiac Outcomes Trial-Blood Pressure Lowering
72(136)
4
血圧 vol. 22 no. 2
2015
0
全例
n=258
アムロジン
追加併用
n=123
ARB
追加併用
n=62
図 6.尿酸高値症例における尿酸の推移
■臨
12
床 研 究■
Arm などの高血圧患者を対象とした数多くの大規模
と ARB 併用により毛細血管内腔血圧の正常化とそれに
臨床試験ですぐれた降圧効果と心血管病の予防に有用で
伴う末ßでの血漿水分の血管外漏出の減少により末ß性
あることが証明され,世界 100ヵ国以上で販売され広く
浮腫の発現が抑制されたことが一因と考えられた.
臨床使用されている.海外では 10 mg/日が通常用量と
して用いられてきたが,わが国では国内臨床開発試験
13
以上,今回の結果から安全性に新たな問題点は認めら
れなかった.
において,アムロジピン増量に伴う用量依存的な降圧効
果が示され,2009 年 2 月にようやく 10 mg/日までの増
઄) 有効性
量が 5 mg/日で降圧不十分な症例に対して承認された.
血圧は,図 3 に示すように併用開始時 155.5±17.5/
本調査は,用法用量拡大後にはじめて実施した製造販売
87.5±12.8 mmHg が,併 用 4 週 時 よ り 137.4±14.7/
後調査であり,アムロジン用量別の安全性,有効性に着
78.6±11.0 mmHg と SBP が約 20 mmHg,DBP が約 10
目した.
mmHg 有意に低下し,12 週時 134.2±13.7/77.1±10.4
mmHg,まで維持されていた.また,併用終了時の 140/
ઃ) 安全性
90 mmHg 未満の達成率は 70.7%(3,877/5,484 例)で
副作用は安全性評価対象 5,900 例中 85 例 101 件に認
あった.単純に比較することはできないが,アムロジン
められ副作用発現率は 1.44%(85/5,900 例)であった.
特定使用成績調査(高齢者)の 140/90 mmHg 未満の達
いずれも使用上の注意から予測される副作用であった.
成率 58.9%(1,272/2,159 例)よりも高かった.これは
単純に比較することはできないが,再審査期間中に実施
アムロジン特定使用成績調査(高齢者)では本調査と比
し た 使 用 成 績 調 査 な ど の 副 作 用 発 現 率 4.2%(436/
較して降圧薬未治療の症例比率が 52.4%と本調査の
10,475 例)より低率であり,また,再審査後の 2007 年に
10.3%よりも高く,かつ平均血圧値も 163.3±17.9/88.4
14
おこなったアムロジン特定使用成績調査(高齢者 の
±12.1 mmHg と本調査 155.6±17.6/87.6±12.8 mmHg
とほぼ同等であった.
副作用発現率 1.40%
(480/2,280 例)
よりも高かったことが一因と考えられたが,わが国では
重篤な副作用は「うっ血性心不全」と「腎機能障害」
降圧薬服用者のうち血圧 140/90 mmHg 未満の割合は男
の 2 件(2 例)に認められたが,いずれも高齢で全身状態
性で約 30%,女性で約 40%にとどまっているとの報
が悪い症例であったことから合併症の影響や偶発的な要
告
因が主であったと考えられた.
用は 140/90 mmHg 未満への血圧コントロール率の向上
アムロジンを 5 mg/日から 10 mg/日へ増量すると,
1617
もあり,今回の結果からアムロジンと ARB の併
に有用と考えられた.
高い SBP の場合には降圧度は大きいが,SBP が 140
またアムロジン用量別の降圧効果についてアムロジン
mmHg 未満のような場合には降圧度が小さくなること
追加併用群で検討したところ,アムロジン用量が多いほ
15
が報告 されているが,今回の結果においてもアムロジ
ど併用前 SBP 値が高く,併用前後の SBP 変化量も増大
ン用量の増加に伴う過度の血圧低下との関連が疑われる
した.また,いずれのアムロジン用量群においても併用
副作用の増加は認められなかった.このことは実地臨床
終了後の SBP は約 135 mmHg まで低下した.これは日
において ARB にアムロジン 10 mg/日を追加併用して
常診療下において高血圧患者の SBP 140 mmHg 未満の
も血圧が下がりすぎることは少ないと考えられた.
