ここでは「理解率を測るテスト」(連文)の結果について述べる。 以下の図での「***」は有意水準 1%、 「**」は有意水準 5%、 「*」は有意水準 10%で有意差1が認 められた事を表し、拍間に記号がないところは有意差がないこと(NS) 2を表している。また、図中の n はサンプル数で、ここではいずれも異なるサンプルである。 外国人全体での理解率が高くなる読み方 *** 100 ** NS スピードは 320 拍/分と 360 拍/分 80 NS 図1は、外国人全体の「理解率を測るテスト」 60 の結果について示したもの。図中の320拍/ 40 分および360拍/分と他の2種の読み方スピ 20 0 ードとの間に有意差が認められた。 320拍 (n=114) 360拍 (n=114) 400拍 (n=114) 440拍 (n=114) 91 89 77 78 理解率 (単位:%) 図 1 外国人全体での「理解率を測るテスト」の結果 (加点法3による) *** ** 100 NS 80 は 360 拍/分の読み方スピードの方が「やさ しい日本語」で伝えられた文の内容を理解で きていることを意味する。 スピードは 320 拍/分と 360 泊/分 図2は、漢字圏出身者の「理解率を測るテス NS 60 ト」の結果について示したもの。図中の320 40 拍/分および360拍/分と、他の2種の読み方 20 スピードとの間に有意差が認められた。 0 理解率 320拍 (n=52) 360拍 (n=52) 400拍 (n=52) 440拍 (n=52) 92 96 80 76 (単位:%) 図2 /分や 440 拍/分よりも、320 拍/分あるい 漢字圏出身者の理解率が高くなる読み方 ** * このことは、外国人全体について、400 拍 漢字圏出身者での「理解率を測るテスト」の結果 (加点法による) このことは、漢字圏出身者にとって、400 拍/分や 440 拍/分よりも、320 拍/分ある いは 360 拍/分の読み方スピードの方が「や さしい日本語」で伝えられた文の内容を理解 できていることを意味する。 1 有意差・・・統計上からは偶然に起こったとは判定できない差のこと。有意差検定を行うことで、数値間の差は意味があ る差なのか、意味のない単なる見かけ上の差であるのかを確かめることができる。 2NS・・・・No Significant difference の略。統計用語で「有意差なし」の意味。 3 加点法・・・ある設問に対し用意された質的な選択肢の、たとえば「とても」や「ときどき」、「やや」、「まったく」 といった、その程度に対して傾斜した点数を加えて数量化する方法。 1 * 非漢字圏出身者の理解率が高くなる読み方 ** 100 スピードは 320 拍/分と 360 拍/分 80 図3は、非漢字圏出身者の「理解率を測る 60 テスト」の結果について示したもの。図中 40 の320拍/分と360拍/分の間に有意差はな 20 0 理解率 く、360拍/分と400拍/分の間にも、また 320拍 (n=63) 360拍 (n=63) 400拍 (n=63) 440拍 (n=63) 90 83 75 79 (単位:%) 図 3 非漢字圏出身者での「理解率を測るテスト」の結果 400拍/分と440拍/分の間にも有意差は認 められなかった。しかし320拍/分と、400 拍/分や440拍/分の間には有意差がある ことから、非漢字圏出身者にとって、 320 拍/分の読み方スピードがもっとも理解し (加点法による) やすい読み方スピードであり、次いで360拍 /分となった。 漢字圏、非漢字圏出身者共に理解率が高くなる読み方スピードは 320 拍/分と 360 拍/分 漢字圏の出身か非漢字圏の出身かの違いによって理解率に違いが生じるのかを知るため、漢字圏出身 者の結果(図2)と非漢字圏出身者の結果(図3)を比較した。 その結果、漢字圏あるいは非漢字圏の出身者であるか否かを問わず、400 拍/分や 440 拍/分よりも 320 拍/分あるいは 360 拍/分の読み方スピードの方が「やさしい日本語」で伝えられた文をよりよく 理解することが明らかになった。 外国人にとって理想的な読み方スピードは 360 拍/分 「理解率を測るテスト」と「聞きやすさを測るテスト」の結果において、理解率は 320 拍/分と 360 拍 /分が高い理解率であり、聞きやすさでは 400~440 拍/分が高い支持率となった。異なる読み方スピー ドが支持される結果となったが、当該実験で大事なことは聞きやすさだけでなく、さらに外国人がより 良く理解できるかであり、ここでの順位は「理解率を測るテスト」を優先し、360 拍/分を結論とする。 一方で320拍/分は非漢字圏での理解率が最も高かったものの、「聞きやすさを測るテスト」では、非 漢字圏出身者にとっても漢字圏出身者にとっても、最も低い支持率であり、理想的な読み方スピードと は違っていた。360拍/分の理解率に漢字圏出身者は96%、非漢字圏出身者は83%、の支持率を示してい ることなどから総合的に判断すると、漢字圏出身者にとっても、また非漢字圏出身者にとっても理想的 な読み方スピード(理解できるかつ聞きやすい)は360拍/分ということになる。 2
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