降圧目標達成にアムロジンの増量が効果的であると考え
また,アムロジンを 5 mg/日から 10 mg/日へ増量す
られた.ARB 併用下において,アムロジンは用量依存的
ると,末ßでの体液の血管外浸出などにより末ß性浮腫
な降圧効果が認められたことが報告 されており,今回
13
18
の発現頻度が高まることが報告 されているが,今回の
の結果からも SBP 高値症例でアムロジンを 10 mg まで
結果ではアムロジン用量の増加に伴う浮腫(末ß性浮腫
増量することで,より良好な血圧コントロールを実現で
含む)の増加は認められなかった.ARB には動脈だけで
きることが示唆された.
なく静脈系の拡張作用も有するといわれており,CCB
一方,ARB 用量別の降圧効果について ARB 追加併用
血圧 vol. 22 no. 2
2015
736137
群で検討したところ,その用量依存性はアムロジンにく
આ) 尿酸
らべて小さく,ARB 中用量群と ARB 高用量群の併用前
併用開始時に尿酸値が 7 mg/dl 以上の尿酸高値の症
後の SBP 変化量は,約 19 mmHg でほぼ同等であった.
例についてその推移を検討したところ,併用前 7.94±
ARB の降圧効果については一定用量以上になると,そ
1.11 mg/dl から併用 12 週後 7.03±1.28 mg/dl へと有
れ以上 ARB を増量しても降圧効果の増大が少ないこと
意な低下がみられた.併用パターン別では,アムロジン
19)
が報告 されており,今回の結果でも ARB 中用量以上
追加併用群(n=123)と ARB 追加併用群(n=62)
,いず
の増量による降圧効果の増大はアムロジンにくらべ小さ
れのパターンにおいても尿酸値は,約 1 mg/dl 有意な低
いと考えられた.
下がみられた.アムロジンは血管を拡張し腎血流が増加
するので尿酸を排泄すると考えられる.また,ARB のな
અ) CKD
かでイルベサルタンとロサルタンは,尿細管における尿
近年,CKD は心血管イベントの重大なリスクファク
酸再吸収のトランスポーターである URAT-1 の発現を
21)22)
ターとして注目されている.JSH2014 では,CKD 合併高
抑制して尿酸排泄を促進する作用があることが報告
血圧症例は,厳格な血圧コントロールとともにレニン・
されている.本調査では約半数の症例で ARB としてイ
アンジオテンシン(RA)系抑制と尿アルブミン,尿蛋白
ルベサルタンが用いられており URAT-1 発現抑制効果
排泄量を減少させることも重要とされている.RA 系阻
が尿酸排泄の促進に寄与したと思われる.オーストラリ
害薬である ACE 阻害薬や ARB は,他クラスの降圧薬
アの閉経後女性の追跡調査においては,血清尿酸値が高
に比較して尿蛋白減少効果にすぐれていることが報告さ
いほど心血管疾患リスクが高いことが示されており ,
20)
23)
れており ,今回の結果でも CKD 症例において 22.3%
降圧治療をおこなううえでも尿酸排泄促進作用が期待で
の症例で尿蛋白改善効果が認められ,また eGFR の有意
きる降圧薬の併用は有用であると考えられた.
な改善が認められた.また CKD 症例の降圧効果では併
用前後の SBP 推移は,非 CKD 症例と同程度であった.
今回の結果から,アムロジンと ARB の併用は,CKD 合
おわりに
併高血圧症例に対し,非 CKD 症例と同様のすぐれた降
アムロジン特定使用成績調査(ARB 併用)において収
圧効果を示すとともに早期より腎保護効果を発揮する可
集された 6,038 例について解析をおこない,以下の結果
能性が示唆された.
が得られた.
安全性では CKD 分類において腎障害が重度な群ほど
.副作用発現率は 1.44%(85/5,900 例)であった.
有意に副作用の発現率が高く,CKD 症例の副作用発現
今回の結果から安全性に新たな問題は認められな
率 2.36%(16/677 例)は非 CKD 症例よりも高かったが,
かった.
発現した副作用に重篤なものはなく,また血圧低下 4 件
.降圧作用ではアムロジンと ARB の併用 4 週後ま
(0.68%)以外はすべて 1〜2 件の発現で特定の副作用の
でに SBP が約 20 mmHg,DBP が約 10 mmHg 有意
増加は認められず,安全性に新たな問題は認められな
に低下し,その後 12 週にわたり維持された.また,
かった.一方で重度の腎障害症例では併用開始時の血清
併用終了時の 140/90 mmHg 未満達成率は 70.7%
K 値が 4.84±0.5 mEq/l と正常高値〜異常域であり,ま
(3,877/5,484 例)であった.
た,副作用として高 K 血症 1 例,血中 K 増加 1 例が認
.アムロジン用量別の安全性では,アムロジン用量
められた.併用前後の血清 K 値の変動は小さかったも
増加に伴う過度の血圧低下との関連が疑われる副作
のの,重度の腎障害症例の降圧治療では高 K 血症に注
用および浮腫(末ß性浮腫含む)の発現率の増加は
意が必要な RA 系阻害薬の初期量は少量から慎重に開始
認められなかった.有効性では,アムロジン用量が
するなどの注意が必要と考えられた.
多いほど,併用開始前 SBP 値が高く,SBP 変化量
も大きかった.また,いずれの用量群も併用終了時
74(138)
血圧 vol. 22 no. 2
2015
■臨
の SBP は約 135 mmHg であった.
.アムロジンと ARB が併用された CKD 症例の副
作用発現率は 2.36%(16/677 例)であった.今回の
結果から CKD 症例の安全性に新たな問題は認めら
れなかった.有効性では非 CKD 症例と同様の降圧
床 研 究■
2 Mori H et al:Hypertens Res 29:143, 2006
3 Ohkubo T et al:Hypertens Res 27:755, 2004
4 Jamerson KA et al:Am J Hypertens 17:495, 2004
5 Philipp T et al:Clin Ther 29:563, 2007
6 Chrysant SG et al:Clin Ther 30:587, 2008
7 石光俊彦ほか:血圧 20:70,2013
作用がみられるとともに,尿蛋白および eGFR の維
8 石光俊彦ほか:血圧 20:488,2013
持,改善が認められた.
9 エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン作成委員
.アムロジンと ARB が併用された尿酸高値の症例
(併用開始時 7 mg/dl 以上)で有意な尿酸低下が認
められた.
以上,アムロジンと ARB の併用が実地臨床において
安全かつ効果的な併用療法であり,腎機能の維持・改善
や尿酸排泄効果も期待できることが示された.
会:エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2013,
日本腎臓学会,東京,2013
10 中島光好ほか:臨床医薬 7:1407,1991
11 The ALLHAT Officers and Coordinators for the
ALLHAT Collaborative Research Group:JAMA 288:
2981, 2002
12 Dahlöf B et al:Lancet 366:895, 2005
13 Fujiwara T et al:J Hum Hypertens 23:521, 2009
14 福田博文ほか:新薬と臨牀 60:1162,2011
利益相反(Conflict of Interest:COI)
・謝辞
本調査は,GPSP(good post-marketing study practice)に
則り,大日本住友製薬株式会社が実施した特定使用成績調査
であり,プロトコル立案,データ収集,統計解析等の実施,お
よび調査費用を負担した.また,獨協医科大学循環器・腎臓内
科 主任教授 石光俊彦が本調査の医学専門家として,調査の
計画立案および結果のとりまとめに参画した.本調査にご協
力賜り,貴重なデータをご提供いただきました多くの先生方
に深く御礼申し上げます.
15 伊藤正明ほか:Prog Med 30:1391,2010
16 三浦克之(研究代表者)
:厚生労働省科学研究費補助金循
環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「2010
年国民健康栄養調査対象者の追跡開始(NIPPON DA
TA2010)と NIPPON DATA80/90 の追跡継続に関する
研究」平成 24 年度総括・分担研究報告書,2013
17 Miura K et al:Circ J 77:2226, 2013
18 島田和幸ほか:血圧 18:1231,2011
19 Reeves RA et al:Hypertension 31:1311, 1998
20 Ruggenenti P et al:Nat Rev Nephrol 5:436, 2009
文
献
1 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会:高
血圧治療ガイドライン 2014,日本高血圧学会,東京,
21 Nakamura M et al:J Pharmacol Sci 114:115,2010
22 Hamada T et al:Am J Hypertens 21:1157, 2008
23 Strasak AM et al:Int J Cardiol 125:232, 2008
2014
血圧 vol. 22 no. 2
2015
756139